総額表示とは何で、どの法律・ルールが根拠なのか?
以下は、日本の「総額表示(総額表示義務)」についての詳説です。
総額表示とは何か、どの法律・ルールが根拠か、適用範囲や具体的な表示方法、例外や関連法令との関係、歴史的経緯、実務上の留意点まで網羅して説明します。
総額表示とは何か
– 定義(実務上の意味)
総額表示とは、事業者が一般消費者に対して商品やサービスの価格を表示する際、消費税および地方消費税を含めた「消費者が最終的に支払う金額(いわゆる税込価格)」を表示することをいいます。
単に「税抜価格」や「本体価格+税」といった表示のみでは足りず、消費者が支払総額を一目で把握できるようにすることが趣旨です。
趣旨・目的
消費者保護と価格の分かりやすさの確保が中心です。
価格比較の利便性を高め、税額の上乗せでレジ精算時に初めて総額が分かるといった不利益や混乱を防止するための仕組みです。
法的根拠
– 中核となる根拠法
総額表示の義務付けは、消費税法(昭和63年法律第108号)に根拠があります。
条文上は「価格の表示」に関する規定として、一般消費者に対する価格表示をする場合には消費税等を含む「支払総額」で表示しなければならない旨が定められています。
国税庁(NTA)および財務省はこの規定を前提に、総額表示の具体例や考え方をQ&Aやガイドで示しています。
行政解釈・ガイダンス
国税庁「総額表示について(Q&A)」、財務省「総額表示の義務付けについて」等の公表資料があり、以下を明確にしています。
1) 総額表示は「消費税および地方消費税」を含む金額であること
2) 一般消費者に向けた全ての価格表示(店頭、値札、メニュー、チラシ、カタログ、ウェブサイト、アプリ、広告など)が対象であること
3) 税抜価格の併記は可能だが、総額が容易に認識できるように表示すること
経過措置法(既に失効)
2014年の税率引上げ時には、消費税転嫁対策特別措置法(平成25年法律第41号)が施行され、総額表示義務の運用を一時的に緩和し、「税抜価格+税」「税別」等の表示を一定条件で認める経過措置がありました。
しかしこの特別措置は2021年3月31日で失効し、2021年4月1日以降は原則どおり「総額表示(税込表示)」が必須に戻っています。
関連する他法令
1) 景品表示法(不当表示の禁止) 価格の表示が消費者を誤認させる場合は不当表示に該当し、措置命令等の対象になり得ます。
例えば税込価格が極端に小さく、税抜価格のみが強調されて消費者が誤認する場合などは問題となり得ます。
2) 特定商取引法(通信販売等) 広告やウェブ表示で「販売価格(役務の対価)」や「送料等の付帯費用」の明示が義務付けられており、消費税法上の総額表示の要請と併せて、消費者にとって分かりやすい税込総額の表示が求められます。
3) 消費者契約法 誤認を誘う表示は無効主張の対象になり得る等、一般的な公正確保の枠組みが作用します。
総額表示の具体的ルール
– 対象範囲(誰に向けた表示か)
「一般消費者」に向けた価格表示が対象です。
B2B(事業者間)を対象とする場合は総額表示義務の対象外ですが、一般消費者が閲覧・購入可能な環境では総額表示が必要です。
業者向けカタログや会員限定B2Bサイトなどでも、一般消費者がアクセスし得る状態なら対象となり得ます。
対象媒体(どこでの表示か)
店頭の値札・棚札・ポップ、メニュー表、新聞折込チラシ、カタログ、ポスター、屋外広告、テレビ・ネット広告、ECサイト・アプリの商品ページ・一覧ページ・バナー等、消費者に価格を示すあらゆる媒体が含まれます。
表示の仕方(許容例)
総額表示の例として、次のような表示が挙げられます。
1) 1,100円
2) 1,100円(税込)
3) 税込1,100円
4) 1,100円(うち消費税等100円)
5) 1,100円(税10%込)
税抜価格を併記する場合は、例えば「1,100円(税抜1,000円)」や「税込1,100円(本体1,000円)」のように、税込の総額が容易に認識できる形で示すことが求められます。
不適切な表示(原則不可)
1) 「1,000円+税」や「税抜1,000円」など、税込総額がどこにも表示されていないもの
2) 税込総額の文字が極端に小さい、薄い、離れた場所にある等で、消費者が容易に認識できないもの
3) 備考欄に「レジにて消費税を頂きます」とだけ記載し、総額を示さないもの
4) 税率が異なる商品を同じ価格帯でまとめ表示する際に、税込総額が誤認される表現(軽減税率対象品を税率10%で計算した総額で表示する等)
軽減税率への対応
軽減税率(現在8%)の対象品目(飲食料品の一部、定期購読の新聞等)は、標準税率(10%)の商品と総額が異なるため、商品ごとに適切な税込総額を表示する必要があります。
例えば本体価格が同じでも、標準税率品は「1,100円」、軽減税率品は「1,080円」といった具合に、実際の支払総額に合わせて表示します。
付帯費用(送料・手数料等)
送料や決済手数料などを別途徴収する場合、それらの金額を表示する際にも税込で分かるように示すことが望まれます(特定商取引法上も、対価以外に必要な費用の明示が必要)。
端数処理
表示される税込総額は、実際に消費者が支払う額と一致していなければなりません。
事業者が採用する端数処理(切捨て、四捨五入、切上げ)は会計処理上のルールに従いつつ、表示と会計が齟齬を生じないよう一貫させることが重要です。
セール・値引・セット販売
割引後価格やセット価格も同様に税込総額での表示が必要です。
比較表示(例 「通常1,320円→特価1,100円」)を行う場合、双方とも税込での比較が分かるようにします。
税抜と税込が混在して比較されると誤認を招き、景品表示法上の問題になり得ます。
適用対象の境界と例外的な場面
– B2Bのみを対象とするケース
取引相手を事業者に限定し、一般消費者が閲覧・購入できない媒体(パスワード保護された業者専用サイト、業務用の見積書等)での価格提示は、総額表示義務の対象外とされます。
ただし、一般消費者にも開放されている店舗やウェブサイトで同じ表示を用いると対象となります。
価格が変動する役務やオプション選択がある場合
最低価格の税込総額を「〜」表記で示し、オプションごとに加算額(これも税込)を明示するなど、最終的な支払額が把握できるような工夫が求められます。
運賃・料金、公共料金
原則は同じく税込総額表示です。
制度上の特例がある場合でも、消費者が実際に支払う額が把握できるよう、分かりやすい表示が推奨されます。
罰則・執行
– 直接の罰則の有無
総額表示義務そのものに関して、消費税法に直ちに科される刑事罰の規定は一般に知られていません。
一方で、監督当局(国税庁・財務省)が行政指導を行うほか、消費者が誤認するような表示態様であれば、消費者庁による景品表示法上の措置命令等の対象となり得ます。
実務上のリスク
税抜表示しかない状態でレジで税込を上乗せすると、クレームやトラブルに発展しやすく、また不当表示と評価されるおそれがあります。
ウェブ広告などでの強調の仕方(フォントサイズや色)にも注意が必要です。
歴史的経緯(概略)
– 2004年4月1日 総額表示義務の導入(消費税法の改正により、消費者向けの税込表示を原則化)
– 2013年10月1日〜2021年3月31日 消費税転嫁対策特別措置法により、表示の特例を認める経過措置(「税別」「本体価格+税」等の表示容認)が運用
– 2021年4月1日 同特別措置の失効により、税込の総額表示の原則に完全復帰
実務対応のチェックリスト
– 店頭・EC・広告・カタログなど、消費者が目にする全媒体で税込総額が明確か
– 税抜価格を併記する場合、税込総額の視認性が確保されているか(フォント、配置)
– 軽減税率対象品の税込総額が正確か
– 送料・手数料など付帯費用を徴収する場合、その金額も税込で明確か
– セール・比較表示で税込・税抜が混在していないか
– B2B専用媒体は適切にアクセス制限されているか
参考となる公的情報源(名称)
– 財務省「総額表示の義務付けについて」
– 国税庁「総額表示について(Q&A)」「消費税に関する情報」
– 消費者庁「景品表示法に関する表示の適正化ガイド」「インターネット通販における表示留意事項」
– 特定商取引法ガイド(消費者庁)「通信販売の表示事項」
まとめ
– 総額表示は「消費者が実際に支払う税込の総額を、消費者に向けた全ての価格表示で示す」ことを求めるルールで、その法的根拠は消費税法(価格の表示に関する規定)にあります。
特例を設けていた「消費税転嫁対策特別措置法」は2021年3月で失効し、現在は原則どおりの総額表示が必須です。
– 税抜価格の併記自体は可能ですが、税込総額が容易に認識できることが不可欠です。
景品表示法・特定商取引法等の関連ルールも併せて、消費者に誤認を与えない明確で一貫した表示を心掛けることが実務上重要です。
上記は法令・公的ガイダンスに基づく一般的な解説です。
最終判断が必要な場面では、最新の国税庁・財務省・消費者庁の公表資料や、顧問弁護士・税理士等の専門家の確認をお勧めします。
いつから義務化され、どの事業者・商品・媒体が対象になるのか?
以下は日本の「総額表示(消費者が支払う税込価格の表示)」についての詳細です。
いつから義務化されたか、誰・何が対象か、どの媒体に及ぶか、そして根拠法令・公的解釈の位置付けを、実務での注意点や具体例も交えてまとめます。
総額表示とは
– 定義 消費者向けに商品やサービスの価格を表示する際、消費税額等を含めた「支払総額(いわゆる税込価格)」を明瞭に表示すること。
– 目的 消費者が負担する最終的な支払額を一見して把握できるようにし、価格比較を容易にすること。
いつから義務化か(経緯・タイムライン)
– 原則義務化の開始 2004年(平成16年)4月1日から、消費税法に基づき総額表示が原則として義務化されました。
– 特例による緩和期間 2014年(平成26年)4月の税率引上げに伴い、「消費税転嫁対策特別措置法」により、一定の表示(例 「本体価格1,000円+税」「税別1,000円」等)を時限的に認める特例が設けられました。
– 特例の失効と完全義務化の再徹底 上記特例は2021年(令和3年)3月31日で失効。
2021年4月1日以降は、再度、総額表示が完全に義務化されています。
したがって現在は、税抜価格のみの表示や「+税」表示は原則不可です。
誰が対象か(対象となる事業者)
– 基本原則 事業者(法人・個人・規模不問)が、消費者(最終消費者)向けに価格を表示する場合は対象になります。
小規模事業者(免税事業者)であっても、消費者に価格を表示する限りは「支払総額」の表示が必要です(免税事業者は税を別建てで徴収しないため、結果として表示額=支払総額になります)。
– B2B取引 主として事業者間取引に用いる見積書・カタログ等で、対象読者が明確に事業者に限定される場合は、総額表示義務の対象外と解されます。
もっとも、事業者向け媒体であっても消費者の閲覧・購入を誘引する実態があれば対象になり得ます。
– 個人間売買 いわゆるフリマアプリ等での純粋な個人の私的販売は、事業者に当たらない限り対象外。
ただし、出品者が事業として販売している場合は対象。
何が対象か(対象となる商品・役務)
– 網羅的対象 物品の販売、飲食、理美容、宿泊、娯楽、運送、通信、デジタルコンテンツ、チケット、会費等、消費者向けのほぼ全ての課税取引が対象です。
複数税率(軽減税率8%・標準税率10%)のいずれであっても、適用税率を織り込んだ税込額を表示します。
– 非課税・不課税取引 医療・教育の一定の対価や住宅の家賃など非課税・不課税のものは、消費税が課されないため、表示金額がそのまま「総額」です(必要に応じて非課税等の注記で誤認防止)。
– 免税販売(インバウンド) 非居住者向けの免税販売は支払総額の考え方が異なるため、免税の旨を明確にしたうえで制度に沿った表示・案内が必要です。
どの媒体が対象か
– 店頭・施設内 値札、棚札、POP、メニュー、料金表、ポスター、デジタルサイネージ、券売機・自販機の表示、駐車場・ガソリンスタンドの価格掲示など。
– 印刷物・配布物 チラシ、カタログ、パンフレット、新聞・雑誌広告、DM等。
– 放送・屋外 テレビ・ラジオCM、交通広告、屋外看板等。
– デジタル 公式サイト、ECサイト、予約サイト、アプリ、メール広告、バナー・SNS広告・投稿等。
広告自体に価格を記載する場合は、その場で税込の総額を明瞭に表示する必要があります(リンク先にだけ税込を出すのは原則不可)。
– 書面のうち例外的扱い 契約成立後の請求書・領収書・レシート等は「価格の表示(購入誘引のための表示)」に当たらないため、総額表示義務の直接の対象外とされます。
一方、消費者に提示する見積書・注文書等、契約前の購入誘引的な性質を有する書面は実質的に価格表示とみなされうるため、税込総額の明瞭表示が望まれます。
表示方法の実務ポイント
– 許容される表示例
– 「1,100円」だけを大きく表示(内税で総額明示)
– 「1,100円(本体1,000円)」「税込1,100円(税抜1,000円)」のように、税込を主表示、税抜を併記
– 「1,100円(うち消費税等100円)」のように内訳を括弧で補足
– 単価表示も同様に「100g当たり税込198円」「1泊税込9,900円」
– 不適切(2021/4/1以降、原則不可)な例
– 「1,000円+税」「税別1,000円」「1,000円(税抜)」のみの表示
– 税込を小さく、税抜を大きく強調して誤認を招く表示
– 併記のルール感
– 税抜価格を併記すること自体は可能。
ただし、消費者が一見して「支払総額」を把握できるよう、税込価格を主たる表示として明瞭・判読容易に示す必要があります。
– 端数処理
– 1円未満の端数処理は、切上げ・四捨五入・切捨てのいずれも認められますが、実際に消費者が支払う金額(レジ金額)と齟齬が出ないよう整合させ、誤認を招かないことが前提です。
– 複数税率・セット販売
– 軽減税率対象品と対象外品をセットにする場合も、最終的な税込総額を明示。
必要に応じて軽減税率対象である旨を注記。
– 限られたスペースの広告
– 文字数・秒数に制約があっても、価格を示す以上は税込総額を明示する必要があります。
スペースの都合で税込を省き、リンク先だけ税込にする、といった運用は原則不可。
よくある境界事例と考え方
– ECの一覧画面と商品詳細 一覧・詳細いずれにも価格を表示するなら、どちらも税込総額を明確に。
どちらかにしか価格を出さない場合は、出す側で総額を明示。
– 事業者限定サイト 会員登録で事業者性を確認した上で閉じた環境でのみ閲覧できる価格はB2Bとして扱われやすいが、消費者が閲覧できる状態であれば総額表示が求められます。
– クーポン・割引表示 「レジにて10%OFF」等の割引表現は可。
ただし表示価格自体は税込総額を前提にし、最終支払額が分かるよう運用(例 「税込1,100円のところ、レジにて10%引き」)。
– 外貨建て・海外事業者 日本の消費者を主な対象として日本国内向けに価格表示を行う場合は、原則として日本法の規律が及ぶと解されます。
実務上は円建ての税込表示が望ましい。
根拠(法令・公的資料)
– 消費税法(昭和63年法律第108号)
– 消費者向け価格表示において「消費税額等を含む支払総額」を表示する旨の規定が置かれています。
総額表示の基本的義務は同法および施行令・通達で解釈が示されています。
– 消費税法施行令・施行規則
– 総額表示に関する技術的な取扱いや用語の定義、解釈の補足が定められています。
– 国税庁「総額表示義務に関するQ&A」「価格の表示に関する留意事項」
– 総額表示の対象範囲、許容表示例・不適切例、媒体ごとの取扱い、端数処理、B2Bとの区別、領収書・請求書の扱いなど、実務上の具体的解釈を示す公的解説です。
– 消費税転嫁対策特別措置法(平成25年法律第41号)
– 2014年の税率引上げに合わせ、総額表示義務の特例(税抜表示等の容認)を時限的に設けた法。
特例は2021年3月31日に失効し、同年4月1日以降は総額表示の完全実施に復帰。
– 同法はまた、「消費税の転嫁拒否」や「消費税は転嫁しません」等の不当な表示の禁止なども規定しており、価格表示の表現に関する行為規制の根拠にもなります。
– 関連法・ガイド
– 景品表示法(不当表示の禁止) 総額表示の態様が実際の支払総額と乖離・誤認を招く場合は、景表法上の問題を生じ得ます。
消費者庁や公正取引委員会のガイドも参照対象です。
実務チェックリスト(抜粋)
– すべての消費者向け媒体で、税込総額が一目で分かるか
– 税抜価格を併記する場合でも、税込価格が主表示になっているか
– 端数処理とレジ・請求の実額に齟齬がないか
– デジタル広告やバナーにも税込を明示しているか(LP任せにしていないか)
– B2B専用媒体が消費者から閲覧できる状態になっていないか
– 軽減税率対象品の取扱いと注記は適切か
– 契約前に消費者へ出す見積・注文書の表示が総額になっているか
– 「+税」「税別のみ」表示が残っていないか
まとめ
– 総額表示は、2004年4月に原則義務化され、2014~2021年3月までの特例期間を経て、2021年4月1日以降は再度完全義務化されています。
– 対象は「消費者に向けて価格を示すあらゆる事業者・あらゆる商品・サービス・媒体」。
B2Bや契約後の請求書等は原則対象外ですが、消費者誘引の価格表示に当たるものは原則として総額表示が必要です。
– 法的根拠は消費税法および関連法令・国税庁Q&Aにあり、実務上は「税込価格を主表示し、誤認を招かないこと」が中核的要請です。
注記 上記は公的資料に基づく一般的な解説であり、個別案件への適用は事実関係により異なります。
最終判断は国税庁の最新Q&A、所轄税務署・専門家の見解をご確認ください。
認められる表示方法(税込・税抜併記など)とNG例は何か?
以下は、日本の「総額表示」(消費税を含んだ価格表示)に関する実務的な整理です。
認められる表示方法、NG例、根拠、媒体別の注意点、例外やよくある論点までまとめています。
2025年10月時点の一般的な取扱いを前提としています。
総額表示とは(基本ルール・対象)
– 定義と趣旨
– 不特定多数の消費者に対して価格を示すときは、消費税(地方消費税を含む。
以下「消費税等」)を含めた支払総額を、容易に認識できるよう数値で表示する義務があります。
– 対象となる場面
– 店頭の値札・棚札、メニュー、チラシ、カタログ、新聞広告、雑誌広告、テレビ・ラジオ・屋外広告、ECサイトやアプリなどウェブ上の価格表示、ダイレクトメール等、消費者向けの価格表示が概ね対象です。
– 非対象(代表例)
– 個別の相手方に発する見積書・請求書・契約書(B2Bを含む)、事業者限定の会員サイト内(対消費者でなければ)、価格を記さない「オープン価格」の表記、そもそも非課税取引(例 住宅家賃)の価格表示など。
認められる表示方法(OK例)
以下は全て、税込の総額が「容易に認識できる」前提で適法な例です。
数字は例示(税率10%)です。
– 税込価格のみを表示
– 11,000円
– 11,000円(税込)
– 税込11,000円
– 税込と税抜の併記(総額が明確)
– 11,000円(税抜価格10,000円)
– 11,000円(本体10,000円、消費税等1,000円)
– 税抜10,000円(税込11,000円)
– 内税の明示パターン
– 価格は消費税込みです 11,000円
– すべて税込価格で表示しています(各商品の価格欄が11,000円など具体的総額表示)
– 軽減税率対象商品の例
– 108円(税抜100円)[軽減税率対象]
– 範囲・下限表示の例
– 11,000円〜(この表示額自体が税込であること)
– 11,000〜22,000円(税込)
– 送料・手数料の表示
– 商品価格 3,300円(税込)/送料 550円(税込)
– メニューやコース
– ランチセット 1,100円(税込)
– ディナーコース 5,500円(税込)+サービス料10%別途(サービス料を数値で示す場合はその額も税込で)
ポイント
– 税込の総額が明瞭で目に入りやすいことが肝心です。
税抜価格を併記すること自体は問題ありません。
– 「税込」である旨の語句は必須ではありません。
金額が示され、それが税込総額だと明確であれば足ります。
NGとなる表示(違反・リスクが高い例)
以下は、原則として総額表示義務を満たさない例です。
– 税抜のみ、または消費税額不明の表示
– 10,000円(税別)
– 10,000円+税
– 本体価格10,000円
– 価格はすべて税抜表示です(ページ片隅や脚注に一括記載するだけで、各商品の税込総額が具体的数字で示されていない)
– レジにて消費税を加算します(総額を個別に示さない)
– 税込総額が判別困難
– 税抜価格を大きく、税込を極小の文字・薄色で脚注的に表示し、容易に認識できない
– 税込金額が画像の背景に溶け込む、折りたたみやホバーしないと見えない等、実質的に見えない
– 税率のみ示して計算を消費者に委ねる
– 税率10%です/消費税は別途かかります(数値の総額未提示)
– 価格の一部のみを総額表示
– 商品は税抜表示、送料や手数料だけ税込表示など、合計の誤認を招く態様
媒体別の実務ポイント
– 店頭・メニュー
– 値札・棚札・メニューの各価格に税込総額を記載。
セット価格、複数買い価格も同様に税込で。
– サービス料を別途取る飲食店は、料理価格は税込で、サービス料は別掲・別計でも可。
サービス料の額を数値で示すなら税込で示す。
– チラシ・カタログ・雑誌広告
– 掲載するすべての価格を税込で。
面の片隅に「税別」とだけ記すのは不可。
範囲表示・割引表示も税込ベース。
– ECサイト・アプリ
– 商品一覧ページ・商品詳細ページ双方で税込総額が一目でわかるように。
税抜併記は可だが、税込が主表示か同等に認識できること。
– カートページでの小計・送料・手数料もそれぞれ税込表記。
クーポン・ポイント差引は「割引」として別途示せばよい(元の価格表示は税込)。
– テレビ・ラジオ・屋外広告
– 口頭・画面上の価格とも税込で。
短時間表示でも税込総額が読めるサイズ・コントラストで。
例外・適用除外の考え方
– B2Bや特定相手方向け
– 見積書や契約交渉の場など、特定の相手に提示する価格は総額表示義務の対象外。
ただし、インボイス制度等の請求書要件は別問題。
– 非課税取引
– 住宅家賃、預貯金の利子、学校の授業料等は非課税。
税込・税抜の概念自体が及ばないため、総額表示義務の対象外。
– オープン価格
– 価格そのものを表示しない「オープン価格」は問題なし。
ただし「メーカー希望小売価格」等に金額を示すときは税込総額で。
– 送料・サービス料・各種手数料
– 金額を表示する場合は税込で。
商品価格とは別掲でも可。
可変の送料(地域別など)は、条件ごとの税込額を示すか、見積段階で確定させる。
よくある論点
– 端数処理
– 税込価格の端数処理(四捨五入・切上げ・切捨て)は、実務上認められます。
商品ごとに設定した税込価格が、レジ計算の総合計と1円程度ずれること自体は直ちに違反ではありません。
ただし、消費者に不利益・誤認を与えないよう、運用は一貫させることが望まれます。
– 割引・ポイント・クーポン
– 表示価格は税込総額で行い、割引はその後段として「レジにて◯%引き」「クーポン適用で−◯◯円」等と示すのが原則。
割引後の支払額まで常に表示すべき義務はありませんが、誤認を与えないよう明確に。
– 軽減税率の混在
– 税率が異なる商品は、それぞれに応じた税込総額を個別に表示。
「飲食料品は8%」とだけ書き、金額を税抜で並べるのは不可。
– 会員価格・タイムセール
– 会員限定や時間限定であっても、不特定多数の消費者に向けた広告・店頭表示である限り税込総額で表示。
具体例の整理(OK/NG)
– OK
– 11,000円(税込)
– 11,000円(税抜10,000円)
– 税抜10,000円(税込11,000円)
– 108円(税抜100円)[軽減税率対象]
– 3,300円(税込)/送料 550円(税込)
– NG
– 10,000円(税別)
– 10,000円+税
– 本体価格10,000円
– 価格はすべて税抜表示です(各商品の税込総額が無い)
– 税込価格が脚注や極小文字で判読困難
根拠法令・公的資料
– 消費税法(昭和63年法律第108号)
– 不特定の消費者に対する価格表示は、消費税等を含んだ「支払総額」の表示を求める旨を定めています(いわゆる総額表示義務)。
税込の総額を容易に認識できるよう数値で示すことが趣旨です。
– 消費税法施行令
– 表示対象や表示方法に関する技術的事項を規定。
– 国税庁「総額表示について」(Q&A・解説資料)
– 2021年4月1日以降の取扱いとして、具体的なOK例・NG例、媒体別の考え方、「容易に認識できる」の解釈、税抜併記可否等を示しています。
– 消費税転嫁対策特別措置法(正式名称 消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法)
– 2014年の税率引上げ時に、税抜表示を認める特例が設けられていましたが、2021年3月31日で失効。
これにより総額表示義務が完全適用に復しました。
実務の要点
– 各商品やサービスごとに、消費者がその場で支払う税込の総額を、はっきり数値で示す。
– 税抜価格の併記は自由だが、税込総額より目立たせたり、読めない程度に小さくするのは避ける。
– ウェブやチラシで「税別」一括注記に頼らず、各価格欄に税込の金額を入れる。
– 送料・手数料も金額を示すなら税込で。
可変額は条件ごとの税込額を明記するか、決済前に確定表示する。
注意喚起
– 上記は一般的な解説です。
業種特有の規制(自動車の「支払総額」表示基準、旅行・宿泊の料金表示のガイドラインなど)を別途課されるケースもあります。
実務適用は国税庁の最新資料・業界ガイドライン・監督官庁の通達を確認してください。
– 参考キーワードで検索
– 国税庁 総額表示について
– 総額表示 2021年4月1日 Q&A
– 消費税法 価格の表示
この基本を押さえておけば、税込・税抜の併記も適切に運用できます。
迷う場合は「消費者が一目で最終支払額を分かるか」を判断基準にして整えてください。
ECサイトや広告・店頭での実務対応はどう進めればいいのか?
以下は、2021年4月1日以降の総額表示義務に対応するために、ECサイト・広告・店頭それぞれで何をどう進めるべきかを、実務目線で整理したものです。
最後に根拠もまとめます。
現場で迷いやすい例外やグレーゾーンもできるだけ具体的に触れています。
総額表示の基本整理(前提)
– 対象 消費者に対して価格を表示する場合、原則として消費税等を含んだ「支払総額(いわゆる税込)」で表示する義務があります。
– 例外期間の終了 税率引上げ時に認められていた「税抜表示可」の特例は2021年3月31日で終了。
以後は総額表示が原則に復帰。
– 併記は可能 税込価格が消費者にとって容易に判別できる形で示されていれば、税抜価格や内税額の併記は可能。
– B2Bは別 純粋な事業者向けサイト・見積など、消費者を対象としない表示は総額表示の義務対象外。
ただし一般消費者が閲覧・購入可能な場面では対象になります。
– 軽減税率 食品等8%、それ以外は10%。
SKUごとに税率管理が必要。
総額表示は各税率での税込価格を表示。
ECサイトでの実務対応(チェックリスト)
設計・データ
– 価格データの持ち方 マスターは税抜で持ち、フロントは税込表示で自動算出、でも可。
ただし丸め差異を避けたい場合は「SKUごとに税込価格を保持」し、カートでも同値が出るよう統一。
丸め規則(四捨五入・切上げ・切捨て)を全レイヤーで統一。
– 税率フラグ SKUに8%/10%の税率属性を必ず付与。
バンドル/セット商品の税率も定義。
表示箇所
– 必ず税込価格を出す箇所 商品一覧、商品詳細、ランキング/おすすめ枠、バンドル価格、カート内明細、注文確認、注文完了メール、マイページ注文履歴、領収書ダウンロード画面、ギフト選択画面の有料オプション、サブスクの月額表示、手数料(ギフト包装、代引、後払い、決済手数料等)、配送費の具体額表。
– 併記する場合の例 「1,100円(税込)/ 本体1,000円(税抜)」や「税込1,100円(税抜1,000円)」は可。
単独で「1,000円+税」「税抜1,000円」だけは不可。
– 価格が変動するUI クーポン適用後、会員割引後、数量変更後なども、最終的に支払う税込金額が常に明確に見えるように。
割引額だけ税抜で表示して、最終金額が不明になるのはNG。
– 配送料・手数料 金額を表示する場合はそれ自体も税込で。
「全国一律550円(税込)」など。
地域別/サイズ別表をリンクする場合、各セル金額も税込で。
– サブスク/定期 「月額1,100円(税込)」のように都度の支払総額を税込で。
初期費用・解約料なども金額を示すなら税込で。
– テイクアウト/イートイン 税率が異なる場合は両方とも具体の税込価格を併記(例 店内税込1,100円/持帰税込1,080円)。
「税率が異なります」だけの注意書きでは不十分。
広告・フィード・外部媒体
– 広告バナー/LP/メルマガ/プッシュ通知/SNS 数値で価格表示する場合は税込で。
比較広告の「通常1,320円→今だけ1,100円」も両方税込で。
– アフィリエイト/価格比較サイト/Google Merchant Center フィードのpriceは税込で送る。
媒体仕様も必ず確認(多くの国内媒体は税込が必須)。
– オフライン広告(チラシ/ポスター/OOH/TV/ラジオ) 数値表記は税込。
音声も同様。
カート・チェックアウト
– 注文最終画面 商品小計(税込)、配送料(税込)、手数料(税込)、割引、合計(税込)を明確に。
税額の内訳(10%対象、8%対象)を補助的に示すのは可。
– クーポン パーセント割引表示自体は可だが、適用後の支払総額(税込)を必ず表示。
– インボイス制度との整合 B2C領域でも明細に税率/税額内訳を表示する設計が望ましい(法的には価格表示義務とは別論点)。
技術運用
– 小数処理 UIと決済側の丸めを一貫させる。
SKU単価→税込→数量乗算の順序ルールを統一し、微差異を防止。
– キャッシュ/ABテスト 価格を含む要素のキャッシュ無効化ルールを明確化。
実装ミスで税抜表示が混在しないように監視。
– 構造化データ schema.org/Offer の price は税込を。
クローラ向けと表示向けが一致しないと媒体審査で落ちる。
店頭(オフライン)での実務対応
– 棚札・プライスカード 基本は税込価格をメイン表示。
必要なら「本体価格(税抜)」を小さく併記は可。
ただし「本体価格のみ」表示は不可。
– POP・メニュー表・価格表 数値を出す場合は税込で。
飲食店はイートイン/テイクアウトで税率が違う場合、両価格を具体的に併記。
– サービス料 「別途サービス料10%」の告知は可だが、メニュー価格自体は税込表示で。
固定額の席料等を明示するならその金額も税込で。
– 手数料表示 代引/取り付け/組立/配達設置など、金額を掲示する場合は税込で。
– 全品値引きセール 「全品10%OFF」等の率表示は可。
ただし個別の商品に具体価格を掲示する場合は値引き後の税込価格が分かるように。
– レシート 価格表示義務の直接対象ではないが、税込合計と税率別内訳を出せる設定が望ましい(顧客問い合わせ防止)。
広告・表現上の注意(NG例とOK例)
– NG例
– 「1,000円(税別)」のみの表示
– 「1,000円+税」や「税抜価格1,000円」だけ
– ページ下部に「当店の価格は税抜です」と一括注記して各所は税抜数値のみ
– 税込価格が極端に小さく、消費者が容易に判別できない
– OK例
– 「1,100円(税込)」のみ
– 「1,100円(税込)/本体1,000円(税抜)」の併記
– 「1,100円(うち消費税等100円)」の併記
– セール表示「通常1,320円(税込)→1,100円(税込)」
ケース別の実務ポイント
– 送料
– 商品価格は税込で表示。
「送料は全国一律550円(税込)」等、送料も金額を出すなら税込で。
– 地域別表を用意するなら各セルを税込で。
– 代引手数料・後払い手数料
– 金額を出すなら税込で。
カート内でも税込で明確に。
– クーポン・ポイント
– 割引率やポイント付与自体の表示は可。
ただし決済時に支払う最終税込額の明示が必要。
– オプション課金(ギフト包装・名入れ等)
– 各オプションの金額は税込表示。
合計にも即時反映。
– セット商品
– セットの販売価格(税込)を表示。
内訳単価は任意だが、個別販売もするなら各商品の税込表示が必要。
– オーダーメイド・見積り
– 金額を出さない「要見積り」は総額表示の対象外。
ただし「○○円〜」のように数値を出すなら税込で。
– オープン価格
– 数値を出さない「オープン価格」はそのままで可。
参考価格を掲示するなら税込で。
– B2B向けEC
– 会員制で個人消費者が利用しない態様であれば義務対象外。
ただし一般公開の価格表は税込を推奨。
プロジェクトの進め方(実装フロー)
– 現状棚卸し
– 価格が出る全タッチポイントを洗い出す(Web/アプリ/広告/店頭/カタログ/コールセンター台本/プレスリリース/FAQ)。
– ルール設計
– 丸め規則、税率判定、併記の有無・文言、フォントサイズ/色など「税込が容易に判別できる」基準をドキュメント化。
– データ整備
– SKUごとの税率フラグ・税込価格の算出検証。
セット/クーポン/送料テーブルも更新。
– 実装・審査
– フロント、メール、PDF、フィード、構造化データを一括改修。
媒体審査(GMC等)での差戻しを事前チェック。
– テスト
– 代表的シナリオ(単品/セット/軽減税率/クーポン/複数配送/サブスク)のE2Eテスト。
スクリーンショット保存。
– 教育・運用
– 広告運用・CS・店舗スタッフへガイド配布。
新規キャンペーン時のチェックリストに「税込表示確認」を追加。
– モニタリング
– 定期クロールで税抜表記を検出する簡易バッチを用意。
媒体ポリシー変更のウォッチ。
よくある疑問
– 税込の小数処理は決まっているか?
– 法で特定の丸めは強制されていませんが、実際に支払う額と表示額が一致することが重要。
社内で統一し、ブレない運用を。
– 税込表示のフォント大小や配置に決まりは?
– 「消費者が容易に判別できること」が基準。
極端に小さい・薄い・折り畳み内のみは避ける。
– 全面に「税抜表示」と掲示すれば代替できる?
– 不可。
個別の価格表示ごとに税込価格が分かる必要があります。
– ペナルティは?
– 罰則規定というより是正指導の対象。
消費者の誤認を招く表示は景品表示法等の観点でもリスク。
根拠(一次情報・公的ガイダンス)
– 法律の原則
– 消費税法に基づき、消費者に対する価格の表示は消費税等を含む総額での表示が原則とされています。
– 特例の失効
– 平成25年法律第41号「消費税転嫁対策特別措置法」による税抜表示の特例は2021年3月31日で終了。
以後は総額表示が原則。
– 国税庁の解説・Q&A
– 国税庁「価格の総額表示について」および同Q&Aに、許容される表記例(例 1,100円、1,100円(税込)、1,100円(うち消費税等100円))や、NG例(例 1,000円+税、税抜1,000円のみ)、配送料・手数料・広告媒体を含む具体運用が示されています。
– 軽減税率制度
– 国税庁「軽減税率制度の手引き」等で、8%対象品目やイートイン/テイクアウトの扱いが明確化。
注 正確な条文や最新のQ&Aは国税庁の公式サイトで必ず確認してください。
タイトル例は「価格の総額表示について(令和3年4月1日以降)」「総額表示Q&A」。
また、媒体別要件(Google Merchant Center等)は各社ポリシーに従ってください。
すぐ使える運用テンプレ(例文)
– 商品価格欄 「販売価格 1,100円(税込)/本体価格 1,000円(税抜)」
– セール表示 「通常価格1,320円(税込)→ セール価格1,100円(税込)」
– 送料案内 「送料 全国一律550円(税込)。
沖縄・離島は1,100円(税込)」
– 手数料 「代金引換手数料 330円(税込)」
– 税率差異(飲食) 「店内飲食 1,100円(税込)/お持ち帰り 1,080円(税込)」
まとめ(実務の肝)
– 原則「数字を出すなら税込」。
税抜は補足として併記はOK、ただし税込が主役。
– 価格が出る全導線(画面・紙・音声・データ)を横断で統一。
– 税率・丸め・表記ルールを社内標準化し、改修後も崩れない運用体制に。
– グレーなケース(サービス料、デポジット、B2B境界)は、表示の趣旨=消費者の誤認防止に立ち返って設計。
疑義は所轄税務署や顧問税理士に相談。
この方針で進めれば、EC・広告・店頭いずれも総額表示義務に確実に適合でき、媒体審査や店頭指導での指摘も回避しやすくなります。
実装段階では、国税庁の最新Q&Aと利用媒体のガイドラインを必ず一次情報で再確認してください。
違反時のリスクやよくある誤解・例外は何か?
以下は日本の「総額表示(消費税額等を含む価格表示の義務)」に関する実務的な整理です。
違反時のリスク、よくある誤解・例外、そして根拠資料を包括的にまとめました。
総額表示の基本趣旨と定義
– 趣旨 一般消費者にとって支払総額がひと目で分かるようにし、誤認やトラブルを防止するためのルールです。
– 定義(総額) 商品・役務の対価に係る「消費税(地方消費税を含む)相当額」を含めた支払総額。
送料等の付随費用は商品価格とは別概念ですが、併せて分かりやすく表示することが推奨されます。
– 状況 2014年の税率改定時から続いていた「税抜表示を認める経過措置(特例)」は2021年3月31日で終了。
2021年4月1日以降、原則として総額表示が必須になっています。
対象となる表示の範囲
– 対象 一般消費者を相手にした「価格の表示・広告」全般(店頭の棚札・POP・メニュー、チラシ、カタログ、新聞折込、テレビ・ラジオ広告、Webサイト・EC・SNS投稿など)。
– 原則 税込の最終的に支払う金額(例 11,000円)を、容易に判読できる態様で示す必要がある。
– 複数税率(軽減税率) 店内飲食(10%)とテイクアウト(8%)など税率が異なる場合、各態様の税込価格が分かるようにする(例 店内税込110円/お持ち帰り税込108円)。
NG表示の典型例
– 「10,000円+税」や「10,000円(税別)」のみの表示(最終的な税込額が明記されていない)。
– 税込額が極端に小さく、税抜価格を強調することで消費者に有利誤認を与えうる表示。
– 「税抜10,000円(税込価格はレジで計算)」のように購入段階まで税込額が把握できない表示。
– ECにおける商品ページで税込額が確認できず、カート投入後や最終確認画面まで分からない設計。
許容される表示例(実務上望ましい)
– 単独表示 「11,000円」「税込11,000円」「11,000円(税込)」。
– 併記 「11,000円(税込)/税抜10,000円」や「税抜10,000円(消費税等1,000円)税込11,000円」。
– 変動手数料等がある場合 本体の税込価格を明示し、別途発生しうる費用は「別途○○円〜」「諸費用別(見積による)」など具体的に注記。
違反時の主なリスク
– 行政上のリスク(景品表示法の観点)
– 総額が明確でない、または税抜を強調し税込が判読困難な表示は「有利誤認」に当たるおそれ。
– 消費者庁または都道府県が措置命令(表示の是正・再発防止体制の整備等)を行うことがある。
– 課徴金(売上高の一定率・原則3%)の対象になりうるケースもある(有利誤認表示に該当した場合)。
– プラットフォーム上のリスク
– ECモール(楽天・Amazon等)やフードデリバリー、予約サイトには各社ポリシーがあり、違反で出品停止・非表示・ペナルティの可能性。
– 民事・顧客対応リスク
– 表示と会計が異なることによるクレーム、返金・差額対応・口コミ悪化などのレピュテーションコスト。
– 広告が「申込みの誘引」と評価される場合、誤認を招く表示は契約トラブルに発展しやすい。
– 内部コスト
– 全面改修(棚札・POP・パッケージ・Web・システム)のやり直し、従業員教育、監査・法対応コスト。
よくある誤解と正しい理解
– 誤解1 「+税」や「税別」なら今もOK
– 正しくは、2021年4月以降はNG。
税抜表示を併記する場合も、税込総額を明確に表示する必要がある。
– 誤解2 店内の棚札・メニューは広告ではないから対象外
– 棚札・メニューも「価格の表示」に該当し、総額表示の対象。
– 誤解3 レシート・請求書・領収書も総額表示義務の対象
– 一般消費者誘引を目的とする「表示・広告」が対象。
取引後に交付されるレシート・領収書、事業者間の請求書等は原則対象外(ただし、見積書等でも広く不特定の消費者に向け誘引しているなら対象となりうる)。
– 誤解4 会員制サイトなら対象外
– 実質的に一般消費者が参加可能(無料登録や簡単登録)なら対象になりやすい。
純粋なB2B専用で、一般消費者を相手にしていない場合は対象外。
– 誤解5 SNSは宣伝ではない
– 販売の誘引を目的としたSNS投稿は広告と評価され、総額表示の対象。
– 誤解6 送料や各種手数料は含めなくてよいから何も書かなくてよい
– 商品・役務の対価は税込総額で表示する必要あり。
送料や支払手数料などは別立てで「いくらか」「どの条件で発生するか」を分かりやすく記載するのが望ましい。
– 誤解7 軽減税率のケースは「税抜価格+税率の注記」で足りる
– 税率ごとの「税込総額」を具体的な金額として示すことが必要(例 店内110円、持ち帰り108円)。
実務対応のポイント(チェックリスト)
– 目立ち方 税込総額が最も視認性の高い位置・大きさで示されているか(税抜価格を強調していないか)。
– 媒体横断 店頭、パッケージ、チラシ、EC商品ページ、SNS、アプリ、テレビCM、店内デジタルサイネージで一貫して税込総額を提示。
– 併記ルール 税抜価格を併記するなら「税込総額を先に・大きく」示し、消費税額や税抜価格は補助情報に回す。
– 軽減税率 イートインとテイクアウトの両方がある場合、両方の税込金額を明示。
– 変動費 送料・設置費・法定費用等が別途かかる業態(家電・自動車・住宅・旅行等)は、基本となる税込価格と別途費用の範囲・目安を明確化。
– システム ECカートや店頭POSのUIで、購入前に税込総額が必ず視認できる設計に。
– 監査と教育 景品表示法を含む広告審査のフロー整備、担当者教育・定期点検。
代表的な例外・グレーゾーン
– B2B専用の表示 卸売サイトや見積書など、一般消費者を相手にしない取引は対象外。
ただし、事実上一般消費者がアクセス・購入できるなら対象になりうる。
– 数量・仕様で価格が確定しない役務(完全見積もり型) 固定金額を表示しない「時価」「要見積り」は総額表示義務の直接の対象とは言い難い。
ただし参考価格を表示するなら、その価格は税込で示す。
– 不動産広告 土地は非課税、建物は課税という性質があるため、総額表示では課税部分の税込額が誤認なく分かるようにし、別途必要な諸費用は明確化。
– 自動車の「支払総額」 業界の公正競争規約により、法定費用等を含めた支払総額表示が求められる。
消費税の総額表示義務と相まって、税込かつ諸費用内訳を分かりやすく表示する必要がある。
– 旅行商品・宿泊 宿泊税・サービス料などの扱いに注意。
消費税は価格に内包し、宿泊税等の地方税が別途ならその旨を明確化。
燃油サーチャージ等は約款・募集型企画旅行のルールに従い、購入前に総支払額が把握できる表示を。
トラブル防止のための具体例(改善前→改善後)
– 改善前 「セール特価 10,000円+税!」
– 改善後 「セール特価 税込11,000円(税抜10,000円)」。
– 改善前 「店内飲食・持ち帰り 税率が違います」
– 改善後 「店内飲食 税込110円/お持ち帰り 税込108円(税抜各100円)」。
– 改善前 「本体価格10,000円(税込はレジで計算)」
– 改善後 「税込11,000円(税抜10,000円)」。
根拠・参照すべき公的資料等
– 法令
– 消費税法(昭和63年法律第108号)
– 価格表示に関する基本的枠組みは消費税法とその関係法令に基づくもの。
総額表示義務は「消費税額等を含む価格を表示・広告する場合のルール」として運用されています。
– 消費税転嫁対策特別措置法(平成25年法律第41号)
– 税率引上げ時の経過措置(税抜表示を容認する特例)が2021年3月31日で終了し、総額表示義務が原則どおり全面適用に復帰。
– 不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)
– 誤認を与える表示(有利誤認等)を禁止。
税込価格の視認性が乏しい・税抜強調で消費者を誤認させる態様は、同法の措置命令・課徴金の対象になりうる。
– 特定商取引に関する法律(特定商取引法)
– 通信販売の広告には、販売価格(役務の対価)、送料、支払時期・方法等の表示義務。
実務上、消費税を含む総額で分かる表示が求められる。
– 公式ガイダンス・Q&A
– 消費者庁「総額表示の義務付けに関するQ&A」(2021年4月以降の取扱い)
– 国税庁「消費税の価格表示について」解説・Q&A
– 公正取引委員会・消費者庁「景品表示法に基づく表示の適正化」関連資料
– 業界自主ルール(例)
– 自動車公正競争規約(自動車公正取引協議会) 支払総額表示の基準
– 旅行・宿泊分野の公正競争規約・ガイドライン 税・サービス料・諸費用の明確化
まとめ
– 総額表示は「消費者が最終的に支払う税込金額を明確に示す」ことが核心です。
2021年4月以降、「+税」「税別のみ」表示は原則不可で、税込総額の見やすい表示が不可欠です。
– 直接の刑事罰が想定される類型は限定的ですが、景品表示法の措置命令・課徴金、プラットフォームでの制裁、顧客対応・信用失墜などの実質的なリスクは大きいです。
– B2Bや「要見積り」「時価」のような例外・グレーゾーンはあるものの、参考価格等を出す場合は必ず税込で明示するのが安全です。
– 実務では、媒体横断の統一、視認性の担保、軽減税率・別費用の明確化、社内審査の徹底でリスクを最小化できます。
注記 上記は最新の一般的運用に基づく解説です。
具体的な案件・業態によって適用や最適解が異なる場合があります。
最終判断は、消費者庁・国税庁の最新Q&Aや所管官庁、業界団体のガイドライン、専門家(弁護士・公認会計士・税理士等)への確認を推奨します。
【要約】
総額表示は、消費税・地方消費税を含む支払総額を示す義務(根拠は消費税法)。一般消費者向けの全ての価格表示が対象で、店頭・広告・EC等で税込総額を容易に認識できる形で表示する。税抜併記は可。不適切例は「本体+税」等のみの表示。2014年の特措法による緩和は2021/3で失効。景表法・特商法等も関係。B2Bは原則対象外。ただし一般人が閲覧可能なら総額表示が必要。国税庁等Q&Aで運用を示す。