中古車の買取相場は「年式」と「走行距離」でどれだけ変わるのか?
結論から言うと、中古車の買取相場は「年式(経過年数)」と「走行距離」が最も強い説明変数で、同じグレード・同じ装備・同じ状態であれば、この2軸だけで相場の大半が説明できます。
実務ではさらに「修復歴・外装内装の傷・タイヤ/ブレーキ残・点検記録・車検残・人気色/人気グレード・地域需給」などが乗りますが、年式と距離の“基礎減価”がまず骨格を作ります。
以下、なぜそうなるのか(根拠)と、どれくらい変わるのか(定量目安)を体系的に解説します。
なぜ年式と走行距離が価格を大きく左右するのか(根拠)
– 機械的劣化と故障リスクの上昇
機械は時間と使用で劣化します。
ゴム/樹脂部品は年数で劣化、可動部は距離で摩耗。
年式が古い・走行が多いほど見えないリスクが増し、買取後の整備コストやクレームリスクを織り込むため、仕入れ価格(=買取価格)は下がります。
– 保証・車検・税制の閾値
多くのメーカー保証は「一般保証3年/6万km」「特別保証5年/10万km」などの距離・年数上限を持ち、これを超えると購買側の安心感が下がります。
また日本では初回車検3年、その後2年ごと。
車検が切れる直前・直後かで次のユーザーの負担が変わり、相場に影響します。
さらに自動車税種別割・重量税は概ね“経年で重くなる”ルール(13年超・18年超で重課)があり、保有コストの上昇がリセールを押し下げます。
– 市場データに基づく査定ルール
国内の業者オークション(USS、CAA、TAAなど)の落札データが相場の基礎です。
実務の査定・価格算出は、年式・走行距離を最重要入力にした統計モデル(ヘドニック回帰等)で作られ、また日本自動車査定協会(JAAI)の査定基準でも「標準走行距離は年間約1万km」を目安とし、これを超過/不足した分に加減点を与える枠組みが存在します。
つまり制度・実務・データの三点で、年式と距離が“価格に最も効く”構造になっています。
– 心理的ハードルと需給
10万km、13年、5万km、7万kmなど“キリの良い数字”は需要側の心理的ハードルとして強く意識され、そこで相場が段差的に動きます。
特に10万km到達は中古車検索で絞り込みから外されやすく、相場に実際の段差が発生します。
年式(経過年数)でどれくらい変わるか(全体傾向の目安)
以下は「一般的な大衆車・ミニバン・SUVの量販グレードで、無事故・平均的な距離・良好な状態」を仮定した“買取価格の目安レンジ(新車価格比の割合)”です。
車種人気や需給で上下しますので幅を持たせています。
1年落ち(~1万km前後) 新車価格の70~85%
新古車/登録済未使用車との競合が強く、人気車は高値、人気薄は下がり気味。
3年落ち(~3万km前後) 55~70%
初回車検前後。
保証が残り、状態も良い個体が多い。
リース満了の放出が増え供給も多いが、需要も厚い。
5年落ち(~5万km前後) 40~55%
2回目車検期。
消耗品交換が本格化。
人気車はまだ強いが、装備の陳腐化が目立ち始める。
7年落ち(~7万km前後) 30~45%
外装内装のヤレ、最新安全装備との差が効く。
維持費と相場のバランスで売却が増える帯。
10年落ち(~10万km前後) 15~30%
税・重量税の経年重課や10万km整備(例 補機ベルト、足回り、冷却系等)を意識。
需要はあるが選別が厳しい。
13年超 5~20%
重課・装備陳腐化の影響が大きいが、軽・商用・人気SUVなどは相対的に底堅い。
走行距離でどれくらい変わるか(年式一定のときの目安)
距離の影響は非線形(ゆるやか→段差→急)で、節目を越えると下げ幅が大きくなります。
年式相応の標準距離を基準に、超過/不足に応じた“%変動”のイメージは以下。
標準距離の目安
概ね「年間1万km」が業界の標準。
例えば5年で5万kmが“普通”。
これより少ないとプラス、多いとマイナス評価。
節目ごとの影響(同年式・同条件で比較した距離差の影響)
・±1万kmの差 ±1~3%程度
・±3万kmの差 ±3~8%程度
・±5万kmの差 ±6~12%程度
・10万km到達の心理的段差 到達直前と直後で5~15%程度の差がつくことも
距離ペナルティは車種・セグメントで感応度が違います。
輸入高級セダンやスポーツは距離感応度が高く、商用バンやディーゼルは相対的に低い(距離を走る前提の耐久設計・需要があるため)。
年式と距離の“相互作用”
– 年式に対する距離の多寡が重要
例1 3年で5万km(年式比で多い)→ 同じ3年3万kmに比べて5~10%以上下落することが多い。
通勤/業務使用の印象、保証距離上限接近で敬遠。
例2 10年で3万km(年式比で極端に少ない)→ 同年式10万km比で20~40%高く売れることも。
保管環境とメンテ記録が良ければ“掘り出し物”扱い。
– 閾値の組み合わせ効果
・5年・5万kmを越えてくると整備コスト織り込みが増え、下落勾配がやや強くなる。
・10年・10万kmを同時に越えると需要層が絞られ、在庫回転が落ちるため買取側はマージンを厚く見積もる。
具体的な価格イメージ(仮想モデル)
新車価格300万円の量販SUV、無事故・人気色・整備記録ありを想定した“買取価格のレンジ例”です。
あくまで相場感の参考値です。
3年・3万km 165~210万円(55~70%)
3年・6万km 150~190万円(距離多めで−5~10%)
5年・5万km 120~165万円(40~55%)
5年・9万km 105~150万円(距離多めで−5~10%+節目接近)
8年・8万km 90~135万円(30~45%)
10年・10万km 45~90万円(15~30%)
10年・7万km 60~105万円(距離少なめのプレミア)
12年・12万km 30~70万円(10~23%)
セグメント・動力別の例外と補正
– 軽自動車
下落が緩やかで、3年落ち残価は60~80%に達するケースも。
地方需要が厚く、低維持費が効く。
– ハイブリッド/人気SUV/ランドクルーザー系
需給逼迫で高残価。
ハイブリッドはバッテリー保証・交換履歴で評価が分かれます(例 メーカーのHVバッテリー保証が8年/16万km相当のケースでは、その手前の評価が強く出る)。
– 輸入高級セダン
初期下落が大きく、距離感応度も高め。
5年5万kmで30~45%まで落ちる個体も珍しくありません。
保証切れと高額整備リスクが意識されます。
– 商用バン/ディーゼル
距離のペナルティが相対的に小さく、10万kmを越えても稼働資産としての需要が強い。
– EV
走行距離よりも電池劣化・急速充電回数・保証残で評価が動きます。
年式が新しくてもSOH(State of Health)が低ければ下がる。
実務で使われる評価ロジック(簡易モデル)
現場では概ね、下のような乗算モデルを基礎に、コンディション・装備・色・地域などで係数調整します。
– 価格 ≒ 新車価格 × 年式係数 × 走行距離係数 × コンディション係数 × 需給係数
・年式係数 exp(−k×年数)。
大衆車でk≈0.18~0.25(1年あたり15~22%程度の逓減を“初期は大きく後は緩やか”に近似)
・走行距離係数 年間1万kmを基準に、乖離1万kmごとに−1~3%(初期)、節目越えで−5~15%の段差
もちろん実務システムはもっと複雑ですが、考え方は概ねこれに近いです。
いつ売ると有利か(年式・距離観点のタイミング)
– 10万kmに到達する前
– 保証が残っているうち(3年/6万km、5年/10万kmのいずれかに近づく前)
– 車検を6~12カ月以上残して出す(次ユーザーの負担を下げる)
– 13年を超える前(税・重量税の重課ライン)
– モデルチェンジ直前よりも“直後数カ月”は旧型相場が下がりやすいので、発表・リーク段階を意識
注意点(年式・距離以外で相場が大きく動く要因)
– 修復歴(事故歴)は別次元のマイナス。
フレーム修復は同条件でも−10~30%。
– 評価点(業者オークションの外装/内装/下回り評価)、内外装の傷、タイヤ残、メンテ記録の有無。
– 装備差(先進安全装備、純正ナビ/カメラ、寒冷地仕様など)。
– 色(白・黒・パールは相対的に強い、奇抜色は弱い傾向)。
– 需給ショック(半導体不足、災害、円相場、燃料価格、政策変更など)で全体相場が平行移動することがあります。
根拠のまとめ
– 業界データ 国内の業者オークション(USS、CAA、TAAほか)の落札価格が中古相場の基準値。
査定ソフトやディーラーの買取ロジックはこれをもとに年式・走行距離・評価点を主変数にしたモデルで算出。
– 査定制度 日本自動車査定協会(JAAI)の査定基準では「標準走行距離は年間約1万km」を基準に走行距離の超過/不足を加減点する考え方が明示的に使われています。
– 制度要因 メーカー保証(3年/6万km、5年/10万kmなど)、車検サイクル(3年/2年)、税・重量税の経年重課(13年超・18年超)といった制度の閾値が、需要側の意思決定と価格形成に段差的影響を与えます。
– 統計的妥当性 自動車価格のヘドニック分析では年式と走行距離の係数が一貫して大きく、距離の効果は年式に対し逓減・非線形(閾値効果)であることが多数報告されています。
現場の査定でも同趣旨の減点・係数が運用されています。
最後に
上記の数値は「一般的傾向」のレンジであり、個別車種の人気・状態・季節性・地域差で大きく振れます。
もし手持ちの車についてより具体的に知りたい場合は、車種名、グレード、初度登録年月、現走行距離、色、修復歴有無、装備、車検満了日、記録簿の有無などを教えてください。
最新の相場傾向に沿って、年式・距離がどの程度効いているかを具体的なレンジでお伝えします。
何年落ち・何万kmに価格の大きな節目はあるのか?
結論(先に要点)
– 年式の大きな節目(国内相場で一般的な傾向)
– 1年未満(未使用車・登録済み未使用車の価格帯)
– 3年落ち(初回車検・新車一般保証3年の切れ目)
– 5年落ち(特別保証5年・10万kmの切れ目、2回目車検直前後)
– 7年落ち(モデルチェンジ2回目域、部品劣化の体感増)
– 10年落ち(心理的節目、輸出・解体ラインと競合)
– 13年落ち(自動車税重課の開始で国内需要が弱まる)
– 18年落ち(重課さらに上昇)
– 走行距離の大きな節目(モデルや動力で差はあるが目安)
– 1万km(新古車/試乗車域)
– 3万km(低走行枠の上限)
– 5万km(大きな一段安)
– 7万km(軽や輸入車で効いてくる)
– 10万km(最も大きな節目)
– 12〜15万km(業販評価で過走行扱いが強くなる)
– 20万km(国内リテール需要が細くなり輸出・業務用中心)
以下、詳説と根拠です。
1) 年式の節目と理由
– 1年未満
– ディーラーの登録済み未使用車や試乗車がここに入ります。
新車との価格差が大きく見える一方、保証は新車登録日起点で減っています。
買い手は「ほぼ新車」と見なすため高値維持。
– 根拠 新車保証は登録日起算(一般3年、特別5年が多い)で、残期間が重視されます。
3年落ち
初回車検のタイミング。
残価設定ローンやリース満了の返却が集中し、業者オークションに出品が増える供給ピーク。
新車一般保証(3年/走行距離制限あり)の切れ目でもあり、心理的に「保証が切れる前に売る/乗り換える」が重なり価格は階段状に変わります。
根拠 車検は新車時3年、その後2年ごと(道路運送車両法)。
ディーラー保証の一般保証3年が多数派。
5年落ち
2回目の車検サイクル。
多くのメーカーで「特別保証(エンジン・動力系)」が5年または10万kmで切れます。
延長保証もここで終わるケースが多く、保証の有無が価格に段差を作ります。
リース/残クレの5年満了も供給増の要因。
根拠 国内主要メーカーの特別保証は5年または10万kmが標準的。
7年落ち
フルモデルチェンジが2回起きている可能性が高まり、旧世代感の顕在化。
ゴム・樹脂部品や足回りの劣化体感が増え、維持費見込みが上がると見られやすい。
ここで一段安になる車種が多い。
10年落ち
大きな心理的節目。
国内小売では「二桁年式」「10年超=古い」という印象が強く、下取り・業販評価ともに一段落ちやすい。
一方でSUV/商用・耐久評価の高い車種は輸出需要が旺盛で、国内需要の弱まりを相殺・逆転する例も。
根拠 業者AA(オートオークション)でも10年超・10万km超は評価点が上がりにくく、入札層が変わることが多い。
13年落ち・18年落ち
自動車税種別割のグリーン化特例(いわゆる重課)が始まるのが13年超、さらに18年超で重課率アップ。
買い手の維持費が増えるため国内相場は弱含みやすい。
根拠 多くの自治体で13年超・18年超の重課が適用。
販売現場では告知事項として価格交渉材料になりやすい。
2) 走行距離の節目と理由
– 1万km・3万km
– 低走行の象徴。
広告上の訴求力が強く、相場は強め。
5万km
主要な価格段差。
保証条件や延長保証の上限、サスペンションブッシュやダンパーの抜け、タイヤ・ブレーキ等の消耗が累積するライン。
購入後にまとまった整備費が発生しうると見なされ、一段安。
根拠 メーカー延長保証の上限距離、業者AA評価で距離減点が強くなる帯域。
7万km
軽自動車や輸入車、CVT/ATで距離感を気にする層に効きやすい。
消耗品の交換履歴がないと不人気。
10万km
最大の節目。
国内小売では「10万km超=過走行」の烙印が強い。
タイミングベルト(装着車)の交換目安、ウォーターポンプ、オルタネーター、足回りリフレッシュなどのコストが想起される。
業販の評価点にも上限バイアスがかかりやすい。
根拠 多くの整備スケジュールが10万kmで大点検・交換を推奨。
保証上限と重なる。
12〜15万km
国内リテールの買い手が減り、業務用途・輸出筋の比率上昇。
車種次第で相場は二極化(耐久評価の高い車は底堅く、一般乗用は軟化)。
20万km
国内では希少な買い手層。
整備履歴の充実や主要消耗一式交換が価格の生命線。
輸出・商用評価が中心。
3) 車種・動力別の違い(節目の効き方)
– 軽自動車
– 距離に敏感。
7万km付近から弱く、10万kmで大きく落ちる傾向。
年式では5年・7年で段差が出やすい。
事故歴やCVTのコンディションの影響が大。
– ミニバン/コンパクト
– 家族用途の需要が厚く、3年・5年の節目での供給増が価格形成に直結。
両側電動スライド等の装備有無も効く。
– SUV/商用(ハイエース、ランクル、プラド、ジムニー等)
– 耐久性・海外需要の評価が高く、10万km・10年の節目の下落が小さいか、場合によっては強含み。
4WD、ディーゼルは特に距離耐性が高い。
– 輸入車
– 3年・5年の保証切れでの段差が大きい。
5万km超で一段、10万km超で大きく下がりやすい。
DCT/AT、電子制御系の不安や修理費の高さが背景。
– ハイブリッド/EV/PHV
– ハイブリッドバッテリーや駆動用電池の保証が5年/10万km〜8年/16万km程度で設定されるケースが一般的。
保証切れの前後と、SOH(健全度)情報の有無で価格が大きく変わる。
初期リーフ等は劣化度合いが強く価格感度が高い。
4) なぜ「段差」が生まれるのか(根拠・メカニズム)
– 法定・制度的な節目
– 車検サイクル(新車3年→以降2年)、自動車税の重課(13年・18年)により、買い手の維持費と売り時が同期しやすい。
– メーカー保証・延長保証の境界
– 一般保証3年、特別保証5年/10万kmが多く、保証の有無が購買リスク=価格に直結。
– メンテナンス費用の山
– 5万km前後で足回り・タイヤ・ブレーキ、10万kmでタイミングベルト(装着車)、ウォーターポンプ、補機、各液類の総合更新が視野に入る。
見込み整備費が価格に転嫁される。
– 供給の偏り
– 残価設定ローン・リースの満了(3年・5年)で業者オークションへの出品が増加。
需給の谷で相場が段差的に動く。
– 業者AAの評価基準と買い手層の変化
– 走行距離・年式で評価点が上がりにくくなる帯域があり(例 過走行減点)、入札する業者の層が「国内小売」から「輸出・業務用」へシフトし、価格帯が変わる。
– 心理的アンカリング
– 「10万km」「10年」といったキリの良い数字に対する買い手の忌避感。
広告・検索フィルタでも境界として使われ、露出が減ることで価格が下がる。
– モデルチェンジ・安全装備の世代差
– 7年程度で安全装備・インフォテイメントが2世代分差に。
最新装備の有無が価格差になる。
5) 例外・補足
– 具体的な車種力が節目効果を上書き
– ランクル、ハイエース、ジムニー、ディーゼルSUVなどは10年10万kmでも高値。
逆に一部輸入車やスポーツ系は5年5万kmで大きく落ちる。
– コンディションが節目を上回る
– 修復歴の有無、整備記録簿、ワンオーナー、禁煙、屋内保管、下回り防錆等は、年式・距離より強い価格決定要因になることも。
– マクロ要因
– 半導体不足・新車納期遅延時期(2021〜2023年)には「古く・多走行でも」相場が上振れした。
市況は常に補正が入る。
6) 実務的な売却・購入のコツ(年式・距離の節目を踏まえて)
– 売却するなら
– 5年/5万kmに乗る前、10年/10万kmに乗る前は明確な分岐点。
例えば「49,800km」や「9年目の車検前」に動くと有利。
– 13年を跨ぐ前に国内向けで売る。
跨いだら輸出筋が強い車種かどうかを見極める。
– 10万kmを超える場合は、大物整備(タイベル・WP・足回り・タイヤ等)を実施済みであることを明確に示すと下げ幅を緩和できる。
– 買うなら
– 5万km直後・5年落ち直後はコスパ帯になりやすい。
整備履歴と保証延長の有無を重視。
– 10万km超でも車種次第。
耐久車種は割安に良個体を狙える。
必ず記録簿と下回り確認を。
– EV/HEVはバッテリー保証残とSOHを確認。
保証境界の手前は高いが安心、境界直後は割安。
7) 参考となる根拠・情報源
– 法定事項
– 車検サイクル(国交省告示) 新車時3年、以降2年ごと。
– 自動車税種別割の重課 多くの自治体で13年超・18年超に加重税率。
– メーカー保証慣行
– 新車一般保証3年(距離制限あり)、特別保証5年/10万kmが国内主要メーカーで一般的。
ハイブリッド・駆動用電池は5年/10万km〜8年/16万km程度の設定が多い。
– 整備スケジュール
– タイミングベルト車は10万km交換推奨が一般的(タイミングチェーン車は点検中心)。
AT/CVTフルード、補機、足回りは5万〜10万kmで更新域。
– 実勢相場の形成
– 業者オークション(USS、TAA、JU等)の出品ピークが3年・5年に集中。
距離・年式による評価点の傾斜が入札価格に波及。
– 小売サイト(カーセンサー、グーネット等)の掲載価格分布でも、5万km/10万km、5年/10年での段が視認しやすい。
まとめ
– 国内の中古車買取相場では、年式は3年・5年・7年・10年・13年、走行距離は5万km・10万kmが特に大きな節目になります。
– その背景は、法定点検や税制、メーカー保証、整備コスト見込み、オークション供給の偏り、そして買い手の心理的境界が重なるためです。
– ただし車種固有の人気・耐久性、整備履歴、事故歴などで節目の効き方は大きく変わります。
売買のタイミングは「節目の直前」を意識しつつ、個体の状態と市場動向を合わせて判断するのが最適です。
年式と走行距離ではどちらが相場により強く効くのか?
結論(先に要点)
– 全体像としては、同じ条件なら走行距離の方が短期的には相場に強く効きます。
特に登録後5〜7年程度までの国産大衆車では、1年の年式差よりも1〜2万kmの走行距離差が価格に与える影響が大きいケースが多いです。
– ただし「年式の方が優勢になる局面」も確実に存在します。
例 モデルチェンジ直後、安全・環境装備の世代差が効くとき、13年超・18年超の税負担増(重量税/自動車税重課)に差し掛かるとき、輸出先の年式規制に引っかかる境界など。
– よって「どちらが常に強いか」ではなく、「車齢帯・車種・売り先(国内か輸出)・閾値(しきい値)により主役が入れ替わる」が正解に近いです。
相場ができる仕組み(前提)
– 買取店の提示額は、実質的に「国内オークション(USSなど)の即時換金価格」「自社小売に回した場合の見込み粗利」「輸出ルートでの落札相場」を基準に逆算されます。
– これらの市場では、評価点(修復歴の有無、外装内装コンディション)に加え、年式と走行距離が価格形成の主要変数です。
年式が価格に効くメカニズム
– モデルチェンジ/安全装備差 同じモデルでも年式が新しいほど最新の予防安全(例 自動ブレーキ、レーンキープ)やコネクテッド機能が載る傾向があり、ここは買い手の実利と心理に効くため年式差が効きやすい。
– 税制と維持費 日本ではおおむね登録後13年超・18年超で重量税が上がり、自動車税(種別割)も経年重課がかかります。
維持費の増加は次のオーナーの総所有コストを押し上げるため、該当年式を境に相場が一段下がりやすい。
– メーカー保証 多くの国産車は一般保証3年/6万km、特別保証5年/10万kmが目安。
年式が若いと保証継承の余地があり小売価値が上がる。
逆に保証を過ぎると年式の若さの付加価値が薄れる。
– 輸出の年式制限 主要な輸出先の一部には年式制限があり(例 ケニアは原則8年以内など)、境界を跨ぐと輸出需要が急減して相場が落ちやすい。
– 環境規制・型式要件 排ガス規制やESC義務化等の切り替えで、年式が古いと海外・国内とも流通先が狭まりやすい。
走行距離が価格に効くメカニズム
– 摩耗・消耗部品の交換リスク 走行距離が増えるほどサスペンション、ブレーキ、補機、ベルト、タイヤ等の交換時期が近づくため、次のオーナーの初期整備コストが読めてしまい、その分が価格に織り込まれます。
– 心理的な閾値 5万km、7万km、10万kmは消費者心理の区切りになりやすく、とりわけ10万km超は検索で弾かれたり、保証・ローン審査の条件が厳しくなりやすい分、下げ圧が強まります。
– 保証上限との関係 特別保証の10万km上限に近づく(あるいは超える)と、同じ年式でも距離が短い個体より評価が明確に下がる。
– リース・フリートの残価モデル 事業用・リース車の残価は年式よりも「月あたり/年あたりの標準走行距離」からの乖離で調整されるのが一般的で、市場のベンチマークとして距離要素が強く浸透しています。
– 査定実務の基準 日本自動車査定協会(JAAI)等の査定基準では「標準走行距離(年1万km前後を目安)」からの超過は減点、過少は加点という考え方が採られ、距離が価格に直結する枠組みが明文化されています。
非線形な「効き方」のポイント(重要な閾値)
– 10万km 多くの車種で下げ圧が強い。
「9.8万km」と「10.2万km」で体感差が出やすい。
– 5万km・7万km 検索条件や消費者心理で選別されやすい閾値。
小売前提の買取では効きが強い。
– 登録後3年・5年 新車保証/特別保証の節目。
ここをまたぐと年式の付加価値が鈍る。
– 登録後8年 一部輸出先の年式制限の節目で輸出向け車種に影響。
– 登録後13年・18年 重量税や自動車税の重課で所有コストが上がる節目。
国内小売狙いの車は価格が段落ちしやすい。
車齢帯別の「相対的な効き」の目安
– 〜5年落ち 距離の影響が強い。
1万km違いのインパクトが、年式1年差に匹敵または上回ることが多い。
新しさ自体はどの個体も十分なので、差がつくのは「どれだけ使われていないか」。
– 6〜10年落ち 距離と年式が拮抗。
モデルチェンジや装備差がある場合は年式、走行10万kmの壁に近ければ距離が優勢。
– 11〜15年落ち 年式の節目(13年超)と輸出適齢の影響が増す。
国内小売向けは年式の重課影響で下がる一方、輸出向けの人気車(ランクル、ハイエース、プロボックス等)は距離の許容幅が広く、距離の効きが相対的に弱まる場合がある。
– 16年超 国内需要が薄く、輸出比率が高い車種は「モデルの希少性>年式>距離」となることも。
逆に国内でしか動かない車種は年式劣化が強く効く。
車種・動力別の違い
– 軽自動車・コンパクト 国内小売比率が高く、距離の効きが強い。
10万km超で一段下がりやすい。
– ミニバン/セダンの量販車 5〜7年落ちでは距離優勢。
モデルチェンジ直後は年式の効きが強まる。
– SUV/商用バン/トヨタ系耐久モデル(ランクル、ハイエース等) 海外需要で距離許容が広い。
年式制限(輸出先のルール)やモデル希少性が主導する。
– ハイブリッド バッテリーの健康状態が鍵。
距離だけでなく年式(経年劣化)も効くため、両者のバランスを見る査定が一般化。
– EV カレンダー劣化(年式)の影響が相対的に大きい。
ソフトの世代差(充電計画、熱マネジメント)も年式由来で価格に効く。
具体的な比較イメージ(あくまで一般傾向)
– 登録3年 3万km vs 登録4年 2万km 年式1年差より距離1万km差の方が効く場面が多く、後者(4年 2万km)が高く評価されがち。
– 登録7年 5万km vs 登録7年 8万km 距離差3万kmは価格差が大きく出る。
年式同一なら距離が支配的。
– 登録9年 9万km vs 登録9年 10.5万km 10万kmの壁を超える後者は明確に不利。
– 登録12年 6万km vs 登録13年 6万km 13年超の重課に入る分、年式差1年でも前者(12年)が有利になりやすい。
根拠(実務的・制度的な裏付け)
– 査定基準の枠組み 日本自動車査定協会(JAAI)などの査定では、標準的な年あたり走行距離(目安として約1万km)からの乖離が加点/減点の対象。
距離が数値で減価に直結する設計になっている。
– メーカー保証の一般則 多くの国産乗用車で一般保証3年/6万km、特別(パワートレーン)保証5年/10万kmが目安。
10万kmが強い閾値になる根拠。
– 税制 登録後13年超・18年超で自動車重量税が上がる制度、さらに自動車税(種別割)にも経年重課がある。
所有コスト上昇は中古車価格に転嫁されやすい。
– 市場慣行と心理 中古車検索サイトや小売現場で「5万/7万/10万km」の絞り込みが広く使われ、在庫回転に差が出るため、買取サイドもこれを織り込む。
– 輸出実需 日本発の中古車はアフリカ・中東・中南米等への輸出が大きく、受け入れ国の年式制限(例 ケニア8年以内)が価格形成に影響。
制限を跨ぐ直前直後で相場が段差的に動く。
例外・上書きする要素
– 修復歴や重大な機関不良は、年式・距離より上位の価格決定要因です。
– 色・グレード・OP(サンルーフ、先進安全、本革等)が希少で人気なら、年式・距離劣位でも相場が底堅いことがあります。
– 地域要因(雪国使用による下回り腐食など)は年式に近い「時間曝露ダメージ」として効きます。
売却戦略のヒント
– 走行距離が少なく推移している個体は、年式が1つ古くなる前に売るより「距離を増やさないうちに売る」が効きやすい(特に5年落ちまで)。
– 10万kmの手前にいるなら、そのラインを越える前の売却がセオリー。
– 13年目を跨ぐ直前の売却は、国内小売を狙う車種では有利になりやすい。
– 輸出で強い車種は、相場動向(輸出先の規制や為替)を扱い店に聞き、年式節目前後の需給を確認する価値あり。
まとめ
– 「どちらがより強く効くか」は車齢帯・車種・販路によって変わりますが、5〜7年落ちまでの国産大衆車を中心に見ると、走行距離の方が価格に対する影響が強い場面が多いというのが実務的な感覚です。
– 一方で、10万km、13年、モデルチェンジ、輸出年式制限といった節目では年式の影響が一気に強まります。
– 実査定では、年式と距離を独立に見るのではなく「保証・税制・装備世代・輸出規制といった背景要因」とセットで解釈することが重要です。
この視点でご自身の車の「いま売るべきか」を判断すれば、買取相場で有利に動けるはずです。
もし具体的な車種・年式・走行距離が分かれば、想定販路(国内小売/業販/輸出)も含めて、より踏み込んだ相場の効き方をお伝えできます。
記録簿・修復歴・グレード・装備は相場にどの程度影響するのか?
結論から言うと、中古車の買取相場は「年式×走行距離」で決まる“土台相場”の上に、記録簿(整備履歴)・修復歴・グレード・装備といった要素が加点/減点として作用します。
これら4要素の影響度は車種・市場(国内/輸出)・季節・在庫状況で上下しますが、実務相場ではおおむね次の順で効きます。
修復歴>グレード/パワートレイン>装備>記録簿、という順序が平均的です。
ただし輸入車や高価格帯では「記録簿」の重要度が一段上がるなど、セグメント差があります。
以下、影響度の目安・理由・根拠を詳しく解説します。
1) 記録簿(整備履歴)の影響
– 概要
– メーカー/ディーラーや認証工場での定期点検・部品交換が連続して記録され、スタンプや明細が揃っているかが評価されます。
欠落や飛びがある場合は不安材料になります。
– 影響度の目安
– 国産大衆車(軽/コンパクト/ミニバン) 記録簿ありで+1~3%、欠品で-1~3%
– 輸入車(特に独独・英・伊高級) 記録簿充実で+3~10%、記録薄/欠で-5~15%
– 高年式低走行では影響は小さめ、年式が古くなるほど効きやすい(特に輸入車/多気筒/ターボ/エアサス等)
– なぜ効くか(根拠)
– 業者オークション(USS、TAA、JUなど)や第三者評価(AIS/JAAA/JAAI等)で「整備記録簿」「取扱説明書」「保証書」は評価シートの明示項目。
欠品は入札リスクを上げ、落札レンジが狭まるため価格が下がりやすい。
– 記録が揃う=機関・電装の見えないリスクが低い=再販後のクレーム・返品・商品化コストの低下。
特に輸入車は保証継承や延長保証加入の可否に履歴が関係し、実需が価格に反映。
– 走行管理システムで走行距離改ざんはチェックできるが、整備の質までは見えないため、履歴の有無が信頼性の代替指標になっています。
2) 修復歴の影響
– 概要
– 修復歴とは「骨格(フレーム/ピラー/インサイドパネル/クロスメンバー/フロア/ルーフなど)の修正・交換の履歴」を指します。
外板の交換/板金のみは通常“修復歴なし”です。
– 影響度の目安(同年式・同走行・同条件比)
– 軽/コンパクト -10~25%
– ミニバン/SUV -15~35%
– スポーツ/高級/輸入高級 -20~50%
– エアバッグ展開歴や水害歴等の告知事項(修復歴なしでも) -5~15%
– 部位別の傾向 コアサポート/フロントインサイド≒-15~25%、リアフロア・ピラー・ルーフ≒-25~45%
– なぜ効くか(根拠)
– オークションの評価点では骨格修復車は「R」評価となり、同等条件の無事故車相場から2割前後落ちるのが通例。
R点は落札者層が狭く、在庫回転も鈍るため利幅でカバーする必要がある。
– 将来の下取りでも“R車”として評価され続けるため、次の買い手も値引きを要求し、その分が現在価格に織り込まれる。
– 一部輸出マーケットは骨格修復車を敬遠/禁忌としており、輸出ルートが使えないことが価格低下要因。
– 振動/直進性/錆進行など長期リスクが高く、保証付販売やファイナンス審査で不利になる場合あり。
– 注意
– 外板交換や小板金(修復歴なし)の影響は0~5%程度に留まることが多い。
評価シートの「A1~A3」「U1~U3」「W1~W3」など傷凹みの程度は、商品化コスト(板金/磨き)で相殺できる範囲。
3) グレード(パワートレイン/駆動/内外装ランク)の影響
– 影響度の目安
– 上位グレード(装備・内装上質) +5~15%
– スポーツ/特別仕様(GR/AMG/M/Type R/限定車等) +10~30%(希少性でさらに上振れも)
– エンジン種別(HV/ディーゼル有利) +5~20%(燃費・トルク・輸出人気)
– 4WD 地域/季節で+3~10%(積雪地域・悪路需要)
– 具体例(同年式・同走行の実務レンジの一例)
– プリウス S vs Aツーリング +20~40万円
– CX-5 ディーゼル vs ガソリン +20~60万円
– N-BOX 標準 vs カスタムL系 +10~25万円
– アルファード X vs エグゼクティブラウンジ +150~300万円
– スバル系のアイサイト付グレード +10~30万円
– なぜ効くか(根拠)
– オークション相場は需要が強いグレードに入札が集中し、成約価格が継続的に上振れする。
特に輸出需要が強い動力/駆動(例 ディーゼル/大排気量NA/4WD)や上級内装はリセールが強固。
– パッケージングされた装備(本革、先進安全、サンルーフ等)が上位グレード専用のことが多く、個別オプションより評価が残りやすい。
– 法人/業務用の特定グレード(例 ハイエースDX/GL)は流通量と指名買いが多く、相場が底堅い。
4) 装備(メーカー/ディーラーオプション・後付け)の影響
– プラス評価が大きい装備
– 先進安全装備(ACC、レーンキープ、BSM、AEB) +3~10%
– サンルーフ/パノラマルーフ(SUV・ミニバン・輸入) +5~15%(輸入高級は+10~20%も)
– 本革/電動/メモリー/シートヒーター&ベンチレーション +3~10%
– 全方位/パノラミックカメラ、デジタルインナーミラー +2~7%
– 高性能ライト(LED/マトリクス/レーザー) +2~5%
– 寒冷地仕様(ヒーター/大容量オルタ/リアワイパー等) +3~8%(地域依存)
– プレミアムオーディオ(Bose/JBL/Burmester等) +2~8%(上級車で有効)
– 3列キャプテンシート/オットマン等のミニバン快適装備 +5~15%
– 影響が小さい/マイナスになりうる装備
– 後付けドラレコ/レーダー探知機 0~+1%
– 社外ナビ/オーディオ 0~±2%(純正優位。
配線処理や適合の不安で評価が伸びにくい)
– 過度なカスタム(車高調/社外マフラー/極端なエアロ/大径ホイール) -5~15%
– スタッドレス/タイヤ新品 +1~3%(実費ほどは乗らない)
– なぜ効くか(根拠)
– 評価シートに装備は明記され、入札者は「付加価値=商品化後の付け値」を逆算。
特に安全装備・サンルーフ・本革などは店頭回転が早いので加点されやすい。
– 一般市場は「誰にでも売りやすいノーマル寄り」を好み、趣味性の強いカスタムは買い手が限定され回転率が悪化。
結果として値引き原資が必要になる。
セグメント別の感応度(相対比較)
– 軽/コンパクト 修復歴のマイナスが最も効きやすい。
記録簿の加点は小さめ。
装備は安全系と全方位カメラが効きやすい。
– ミニバン グレード差・サンルーフ・後席快適装備の寄与が大。
修復歴は-20~35%。
– SUV サンルーフ、4WD、上級内装の寄与が大。
輸出人気の有無で相場振れ幅が大きい。
– 輸入高級 記録簿/保証継承の有無が大きく、装備パッケージ(Pセーフティ等)やサンルーフの寄与も大。
無事故履歴の選好が強い。
– スポーツ/限定車 グレード/限定性が最重要。
無改造・記録簿完備・低走行が相場を強く押し上げる。
オークション/査定現場における根拠
– 業者オークションの車両状態表(AIS/JAAA/JAAI準拠)には「修復歴判定」「評価点」「内外装評価」「装備」「記録簿・取説・保証書の有無」が定義され、これが入札の前提情報となる。
– 同一条件の「無事故・記録簿あり」と「R評価(修復歴あり)」の落札レンジには恒常的な乖離(しばしば2~4割)が観察される。
装備の差は車種によってヘッジ可能だが、R評価は基本的に相場テーブルが別。
– ディーラー系認定中古は「記録簿・点検履歴・保証継承」が必須条件のことが多く、その分の上乗せが一般流通相場にも波及。
年式・走行距離との関係(優先順位)
– まず年式・走行距離で形成される土台相場があり、ここを大きくはみ出すことは稀。
例えば、走行10万km超は多くの車種で基準レンジが一段下がるため、装備がいくら良くても土台の下落分を補い切れないケースが多い。
– 逆に低走行・高年式で修復歴なし・人気グレード・人気装備が揃うと、同世代の上位レンジに食い込む。
よくある具体的な差の例(同年式/同走行/同色系)
– プリウス Aツーリング(HV・上級内装・安全装備充実)>S +20~40万円
– ヴェルファイア Z系サンルーフ付>サンルーフ無 +10~25万円、エグゼクティブラウンジはさらに+150万円以上のことも
– CX-5 ディーゼル4WD>ガソリン2WD +30~70万円(地域・輸出需給で変動)
– メルセデスEクラス 記録簿ディーラー整備・サンルーフ付>記録薄・サンルーフ無 +20~60万円
売却時にできる実務的ポイント
– 記録簿・取扱説明書・保証書・スペアキー・整備明細・純正戻し可能な社外品は必ず揃えて提示。
– 事故/修復歴は正直に申告。
査定員は骨格・パネル段差・塗装膜厚で概ね判別可能で、隠しても相場は上がりません。
– 小傷程度は無理に自費板金せず現状で。
高額修理は費用対効果が合わないことが多い。
– 複数社査定で「業者オークション落札想定レンジ」と「自社小売り前提」の両見積を比較。
– 季節性(4WD/スタッドレスは冬前、オープン/サンルーフは春~初夏)と決算期の相場上振れを意識。
影響度の簡易まとめ(平均的な目安)
– 記録簿 -3~+10%(輸入車寄りで上振れ)
– 修復歴 -10~50%(部位・車種で大幅変動)
– グレード ±0~+30%(上位/限定/動力差)
– 装備 ±0~+20%(安全/サンルーフ/本革等が強い。
カスタムはマイナスも)
注意点
– 上記パーセンテージは「同年式・同走行・同条件の土台相場」に対する相対的な目安です。
実際の相場は日々、為替・新車供給・輸出規制・季節・在庫圧力で動きます。
– 車種別・世代別の人気/不人気サイクルもあり、同じ装備でも効き方が異なります。
まとめ
– 記録簿は「安心の裏付け」、修復歴は「再販制約」、グレードは「市場需要の的中度」、装備は「回転率向上」の効果として価格に反映されます。
最も効くのは修復歴の有無、次いでグレード/パワートレイン、装備、記録簿の順。
ただし輸入車や高級・スポーツでは記録簿の優先度が上がるなど、車種ごとの文脈が重要です。
– 売却時は、整備履歴の整備、純正戻し、書類・スペアキー完備、正直な告知、複数査定での比較を徹底すると、上記の加点要素を最大化できます。
相場より高く売るための最適な売却タイミングと査定前準備は何か?
中古車の買取相場は「年式(登録からの年数)」と「走行距離」の二大要素で大きく決まり、そこに季節・車検・新型発表・為替(輸出需要)・人気ボディタイプやカラー・装備といった要因が上乗せされます。
相場より高く売るためには「需要が強いときに」「再販コストとリスクを最小化した状態で」出すのが原則です。
以下に、最適な売却タイミングと査定前の実務的な準備、それを裏付ける根拠を体系的に解説します。
年式・走行距離の“節目”をまたがない
– 走行距離のキリ番前が一つの勝負所です。
3万km、5万km、7万km、10万kmといった節目を超える直前は、同じ状態でも落札相場の下値リスクが一段切り下がる傾向があります。
業者オークションでは在庫の並びで比較されるため、買い手(販売店)は「整備コスト」「保証付帯のしやすさ」「説明のしやすさ」を意識し、閾値を超えた個体は仕入れを慎重にします。
したがって、例えば49,800km→50,100kmに越えた直後よりも、49,800kmのうちに動かしたほうが有利になりやすいのが実務感覚です。
– 年式は3年・5年・7年・10年の節目が効きやすいです。
新車保証や延長保証、ローン・リース期間、車検サイクルの切れ目と一致しやすく、再販時の説明がシンプルな“若い年式側”に値付けが寄ります。
フルモデルチェンジ前後でも旧型の再販価格が段落ちするため、発表前に動けると有利です。
最適な売却タイミング(カレンダー視点)
– 車検満了の2〜3カ月前
買取店は「車検を通してから売るかどうか」で整備コストや在庫期間が変わるため、車検目前の個体はリスクが増します。
逆に2〜3カ月前なら、次のオーナーが車検を残して買えるメリットを訴求しやすく、仕入れ側の整備負担も読みやすい。
結果的に提示価格が上がりやすい傾向があります。
車検を通すコストはほぼそのまま買取額に転嫁されるとは限らず、「通さずに売る」が原則です。
– 年度末(1〜3月)、中間決算期(9月)前後
1〜3月は新生活・登録繁忙期で中古車店の販売が強く、仕入れ競争が起きやすい時期。
また3月・9月は多くの販売会社の決算期で、台数目標を追うため仕入れに前向き。
この需要期に合わせると相見積もりで競合が起きやすく、上振れが期待できます。
– ボーナス期(6月・12月)
実需が増えやすい月。
特にSUVやミニバンなどファミリーニーズは強含みになりがちです。
– 季節トレンド
4WD・SUV・軽トラ/バンは冬前(10〜12月)に需要が強まりやすい。
オープンカーやスポーツは春〜初夏、軽・コンパクトは新生活シーズンに強い傾向。
自分のボディタイプの需要が強まる直前を狙うのがコツです。
– 新型発表の前
フルモデルチェンジの正式発表や試乗記事解禁後、旧型は相場が緩みやすい。
噂段階でも相場が先回りで動くことがあるため、情報が出回る前に売り抜けるのが理想です。
マーケット環境を読む(輸出・為替・燃費相場)
– 円安期は輸出業者の仕入れが積極化し、特定車種(4WD、ディーゼル、トヨタ系耐久モデル、低年式でも耐久性に定評のある車)が上がりやすい。
輸出ウエイトの高い地域向け仕様や右ハンドル需要国が強いときは特に狙い目です。
– 燃料価格が上昇している局面では、ハイブリッドや軽の需要が相対的に強まり、相場が底堅くなりがちです。
– EVは相場変動が大きく、補助金や電池寿命の評価、リセールデータのアップデートで一気に水準が動くことがあるため、ニュースや買取店の姿勢(査定の積極度)をよく観察してください。
査定前準備(“再販コストとリスク”を減らす)
買取額は「再販価格 −(仕入れ+整備・クリーニング+物流+保証リスク+在庫コスト)」で決まります。
つまり、査定前準備の目的は整備・クリーニング費用とリスクを下げ、再販のしやすさを高めることです。
清掃・消臭(投資対効果が高い)
室内の徹底清掃、フロアマット洗浄、内窓クリーニング、荷室の荷物撤去。
タバコ臭・ペット臭は強い減点要因で、専門店のオゾン消臭やスチームで抑えられれば、減額幅(しばしば数万円〜)を回避しやすい。
小キズ・簡易補修
洗車・鉄粉除去・簡易コーティングで見栄えを底上げ。
浅い擦り傷はタッチアップやコンパウンドで目立たなくする。
深い板金は費用対効果が低く、無理に直さないほうが良い場合が多い。
フロントガラスの飛び石は早めにリペアしておくと高額なガラス交換見込みの減点を避けられることがあります。
交換費用が読みやすい消耗品
球切れは交換、ワイパーゴム・キーバッテリーは数百〜数千円で印象が良くなる。
タイヤは溝が充分ならOK。
4本要交換レベルでなければ、無理に新品へは不要(コスト回収が難しいことが多い)。
整備履歴・記録簿・付属品の完備
取扱説明書、整備記録、保証書、スペアキー、ナビ・ドラレコの付属品、純正パーツ(ノーマル戻し用)があると、業者のリスク見積もりが下がり、提示額が上がりやすい。
定期点検記録簿は特に効果的。
改造は原則“ノーマル戻し”
車高調・社外マフラー・大径ホイール等のカスタムは販路が限定され、一般店では減額要因。
純正戻しができるなら戻す。
高価な社外品は別売りのほうがトータルで有利なことも。
事故歴・修復歴の正直申告
骨格修復(修復歴)の有無は相場を大きく左右します。
後出しで発覚すると大幅減額やトラブルになりやすい。
最初に共有すると、査定側もリスクを正しく織り込み、結果的にスムーズかつ高水準で決まりやすい。
電装・情報の初期化
ナビ・ETC・ドラレコの個人情報を消去。
盗難防止ボルトの解除、スペアキーの動作確認。
エンジンルームは無理に水洗いしない
見栄え目的の高圧洗浄は電装トラブルのリスク。
軽清掃に留める。
交渉・売却手順(価格を引き上げるための実務)
– 相見積もりは同日・短時間勝負
3〜5社を同日同時間帯に設定し、各社の「当日限りの最高提示」を引き出す。
同日競合は業者オークションに近い環境を作れるため、価格が上振れしやすい。
– 条件の明文化
減額条件(事故歴やメーター改ざんなど特定の要件に限定)、名義変更期限、キャンセルポリシー、引渡し日、残債処理、税金月割精算、自賠責・重量税還付(抹消時)などを事前に書面で確認。
後出し減額を防ぐには「現状渡し・減額なし特約」を交渉材料にする。
– 媒体の選び分け
大手買取店、輸出系業者、車種特化店、委託販売(時間はかかるが高値狙い)、業者オークション代行などを比較。
輸出向き車は輸出業者、スポーツや希少車は専門店が強いことが多い。
– 下取りと買取を分離
新車購入時の下取りは便利だが、下取りと購入値引きを混ぜられると価格が不透明になりやすい。
下取りと独立した買取相見積もりで基準価格を作ると、最終的に下取り側の上積みも引き出しやすい。
走行距離管理のコツ
– 売却を意識したら、節目を越えない運用を。
例えば49,500kmで売る計画なら、査定までの通勤は代替交通やセカンドカーを使うなどの細工が有効です。
– 長距離ドライブの予定があるなら、その前に売るか、逆に走行距離の節目を大きく超えるなら次の節目まで乗る(短期で売らない)という発想もありです。
車種・装備別の押さえどころ
– 人気カラー(白・黒・パール)はプラス評価になりやすい。
奇抜色は専門店向き。
– 安全装備(ACC、AEB、全方位カメラ)、ドラレコ、地デジナビ、ETC2.0などは再販時の説明が効き、査定も積極的になりがち。
– 低年式でも耐久性で評価の高いモデル(例 一部のトヨタ・スズキの小排気量、ディーゼル4WDなど)は輸出需要で底堅い。
該当しそうなら輸出業者も必ず混ぜる。
根拠(なぜそれで高く売れるのか)
– 買取店の利益構造
買い取り後は業者オークションへ再販するか、自社販売します。
いずれも「再販価格 − 仕入 − 整備・クリーニング − 輸送 − 手数料 − 在庫コスト − 保証リスク」で利益が決まるため、整備コストが読め、在庫回転が速そうな個体に高値が付きます。
清掃・消臭・小修理・付属品完備が有効なのはこのためです。
– 年式・走行距離の閾値
業者オークションの落札相場は、年式と走行距離が一目で比較される並びで評価され、保証条件やローン期間、車検残など実務の区切りと連動して“段差”が生じます。
節目前の個体は買い手が増え、超えた直後は買い手が減るため価格が分かれる構造です。
– 需要期の強さ
1〜3月の販売繁忙や決算期は、店舗が「台数」と「粗利」の両方を追うため、仕入れ現場の査定上限が緩みやすく、相見積もりの効果が最大化します。
季節別のボディタイプ需要も、実需に裏付けられた店頭回転の見込みがある時ほど強気になれるメカニズムです。
– 為替・輸出
円安で海外販売の採算が良くなると、輸出バイヤーが業者オークションで相場を押し上げ、国内買取にも波及します。
輸出適性の高い車は国内人気が平凡でも、輸出ルートの存在が上値を支えます。
– 情報非対称の解消
書類・記録簿・履歴の提示は、買い手の不確実性を減らし、リスクディスカウント(安全側の値引き)を縮小させるため、理論的に価格が上がります。
逆に情報が乏しい個体は、潜在的な不具合やメーター不正のリスクを見込んで安く買われがちです。
やってはいけない過剰投資
– 高額な板金塗装や4本タイヤ新品化は、個人が支払った費用を買取価格で回収しにくいケースが多い。
査定側は自社ネットワークの安価な再生手段を持つことが多く、個人の小売価格での手直しはコスパが悪化しがちです。
費用対効果が高いのは、清掃・消臭・軽微補修・書類完備・ノーマル戻しまで。
実行プラン(時系列)
– 売却3カ月前までに
走行距離計画と売却時期(車検・節目・需要期)を決める。
新型発表の噂や為替・燃料価格の動向をチェック。
– 2カ月前
消臭・清掃・小修理、必要パーツの手配、整備履歴や書類の整理。
改造はノーマル戻しの可否を判断。
– 1カ月前
3〜5社を選定(総合買取、専門、輸出)。
出張査定の日程を同日に揃える。
相場感を掴むため簡易オンライン査定でレンジを把握。
– 当日〜1週間
洗車・室内清掃を最終仕上げ。
当日は天候の良い時間帯に。
提示が出揃ったら、その場でベスト2社に“当日限りの入札”で再提示を依頼。
条件書面を確認して決める。
まとめ
– 高く売る最適なタイミングは「走行距離・年式の節目前」「車検の2〜3カ月前」「決算・繁忙期直前」「新型発表前」。
輸出・為替・季節性も加味する。
– 査定前準備は「清掃・消臭・小規模補修」「書類・付属品完備」「ノーマル戻し」「情報の開示」を徹底。
費用対効果の低い大修理は避ける。
– 交渉は同日相見積もりと条件の書面化で“後出し減額”を封じ、専門店や輸出業者も含めて競合させる。
これらは、買取店が最終的に業者オークションや自社小売で再販する際の利益計算と、オークション相場の年式・走行距離による段差、需要期の在庫回転見込み、為替と輸出の影響といった業界の実務に基づくものです。
需要が強いときに、再販コストとリスクを最小化した“買いたくなる個体”として差し出すことが、相場より高く売る最短ルートです。
【要約】
中古車相場は年式と走行距離が相互に効く。新しいうちは低走行が強いプレミア、過走行は大きく減額。年式が進むと距離差の効きは相対的に弱まり、代わりに保証切れ・車検・税の重課や10万km等の閾値が段差を拡大。同年式でも超過/不足で±数%、車種で感応度は異なる。