年式と走行距離は中古車相場にどの程度影響するのか?
結論の要約
– 年式は相場を大きく左右し、特に登録後1~3年の下落が最も急。
以後は緩やかになり、10年超で「下げ止まり」や輸出需要による底堅さが出やすい。
– 走行距離は年式と並ぶ主要因。
日本市場では「年間1万km前後が標準」という認識に沿って、過走行は価格を押し下げ、低走行はプレミアムを生みやすい。
– 一般的な目安として、初期(1~5年)は年式の影響が大きく、5年超からは走行距離と個体状態の影響が相対的に強まる。
両者は独立ではなく相互作用する。
– 閾値(5万km、7万km、10万km、年式では3年・5年・7年・10年)に価格の段差が出やすい。
– 車種・用途によって弾力性は大きく異なり、SUV/商用バン/輸出人気車は高年式・多走行でも値崩れしにくい一方、軽・コンパクトは低走行のプレミアムが大きい。
年式が相場に与える影響の実態
– 0~1年 新車供給や値引き状況に左右される。
半導体不足期のように新車納期が長い局面では中古相場が強含み、新古車の下落が小さくなる。
通常時は登録直後で5~15%程度の初期減価が出やすい。
– 1~3年 最も下落が速い帯域。
一般的に年10~15%の下落レンジが多く、メーカー保証やディーラー保証の残存、車検残などが価格に織り込まれる。
– 3年目車検前後 車検費用(整備・自賠責・重量税等)を買い手が意識するため、車検直前は弱含み、通した直後はやや値を戻す「段差」が出やすい。
– 3~5年 下落速度が緩やかに。
年7~10%程度が目安。
モデルチェンジの有無、マイナーチェンジでの安全装備更新有無が効く。
– 5~7年 コンディション・整備履歴・事故歴の個体差が効きやすく、年式だけでは説明力が落ちる。
年5~8%程度。
– 7~10年 一部セグメントでは底打ちに近づき、メンテ済み個体は価格横ばいも。
10年目前・10年超は心理的節目で一段安になりやすいが、人気SUVや商用は底堅い。
– 10年超 国内需要は限定されるが、輸出人気車(ランクル、ハイエース等)はむしろ強含む局面もある。
維持費・税制面の負担認識が価格形成に影響。
走行距離が相場に与える影響の実態
– 標準とされる距離感 日本の実務では「年間約1万km」が標準的。
これを大きく下回れば低走行プレミアム、上回れば過走行ディスカウントが付く傾向。
– 一般的な弾力性の目安
– 登録後1~5年 1万km増えるごとに概ね2~4%程度の価格下落が目安。
低走行プレミアムは顕著。
– 5年超 1万kmあたりの下落は1.5~3%程度に収れん。
ただし閾値を跨ぐと段差が大きくなる。
– 距離の閾値
– 3万km/5万km/7万km/10万kmは注目されやすい。
特に10万kmは心理的・整備コスト面(タイミングベルト、足回り、各種消耗)の節目となり、数%~10%程度のディスカウントが一気に付くことがある。
– 軽・コンパクトは5万kmと7万kmの差が需要面で大きく、ミニバンやセダンは10万kmの節目が効きやすい。
– 距離の質
– 高速主体のロングドライブは傷みが少なく、同距離でも市街地短距離・寒冷地・塩害環境の方が痛みが出る。
整備記録簿の有無・内容が価格差に直結。
年式と距離の相互作用と実務的な見方
– 若年×多走行と高年×低走行の比較
– 3年落ち6万km vs 6年落ち3万kmのような比較では、保証残・最新の安全装備・モデルサイクルを重視する買い手には前者(若年多走行)が選ばれることも多い。
一方、街乗り主体・軽/コンパクトで低距離を重視する層には後者が刺さる。
– 早期は年式の重み>距離、後期は距離・状態の重み>年式
– ヘドニック回帰で観測される典型的な傾向として、登録後初期は年式係数が大きく、経年とともに距離係数が相対的に効いてくる。
– 車検・保証・税制の段差
– 車検直前/直後、メーカー保証・延長保証の有無、エコカー減税適用の履歴等が相場の段差を生む。
セグメント別の違い
– 軽/コンパクト 低走行プレミアムが大きい。
家計の実用車として「年式より距離重視」の買いが多い。
– ミニバン ファミリー需要で年式・安全装備が重視されつつ、内装の使用感が価格差に直結。
– SUV/クロカン/バン 走行距離の許容度が高く、過走行でも整備良好なら底堅い。
海外需要(右ハンドル圏)で10年超・10万km超でも強い銘柄あり。
– 輸入車 初期減価が大きい傾向。
保証・ディーラー整備履歴の有無で同年式・同距離でも価格差が大きい。
– ハイブリッド/EV 走行距離よりもバッテリー健全性(SOH)、急速充電頻度、使用環境が価格に効く。
ハイブリッドは走行10万km超でも健全例が多いが、HVバッテリー交換歴・診断記録が重要。
EVは年式要因(電池劣化の経年)も強く出やすい。
根拠(制度・データ・現場知見)
– 査定実務の基準
– 日本自動車査定協会(JAAI)の中古自動車査定基準では、登録からの経過月数に対する標準走行距離(実務的には乗用で月1,000km程度を基準)を置き、乖離分を加点・減点するロジックが採用される。
年式は初度登録年月を基準に段階的な減価が設定され、走行距離と合わせて素点が算出される。
これはディーラー・買取店・オートオークションで広く準拠されている運用。
– オートオークションの実勢
– USSやTAA等のオートオークション相場では、前述の閾値(5万/7万/10万km、3年/5年/7年/10年)で落札レンジに段差が出ることが恒常的に観察される。
評価点(外装・内装・機関)や修復歴の有無が同年式・同距離でも価格のばらつきを生む。
– 公開データ・調査報告
– 国内の中古車情報サイト各社(カーセンサー、グーネット等)の価格動向レポートでは、コロナ禍~半導体不足期に中古相場が高止まり、22~23年にかけ年式による下落が一時的に緩和された事実が示されている。
供給が正常化すると年式・距離の係数が平時の水準に回帰する傾向。
– 海外でもブラックブック、Manheim、iSeeCars等が「年式の経年減価」「走行距離1万マイルあたりの下落」を一貫して報告しており、車種差・年式差・閾値効果が確認されている。
市場構造は異なるが、距離・年式の相場弾力性が大きいという普遍的傾向は日本市場でも整合的。
– 統計モデリングの知見
– 実務で用いられるヘドニック回帰(価格=年式、距離、グレード、装備、色、評価点、修復歴、地域、季節性等の関数)では、多くの銘柄で「初期の年式係数が大」「距離の対数係数が逓減」という形状が得られやすい。
つまり若年時は年式1年の差が大きく、年を経るほど距離の増分効果がなだらかになる。
実用的な目安とシミュレーション
– 目安(一般的な国産乗用、平常時の相場)
– 登録1~3年 年式−10~15%/年、距離−2~4%/1万km
– 登録3~7年 年式−5~10%/年、距離−1.5~3%/1万km
– 登録7年超 年式−3~6%/年、距離−1~2%/1万km(ただし閾値通過時は追加で−数%)
– 例 3年落ち2万kmの相場を100とした場合
– 3年落ち4万kmなら距離2万km増で約−4~8ポイント
– 5年落ち4万kmなら年式2年分で約−10~20ポイント+距離影響で合計−15~25ポイント
これはあくまで目安で、人気装備(先進安全装備、サンルーフ、4WD)、ボディカラー、限定車、保証残、評価点次第で上下に大きくブレる。
日本市場特有のファクター
– 車検サイクル 3年目・以後2年ごとに車検。
直前は弱含み・車検取得直後は強含み。
– 輸出需要 円安や海外需要(アフリカ、中東、オセアニア等)で、特定車種は高年式・多走行でも強い。
相場は為替と海上運賃の影響を受ける。
– 季節性 3~4月の需要期、冬タイヤ需要期(北海道・東北)等で局所的に強含む。
オープンカーは春、4WD/SUVは冬に強いなど。
買う/売るときの実務アドバイス
– 距離の裏取り 整備記録簿、点検ステッカー、オークション出品票(評価点・実走行表記)を確認。
メータ交換や巻き戻しリスクを排除。
– 若年多走行を狙う戦略 通勤・高速主体で丁寧に使われた社用落ちなどはコスパが高いことがある。
内外装の使用感と下回り錆を要確認。
– 高年低走行を狙う戦略 ゴム・樹脂類の経年劣化(タイヤ、ブッシュ、ホース)やバッテリー、オイルシールのにじみを重点確認。
短距離・過度な寒冷地ガレージ保管は結露・錆の点検が鍵。
– HV/EVの追加チェック HVはハイブリッドバッテリー診断記録、EVはSOH(容量健全性)、急速充電履歴、熱管理の履歴が重要。
年式ファクターが相対的に強く働きやすい。
まとめ
– 年式と走行距離は中古車相場の二大柱で、初期は年式の影響が強く、年数を経るほど走行距離と個体状態が効いてくる。
距離は1万kmあたり数%の影響を持ち、閾値通過で段差が生じやすい。
年式は1~3年の減価が大きく、その後は緩やかに。
– ただし、相場は車種、装備、評価点、修復歴、保証、季節性、為替・輸出需要といった周辺要因で大きく揺れる。
具体の車両では、査定基準(JAAI等)と直近オークション相場、在庫サイトの掲載価格レンジを併せて参照するのが精度の高い判断につながる。
根拠の出典について
– 制度・基準 日本自動車査定協会(JAAI)の中古自動車査定基準(標準走行距離による加減点、年式による減価の考え方)。
– 市場データ 国内大手オートオークション(USS等)の相場動向、カーセンサーやグーネットの価格レポート。
海外ではBlack Book、Manheim、iSeeCarsなどのレポートが年式・走行距離の弾力性を継続的に示している。
– 実務・統計 ディーラー・買取店の査定運用、ヘドニック回帰分析の一般的知見。
これらはいずれも「年式×走行距離」が価格説明力の大半を占めるという点で一致している。
ご希望であれば、特定の車種・年式・距離の想定で、直近の国内相場レンジと下落プロファイルをより具体的に試算してお出しします。
走行距離ごとの価格帯の目安は「◯万km」でどう変わるのか?
要旨
– 中古車の価格は年式と走行距離の“セット”で評価され、年式ごとの平均走行距離(日本では年1万km前後)が基準になります。
– 同年式での比較では、走行距離は連続的に効く「1万kmあたり調整額」と、検索・保証・整備区切りに伴う「閾値(壁)」で非連続的に効く二つの要素で価格を動かします。
– 大きな壁は概ね「5万km」「7万km」「10万km」「15万km」。
特に10万kmは保証や整備の節目と重なり、価格の落ち込みが大きくなりやすい帯です。
基本の考え方(年式×走行距離)
– 年式の基準感
– 1〜3年落ち 新車価格の65〜80%
– 4〜6年落ち 同45〜65%
– 7〜10年落ち 同25〜45%
– 10年超 同10〜30%
車種(軽/コンパクト/ミニバン/SUV/輸入車/高級車)で上下します。
平均走行距離の目安
日本では年1万km前後(通勤距離や地域で±5,000km程度のばらつき)。
例 5年落ちなら「約5万km」が“平均的”。
調整の基本線
同年式で「平均走行距離からのズレ」を金額に変換して評価、
さらに「5万・7万・10万・15万kmの壁」を跨ぐときに追加のディスカウントが乗る、という二段構えが実務的です。
走行距離「◯万km」ごとの価格の変わり方(同年式内での目安)
以下は非事故・整備記録あり・内外装並の状態を前提とした、概算の調整幅です。
相場局面・車種・新車価格帯で前後します。
〜1万km(ほぼ新同)
プレミアム帯。
平均より1万km少ないごとに
軽/コンパクト +3〜5万円
ミドル/ミニバン/SUV +5〜8万円
輸入車/高級 +7〜12万円
新車待ちの長い人気車はプレミアムがさらに膨らみやすい。
1〜3万km
良好帯。
上記と同等の「1万kmあたり」プレミア/ディスカウントで滑らかに調整。
3〜5万km(最も流通が厚い)
平均域。
価格は年式寄りで決まりやすく、距離による差は1万kmあたりの調整額のみ。
5万km「の手前」と「を跨いだ直後」で5〜10万円の段差がつくことが多い。
5〜7万km(初の壁を越えた帯)
5万kmを越えると、同年式の5万km未満に対し累計で約5〜15万円安くなりがち。
1万kmあたりの調整額は少し強まり、
軽/コンパクト ±4〜6万円/万km
ミドル/ミニバン/SUV ±6〜9万円/万km
輸入車/高級 ±8〜13万円/万km
7〜10万km(次の壁に向かう割安帯)
7万kmを越えると、同年式の5万km台に比べ累計でさらに5〜10万円程度の割安。
ただし、車検や消耗品更新が迫る個体は、整備未実施ならその見込み費用分(後述)を差し引かれやすい。
10万km(最大の壁)
多くのメーカーの特別保証が「5年/10万km」で切れるため、ここを跨ぐと一段のディスカウントが入るのが相場の通例。
同年式で9万km台→10万km超に跨ぐだけで10〜30万円(または車両価格の10〜20%)下がることが珍しくありません。
以降の1万kmあたり調整はやや緩やかに続くが、ベース価格自体が低い。
10〜12万km
10万km超プレミア(割安)が乗った後の帯。
個体差(整備履歴・状態)の比重が大きくなります。
調整目安
軽/コンパクト ±3〜5万円/万km
ミドル/ミニバン/SUV ±5〜7万円/万km
輸入車/高級 ±6〜10万円/万km
12〜15万km
買い手の母数が絞られる分、相場は荒れやすい。
人気車・耐久で定評のあるモデルはまだ動く。
15万km手前と越えでさらに5〜10万円の差がつくことも。
15〜20万km
台数は少ないが、商用・ディーゼル・耐久車種は一定の需要。
価格は“個体の整備力”勝負。
以降は1万kmあたりの差よりも、直近の出費見込み(タイヤ/ブレーキ/ダンパー/大物修理)で価格が上下。
20万km超
一般乗用は換金価値がぐっと下がる一方、ランドクルーザー等の指名買い車種は依然として流通。
なぜ距離でここまで変わるのか(根拠)
– 保証と金融のルール
– 多くの国産車の一般保証は3年/6万km、特別保証は5年/10万kmが目安。
10万kmを跨ぐと「保証が切れた扱い」になり、購入後のリスクが買い手負担になるため価格が下がりやすい。
– 残価設定・リースは「年1万km」を前提に残価を設計。
超過精算は1kmあたり数円〜十数円(例 10円なら1万kmで10万円)と設定されることが多く、これが市場の距離感の“ものさし”として浸透。
– ディーラーの延長保証や認定中古の適用条件に「走行○万km以下」があり、閾値を跨ぐと販売側の付加価値(保証付帯)が付けにくくなる。
整備サイクルと費用の見込み
3〜5万km タイヤ、ブレーキパッド、ワイパー等の消耗更新が近づく(合計3〜10万円規模)。
5〜7万km ダンパーの抜け、プラグ、補機ベルト、バッテリー等(合計5〜15万円)。
10万km タイミングベルト車はベルト/ウォーターポンプ、各種オイルシール、ハブベアリング、O2センサー等、AT/CVTフルード交換・OHの検討、HV車は補機や冷却系(車種次第だが、まとまると10〜30万円規模)。
これらの「近々必要になる出費の期待値」が、距離の節目で価格に前倒しで織り込まれる。
需給と検索行動
ポータルサイトや業者AA(オートオークション)で「○万km以下」の絞り込みが一般的。
5万/7万/10万kmに検索需要の段差が生まれ、落札・小売価格にも段差が転写される。
低走行は絶対数が少ないため希少性プレミアが乗りやすい。
心理的ハードル
「10万kmの壁」は購入者の心理に強く作用。
メンテ済みの良個体でも、リテール価格では“二の足”を踏まれ、相対的に安くならざるを得ない。
車種・用途ごとの距離感の違い
– 軽/コンパクト 需要母数が大きく、低走行プレミアが出やすい。
1万kmの差が価格に反映されやすい。
– ミニバン/ファミリーSUV 年式が効きつつも距離差の金額インパクトは中〜大。
– 輸入車・高級車 距離による下げ幅が大きい。
保証延長の可否が価格を二分。
– ハイブリッド/EV 距離と年数が駆動用バッテリーの劣化懸念に直結。
メーカー保証の残存と診断結果が価格を大きく左右。
– 商用・ディーゼル 距離に対する耐性評価が高く、15万km超でも実需がある。
整備履歴の透明性が重要。
実勢イメージ(仮例)
同グレード・同年式での比較の一例(新車価格250万円級の国産CセグMT/AT、修復歴なし、平均相場期を想定)
– 3年落ち・3万km 約160〜190万円
– 3年落ち・5万km 約150〜180万円(3万→5万の差で−5〜10万円)
– 5年落ち・5万km 約120〜150万円(ベース)
– 5年落ち・7万km ベース比−10〜20万円
– 5年落ち・10万km ベース比−20〜40万円(または−15〜25%)
– 7年落ち・10万km 80〜120万円
– 7年落ち・12万km 同比−5〜10万円
車種・相場局面で大きく前後しますが、距離の段差と連続調整の両方が働く様子の目安です。
距離以外で調整が入る代表要素
– 修復歴の有無 同条件なら修復歴ありは−10〜30万円(車格依存)で、距離差より影響が大きいことも。
– 整備記録・交換履歴 10万km帯でタイベル/水ポン、ダンパー、タイヤ/ブレーキ等を直近で実施していれば、見込み出費が消える分、相場より5〜15万円ほど評価が改善。
– 装備・グレード・カラー 先進安全/ナビ/本革/サンルーフ/4WD等は距離差を相殺し得る。
– シーズナリティ・地域 四駆やスタッドレス付きは冬前に強含み、北海道/日本海側の塩害地域は下振れ要因。
売買の実践アドバイス(距離の切り方)
– 売る側
– 5万/7万/10万kmの手前で出すと有利。
直前での軽い整備(タイヤ・オイル・ワイパー等)は写真映え・不安低減に効く。
– 10万kmを跨ぐ前に、保証付帯や認定条件が活かせる販路(ディーラー/認定)を検討。
買う側
7〜9万km帯は割安と状態のバランスが取りやすい狙い目。
10万km超は「何がいつ整備されているか」で評価が逆転するため、記録簿と直近交換履歴重視で選ぶ。
低走行プレミアが大きすぎる場合、1〜2万km多い個体に乗り換えると数十万円節約できることがある。
まとめ
– 走行距離は「1万kmあたりの連続調整」と「5万/7万/10万/15万kmの閾値」で価格に効きます。
– ざっくりの相場感としては、同年式内で
– 0〜7万km帯 1万kmごとに軽/コンパクトで±3〜6万円、ミニバン/SUVで±5〜9万円、輸入/高級で±7〜12万円。
– 5万/7万/10万/15万kmを跨ぐと、各々さらに5〜10万円、特に10万kmは10〜30万円(または−10〜20%)の段差。
– 根拠は、メーカー保証の打ち切り条件、残価/リースの走行前提、AAや小売の検索・需要行動、そして整備サイクルに伴う実費見込みにあります。
注意
– ここでの金額はあくまで一般的な“目安”。
具体の相場は車種・地域・時期・状態で大きく動きます。
実車の評価では、最新の流通価格(ポータルの成約参考価格や複数査定、業者AAの直近落札レンジ)と、整備見積もりを併用してすり合わせるのが確実です。
年式別の値落ちカーブから見た買い時・売り時はいつか?
年式・走行距離別の相場を「値落ちカーブ」という観点で整理すると、基本は“初期急落→緩やか→再加速”の非線形(指数減衰型)です。
そこに年式イベント(保証・車検・モデルチェンジ)と、走行距離の心理的・整備的な閾値(3万km、5万km、10万kmなど)が重なって段差が生まれます。
以下、その構造と「買い時・売り時」を根拠とともに詳しく解説します。
年式別の値落ちカーブ(概観)
– 新車〜1年 最も落ちが大きい区間。
新車価格には「初期登録コスト・新車プレミアム・各種手数料や値引き差」の要素が含まれており、中古化した瞬間にそのプレミアムが剥落します。
体感的には1年で新車価格比70〜85%(車種により幅大)。
– 1〜3年 落ち幅はやや緩和するが、モデルチェンジや半期/年度末の放出在庫、フリート落ち(法人リース満了)等の供給増で波打つ。
3年は初回車検・メーカー保証(一般3年)終了が重なるため、3年手前と直後で目に見える段差が出やすい。
– 3〜5年 下落は引き続き緩やかだが、5年/10万kmで動力系保証(多くは5年または10万km)が切れやすく、そこを越える前後で再び下落が進む傾向。
– 5〜7年 維持費・故障リスクの織り込みが進む。
人気車や耐久性で評価の高い車は緩やか、欧州輸入車や維持費がかかる車はやや速い。
– 7〜10年 車齢とともに買い手層が限定化。
10年落ちを境に査定が一段低下しやすいが、ピュア実用車で状態良好な個体は一定の底値で推移。
– 10年超 趣味車や希少モデルを除き、実用価値中心の価格帯。
整備履歴・下回り腐食・事故歴などコンディションで価格差が極端に開く。
根拠 新車から初期の大幅下落は「新車プレミアムの剥落」「初期登録コスト(税・手数料)の中古化による消失」「初回オーナーが負担する目に見えにくい付帯費用の価格転嫁」が大きい。
3年・5年の段差は「メーカー保証」「初回車検→2回目車検」の節目で買い手側のリスク認識が変わるためです。
走行距離の閾値と価格の段差
– 年間平均走行距離は概ね8,000〜10,000kmが目安。
したがって「年式に対して距離が少ない=希少」「多い=消耗リスク」が直感的に評価されます。
– 段差が出やすい目安 3万km、5万km、7万km、10万km。
– 3万km 新古〜軽度使用の印象が保てる上限。
内外装のヤレ感が出にくく、相場で有利。
– 5万km 初期消耗品(タイヤ・ブレーキ・バッテリー等)の交換時期と重なりやすい。
ここを越えると次の整備費を織り込んだ価格になりがち。
– 7万km 車種によって足回り・補機類の交換歴が問われやすい。
整備記録の有無で価格差。
– 10万km 心理的な大台。
保証満了・タイミングベルト/チェーン周り、ハブ・ダンパー、ハイブリッドならバッテリー健全性など、買い手の不安が強く価格が一段落ちやすい。
根拠 オークション評価基準や店頭説明で、走行距離帯が明確な比較軸として使われるため。
整備費予想が消費者の意思決定に直結し、特定の距離帯での需要が薄くなることが価格の段差を生みます。
買い時(年式・距離の組み合わせで狙うなら)
– 最もコスパが良いゾーン 2〜4年落ち・2〜4万km
– 理由 初期急落が一巡、かつ一般保証の残りや延長保証加入が現実的。
消耗品も大きな整備に至らず、車両状態の個体差を選別しやすい。
– 3年車検直前〜直後の在庫
– 個人・法人とも乗り換えが増えるため在庫が厚く、同条件で比較しやすい。
車検付きの在庫は割高になりやすいが、車検直前での買取→即販の在庫は値付けがこなれやすい。
– モデルチェンジ直後に旧型の後期型を拾う
– 新型発表で旧型相場は一時的に軟化。
ただし旧型後期は装備が熟成し不具合対策も進むため、満足度が高い。
– シーズン的には4〜6月、8〜9月
– 1〜3月は新生活需要で相場が高め。
4〜6月は需要が一服し、8〜9月は決算やモデル入替の影響で在庫調整が入りやすい。
– パワートレーン別の狙い目
– ハイブリッド 燃料高騰期は高止まり。
落ち着いた局面で3〜5年落ちを狙う。
– EV 新車補助金の有無・電池保証(例 8年/16万kmなどメーカー差)・充電規格の潮流次第で残価のブレが大きい。
相場が不安定な分、3〜4年落ちの大幅減価を待って良個体を選ぶのが無難。
– 軽自動車 新車供給が絞られると中古相場が上がりやすい。
買い時は新車納期が改善し中古在庫が積み上がるタイミング。
売り時(高く売るためのタイミング)
– 距離の大台に乗る「直前」
– 5万km・10万kmの手前で売ると心理的ハードルを回避できる。
例えば4.8万kmと5.2万kmでは提示額が明確に違うことが多い。
– 保証・車検が「残っているうち」
– 一般保証3年、動力系5年(または10万km)。
保証残は価格に直結し、残期間が長いほど強い。
車検も同様で、残り期間が十分ある個体は売りやすい。
– モデルチェンジ「発表前」または「発表直後の初期ショック前」
– フルモデルチェンジが出ると旧型の相場は短期的に軟化。
発表の噂が濃厚になる前の売却が理想。
– 需要期に入る直前(1〜2月)
– 新生活需要の前倒し買取で競り合いが起きやすい。
逆に11〜12月は下取りが増え買取は強くなることもあるが、モデル・地域差が大きい。
– マクロ供給の改善前
– 半導体や物流が改善し新車納期が短縮すると、中古相場は緩む傾向。
納期短縮のニュースが増えたら早めに動く。
車種・セグメント別のカーブの違い
– リセールが強い ミニバン(アルファード系/ノア・ヴォクシー等)、人気SUV(ランクル/プラド/一部輸入SUV)、軽スーパーハイト(N-BOX等)、大衆ハイブリッド(プリウス/アクア等)
– 初期下落は比較的穏やかで、中期以降も底堅い。
売り時は距離の節目を強く意識。
– 輸入プレミアムセダン・大排気量 初期下落が大きく、その後は緩やかに底値圏で推移。
買いは3〜5年落ちが狙い目だが、整備履歴の透明性が最重要。
– EV 相場の変動要因が多い(補助金、電池劣化、充電インフラ、規格)。
モデルごとに残価差が極端。
電池保証残とSOH(State of Health)の開示が鍵。
– 趣味性の高い希少車 一般的なカーブに当てはまらず、供給次第で逆行高も。
長期保有前提なら相場より個体の真価で選ぶ。
根拠となる市場メカニズム
– 新車需給と中古供給の連動 新車納期が延びると中古が代替され価格が上昇、納期正常化で反転。
– 期待維持費の織り込み 保証切れ・車検・消耗品サイクルに応じて買い手が将来費用を割引き、価格が下がる。
– 心理的閾値 年式の切り(「3年落ち」「5年落ち」)や距離の切り(「10万km」)が需要を分断し、価格の段差を作る。
– 情報の非対称性の縮小 整備記録・事故歴・修復歴・評価点の透明性が高い個体は相場上限で売れやすい。
逆に不明点が多いと平均より下へ。
実務的アクション(買い時・売り時を逃さないために)
– 3社以上の相見積り 買取は同日複数社で競合させると数十万円の差が生まれることもある。
– 相場観測の習慣化 カーセンサーやグーネットで「年式×距離×グレード×色」で保存検索し、在庫日数と価格改定の頻度を見る。
– 距離調整 売却予定があるなら、節目を越える出掛けを代車・レンタカーに振り替えて大台回避。
– 整備・記録の整え 直近の法定点検・簡易整備(ワイパー・バッテリー・軽内装修理)で見栄えを上げ、整備記録簿・取説・スペアキーを揃える。
– 季節・決算の波に合わせる 売りは1〜2月/9月、買いは4〜6月/8〜9月が基本線。
ただし人気車は通年で強いので在庫厚いときに素早く。
具体的な狙い目の例
– 買い 3年落ち・3万km・後期型・ディーラー保証付(または有償延長可)。
定番色(白・黒・パール)で内外装A評価。
ワンオーナー・禁煙・修復歴なし。
– 売り 4年目突入前・4.8万km・車検残12カ月以上・直近点検済。
モデルチェンジの正式発表前。
買取は週末に同時査定をセット。
よくある誤解と注意点
– 「車検を付けて売ると得」 必ずしも得ではありません。
車検費用>査定上昇幅になることが多い。
残っている車検は価値だが、付けてから売るのは慎重に。
– 「距離が少なければ無条件で高い」 年式に対して異常に少ないと短距離・過放置のリスク(オイル劣化・ゴム類劣化)を疑われることも。
整備記録で安心材料を示せる個体が強い。
– 「コーティングや高額オプションはそのまま回収できる」 中古相場では回収率は限定的。
人気装備(安全装備・全方位カメラ・ナビ大型画面・パワスラ等)は効きやすいが、純正優位の傾向。
まとめ(買い時・売り時の結論)
– 買い時 初期急落後で保証や品質の安心感が残る2〜4年落ち・2〜4万km、在庫が厚くなる3年サイクル前後、需要が落ち着く4〜6月/8〜9月。
モデルチェンジ直後の旧型後期も妙味。
– 売り時 走行5万km・10万kmの節目に達する前、保証・車検が十分残っている状態、モデルチェンジ情報が広がる前、需要期直前(1〜2月)。
複数社同時査定で競争環境を作る。
最終的には「個体の状態」と「その時の需給」が価格を決めます。
年式カーブと走行距離の節目という普遍的なルールを土台に、相場観測とタイミング調整で1割前後の有利不利は現実的に動かせます。
計画的に走行距離とカレンダーを管理し、売買の前には市場データを1〜2週間でいいので毎日ウォッチして、上値・下値のレンジを把握してから動くのが、実務的には最も失敗が少ない方法です。
低走行の旧年式と高走行の新年式ではどちらが得なのか?
結論から言うと、「低走行の旧年式」と「高走行の新年式」はどちらが得かを一律には決められません。
相場や総所有コスト(購入額+維持費+リスク)を左右する要素が多面的だからです。
ただし、実務的な相場感と機械的な劣化特性を踏まえると、次の整理が役に立ちます。
1) 相場の基本原理(年式と走行距離の効き方)
– 年式の効き方
新車から3〜5年で大きく値落ちし、その後は緩やかに下がるのが一般的。
年式が新しいほど安全装備・燃費・静粛性・快適装備が進歩しており、買い手の裾野が広いので相場も底堅くなりやすい。
融資や保証の付きやすさも価格を下支えします。
– 走行距離の効き方
同年式・同条件なら走行距離が少ないほど高値。
ただし距離の「悪影響」は年式や車種で弾力性が違います。
実務では「年式差が大きいと年式要因」「年式が近いと走行距離要因」が強く効く傾向。
日本市場では10万km付近に心理的な節目があり、これを超えると下げ幅が大きくなりやすい一方、耐久性の高い国産大衆車は20万km超でも実用上問題ない個体が珍しくありません。
2) 旧年式・低走行のメリットと落とし穴
– メリット
・購入価格が下がりやすい(同等装備の新年式より割安)。
・低走行は内外装のヤレが小さく、消耗部品の残寿命が期待できる。
・保険や税の基礎額が車両価格連動の場合、保険料が抑えられることも。
– デメリット(年式由来のリスク)
・時間劣化(ゴム・シール・樹脂・配線・ハーネス・内装接着剤の経年劣化)。
走行距離が少なくても年数で劣化する部位は多い。
・安全・環境・快適装備が世代的に見劣りする(衝突被害軽減ブレーキ、ACC、レーンキープ、側突基準、静粛・遮音、最新インフォテインメント等)。
・税制・車検コストの不利(日本では13年経過以降、 自動車税が加算。
車検も年式が古いと整備追加が発生しがち)。
・保証やローン条件が不利(販売店保証が短い、ローン金利が高い、取扱不可年式の金融機関も)。
・メーカーの部品供給期間を過ぎると修理待ち・高額化のリスク。
– 典型例
7〜10年落ちで走行2〜4万kmという「距離は良いが年式が古い」個体は、見た目の状態に対して相場が抑えられ買得に見えます。
ただしタイヤ・バッテリー・ベルト・冷却系・ブレーキ油脂類など「年数で替えるべき整備」を時期でまとめて行う必要があり、初期整備費が大きくなりがちです。
3) 新年式・高走行のメリットと落とし穴
– メリット
・最新世代の安全装備と設計(衝突安全、運転支援、燃費、NVH低減、ヘッドライト性能など)。
・カレンダー年数が浅く、経年劣化が少ない。
ゴム・樹脂・電装の信頼性が相対的に高い。
・メーカー保証が残っている/延長保証に入りやすい場合がある。
・法人・リース上がりの高走行はメンテ履歴が整っていることが多く、高速主体で機械負荷が低い個体も多い。
– デメリット(走行距離由来のリスク)
・足回りブッシュ、ダンパー、ハブベアリング、補機ベルト、ウォーターポンプ、点火系、オルタネーター、各種センサーなどの摩耗部位に交換時期が来やすい。
・内装のヤレ、飛び石、ガラス傷、シートへたりなど外観の経年感が出やすい。
・10万km超の心理的ディスカウントで下取り時に値が伸びにくい。
– 典型例
登録3〜5年で8〜12万kmの個体は、装備が新しく使い勝手がよい割に価格がこなれており、コスト対性能のバランスが良い場合が多い。
整備記録が揃い、高速メイン使用の痕跡があれば狙い目。
4) どちらが得かを分ける判断軸(根拠)
– 工学的根拠(劣化メカニズム)
・走行距離で進む劣化 摺動摩耗(エンジン内部、変速機、ベアリング、足回り)、ブレーキ、タイヤ、クラッチ等。
・経年で進む劣化 ゴム・樹脂の硬化と亀裂、はんだやコネクタの熱サイクル疲労、冷却液・ブレーキフルードの吸湿、シール劣化によるオイル滲み、塗装・内装材の紫外線劣化、錆(特に融雪剤地域)。
この二軸が交差するため、「低走行=健康」「新年式=安心」とは限らない。
実車の整備履歴と使用環境が支配的です。
– 市場実務上の根拠
・査定現場では、年式差が大きいと年式要因が優先されやすく、年式が近い範囲では走行距離の差が価格に強く効く。
・日本市場では10万km、15万kmなどの節目で入札者層が狭まるため、相場に段差が生じやすい。
一方、7年超〜10年超領域は下げ渋りや底打ちも起こりやすい(需要が価格敏感で安値なら動くため)。
・安全装備の世代差は下取り時にも評価に反映されやすい(特に自動ブレーキ有無)。
– 維持費の根拠
・年式が古いと車検前整備の塊費用が発生しやすい。
2年で10〜20万円規模の整備が入るケースも珍しくない(タイヤ・ダンパー・ブッシュ・各油脂・タイベル/ウォポンなど車種次第)。
・新しめ高走行は、走行ベースの消耗交換が計画的に必要。
年間走行多い人には費用予見性が高いメリットも。
– 税制・保証・融資
・13年超の自動車税加算、18年超のさらなる加算はトータルコストに影響。
・メーカー保証(多くは3年/6万km+特別保証5年/10万km等)が残っていると故障リスクを平準化できる。
・金融機関は年式古すぎると金利が上がる/対象外になることがある。
5) 具体的な比較の目安(経験則)
– 年式差が大きい(5〜7年以上差)なら、新年式・高走行に優位性が出やすい。
安全装備・設計進化・税制・融資・再販で回収しやすい。
– 走行距離差が大きい(7〜10万km以上差)で年式差が小さい(±2〜3年)なら、旧年式・低走行が有利になりやすい。
特に耐久性に定評のある大衆国産NAエンジン+AT/CVTで整備履歴が良好な場合。
– 都市短距離メイン・渋滞多い環境では、走行少なくても劣化が進みやすい(熱サイクル・Dレンジ放置・AT/CVT負荷、ブレーキ錆)。
一方、高速主体の長距離は距離が伸びても機械負荷が比較的低い。
– 事故歴・修復歴・錆・下回り状態は、年式・距離より優先してチェックすべき致命要因。
6) 車種別の例外
– ハイブリッド/EV
・HVバッテリーは「時間」と「温度」「サイクル」に影響。
高温地・放置多い旧年式低走行は、距離少なくても容量劣化が進む場合がある。
一方、長距離高速で適温管理されてきた新年式高走行は健全なことも。
・多くのHV/EVでバッテリー保証が8年/16万km前後。
保証残がある新年式高走行は安心材料。
– 欧州プレミアム
・サスペンション、電装、補機の費用が高く、年式・距離どちらの不利もコストに跳ねやすい。
新しめ高走行で記録簿完備の個体が現実解。
– 軽・大衆車
・台数が多く相場が明確。
整備履歴良好な10万km超の新しめ個体はコスパが良いことが多い。
7) 試算の考え方(簡易フレーム)
– 残寿命距離の概念
その型式の一般的な実用寿命(例 20万km)から現在距離を引き、見込みの追加維持費を上乗せして円/kmで比較する。
– 年次コスト
年数で発生する整備(タイヤ年数、バッテリー、油脂・ラバー類、冷却・燃料系シール、AC)の年平均費を見積もる(例 年3〜8万円+車検時ドンと10〜20万円)。
– 再販残価
購入2〜3年後の売却想定価格を差し引き、実質コストで比較する。
新年式は残価の底堅さで有利なことが多い。
8) 比較シナリオ(イメージ)
– A 9年落ち 3万km(旧年式・低走行)
購入時に年次整備の塊費用が想定される。
安全装備は旧世代。
税加算が視野。
状態が極めて良好で、屋内保管・記録簿・錆なしなら「初期整備+割安価格」で十分成立。
– B 4年落ち 11万km(新年式・高走行)
走行由来の消耗交換は計画的に必要。
だが先進安全・快適装備、保証残・延長保証適用、燃費の良さ、再販のしやすさでトータル有利に転びやすい。
記録簿完備・高速主体なら狙い目。
9) 見極めチェックリスト
– メンテ履歴 記録簿の充実度、交換履歴(油脂・フィルタ・冷却水・ベルト・プラグ・ATF・デフオイル等)。
– 使用環境 高速主体か、短距離・渋滞中心か、沿岸・豪雪地か(錆)。
– 外観/下回り 錆、オイル滲み、アンダーカバー欠落、ブッシュひび、ダンパー抜け。
– 電装 エラー履歴(可能ならOBDスキャン)、HVバッテリー診断、充電/発電系。
– タイヤ/ブレーキ 残量だけでなくタイヤ製造年週(DOTコード)、ローター摩耗・偏摩耗。
– 事故・修復 ラジサポ、ピラー、フロアの修復痕、塗装肌違い、溶接跡。
– 保証・リコール メーカー保証残、販売店保証範囲、未対策リコールの有無。
10) まとめ(意思決定の指針)
– 家族の安全性・運転支援・燃費を重視し、数年先の再販も視野に入れるなら、新年式・高走行が「得」になりやすい。
特に年式差が5年以上、整備記録が明確、高速主体のワンオーナーなら優位。
– 走行が少ない年式相応の個体を安く手に入れ、初期に予防整備をしっかり入れる戦略なら、旧年式・低走行でも十分「得」になりうる。
屋内保管・下回り無腐食・記録簿完備が前提。
– どちらを選ぶにしても、「整備履歴と使用環境>年式と距離」という原則を忘れないこと。
試乗と第三者の事前点検(認証工場やディーラーによる有料点検)は最小コストで最大のリスク低減策です。
最後に、相場は季節性・需要(新生活、ボーナス期、モデルチェンジ直後)・グレード/色/駆動方式(4WD需要期)・地域差(雪国の下回り状態)でも動きます。
目の前の2台を比較する際は、上のフレームで総所有コストを見積もり、保証条件と整備履歴、実写状態で最終判断するのが、結局はいちばん「得」への近道です。
相場より高い・安い車を見極めて賢く交渉するにはどうすればいい?
結論から言うと、「相場より高い/安い」の見極めは、年式と走行距離を軸に“同条件の比較対象(コンプ)を十分に集めて中央値で判断する”のが最も再現性の高い方法です。
そのうえで、支払総額で比較し、修復歴や保証・車検・装備などの条件差を金額換算して補正します。
交渉は「客観的な根拠(集めたコンプ)+即決条件」をセットで伝えるのが王道です。
以下に、相場の読み解き方、安い・高いの理由の見抜き方、段取り別の交渉術、そして根拠となる考え方を詳しく解説します。
相場を正しく測るための前提
– 比較は必ず「支払総額」で行う
掲載価格だけだと諸費用の上乗せで逆転します。
主要ポータル(カーセンサー、グーネット等)では、県内登録・店頭納車前提の支払総額表示がルール化されており、これを基準に比較するのが実務的です。
– 比較は「同一条件」にそろえる
年式(初度登録年)、走行距離、グレード、駆動方式、ミッション、修復歴有無、色、装備(予防安全装備、ナビ、サンルーフ、レザー、寒冷地仕様等)、保証、車検残、ワンオーナー・記録簿など。
これらがズレると相場は簡単に10〜50万円動きます。
– 同条件の掲載車を最低15〜30台集め、中央値で判断
外れ値(極端に安い・高い)は除外。
相場は平均値より中央値(真ん中の価格)のほうが実態に近いです。
– 地域差はあるが、半径200〜300kmくらいまで視野に
地方は在庫が少なく高めになりがち。
輸送費を入れても、広域で比較した方が歪みが減ります。
年式・走行距離別のざっくり相場感(目安)
– 年式の影響(新しいほど高い)
初期3年の下落が大きく、その後は緩やか。
新車価格帯やブランドで幅はあるが、目安として年式が1年違うと±5〜15%動くケースが多い。
人気車・残価の高い国産SUV/ミニバンは下落が緩やか、輸入車や高級セダンは速い。
– 走行距離の影響(少ないほど高い)
年間1万kmが標準。
標準から1万km離れるごとに、価格は概ね±2〜10万円動く。
車両価格帯が高いほど1万kmあたりの影響は大きくなる傾向(100万円台で±2〜3万円、300万円台で±5〜10万円が目安)。
– セグメント別の体感
軽・コンパクトは距離の影響がやや小さめ、ミニバン・SUVは残価が堅く、輸入車や高級車は年式・距離の影響が大きい。
ハイブリッド・EVは年式の意味合いが強く、バッテリー劣化や保証残存が価格を左右する。
簡易補正の考え方(実務で使いやすい目安)
– 基準車を決める
例 2018年式、走行5万km、無事故、保証あり、車検1年、人気色のAグレードを“基準”にする。
– 年式補正
1年古い→−5〜10%、1年新しい→+5〜10%(初期年は変化が大きいので上限寄りで見る)
– 走行距離補正
基準より1万km多い→−2〜8万円、1万km少ない→+2〜8万円(価格帯・人気で調整)
– 条件補正
修復歴あり −10〜20%以上(修復部位により幅広い)
ディーラー認定・長期保証 +5〜15万円相当
車検2年付き +8〜15万円相当(整備込み前提)
タイヤ要交換 −3〜8万円(サイズ次第)
人気色(白・黒等) +2〜10万円、希少色は車種により増減
装備の差(先進安全、サンルーフ、レザー、純正ナビ大型、寒冷地仕様など) 合計で±数万円〜数十万円
「相場より高い/安い」をどう見極めるか
– 高いパターンの正当性
ディーラー系認定、保証厚い、整備内容が手厚い、希少グレード・希少装備、極上コンディション、ワンオーナー・低走行、人気色、事故歴無しの証跡が強い、在庫回転に焦っていないなど。
これらがあれば“高い理由”として納得できる。
– 高過ぎるシグナル
同条件中央値より10%以上高い、在庫日数が長いのに価格が下がらない、装備や状態差で説明できない、諸費用が過大(高額コーティングや不必要なオプション抱き合わせ)など。
– 安いパターンの正当性
在庫回転狙い、決算・月末の放出、在庫日数が長い、相場下落トレンドでの早めの価格訂正、修復歴や車検切れ・整備最小限など条件の割り切り、地域の在庫過多。
– 安すぎるシグナル(要注意)
修復歴の説明が曖昧、第三者鑑定なし、整備・保証ほぼ無し、諸費用が異常に高い、臭い・内装ダメージ・スペアキー欠品など見えにくい減点、過去水没・冠水の疑い、掲載写真が粗い/情報が少ない。
価格で惹きつけ、諸費用や整備名目で回収する手口にも注意。
実践フロー(相場判定から交渉まで)
– ステップ1 コンプ収集
カーセンサー・グーネット等で、同型・同グレード・同条件に絞り込み。
支払総額で15〜30台以上。
在庫日数や値下げ履歴もメモ。
– ステップ2 外れ値を除外し中央値を出す
上下10〜15%は除く。
目視で条件差を補正(年式・距離・保証・車検・修復歴・装備)。
– ステップ3 目標価格帯を設定
中央値の−3〜5%を第一目標、−7〜10%を野心値。
売れ筋・希少車は−3%でも妥当、長期在庫は−10%も狙える。
– ステップ4 見積は「乗り出し総額」一本化
追加の整備・保証・タイヤ等の要望を出し、総額で比較。
付帯品は「不要は外す」方針を明確に。
– ステップ5 根拠提示+即決条件
「同条件のこの3台は支払総額で◯◯万円台。
御社の車は車検残と保証が強い分+◯万円の価値と見ています。
タイヤ交換と12カ月点検付き、総額◯◯万円なら本日即決したいです。
」
– ステップ6 代替え案で歩み寄り
値引きが難しければ、整備項目追加、バッテリー交換、ドラレコ・ETC・コーティングサービス、納車費用カット、金利優遇などへ振り替え。
– ステップ7 資金調達の戦略
事前に銀行・信金・JAのオートローン仮審査(金利2〜4%台)を取っておくと、ディーラーローン(6〜9%台が多い)との比較材料になり、総支払額で優位に交渉可能。
– ステップ8 クロージング
注文書は「支払総額」「整備内容」「交換部品」「保証範囲」「納期」を明記。
手付金の返金条件(不成立時)も確認。
試乗と第三者検査や下回り確認、診断機チェックができればなお良い。
時期と在庫の読み方(交渉の勝ちどころ)
– 決算期・月末・雨天や平日夕方は商談が通りやすい。
決算は3月、半期は9月、ボーナス期前後も狙い目。
– 在庫日数45〜60日超は値引き余地が拡大しやすい。
掲載開始日や価格改定履歴をメモし、「在庫どれくらいになりますか?」と探る。
– 市況トレンドも見る。
半導体不足期の高騰から正常化している車種は、強気相場が崩れやすい。
「年式・走行距離」以外で価格を大きく動かす要素
– 修復歴の定義と影響
日本の修復歴は骨格部位の損傷・修理を指すのが一般的基準。
軽微な板金は含まれない。
修復歴ありは再販リスクが高く、−10〜30%もあり得る。
部位・修理品質・走行安定性の確認が重要。
– 第三者評価と記録
AISやJAAAなどの評価点・鑑定書、ディーラー認定の点検記録、ワンオーナー・整備記録簿完備は価格の裏付け。
走行距離管理システム照会済みは安心材料。
– 車検と整備の中身
「車検2年付き」でも整備の範囲は店舗差が大きい。
消耗品(タイヤ・ブレーキ・バッテリー・ワイパー・オイル・フィルター・クーラント・エアコンフィルター・ブレーキフルード等)の交換有無で実質価値が変わる。
– EV/ハイブリッド特有の留意点
バッテリー健全性(SOH)、高電圧系保証残、急速充電履歴などが価格に直結。
年式重視になりやすい。
交渉の実用フレーズ例
– 価格根拠提示
「同条件で支払総額◯◯万前後が中央値でした。
御社の車はワンオーナー・記録簿・保証付きなので+◯万円の価値だと考え、総額◯◯万なら本日ご決断します。
」
– 代替案提示
「値引きが難しければ、バッテリーと前後タイヤ交換、12カ月点検、エアコンフィルター交換込みで総額据え置きは可能でしょうか。
」
– 諸費用の透明化
「登録代行や納車費用の内訳をお願いします。
不要な付帯は外して、支払総額で比較したいです。
」
相場より安く買うための追加テクニック
– 目立つキズ・におい・内装ダメージ・スペアキー欠品などを現車確認で“値引きの根拠”に変える。
– 下取りは切り離し、買取専門や相見積もりで上振れを狙う。
必要ならオークション代行という選択肢も。
– ウォッチリストで狙い車両の値下がりを待つ。
価格改定が入った直後は他客より先に打診。
– 支払総額の近い他在庫を複数提案して、販売側に「取り逃したくない」と思わせる。
根拠と考え方の裏付け
– 相場の実体は「卸(オークション相場)+整備・保証・販管費+利益」
業者オークション(USS、TAA、JU等)の落札相場がベース。
そこに商品化整備、保証、展示・金利・在庫コスト、販売店の利益が積まれて店頭価格になります。
したがって、在庫日数が伸びると在庫コストが増え、値引き余地が出やすいのは合理的です。
– 支払総額で比較する合理性
掲載価格は安く見せ、諸費用で回収することが可能。
総額比較がもっともフェア。
主要ポータルが総額表示を標準化しているのは、消費者の比較可能性を高めるためです。
– 年式・走行距離の影響が大きい理由
減価・耐用・再販需要を価格が織り込むため。
特に初期年の下落が大きく、年式が新しいほど装備・安全性・燃費面でも付加価値が高い。
走行距離はメカの残寿命や消耗品コストに直結するので、相場は距離に敏感です。
– 修復歴・保証・整備の価格影響
再販時の需要減・リスクプレミアム、そして故障時のコスト回避価値が価格に上乗せ・下乗せされるのは市場の合理的な反応です。
失敗回避のチェックリスト
– 見積は「支払総額、整備内容、交換部品、保証範囲、納期」を書面化
– 事故・水没・メーター改ざんの疑いがないか第三者検査や履歴で確認
– 試乗して直進性・異音・AT変速・HV/EVのメーター診断をチェック
– 任意保険の保険料差(安全装備の有無・グレード)も総コストに含める
– クーリングオフは店頭販売には原則適用なし。
返品制度があるか事前確認
最後に、実務で迷ったら次のシンプルな指針に立ち返ってください。
– 同条件のコンプを十分集め、中央値基準で支払総額比較
– 年式・距離・条件差を金額に置き換え、±5〜10%の幅で妥当性を評価
– 客観的根拠を出して、値引きか付帯のどちらで合意するかを提案
– 即決条件を示して、在庫日数や時期を味方に交渉する
この手順なら、相場より高い・安いを自分の頭で説明できるようになり、「なぜその価格が妥当なのか」を販売店と同じ目線で話せます。
結果として、価格・整備・保証・金利のいずれかで有利な条件を引き出しやすくなります。
【要約】
中古相場は年式と走行距離が柱。登録後1~3年の下落が最も急で、5年超は距離・個体状態の影響が強まる。年間1万kmが基準で低走行はプレミアム、過走行は割引。3/5/7/10万kmや3/5/7/10年に段差。SUV/商用は底堅く、軽・コンパクトは低走行が有利。10年超は輸出需要で下げ止まりも。輸入車は初期減価が大きい。年式と距離は相互作用し、車検や保証残の有無でも価格に段差。モデルチェンジや安全装備も影響。