売却代金による残債立替精算サービスとは何で、どのように機能するのか?
以下は一般的な実務の整理です。
呼称や細部の設計は提供する事業者ごとに差がありますが、「何で、どう機能するか」という骨格と、典型的な法的根拠・関連規制をできるだけ分かりやすくまとめます。
これは何か(定義)
– 売却代金による残債立替精算サービスとは、主に不動産や自動車などに既存のローンや担保権が付いている状態で売却する際、売却代金を原資として既存ローンの残債を第三者(サービス提供者)が一時的に立替払いし、抵当権等を抹消したうえで買主への引渡し・名義変更・登記を安全に完遂するための決済支援スキームです。
– 目的は「買主に瑕疵のない権利(無担保の所有権)を引き渡すこと」と「売主の既存債務を確実に清算すること」を同時に達成し、決済時点の資金の行き違いや手続きのタイムラグによるリスク(決済不調、抵当権抹消遅延など)を最小化することにあります。
– 実務では、司法書士・信託銀行・エスクロー事業者・不動産会社・提携ファイナンス会社のいずれか(または複数)が役割分担して提供します。
なぜ必要か(背景・課題)
– 不動産には既存の抵当権や根抵当権が付いていることが多く、買主は原則として無担保の所有権を取得したい。
抵当権者(金融機関)は、完済を確認できて初めて抹消に応じます。
– しかし売主は現金を先に用意できないことが自然で、売却代金で返済したい。
一方で買主は「担保が付いたまま」では代金を払いたくない。
いわゆる同時履行の構造的緊張や、資金着金と登記・抹消の手続きに時間差があることが現場のリスクです。
– このタイムラグと相互不安を解消するために、第三者が「売却代金を原資にして既存債務を立替払いし、抹消書類の確保・登記申請・代金配分」を一体で運用管理するのが当サービスの趣旨です。
どのように機能するか(基本スキーム)
典型的な不動産売買の例で流れを示します。
事前準備
1) 残債確認と必要書類の取得 売主・仲介会社・司法書士が金融機関から「弁済(完済)金額の見込み」「抹消に必要な書類」「返済手数料・日割利息」を確認。
複数の担保権や税金の滞納処分・差押えがあれば全件の配分調整を行う。
2) 決済設計 代金の入出金経路、立替の有無、抹消・移転登記の申請方法、配分表(金融機関への返済、仲介手数料、司法書士費用、税・管理費等の精算、売主への残額)を固める。
3) 契約条項と権限付与 売買契約や覚書で、代金の支払方法、第三者(司法書士・信託等)による売却代金の受領・配分権限、立替金の精算方法、万一の不調時の返金・解除、個人情報・口座情報の取扱いなどを明確化。
必要に応じて売主は売却代金債権の譲渡・質権設定・弁済充当の同意を行う。
決済当日(同時履行の場)
4) 資金の着金 買主は売却代金を指定口座へ送金。
ここで使われる口座は、司法書士の職務信託口、信託銀行の決済信託口、またはエスクロー口座など、分別管理・使途特定が担保されたものが一般的。
5) 立替(必要な場合) 抵当権者の抹消書類を確保するために、サービス提供者が先に残債を立替払いし、抹消同意・受領証・解除証などを取得することがある。
買主からの代金が着金次第、立替金は直ちに回収される。
6) 抵当権抹消と所有権移転の申請 司法書士が買主・売主から委任を受け、抹消登記と所有権移転登記を一括申請。
抹消書類(弁済証書、解除証、委任状、登記原因証明情報等)を確認し、不備がないことを条件に資金配分を確定する。
7) 資金の配分・精算 売却代金から、まず抵当権者への完済(繰上げ返済手数料・利息含む)を実行。
その後、仲介手数料、司法書士費用、管理費等の精算を行い、残額を売主に送金。
過不足があれば、事前合意に基づき売主の追加入金や、別途用意したつなぎ・不足立替で調整する。
決済後
8) 登記完了と書類交付 登記完了後、権利証(登記識別情報)や完了証などを買主に引渡し。
関係者に配分結果・領収書・計算書を交付し、取引をクローズ。
バリエーション(スキームの型)
– パススルー型(同時決済) 立替なしで、買主→抵当権者へ直接送金し、残余を売主へ配分。
書類は司法書士が確認・申請。
– 立替決済型(タイムラグ吸収) 書類確保やカットオフ回避のため、提供者が短期で完済を立替。
売却代金着金で即日回収。
– 不足立替・任意売却型 売却価格が残債を下回る場合、金融機関と協議して任意売却とし、差額は無担保ローンや分割和解、保証会社のスキームで処理。
サービス提供者や提携金融が不足分を立替し、売主は後日返済する。
信用情報・利率・返済計画の審査が伴う。
– 決済信託・エスクロー型 信託銀行やエスクロー事業者が信託勘定で売却代金を受託し、契約に従って条件成就時に自動配分。
ガバナンスと分別管理が強い。
メリット
– 売主 手元資金がなくても売却代金を使ってローン完済・抵当権抹消ができる。
段取り・書類・資金のタイムラグを一括で管理してもらえる。
– 買主 無担保状態で権利を取得でき、決済不調リスクを低減。
– 金融機関 完済が確実に履行され、抹消事務が標準化。
– 仲介会社 決済の詰まりを防ぎ、取引の確実性を高める。
留意点・リスク
– 立替の法的位置付け 実質が「貸付」に当たる場合は貸金業法等の規制対象。
提供者が適正な登録・ライセンスを有しているか確認が必要。
– 複数担保・差押の存在 優先順位に従った配分が不可欠。
税金の滞納処分等は別途調整が必要で、単純に銀行完済だけでは抹消できない場合がある。
– 任意売却の同意 売却価格が残債を下回る場合、抵当権者の同意と配分協議が前提。
勝手に売ることはできない。
– 早期完済コスト 繰上げ返済手数料・違約金・日割利息を見込む。
決済日変更があると金額も変動。
– エスクロー口座の適法性・ガバナンス 代金の分別管理、協議不調時の返金手続、情報管理を契約とルールで担保する。
– 個人信用・税務 不足立替を使うと新たな債務が残る。
住民税・所得税の精算、譲渡所得課税、抵当権抹消登記の登録免許税なども忘れずに見込む。
典型的な法的根拠・関連法令等
– 民法(弁済・代位・相殺等)
– 第三者弁済の許容 債務者以外の者も弁済できるという基本原則(民法の弁済に関する規定)。
サービス提供者が売主に代わってローンを完済できる根拠。
– 弁済による代位(法定代位・任意代位) 第三者が弁済したとき、元の債権者の担保・優先弁済の地位に代位する制度。
立替者が代位の利益を受ける条項を設けることが多い。
– 弁済充当・同時履行の抗弁 どの債務に充当するか、売買契約の同時履行構造を支える一般原則。
– 不動産登記法・不動産登記規則
– 抵当権抹消登記の要件(原因証書、委任状、登記原因証明情報等)と、所有権移転登記の申請手続き。
司法書士が決済に立ち会い、同時に抹消・移転を申請する実務の基盤。
– 宅地建物取引業法・関連ガイドライン
– 重要事項説明における担保権・代金支払方法の明示、取引の公正確保。
預り金・手付金の保全、分別管理の実務ルール。
仲介業者が資金を扱う場合の内部統制。
– 司法書士法(および司法書士会の預り金取扱指針)
– 登記申請代理、決済に伴う書類確認の職責、職務信託口座での預り金の分別管理等に関する実務基準。
– 信託法・信託業法
– 決済信託を用いる場合の受託者(信託銀行)による金銭信託の枠組み。
条件成就時の資金配分の適法性・安全性の根拠。
– 銀行法・資金決済に関する法律
– 銀行による決済サービス、資金移動業者による送金が関与する場合のライセンス・AML/CFT(本人確認、取引モニタリング)などの規律。
– 貸金業法
– 立替が「業としての金銭の貸付」に該当する場合の登録義務、上限金利、広告規制、書面交付義務、指定信用情報機関への照会など。
不足立替やつなぎ融資を提供する主体は、銀行・信託・貸金業者等の適切な免許・登録が必要。
– 自動車売買に関する法制(参考)
– 自動車の所有権留保がある場合、ディーラーや買取業者がオートローン残債を立替精算し、所有権解除・移転登録を行う実務。
民法の第三者弁済・代位の考え方は同様に適用される。
手数料・コストの目安(一般論)
– 立替手数料・利息(短期日割り)、司法書士報酬、登記の登録免許税、銀行振込手数料、仲介手数料、繰上げ返済手数料など。
費用負担者は通常売主(合意により調整可)。
金額は物件規模・担保の本数・不足の有無により大きく変動。
実務上のベストプラクティス
– 早期の残債・抹消条件の取り寄せと、精算表の合意形成。
– 立替を行う主体のライセンス・登録、分別管理体制、コンプライアンス(個人情報、AML/CFT)を事前確認。
– 立替契約・覚書における代位、弁済充当、返金・不調時の処理、損害賠償・違約条項を明確化。
– 買主・売主・金融機関・司法書士・仲介の全員が同一の資金フロー図とチェックリストを共有し、決済当日のチェックポイント(着金確認、書類現物確認、登記申請の受領確認)を標準化。
まとめ
– 売却代金による残債立替精算サービスは、売却代金を原資に第三者が短期立替等で既存のローンを確実に完済させ、抵当権抹消と所有権移転を同時・安全に実行するための決済支援スキームです。
– 民法の「第三者弁済」「弁済による代位」を中核に、不動産登記法、宅地建物取引業法、司法書士法、信託業法、銀行法・資金決済法、そして立替の性質に応じて貸金業法等の枠組みが関与します。
– 具体的な設計・手数料・法的整理は提供事業者ごとに異なるため、契約書・説明書類で資金の流れと権利関係(代位・譲渡・担保)を必ず確認し、司法書士・弁護士・税理士など専門家と連携して進めるのが安全です。
必要であれば、想定している対象(不動産/自動車/事業用資産)や、オーバーローンの有無、利用を検討している事業者のタイプに合わせて、より具体的なフローと書類一覧、費用の見積もり項目を作成します。
どんな状況・物件・債務で利用でき、審査や利用条件はどうなっているのか?
ご質問の「売却代金による残債立替精算サービス」は、不動産の売買決済に際し、既存の住宅ローンや各種の抵当権・差押え等を先に一括弁済・抹消できるよう、決済日より前または当日に専門業者(金融機関・貸金業者・エスクロー/決済代行会社)が一時的に資金を立替え、売買代金が着金した時点で直ちに回収・清算する仕組みを指します。
日本の実務では「決済・引渡しの同時履行」「抵当権抹消書類の当日授受」が強く求められるため、買主側資金の入金条件や複数債権者調整の事情により、立替が有効になる場面が少なくありません。
以下、利用できる状況・物件・債務、審査や利用条件、そして根拠について詳述します。
どんな状況で利用できるか(典型例)
– 既存住宅ローンの完済・抵当権抹消が必要だが、買主側の融資実行の条件として「先に既存抵当権が外れていること」を求められる場合
– 期限の利益を喪失(延滞により一括請求状態)しており、当日一括での弁済が必要な場合
– 複数の抵当権・根抵当権・差押え(税金滞納や保証会社等)が設定され、各権利者の配分調整と同時弁済が必要な場合
– 区分所有マンションの管理費・修繕積立金滞納、滞納に基づく先取特権等を決済時に清算する必要がある場合
– 任意売却スキームで、競売回避のために債権者と合意した配分で決済当日一括弁済・抹消を行う場合
– 売買代金は十分にあるが、抹消書類を事前に揃えるための「当日以前の短期資金」が必要な場合(銀行の内部手続や送金時間制約を解消)
– 売買代金の一部が信託受益権化・持分売買・借地権など特殊権利関係に絡み、クリアな権利状態での引渡しを要求される場合
利用できる物件の範囲(一般的傾向)
– 利用しやすい物件
– 戸建て・区分マンション・宅地等の居住用不動産
– 投資用区分・一棟収益不動産(事業性あり)も可とする業者は多い
– 条件や除外になりやすい物件
– 違法建築・完了検査未了の大規模改変・重大な物理的瑕疵があるもの
– 借地権・底地・定期借地等は地主同意や承諾料精算などの条件付
– 境界未確定・越境問題未解決・測量未了で所有権移転に支障があるもの
– 多数の権利者(共有・相続未了)で決済日までに関与者全員の同意・書類が揃わない可能性が高いもの
– 反社会的勢力の関与が疑われる物件は不可
立替の対象となる債務・費用の範囲
– 典型的に対象となるもの
– 既存住宅ローン残高の一括弁済金
– 根抵当権抹消のための弁済金(極度額の範囲内での確定額)
– 税金滞納による差押え・参加差押え解除金(国税徴収法・地方税法に基づく)
– 管理費・修繕積立金等の滞納清算金、管理組合の承諾料
– 抵当権・質権・譲渡担保など担保権の抹消に必要な弁済・解除費用
– 場合により対象になりうるもの
– 引越費用(任意売却で債権者が一定額を配分容認するケース)
– 測量・境界確定費用、司法書士・土地家屋調査士報酬、登録免許税等の決済関連費用
– 原則対象外または制限が強いもの
– 売主の自由資金化(キャッシュアウト)目的
– 売買と無関係な個人的債務の整理
– 売買代金で確実に回収できない金額(不足分は別途自己資金か無担保ローン等での補填が前提)
審査(スクリーニング)の中身
– 売買の確度確認
– 売買契約書・重要事項説明書・決済予定日・手付金授受状況
– 買主側ローンの本審査承認(事前審査ではなく本承認)や自己資金エビデンス
– 住宅ローン特約の有無・解除事由・期日
– 権利関係・配分確認
– 登記事項証明書(全部事項)、公図・地積測量図等
– 既存ローンの残高証明・抹消同意条件、差押解除の同意見込み書面
– 管理費滞納証明、固定資産税の納付状況
– 資金配分表(売買代金→各弁済先→諸費用→残代金)の整合性
– マネロン・反社チェック
– 犯罪収益移転防止法に基づく本人確認(特定事業者該当業者の場合)・反社排除条項
– 信用・返済可能性(不足額が出る場合)
– CIC/JICC/KSC等の信用情報照会(貸金業者等が実施)
– 所得資料、他債務、延滞有無
– 実務オペレーション確認
– 司法書士・金融機関の決済立会い体制
– 送金ルート・時間(全銀システムの当日入金限界)・万一の遅延時の扱い
利用条件(典型的)
– 前提条件
– 有効な売買契約の成立、原則として買主ローン本承認済み
– 売買代金で全弁済・諸費用・手数料を賄え、立替金を確実に回収できる見込みが高いこと
– 全ての担保権者・差押債権者の抹消・解除条件が書面で確定していること
– 立替実行までに必要な書類
– 売買契約書、本人確認書類、登記関係一式、ローン残高・精算見込書、配分表
– 売買代金債権の譲渡(または譲渡担保)・質権設定・支払指図書の差入れ
– 反社排除に関する表明保証、個人情報同意書
– 金額・期間
– 金額は「決済時回収見込額」の範囲内(多くは売買代金の70~95%内で、必要な弁済・諸費用に限定)
– 期間は数日~数週間程度の短期(決済日まで)。
延長時は追加手数料・利息
– 費用
– 立替手数料、日割り利息、事務手数料、司法書士・登記費用等
– 利率は年率ベースで利息制限法の範囲内(実務は短期日割り)
– リスクと帰責
– 決済不成立(買主ローン否決・解除)時は売主が直ちに一括返済
– 想定外の留置・差押えが発見された場合は追加担保や契約解除条項
– 違約時の遅延損害金、弁護士費用負担等の規定
決済当日の資金と書類の流れ(一般的スキーム)
– 司法書士立会いのもと、立替業者が既存債権者へ一括弁済(または同時に買主サイド資金と合算弁済)
– 既存債権者から抹消書類(解除証書・弁済証書・登記識別情報等)を受領
– 登記申請(所有権移転・抵当権抹消・必要に応じて新たな抵当権設定)
– 売買代金の着金から、配分表に従い立替元本・利息・手数料を即時回収
– 余剰は売主へ送金
法的・実務的な根拠
– 抵当権の弁済・抹消と同時履行の実務
– 民法(債権総則・同時履行の抗弁)および不動産登記法に基づき、引渡しと登記、抹消書類授受を同日で行うのが取引実務。
– 債権譲渡・譲渡担保
– 民法第466条以下に基づき、売主の「売買代金債権」を立替業者に譲渡(または担保に供する)ことで、立替の回収可能性を法的に担保。
– 対抗要件は債務者(買主または買主の融資銀行)への通知または承諾。
確実性を高めるため内容証明通知や動産・債権譲渡登記(動産債権譲渡特例法)を用いることもある。
– 貸金・利率規制
– 貸金業法の登録事業者や銀行等による与信の場合、利息制限法(元本10万円未満20%、10~100万円18%、100万円超15%)および出資法上限を遵守。
短期でも日割計算の実質年率で管理。
過剰貸付防止、契約書面交付、重要事項説明等の義務。
– 犯罪収益移転防止法
– 本人確認・取引記録保存・疑わしい取引の届出等。
反社排除は各社の表明保証条項で担保。
– 税の差押え解除
– 国税徴収法・地方税法に基づく滞納処分の解除は原則として全額納付または所定の分納合意。
解除条件の書面確認後に決済で同時弁済。
– 区分所有法・管理組合の先取特権等
– 管理費等の滞納は引渡し時清算が原則。
先取特権の観点からも当日精算を配分表に組み込む。
よくある制約・注意点
– ネガティブ・エクイティ(売買代金<残債・費用)の場合
– 立替のみでは解決せず、不足分の自己資金や住み替えローン(新居側で不足分を組み込む)等が前提。
任意売却では債権者の同意配分が必要。
– 住宅ローン特約の解除リスク
– 本承認前は立替実行不可が原則。
やむを得ず実行する場合は違約時の即時返還条項・追加担保が厳格。
– 時間制約
– 金融機関の入出金カットオフ、登記申請の締切、遠隔地送金等の実務制約をクリアするため、決済日のタイムライン設計が不可欠。
– 司法書士・実務体制
– 真のエスクロー制度は日本に未整備で、司法書士・仲介会社・金融機関の連携が安全性の要。
実績ある事務所の関与が望ましい。
申し込みから実行までの流れ(例)
– 事前相談 売買契約書、残高証明、登記簿、配分仮表を提示
– 事前審査 買主ローン本承認の確認、反社・KYC、物件・権利のチェック
– 条件提示 限度額、費用、必要書類、スケジュール
– 各債権者との最終調整 抹消・解除条件の確定(書面化)
– 契約締結 立替契約、売買代金債権の譲渡(担保)契約、支払指図書
– 実行・決済 当日立会いで弁済→抹消書類受領→登記申請→売買代金着金・清算
– 終了 立替金回収・余剰金振込・完了書類交付
類似・代替手段との違い
– つなぎ融資(建築・買先行用)との違い
– つなぎは新規物件取得までの資金橋渡し。
本サービスは「売却側の既存債務・抹消費用の短期立替」に特化。
– 住み替えローン(買換えローン)
– 売却不足分を新居のローンに組み入れる中長期の債務。
立替は短期・当日清算前提。
– 任意売却支援
– 交渉・配分調整の枠組みの中で立替が使われることがあるが、コアは債権者合意の形成。
実務上の根拠のまとめ
– 民法(債権譲渡・同時履行・弁済)
– 不動産登記法(抹消・移転登記と必要書類)
– 貸金業法・利息制限法・出資法(与信・利率・説明義務)
– 犯罪収益移転防止法(本人確認等)
– 国税徴収法・地方税法(差押解除)
– 区分所有法(管理費滞納の清算慣行)
これらの法令と、不動産決済の実務慣行(司法書士立会い、当日同時履行、資金配分表による清算)を土台に、サービス各社が自社の審査基準とリスク管理(債権譲渡・支払指図・反社排除・KYC)を組み合わせて提供しているのが実態です。
最後に
– 具体的な可否・条件は提供事業者により差があります。
特に対象物件の種類、差押えの有無、買主ローンの進捗、不足額の扱いによって結論が変わります。
– 事前に売買契約・残高証明・配分表・買主ローン本承認を揃え、司法書士・仲介・各債権者と一体でスケジュール設計することが、審査通過と安全な決済の鍵です。
– 法令・税務は個別事情で異なるため、必要に応じて弁護士・税理士・司法書士にご相談ください。
必要であれば、想定ケース(例 差押えあり区分マンションの売却)を前提に、配分表サンプルやタイムラインをご用意し、利用可否の目安をもう少し具体化してご説明します。
手数料・金利・清算方法はいくらで、つなぎ融資など他手段とどう違うのか?
ご質問の「売却代金による残債立替精算サービス(以下、残債立替精算)」について、手数料・金利・清算方法の実務、つなぎ融資など他の手段との違い、そして主な根拠(法令や実務上の位置づけ)を、できるだけ具体的に整理します。
サービスの概要
– 目的 不動産売却の最終決済日に、売主の住宅ローン残債を第三者(決済代行会社や金融機関の関連会社等)が一時立替し、同日の売買代金(買主の自己資金や住宅ローン実行金)で直ちに清算することで、抵当権抹消と所有権移転を安全に同時実行するための仕組みです。
– 背景 抵当権が付いた不動産は、その抵当権を抹消しないと所有権移転登記ができません。
売主側に十分な自己資金がなくても、買主の支払う売買代金を原資に同時決済で残債を完済・抹消し、引渡しを成立させるために用いられます。
– 担い手 決済代行会社(貸金業登録のある事業者)、信託・金融機関グループの関連会社、司法書士と連携した決済チーム等が関与します。
司法書士は登記の代理人として決済現場のハブを務め、決済資金や抹消書類の受け渡しの厳格な段取りを担います。
決済当日の基本フロー(典型例)
– 午前 買主の住宅ローンが実行され、決済専用口座(エスクローに近い分別管理口座)に売買代金が入金。
– 代行会社がその資金の一部を用いて、売主の既存住宅ローンの残債を金融機関へ一括返済(第三者弁済)。
受領後、金融機関が抵当権抹消書類(弁済証書・解除証書等)を発行・交付。
– 司法書士が所有権移転と抵当権抹消のオンライン登記申請(事前に必要書類一式を回収済み)。
– 午後 売主の手取り分(残代金から、立替清算費用・登記費用等を控除)を売主口座に送金。
完了。
– 立替の実質期間は「数時間~最長でも数営業日」が一般的です(書類受け取りや送金タイムラグが生じるため、日をまたぐケースはあります)。
料金体系(手数料・金利・その他費用)
料金は事業者により差がありますが、実務上は次の構成になります。
立替(決済)手数料 3万~15万円程度が目安。
決済規模や関係者数、工程の複雑さ(複数本の抵当権抹消・差押えの解除など)によって変動します。
消費税が課税されます。
送金・事務取扱費 数千円~1万円台程度(複数口座への振込、即時送金等を含む)。
立替利息(または立替料) 立替期間が当日内であれば無料または実費のみ、1~3営業日を跨ぐ場合に日割りでかかるのが一般的です。
年率は貸金業規制の上限内(後述)で設定され、実務では年10~15%程度の水準が多く見られます。
超短期なので絶対額は数千円~数万円に収まることが通常です。
登記関係費用
司法書士報酬(抵当権抹消・所有権移転の立会い・申請) 売主負担の抹消部分で2万~5万円程度が目安(地域や案件難易度により幅あり)。
消費税課税。
登録免許税 抵当権抹消は1物件1,000円(不動産1個につき)。
所有権移転の登録免許税は買主負担が通例(売買不動産価格の評価による課税)が多い点に注意。
保証・担保設定の費用 不足時の追加担保設定が必要な場合や、債権譲渡登記・根保証契約等を組み合わせる場合は別途費用が発生することがあります。
参考試算(あくまで目安の一例)
– 前提 売却3,000万円、残債2,500万円、立替日数2日、年利14.6%(100万円超の上限と整合)、決済手数料8.8万円(込)、送金等1.1万円。
– 立替利息=2,500万円×0.146×(2/365)≒2.0万円
– 合計概算(売主負担分のうち本サービス関係)=手数料8.8万円+送金等1.1万円+利息2.0万円≒11.9万円
– これに抵当権抹消の司法書士報酬・登録免許税等が上乗せ(数万円規模)。
金利・手数料の「根拠」(法令・実務上の枠組み)
– 利息制限法 利率の上限は、元本10万円未満20%、10~100万円18%、100万円超15%が原則。
残債立替は一般に100万円超の元本に該当するため、年15%が上限目安になります。
超過部分は原則無効。
– 出資法 上限年20%(刑事規制)。
ただし実務では利息制限法が優先的な基準となり、これを超える利息は無効が原則。
– 貸金業法 反復継続して立替(融資)を行う事業者は貸金業登録が必要。
広告表示、契約書面の交付、利率の上限遵守、取立行為規制、苦情対応体制などが義務付けられます。
残債立替を手掛ける決済代行会社が登録事業者であるかの確認が重要な実務ポイントです。
– 民法(第三者弁済・代位) 第三者が債務者に代わって弁済すること(第三者弁済)や、弁済した第三者が債権者の有していた担保に代位すること(法定代位)等の規律があります。
実務では、決済日に第三者がローン残債を返済しうる法的根拠、代位に基づく求償権の保全(ただし不動産取引では抹消同時実行のため代位担保を残さない設計が多い)に関係します。
– 宅地建物取引業法 37条書面(売買契約書)で代金支払時期・引渡し時期・所有権移転時期が明示され、同時履行の安全が求められます。
残債立替精算は、この同時履行を実現するための実務的手段として位置づけられます。
– 司法書士法・不動産登記法 司法書士による登記申請代理、オンライン申請手続きの枠組みが、決済当日の抹消・移転を支えています。
清算方法の類型(どうやってお金を動かすか)
– 決済専用口座(擬似エスクロー)型 買主資金を一旦決済代行会社または司法書士等が管理する決済専用口座で受け、そこから残債返済・諸費用・売主手取りへと振り分ける。
資金の流れが可視化され、誤送金リスクを抑制。
– 金融機関内同時決済型 売主の残債がある銀行と買主の住宅ローン実行銀行が同一または連携可能な場合、行内振替を活用してスピーディに同時清算。
立替の必要が限定的になり、利息や手数料が軽くなることがあります。
– ノンエスクロー直結型 買主資金が売主側ローン返済口座に直送される形(事前合意の上)で残債完済→抹消書類回収→残余を売主へという直結モデル。
段取りの厳格さが要求され、決済プロの関与が実質必須。
つなぎ融資等の他手段との違い
– 対象と期間
– 残債立替精算 決済当日~数日の超短期。
目的は「抵当権を抹消して同時決済を成立させること」。
– つなぎ融資 新築建築中や「買い先行・売り後行」などで、数週間~数カ月の資金ギャップを埋める中期の一時金。
土地代・中間金・残代金など複数回にわたり実行されることも。
– 審査・担保
– 残債立替精算 売買契約の成立・買主側資金実行の確実性が最大の審査ポイント。
担保は売買代金への先取的な支配(決済口座での分別管理、債権譲渡予約等)で足りる設計が多い。
個人の信用審査は簡易。
– つなぎ融資 通常は担保(対象不動産や別担保)が求められ、与信審査も本格的。
保証料や火災保険等の付随費用がかかることが多い。
– コスト(概観)
– 残債立替精算 手数料数万~十数万円+日割り利息(数千~数万円)が中心。
総額は十数万円規模に収まりやすい。
– つなぎ融資 年率2~4%台(商品により差)+事務手数料数万~十数万円+保証料(数十万円規模も)など、期間が長い分トータルでは数十万~百万円規模になる場合も珍しくない。
– 柔軟性
– 残債立替精算 目的特化で設計がシンプル。
決済日がずれると手戻りコストが発生。
– つなぎ融資 複数回実行や期間延長など柔軟な一方、金利負担が積み上がる。
残債立替精算が向いているケース・向かないケース
– 向いている
– 売却代金で残債を十分に完済でき、買主の資金実行が確実で、決済日が固まっている案件。
– 自己資金に余裕がなく、抵当権抹消のための一時金を用立てできない売主。
– 金融機関が遠隔で、行内同時決済が難しい場合に、専門家主導で安全に資金を回したい。
– 向かない
– 売却代金で残債を完済できない(オーバーローン)で、不足分の資金手当が未確定。
– 買い替えで「買い先行」の長期ギャップがある(残債立替ではカバーできない期間・金額)。
– 決済日の確定が難しく、度々変更の可能性が高い案件(立替の段取り・費用が膨らむ)。
実務上の留意点(リスク管理)
– 貸金業登録の有無・登録番号の確認(事業者HPや金融庁の公表データで確認が可能)。
– 資金の分別管理(決済専用口座の採用や信託スキームの有無)、万一の資金事故に備える保険・補償。
– 反社排除条項、本人確認・犯収法対応、情報管理体制。
– 司法書士の立会い・事前チェック(抹消書類の準備可否、差押・根抵当の有無、委任状の不備リスクの洗い出し)。
– 決済タイムテーブルの確定(送金締め時間、オンライン登記の受付時間、抹消書類の現物受領タイミング)。
他の代替手段との比較(短評)
– 同一金融機関内の同時決済 最も低コスト・低リスクになりやすい。
銀行間が異なると困難。
– 不足分のみ無担保ローン併用 オーバーローン解消に有効だが、金利は高め。
審査が別途必要。
– 買い替え(住み替え)ローン 旧居残債を新居ローンに抱き替えるスキーム。
買い先行に強いが、総借入額が大きくなり、金利・返済負担増や審査難度が高い。
– 手付金増額・中間金前倒し 契約で調整できるが、買主側の資金都合やリスク(手付流れなど)があり汎用性に乏しい。
まとめ(費用感と選び方の指針)
– 残債立替精算は「当日~数日」の超短期資金を専門家が安全に回すための実務的装置です。
典型的な費用構成は、決済手数料数万~十数万円+立替利息(日割り、実額は数千~数万円)+登記関係費用(抹消分は売主負担)。
法令上は利息制限法の範囲(100万円超は年15%上限)と貸金業法の枠組みで運用されます。
– つなぎ融資と比べると、期間が極めて短く、手数料・利息の総額は小さくなるのが通常です。
その代わり、適用できるのは「売買代金で残債を完済でき、同時決済が前提」の案件にほぼ限られます。
– 実際に使う際は、次を確認してください。
– 立替の対象範囲(残債全額か、不足分のみか)、立替上限額、日数の上限。
– 金利(年率)と課金起算点・日割り方法、無料となる条件(当日内清算など)。
– 決済手数料に含まれる業務範囲(送金回数、関係者調整、当日立会い)。
– 貸金業登録、資金分別管理、万一の事故時補償。
– 司法書士報酬、登録免許税、諸経費の負担区分(売主・買主)と消費税。
根拠の補足(典拠の所在)
– 利息・手数料の上限 利息制限法、出資法、貸金業法に基づく。
特に利息制限法の上限(100万円超は年15%)が実務の上限目安。
– 第三者弁済と代位 民法の規定(第三者弁済・法定代位)により、決済日に代行会社が残債を返済できる法的根拠が整理されています。
– 不動産取引の同時履行と書面義務 宅地建物取引業法の契約書面(37条書面)と、司法書士によるオンライン登記運用が、当日決済・当日抹消を可能にしています。
– 実務慣行 不動産業界団体(宅建業団体)の実務マニュアル、司法書士会の決済実務資料、国土交通省の検討会報告(エスクロー的決済の安全性向上に関する議論)等で、同時決済・分別管理・資金流の標準化が提言・普及しています。
最後に
具体的な料率・手数料は提供事業者で差が大きく、案件難易度(抵当権の本数、税金滞納の有無、抹消書類の取得方法、決済関係者の数、遠隔地対応)で変動します。
見積りを複数社から取り、貸金業登録や資金管理の体制を確認した上で、つなぎ融資や買い替えローンと総コスト・適用範囲を比較検討するのが実務的で安全です。
利用するメリットとデメリット、想定されるリスクや注意点は何か?
以下は「売却代金による残債立替精算サービス」(売却時に第三者が一時的に残債を立替払いし、売却代金から清算する仕組み)についての詳細です。
中古不動産や自動車の売買でよく用いられる実務を念頭にまとめています。
サービスの概要
– 目的 売主に残債(住宅ローン・自動車ローンなど)が残っていても、売却代金を原資として第三者が一時的に立替弁済し、担保(抵当権・所有権留保等)を解除してスムーズに引渡・所有権移転を実現する。
– 対象場面 不動産(抵当権付きの中古住宅・投資用物件等)、自動車(所有権留保付のローン残あり車両)、場合により動産・機器類の売却にも応用。
– 基本フロー 決済日までに残債額と繰上返済手数料等を確定→決済当日または直前に立替事業者が債権者へ弁済→担保解除書類が発行され司法書士/行政手続で抹消・移転→売却代金の入金から立替金と手数料が清算され、差額が売主へ。
メリット
売主側
– 残債があっても売却が可能に 手元資金が不足しても、売却代金を原資に「同時履行」で担保解除・引渡しができる。
– 資金繰り・引越しの確実性 決済日を中心に資金の出入りが一本化され、二重の短期融資等を避けられる。
– 価格や取引条件の柔軟性 早期に「無担保の売却状態」を作れるため、買主側の不安が減り価格交渉が安定しやすい。
– 手続きの簡素化 立替事業者が金融機関とのやり取りや必要書類の段取りを代行することが多く、事務負担が減る。
買主・仲介側
– 引渡しリスクの低減 抵当権抹消・所有権移転が決済日に確実に動く(司法書士関与のもと連動)ため、引渡し不能や担保残存のリスクが抑えられる。
– 決済スケジュールの安定 資金移動や書類の取り回しが標準化され、住宅ローン実行日・登記申請の連携がしやすい。
債権者(銀行・信販等)
– 回収確実化 決済日に全額回収され、未収や延滞・差押え競合のリスク低下。
– 事務効率化 弁済額確定から抹消書類の授受までが定型化。
デメリット(コスト・制約など)
– 費用負担 立替手数料・日割利息・送金手数料、司法書士報酬、抵当権抹消登記費用、繰上返済手数料などが発生。
売主の実取り分が減る。
– 利用要件・審査 本人確認、残債証明、反社・AMLチェック等が必要。
与信・属性や物件状態によっては利用できない。
– スケジュール制約 金融機関のカットオフ、抹消書類の発行方法、登記・運輸支局の受付時間等に縛られ、柔軟な変更がしにくい。
– 情報開示負担 残債や滞納の有無、差押え・仮登記の状況、管理費・税金の精算など、詳細な事実関係の開示が必要。
想定されるリスクと注意点
法的・契約面
– 立替の法的性質 立替は実質的に金銭消費貸借または支払委託に類するため、反復継続で業として行う場合は貸金業法の適用対象となりうる。
適法な登録・表示・分別管理・実質年率の明示が求められる。
– 弁済による代位・求償権 立替事業者は弁済者として法定代位(民法の弁済による代位の規律)または特約代位を主張し得る。
売却代金からの確実な回収(清算条項、相殺・充当の合意)を契約書に明記すべき。
– 担保・順位の問題 不動産では抵当権抹消が同日連件で申請されるのが実務。
差押えや後順位担保がある場合、手続が複雑化。
自動車は所有権留保解除の手続が不可欠。
– 不足金(ショート)の扱い 売却代金<残債の「任意売却」では、債権者の同意の上で担保解除を受ける必要がある。
不足分の資金手当(売主の追加入金・別途借入)や債務免除の条件を事前合意。
資金決済・オペレーション
– 資金の預かりと規制 立替業者や仲介が売却代金を預かり分配するスキームは、銀行以外が資金移動を行うと資金決済法の規制(資金移動業)に抵触し得る。
信託口座の活用、司法書士預り、銀行のエスクロー等、適法な枠組みで分別管理することが重要。
– タイミングリスク 銀行振込のカットオフやシステム障害で、決済日に弁済・抹消・移転が同時に動かない可能性。
買主ローン実行の遅延と連鎖しないよう、予備日や即時送金手段の確保が必要。
– 事務リスク 残債計算の誤り(利息計算・繰上手数料)、送金先口座の誤り、書類不備(解除証書・弁済受領証・委任状等)、登記申請の不備による差戻し。
カウンターパーティ・信用リスク
– 立替事業者の倒産等 立替後に売却代金清算前に事業者が破綻した場合の資金滞留リスク。
信託保全や第三者保証、保険付保、分別管理状況を確認。
– 詐欺・不正 架空の残債、二重譲渡、なりすまし請求など。
債権者から直接の残債証明・口座確認、反社チェック、KYC/本人確認を徹底。
費用・税務
– 想定外費用の発生 固定資産税・都市計画税の清算、管理費・修繕積立金滞納、測量・越境是正費用、車検・自動車税の月割等。
見落としは売主の実取りを大きく圧迫。
– 税務の留意 不動産売却益の譲渡所得課税、立替手数料は消費税課税対象(金融取引の利息部分は非課税だが手数料は課税が一般的)。
会計処理は立替金=負債、手数料=費用として整理。
消費者保護・情報面
– 実質年率の把握 手数料+日割利息を年率換算し、妥当性を比較検討。
高コストの短期資金に陥らないよう注意。
– 条項の厳格性 期限の利益喪失、違約金、清算の優先順位、債権譲渡・情報提供同意など、売主に過度に不利な条項がないかリーガルチェック。
不動産特有の留意点
– 同時履行の担保 決済日に司法書士が立会い、抵当権抹消と所有権移転を連件申請。
事前通知制度や本人確認情報で即日申請できる体制を整える。
– 抹消書類の確保 金融機関の解除証書・委任状・登記原因証明情報等の原本を誰がいつ受け取るか、弁済確認のトリガー(着金ベース)を詰めておく。
– 競合権利の確認 差押え、仮差押え、税の滞納、地役権・用益権、区分所有の管理費滞納等の有無を事前調査。
必要な同意・清算を組み込む。
– ローン実行との整合 買主の住宅ローン実行時間と売主側の弁済・抹消・清算の順序を決め、複数銀行が絡む場合は当日の連絡網を共有。
自動車特有の留意点
– 所有権留保の解除 信販会社・ディーラー名義の所有権を外すため、残債全額の弁済と解除書類が必須。
運輸支局での名義変更に必要な書類(譲渡証明書、委任状、印鑑証明等)を事前に準備。
– 税・保険の精算 自動車税の月割還付の扱い、自賠責残期間・リサイクル預託金の引継ぎ、ローン一括返済手数料の有無を確認。
– 事故歴・修復歴・メーター改ざん等の告知義務違反があると、代金清算に支障が出るため開示を厳格に。
典型的な契約・書類
– 立替合意書(清算条項、費用・利率、期限の利益、個人情報・信用情報、反社条項)
– 売買契約の特約(担保解除前提、立替者関与、決済の手順、エスクロー/預り金の方法)
– 金融機関の残債証明・弁済金受領書、抵当権抹消・所有権解除書類
– 分別管理・信託スキームの説明書、司法書士・行政書士の委任状
根拠・実務的裏付け(代表例)
– 民法の弁済による代位・求償の規定により、第三者が債務者に代わって弁済すれば、原債権者に代位して回収する法律構造を取り得る(実務では特約代位・清算条項で明確化)。
– 不動産登記法および登記実務 抵当権抹消には債権者発行の解除証書等が必要で、司法書士が連件で抹消・移転を申請するのが標準的運用。
– 貸金業法 反復継続して利息・手数料を取って立替を行う事業は、貸金業登録・広告規制・書面交付・利息制限等の適用を受け得る。
– 資金決済法 預り金での代金分配・送金は資金移動業に該当し得るため、銀行等の枠組み、信託口座、司法書士預り金制度など適法なスキームが必要。
– 犯罪収益移転防止法 本人確認・取引記録の保存、疑わしい取引の届出義務等。
– 自動車の所有権留保解除は、信販会社等の実務通達・運輸支局の登録実務に従い、残債完済および所定書類の提出が前提。
導入・利用時の実務チェックリスト
– 金銭面 残債証明(繰上返済手数料・日割利息を含む最新額)、各種費用の見積、ショート発生時の資金手当。
– 相手方 立替事業者の登録(貸金業/資金移動業/信託等の関与)、財務基盤、分別管理・信託保全、保険・保証の有無。
– 契約条項 清算順位、相殺・充当方法、遅延時の扱い、期限の利益喪失、違約金、情報提供・債権譲渡の同意、準拠法・紛争解決。
– 手続とスケジュール 決済日当日の送金カットオフ、抹消・移転申請の段取り、司法書士・金融機関連絡体制、代替日。
– リスク調査 差押え・仮登記、税・管理費滞納、越境・付帯設備、事故歴等の開示、反社・KYC。
まとめ
– 本サービスは、残債がある資産の売却を「同時履行」で安全に完了させるための強力な実務ツール。
売主・買主・債権者の三者にメリットがある一方、コスト、法規制(貸金・資金決済・AML)、オペレーション、相手方信用の各リスク管理が肝になる。
– 重要なのは、適法な資金管理(信託・エスクロー)、明確な清算条項、当日運用の詰め、ショート時の手当て。
契約書・費用・スケジュールを可視化し、司法書士・専門家の関与のもとで進めることが推奨される。
本回答は一般的な情報であり、個別案件では必ず専門家(弁護士・司法書士・税理士等)に相談してください。
申込みから売買契約・抵当権抹消・精算までの流れと必要書類は何か?
以下は、日本の不動産売却において、売却代金を原資として既存住宅ローン(抵当権付き)の残債を第三者が一時的に立替え、決済と同時に抵当権を抹消し、売却代金で精算する「残債立替精算サービス」を利用する場合の一般的な流れ・必要書類・法的根拠の整理です。
実務は提供事業者・金融機関・地域慣行で細部が異なりますが、全体像の把握と事前準備に役立つよう、標準的なスキームで詳述します。
サービスの位置づけと目的
– 位置づけ
– 売主に既存ローン残債がある状態で売却する際、買主は抵当権が抹消された権利関係の明確な不動産を取得する必要があるため、決済日に「残代金の受領」「ローン完済」「抵当権抹消」が同時に行われます。
– しかし、抵当権者(銀行)は完済が確認できなければ抹消書類を出せません。
一方で買主側資金(住宅ローン実行金)は所有権移転や抹消の確実性が条件です。
この同時性のジレンマを、サービス提供者が一時立替で橋渡しするのが残債立替精算サービスです。
– 主な効果
– 抹消書類の事前預託または同時取得が可能となり、決済がスムーズになる
– 売主が自己資金を別途準備しなくても、売却代金で残債が清算できる(不足があれば別途対応)
全体のタイムライン(申込みから精算まで)
– 1) 事前相談・申込み
– 物件情報・ローン残高・売却予定価格のヒアリング
– サービス利用可否の仮審査(物件価値、残債、差押・滞納の有無など)
– 2) 事前審査・条件提示
– 立替可能枠、手数料・利息、利用条件(期間・担保〈売買代金債権の譲渡担保等〉)の提示
– 司法書士・金融機関との事前調整開始(抹消書類の取得方法)
– 3) 媒介契約・販売活動
– 販売価格の設定、レインズ登録、内覧
– 買主が見つかれば条件交渉
– 4) 売買契約締結(重要)
– 売主・買主間で売買契約書を締結。
決済日・場所・送金方法・司法書士指定・抵当権抹消の同時履行・立替精算の特約を明記
– 手付金の授受
– 5) 決済準備
– 残債確定(期日指定の残高証明、繰上げ返済手数料・日割利息の確定)
– 抹消書類の事前預託手配または当日受領段取り
– 送金先一覧・精算表の確定(抵当権者・管理会社・仲介会社・司法書士・立替手数料等)
– 買主の住宅ローン本承認・金消契約・火災保険手配
– 6) 決済当日(同時決済)
– 立替実行→抵当権者へ弁済→抹消書類受領(司法書士)
– 買主資金実行→残代金受領→各所へ精算送金
– 鍵の引渡し
– 司法書士がオンライン申請で所有権移転・抵当権抹消登記申請
– 7) 登記完了・最終精算
– 登記完了後、完了証の交付
– 立替金の回収・手数料清算、残余金の最終送金
– 各種アフター(保険・保証料返戻、税務資料整理)
各段階での必要書類(主な例)
– 売主が用意
– 本人確認書類(運転免許証等)、マイナンバーは通常登記には不要
– 不動産の登記事項証明書、固定資産税納税通知書・評価証明書
– ローン残高証明(決済予定日基準の残高・日割利息・手数料明細)
– 物件パンフ・図面・分譲時書類、管理規約・使用細則(マンション)
– 管理費・修繕積立金滞納の有無証明、管理組合への届出書式
– 権利証(登記識別情報通知)または紛失時は司法書士の本人確認情報作成用書類
– 印鑑証明書(概ね3か月以内)、住民票または戸籍の附票(登記簿上住所と現住所のつながり確認用)
– 売買契約書(印紙貼付)、重要事項説明書(仲介作成)
– 立替サービス契約関連(債権譲渡承諾、委任状、表明保証、反社チェック同意)
– 税・公共料金の滞納がある場合は納付書・残高証明
– サービス提供者・司法書士が手配
– 抵当権抹消書類一式(弁済受領書または解除証、登記原因証明情報、抵当権者の資格証明書・委任状)
– 登記申請書(所有権移転・抵当権抹消)、委任状
– 送金指図書、精算表
– 本人確認記録(犯罪収益移転防止法に基づくKYC)
– 買主側で用意
– 本人確認書類、住民票
– 住宅ローン関係(事前審査・本審査・金銭消費貸借契約)
– 火災保険の付保書類
– 残代金送金関係書類
– 抵当権者(銀行)から受領
– 残債の確定書面(期日指定)
– 抹消書類の事前預託または当日交付の段取り確認書
決済・抹消のスキーム(代表的な2方式)
– 事前預託方式
– 決済日の前日までに、サービス提供者が残債を立替弁済
– 銀行が抹消書類一式を司法書士へ事前預託
– 決済日に買主資金を受領し、立替金と費用を回収、登記申請
– 長所 当日の不確実性が低い、オンライン申請がスムーズ
– 留意 立替期間分の利息・手数料がかかる、売買代金債権の譲渡担保などで保全
– 同時決済方式
– 決済当日午前にサービス提供者が残債を立替弁済し、銀行窓口で抹消書類受領
– 午後に買主ローン実行・残代金入金→精算→登記申請
– 長所 立替期間が短く費用抑制
– 留意 当日中の段取り・送金タイミング調整が重要
精算の内訳(例)
– 抵当権者への返済元金、日割利息、期限前弁済手数料
– 立替サービスの手数料・利息
– 司法書士報酬、登記の登録免許税(抵当権抹消は原則不動産1個につき1000円)
– 仲介手数料、印紙税(売買契約書)
– 管理費・修繕積立金の清算、固定資産税・都市計画税の按分
– その他滞納公租公課の清算、引越しや測量費用等
– 残余が売主へ送金(不足時は追加持込または任意売却スキームの検討)
よくある留意点
– 複数の抵当権・根抵当権、差押・仮差押・先順位賃借権がある場合、すべての利害関係人の同意と抹消手続きが必要
– 売買代金が残債に満たない場合、通常の立替サービスでは対応不可。
任意売却に切り替え、債権者の同意と配分協議が必要
– 登記識別情報を亡失している場合、司法書士の本人確認情報制度で代替できるが、時間と費用が増える
– 買主ローンの実行条件(抵当権抹消確約、権利関係のクリア、火災保険付保)を事前に満たす段取りが重要
– 実務では司法書士が資金移動の段取りをハブ的に調整。
送金は原則、各当事者の口座間で直接実行
法的根拠・実務基盤(要点)
– 民法の第三者弁済・代位の規律
– 債務者以外の者が弁済できること(第三者弁済)
– 弁済した第三者が法律上当然に債権者の地位を取得する場合(法定代位)や、合意により債権を取得する場合(約定代位)
– 残債立替精算では、立替者が抵当権者へ弁済し、売却代金債権に対する譲渡担保や代位の手当てで回収を図る、という民法の一般原則に整合
– 債権譲渡・担保譲渡の実務
– 売主が買主に対して有する売買代金債権の全部または一部を、立替者に譲渡または譲渡担保設定し、回収原資とするスキームは民法の債権譲渡の自由に基づく
– 必要に応じて対抗要件(通知または承諾)を整備
– 同時履行の抗弁に関する原則
– 売主の引渡義務と買主の代金支払義務は同時履行関係。
抵当権抹消は完全な権利移転のための要件として、決済時の同時性が強く求められる
– 不動産登記法・同施行規則
– 抵当権抹消登記に必要な書類 登記原因証明情報(弁済等の原因と日付)、抵当権者の資格証明書(法人の登記事項証明等)、委任状、解除証や弁済受領書等
– 所有権移転登記に必要な書類 売主の登記識別情報、印鑑証明書、住所変更のつながり資料、買主の住民票、固定資産評価証明書等
– 抵当権抹消の登録免許税は原則1物件1000円(登録免許税法)
– 犯罪収益移転防止法(KYC)
– 立替提供者や司法書士等の特定事業者は本人確認・取引記録保存義務を負う。
決済時の本人確認書類取得・記録はこの規制に基づく
– 宅地建物取引業法
– 仲介会社は重要事項説明・契約書面交付・手付金等の保全などの義務。
売買契約書の作成・特約の適正化はこの枠組みの中で行われる
– 貸金業法・利息制限法・出資法(該当する場合)
– 立替が実質的に金銭の貸付に当たるスキームの場合、提供者は貸金業登録・金利規制の遵守が必要
– もっとも、売買代金債権の譲渡担保を基礎とした決済時立替や、弁済と同時の代理受領に近い構成など、事業者のライセンス・スキーム設計によって適用関係は変動するため、各社の約款・表示の確認が不可欠
– 資金決済法・資金移動業(該当する場合)
– 事業者が他人資金を継続的・反復的に移転するサービスを業として行うときは規制対象となり得る。
多くは銀行送金を当事者間で直接行い、司法書士が段取りを担う設計で適法性を担保
– 印紙税法・登録免許税法・地方税法
– 売買契約書の印紙税、各登記に係る登録免許税、固定資産税・都市計画税の按分清算の根拠
実務上のコツ
– 決済日の「残債残高証明(期日指定)」を必ず取得。
日割利息・繰上げ返済手数料を含めた精度高い見積りで不足や過不足を回避
– 銀行ごとの抹消書類交付ポリシー(事前預託の可否、当日交付の条件)を早めに確認し、スキームを選択
– 送金先・金額・順序を明記した精算表と送金指図を、全関係者(売主・買主・金融機関・司法書士・仲介・サービス提供者)で事前合意
– マンションは管理組合関連の清算・届出を決済日前に整える
– 複数担保や差押がある場合は、配分表を作成し、権利者の同意書を事前に取り付ける
まとめ
– 残債立替精算サービスは、同時決済で生じる「完済しないと抹消できない」「抹消が見えないと買主ローンが実行されない」という課題を、第三者弁済と債権譲渡等の民法理論、登記実務、KYC・資金移動に関するコンプライアンスの上に組み立てて解消するスキームです。
– 成功の鍵は、早期の残債確定と抹消書類手配、売買契約への適切な特約明記、精緻な精算表と送金段取り、そして司法書士・金融機関・サービス提供者の連携です。
– 法的根拠は民法(第三者弁済・代位・債権譲渡)、不動産登記法、犯罪収益移転防止法、宅建業法、登録免許税法・印紙税法などに求められ、貸金業法・資金決済法の該当性はサービスの設計次第で変わります。
利用前に提供者のライセンス・約款・費用条件を必ず確認してください。
必要に応じて、現行の提供事業者の約款・ガイドラインや、担当司法書士・仲介会社・金融機関の指示に従って書類フォーマット・取得期限(例 印鑑証明書3か月以内)を調整してください。
上記は実務の一般形であり、個別案件では追加書類(委任状の原本、代理人関係書類、法定相続情報一覧図等)が必要になることがあります。
【要約】
不動産等の売却時、売却代金を原資に第三者が既存ローン残債を一時立替し、抵当権を抹消して安全に所有権を引き渡す決済支援。目的は買主に無担保の権利を渡し、売主の債務を確実に清算すること。流れは残債確認・配分設計→エスクロー口座で代金受領→必要に応じ立替→抹消/移転登記申請→代金配分。司法書士や信託等が運用し、型はパススルー、立替決済、任意売却・不足立替など。資金タイムラグと相互不安を解消。