コラム

中古車査定の核心 年式と走行距離の優先順位・評価の節目・減点ルール

なぜ年式は査定額に直結するのか?

ご質問の「なぜ年式は査定額に直結するのか?」について、実務の考え方と市場の仕組み、技術・法制度面の背景、そしてそれを支える根拠をできるだけ具体的に整理してお伝えします。

結論から言うと、年式は「時間の経過がもたらす劣化・リスク・制度上の不利・市場流動性の低下」を複合的に内包しているため、査定額に強く反映されます。

走行距離は「どれだけ使われたか」の指標、年式は「どれだけ時間が経過したか」の指標であり、両者は相互補完的ですが、時間特有の要因が多いため年式は単独でも強い説明力を持ちます。

1) 経年劣化(時間がもたらす物理・化学的変化)
– ゴム・樹脂・シール類の硬化やひび割れ、配線被覆の劣化、ブッシュやマウントのヘタり、ウェザーストリップの密閉性低下は「時間」が主因です。

走行距離が少なくても屋外保管や温度変化・紫外線で進みます。

オイルシールの硬化→滲み・漏れ、冷却系ホースの劣化→破断リスクなどは年式が進むほど起きやすい。

– 腐食(サビ)も時間依存。

特に下回りやブレーキ配管・サブフレームなどは融雪剤地域や海沿いで進行しやすく、年式が古いほど点検・補修コストの不確実性が高まります。

– 油脂・液類(ATF、ブレーキフルード、パワステ、デフ・トランスファ、冷却水)は時間で酸化・劣化します。

走行距離が短くても経年劣化は起こるため、「低走行・高年式」より「低走行・旧年式」の方が評価が割り引かれやすい理由の一つです。

– HEV/EVの高電圧バッテリーは「サイクル劣化」に加えて「カレンダー劣化(時間劣化)」が確実に存在します。

つまり距離が少なくても年式が古いだけで容量低下リスクは上がり、交換時の高額費用が将来の負担として価格に織り込まれます。

2) 技術・装備の陳腐化(相対価値の低下)
– 安全・運転支援(エアバッグ数、衝突被害軽減ブレーキ、レーンキープ、後側方検知、歩行者検知など)は年々進化します。

旧年式は最新要件に達しないため、同クラス内で相対的に価値が下がります。

保険料率の差や中古車販売時の訴求力低下も価格要因になります。

– インフォテインメント(大画面化、CarPlay/Android Auto、OTA更新など)やコネクテッド機能も年式が新しいほど充実。

旧年式は地図データ更新終了や通信モジュールの世代落ちが起こり、再販価値が下がります。

– モデルチェンジ(フル/マイナー)で旧型が一段下がる「段差下落」も一般的です。

年式はモデル世代を識別する最も簡易な指標であり、相場表やオークション評価は世代で明確に価格帯が分かれます。

3) 保証・メンテ費用の節目(買い手の安心度に直結)
– 新車保証(一般保証3年/6万km、特別保証5年/10万kmが一般的)、HV/EVバッテリーの長期保証(例 8年/16万km付近)には年数の閾値があります。

年式が進むと保証が切れ、購入者の不確実な修理費リスクが増すため、業者は査定でディスカウントします。

– 認定中古車(CPO)は一定年式・走行の枠内で保証を付けやすく、年式が若い個体は出口戦略(再販)を描きやすいため高く買えます。

逆に年式が古いと保証付帯コストが上がるか、保証対象外となり、査定が下がります。

4) 規制・税制・制度による需要構造の差
– 車検サイクル(初回3年、以降2年)と整備費予想は中古車需要に強い節目を作ります。

年式が古い=直近で車検・重量税・整備費が発生しやすいほど、買い手は値引き要求を強めます。

– 自動車重量税は経過年数13年超・18年超で重課、さらに自動車税種別割も13年超で重課(ガソリン車で概ね約15%、軽自動車税は一部で約20%重課)が通例です。

所有コスト上昇は需要を冷やし、結果として査定に織り込まれます。

– 地域規制(例 大都市圏のディーゼル規制)は旧規制適合車の流通先を狭め、古い年式の流動性を落とします。

5) 金融・残価・流動性の観点
– 金融機関やディーラー系ローンは「車齢+ローン年数」に上限があることが多く、年式が古いほど借入期間が短くなり、月々負担が上がって売れにくくなります。

売れにくさ=在庫回転リスクは買取時の査定でマイナス。

– リースや残価設定ローンの「残価率(将来価値)」はオークション相場と年式効果を前提に算出されます。

年式が1年進むだけで残価は機械的に下がる設計で、買取店もこれをベンチマークに査定します。

– 流動性(市場でどれだけ早く・確実に売れるか)は年式が若いほど高いのが通例。

経営上、在庫コストと価格変動リスクを避けるため、古い年式に対しては安全側の査定になります。

6) データ・制度面の根拠
– オートオークション相場の実務 USS、TAA、CAA、NAA、JUなど主要AAでは年式・グレード・評価点・走行距離をキーに価格帯が形成されています。

年式が1年古いだけで同条件車の平均落札価格が明確に低い「右肩下がり」の傾向が観測され、フルモデルチェンジの年に段差が出るのが一般的です。

– 査定基準の枠組み 一般社団法人日本自動車査定協会(JAAI)の査定制度や、業界の査定シートでは年式・走行・修復歴・状態に各々係数や減点が割り当てられる運用が広く普及しています。

年式は「基礎価値」を規定する主要因として扱われ、古い年式ほどベースが低くなるのが標準的です。

– 減価償却の考え方 会計上の耐用年数や減価償却は「時間とともに価値は逓減する」という一般原則を前提としており、実務の残価設定や買取価格形成もこのロジックを参照します。

実需の中古車市場でも、初年で大きく(概ね20〜30%)、その後は緩やかに年率10〜15%程度で下がる形状が観察されることが多い(車種・需給で大きく変動)。

– 税制・制度の明文化 車検時の自動車重量税の重課(13年・18年)や自動車税種別割の重課(13年超)は国の制度として公表され、販売現場では「節目前後での価格調整」が通例です。

結果として年式の節目(5年、7年、9年、13年、18年)あたりで相場の谷が表れやすくなります。

– 登録統計・車齢データ 自動車検査登録情報協会や自販連の公開データから、国内保有車の平均車齢上昇とともに、年式の古い車の市場在庫回転が遅くなる傾向が示唆されます。

回転が遅い在庫は評価損リスクを伴い、仕入れ時の査定は厳しくなります。

7) 例外・逆風と順風
– クラシック・ネオクラ・限定生産・絶版人気車、トヨタ・ランドクルーザーや一部スポーツモデル等は需給が特殊で年式が古くても上がる場合があります。

これは一般の実用車とは別のコレクター市場ロジック(希少性・保存状態・海外輸出需要、米国25年ルールなど)が働くためです。

– マクロ要因として、新車供給制約(半導体不足、物流混乱)で若年中古の価格が一時的に高騰すると、年式効果が一時緩むこともあります。

ただし構造的には時間経過の価値逓減は変わりません。

8) 年式と走行距離の相互作用
– 同じ走行距離なら、年式が新しいほど高く評価されます(時間起因リスクが小さいため)。

同じ年式なら、走行が少ないほど高いのは当然ですが、「低走行・旧年式」より「やや多走行・新年式」の方が高値になることが珍しくありません。

実務では年式と走行距離の係数が掛け合わさって基準価格が算出されます。

– 使用環境(屋内保管、寒冷地/塩害地域)、整備履歴(記録簿、定期交換部品の実施)、事故歴、リコール対策済みか、ワンオーナーか等の情報が、年式のマイナスをどれだけ相殺できるかを左右します。

9) 査定現場での実際の扱い
– 買取店や販売店は「出口(再販)」を見て仕入れ価格を決めます。

年式が古いほど販売チャネルが限定され、保証付帯や整備コスト見込みが増えるため、リスクマージンを上乗せして査定は低めに。

– オートオークションの「直近成約データ」を基に、同型同条件の平均落札価格から逆算して仕入れ上限を決めるのが一般的です。

この平均値自体が年式の1年差で明確にずれるため、年式は査定額に機械的に直結します。

10) 売却側が取り得る対策(年式のマイナスを最小化)
– 車検・税制の節目前に売却する(直前の整備明細があると安心材料にも)。

– メーカー保証の残期間が多いうちに、保証継承点検を済ませておく。

– 定期メンテ履歴(記録簿、ATF/クーラント/ブレーキフルード、バッテリー診断)を揃える。

HV/EVはバッテリー健全性の証跡が強い武器。

– リコール・サービスキャンペーンは必ず実施。

未実施は査定マイナス。

– 室内外のコンディション(内装のベタつき・天張り・樹脂白ボケ・レンズ黄ばみなど経年感)を可能な範囲でケアする。

– モデルチェンジやマイナーチェンジのタイミングを意識し、旧型化の直撃を避ける。

要点のまとめ
– 年式は、物理的劣化、技術陳腐化、保証切れ、税制不利、金融制約、流動性低下といった「時間に紐づく不確実性とコスト」を一括で表す指標であり、これが査定額に直接反映されます。

– その根拠は、業界の査定制度(JAAI等)やオートオークションの年式別相場、税制の重課制度、メーカー保証の年数制限、金融機関の与信・残価設定ルールなど、制度・データ・商慣行のいずれにも明確に存在します。

– 例外的に年式が価値を押し上げる特定車種・市場もありますが、一般の実用車では「年式が1年進む=価値が下がる」は再現性の高い経験則です。

参考情報(根拠先の例)
– 日本自動車査定協会(JAAI)の査定制度・基準の枠組み
– 主要オートオークション(USS、TAA、CAA、NAA、JU)での年式別落札相場の傾向
– 自動車重量税・自動車税種別割の重課制度(13年・18年の節目)
– メーカー保証規定(一般保証3年/6万km、特別保証5年/10万km、HV/EVバッテリーの長期保証などの年数上限)
– 自動車検査登録情報協会・自販連の統計(保有車齢、登録台数推移と中古市場の需給)

このように、年式は「時間が価格に与える影響の総和」を表すため、査定額に直結します。

売り手側は、年式そのものは変えられない一方で、保証・整備履歴・コンディション・売却タイミングなどで年式のマイナスを緩和する余地があります。

走行距離は何キロで評価の節目が訪れるのか?

ご質問の「走行距離は何キロで評価の節目が訪れるのか?」については、実務上は大きく二つの見方があります。

ひとつは業界の査定基準(減点法)に基づく技術的な節目、もうひとつは実際の市場で相場が動きやすい心理的・制度的な節目です。

両者は重なり合う部分が多く、次のような距離で節目が生じやすいのが一般的です。

結論(要点)
– 小さな節目 1万kmごと(特に2万、3万km)
– 中くらいの節目 5万km、6万km、7万km
– 大きな壁 10万km
– その先の節目 12万〜13万km、15万km、20万km

以下、根拠とともに詳しく解説します。

市場で実感される「節目」の距離感

– 3万km前後
新車感が色濃く残るかどうかの境目として意識されやすい距離です。

2万台→3万台での価格差は小さい部類ですが、3万を超えると「中古車として普通の使用感が出てくる」ラインとして検索条件や店頭POPでも区切られることが多いです。

5万km
初めての大きめの節目。

多くの車種で消耗品(ブレーキ、タイヤ、ダンパー、プラグ、ベルト類など)の交換時期が近づき、買い手は「整備費の織り込み」を意識します。

買取相場やオークションでも4万台→5万台でやや明確な価格差がでやすいゾーンです。

6万km
日本の新車保証の一般的な枠(一般保証3年/6万km、特別保証5年/10万km)に関連して意識されるラインです。

6万kmを超えると、一般保証の目安を越えたと受け止める購入者もいます。

整備履歴がしっかりしていれば影響は緩和されますが、同条件なら5万台の方が選ばれやすくなります。

7万km
5万を過ぎて「使用感がはっきり出てくる」段階。

車種やブランド、ボディタイプ(軽/コンパクト/ミニバン/SUV/輸入車)によって感度が分かれますが、国産大衆車ではこのあたりから価格の下げピッチがやや速まる傾向が見られます。

10万km(最大の壁)
買い手の心理、延長保証・金融商品の条件、メンテナンスの節目、オークション上の成約分布など複数の要因が重なる「大きな壁」です。

検索条件や広告でも「10万km未満」がよく使われ、9万台→10万台で相場の屈曲がはっきり出やすくなります。

逆に同一個体で9.8万と10.1万の差が大きく見えてしまうのもこのためです。

12万〜13万km、15万km、20万km
10万を超えると、1万kmごとの差の影響度が相対的に大きくなります。

12万〜13万で次の値下がり、15万・20万は「長く乗る前提の買い手」が中心となり、整備記録の有無で価格が開きやすいゾーンです。

特にディーゼルや商用ベース車は20万でも十分に流通しますが、乗用ガソリン車や輸入車ではメンテの重さが意識されます。

査定基準(減点法)側の考え方(技術的根拠)

– 標準走行距離の考え方
業界の査定では、車齢に応じた「標準走行距離」を設定し、それに対して実走行が多い(過走行)か少ない(過少走行)かで加減点を行います。

標準は年間1万km前後(月あたり約800〜900km程度)という運用が一般的で、例えば5年経過の車なら標準は約5万km。

この基準から大きく上振れすれば減点、下振れすれば加点となります。

減点は概ね「一定距離ごとに一定点数」
具体の点数は車種区分や協会年度で異なりますが、超過距離は例えば1,000kmごとに一定の減点、といった段階的評価が用いられます。

過少走行は加点されますが、極端な低走行(年式に比して走っていない)はオイルやシール類の劣化懸念があるため、加点に上限が設けられる運用が一般的です。

例示
登録4年で7万kmなら標準(約4万km)より約3万km多いので過走行減点。

逆に2万kmなら過少走行で加点。

ただし走行距離の加減点は「評価項目のひとつ」に過ぎず、修復歴・内外装・機関・装備の状態など他要素の比重も大きい点がポイントです。

なぜその距離で節目が生まれるのか(実務的な根拠)

– メーカー保証・延長保証の枠
日本では一般保証3年/6万km、特別保証5年/10万kmが目安。

このため6万や10万が心理的・制度的境目になりやすい。

中古車店の延長保証商品でも「走行10万km以下」「初度登録から○年以内」といった加入要件が多く、保証付帯の可否が価格形成に影響します。

整備・消耗の谷(費用の織り込み)
5万〜7万kmでダンパー、ブッシュ、ブレーキ、タイヤ、補機ベルト、プラグ類、CVT/ATフルード、冷却系など、車種により更新タイミングが集中。

10万km付近では駆動系・足回りのリフレッシュや各種シール・ポンプ類の交換が現実味を帯び、購入後の出費リスクとして割引要因になります。

オークション取引の分布
日本の主要オートオークション(USS、TAA、CAAなど)では、検索・出品・買付の現場で5万・10万といった区切りが強く意識されます。

成約データの価格対走行距離曲線は連続的ですが、これらの節目付近で傾きが変化する(同じ1万kmの差でも影響度が変わる)傾向が観察されます。

需要側の心理と流通実務
一般消費者は「10万km未満」を強い条件にしがちで、店頭でも「10万km台」は値引き要請が強くなります。

また、ファイナンス/残価設定、法人の償却・入替ポリシーなども距離閾値と連動し、相場を通じて小売価格に反映されます。

車種・用途別の感度の違い

– 軽自動車
走行距離に敏感。

5万kmの節目が効きやすく、10万kmは大きな壁。

年式が新しいほど距離差の影響が拡大。

コンパクト/ミニバン/SUV(国産)
5万・10万が主な節目。

ミニバンやSUVは装備・内外装コンディションの加点が効きやすく、距離のマイナスを一部吸収しやすい。

輸入車
メンテナンス費用が高く、5〜7万kmで整備の山を迎えるケースが多いため距離感度が強め。

10万kmは非常に大きな壁。

3万km以下にプレミアムが乗りやすい。

ディーゼル/商用・業務用
設計上の耐久性が高く、距離に対する許容が広い。

10万kmの壁は相対的に弱く、20万kmでも整備記録が充実していれば流通しやすい。

ハイブリッド/EV
駆動用バッテリーの保証年数・距離(多くは年限と距離の両方に上限)が節目化します。

10万km超ではSOH(蓄電容量)への関心が高まり、実測データや交換履歴の有無が価格に直結。

実務での使い方(売る/買う側のヒント)

– 売却タイミング
5万・10万といった節目をまたぐ前に手放すと有利になりやすい(例 49,800kmでの売却)。

ただし直前の高額整備を敢えて見送るより、点検整備記録を揃える方が評価は安定します。

購入判断
3万→4万の差は小さく、9万→10万の差は大きい、という「距離差の重みの変化」を意識。

10万超でもワンオーナー・ディーラー整備・記録簿完備・消耗品更新済であれば総コストはむしろ有利なこともあります。

走行距離だけで決めない
修復歴、塩害・下回り腐食、内外装の痛み、タイヤ残、車検残、先進安全装備の有無、人気色/グレードなどは、しばしば距離差以上に価格を動かします。

まとめ(距離節目の目安)

– 小節目 1万kmごと(特に2万・3万)
– 中節目 5万、6万、7万(保証や整備の節目)
– 大節目 10万(最大の壁)
– 以降の節目 12〜13万、15万、20万(整備履歴の比重が増大)

注意事項(コンプライアンス)

– 走行距離は法的にも重要情報であり、改ざんは厳罰の対象です。

売買時はメーター交換歴や記録簿、点検記録、オークション発行の走行管理システム結果など、裏づけのある書類を確認・保管してください。

このように、査定基準(標準走行距離に対する加減点)という技術的な枠組みと、保証・整備・金融・心理といった市場実務の要因が重なって、3万/5万/6万/7万/10万/15万/20万kmといった節目が形成されています。

実際の評価は「距離×年式×状態×履歴」の総合点で決まるため、距離だけを絶対視せず、整備の中身や記録類を併せて読み解くことが、良い売買の近道です。

年式と走行距離ではどちらがより重視されるのか?

結論(先に要点)
– 一般的な乗用車の中古相場では、年式(初度登録からの経過年数)が「基礎価値」を強く決め、走行距離はその基礎価値を上下に調整する要素として働くことが多いです。

つまり、どちらか一方だけで決まるわけではありませんが、平均的な条件下では「年式の影響がやや強く、走行距離が次点」という場面が目立ちます。

– ただし、極端に距離が伸びている個体(例 10万km超)や、逆に極端に少ない個体(例 年式の割に1~2万km)では、走行距離の影響が一気に強くなります。

また、商用ディーゼルやEV/ハイブリッドなど、パワートレーンの特性と保証条件によっては距離が年式以上に重要視される例もあります。

なぜ年式が強く効くのか(根拠とメカニズム)
– 基礎価値を規定する残価構造
多くの業者間オークションや下取り・買取の査定データ、さらにリース・残価設定ローンの設計において、まず年式(月単位)を軸にベース価格帯が形成されます。

ここにモデルチェンジやマイナーチェンジ、マイカーブーム(需要の波)、安全装備やインフォテインメントの世代差などの「時間起因の価値差」が反映されます。

金融・残価の世界では年式がベースになりやすく、距離は追加の調整項目です。

– 節目で落ちるステップダウン
中古相場は連続的に減価するだけでなく、3年・5年・7年・10年といった節目で段差的に下落する傾向があります。

理由は、メーカー保証の切れ目、車検サイクル、モデルチェンジのタイミング、税負担(重量税などの経年変化)、そして消費者の心理的な区切りです。

こうした段差は年式に紐づくため、年式の影響が大きく見えます。

– 税・保証・規制とのひも付き
年式が進むと重量税負担が変化する区切り、メーカー一般保証・特別保証の満了、エミッション・安全規制対応の世代差などが効き、買い手の維持コスト見通しが変わります。

特に保証の残存は安心材料として価格に乗りやすく、年式の影響を強めます。

– 相場の形成プロセス(オークションの実務)
業者間オークションでは同一車種・同一グレードで年式の近い個体同士の落札価格が比較されやすく、「年式で帯を作り、距離・状態で上下させる」実務が一般的です。

距離は1万km刻み、または一定の閾値(5万・7万・10万kmなど)で価格が調整され、外装・内装・修復歴・装備とともに加減点の対象になります。

走行距離が効く場面(根拠と具体)
– 機械的消耗と整備費用の予見
エンジン・ミッション・サスペンション等の消耗は距離と時間の双方に相関しますが、特に距離は近接的に部品交換のタイミングを早めます。

10万km前後はタイベル/ウォーターポンプ(車種次第)、ハブベアリング、ダンパー、ブッシュ類などの交換リスクが意識され、買い手はその費用を価格に織り込むため下がり幅が大きくなります。

– ハイブリッド・EVのバッテリー
HV/EVは駆動用電池の劣化が価値に直結します。

電池は時間劣化もありますが、充放電サイクル(走行距離や急速充電回数)とも結びつくため、距離がよりシビアに見られることがあります。

多くのメーカーが「年数または走行距離」の短い方でバッテリー保証を設定しているため、保証残の有無によって査定が大きく動きます。

– 商用・ディーゼル・高耐久モデル
ハイエースやプロボックスなどの商用・ディーゼルは、距離が伸びていても市場が許容しやすい一方、同車種内の相対比較では距離が価格の差を大きく生みます。

「距離をよく走れる個体を求める」買い手が多いため、距離の信頼性(走行管理、メーター交換歴なし)が特に重要です。

相場上の定性的な目安(あくまで一般論)
– 年式差の影響感
同一グレード・同程度の状態で、1年の年式差が5~15%程度の価格差につながる場面は珍しくありません。

人気度やモデル末期/直後などで振れ幅は変わります。

– 距離差の影響感
走行距離は1万kmあたり数%という緩やかな調整で進み、5万km・7万km・10万kmなどの節目で心理的・整備費的な段差が入るのが通例です。

特に「10万km超」のレッテルは依然として市場心理に強く作用しますが、最近は車の耐久性向上や人気SUVの需給逼迫により、以前ほど極端ではないケースも増えています。

– 標準走行距離の基準感
日本市場では「おおむね年1万km前後」を標準的な走行ペースと見なす実務が広く流通しています。

年式に対して極端に多い/少ない場合は調整が入りやすいです。

具体的な比較例(思考のしかた)
– 例1 3年落ち・3万km vs 5年落ち・2万km
多くのケースで3年落ちの方が高くなりがちです。

年式差によるベース価値の差が、距離差による調整を上回るためです。

さらに、3年落ちはメーカー保証が残っている可能性が高く、装備世代も新しいため評価されやすいです。

– 例2 4年落ち・8万km vs 7年落ち・3万km
このあたりは僅差か、場合によって逆転もあります。

4年落ちの新しさは魅力ですが、8万kmの距離感は整備負担の懸念を呼びます。

他方、7年落ちでも3万kmなら機械的な余力感があり、内外装の状態が良ければ高評価になりやすいです。

結局は個体の状態と需要で決まります。

– 例3 10年落ち・2万kmのワンオーナー・屋内保管
年式は古いものの極端な低走行で、希少性が評価される場合があります。

とくに限定グレードや人気色、記録簿完備で状態が極上なら、同年式の平均相場を大きく上回ることもあります。

車種・用途別の重視バランス
– 軽・コンパクト・ミニバン
家庭用の主力セグメントは需要層が広く、年式の新しさ(安全装備・先進機能の世代差)が強く効きがち。

距離は標準域(~7万km程度)なら緩やかな調整、10万km超で下げ幅がやや大きくなります。

– SUV・クロカン
人気が高いと年式の影響が相対的に弱まり、相場が高止まりすることがあります。

とはいえ、距離が伸びた個体は足回り・駆動系の消耗が価格に反映されます。

– 輸入車
電装・消耗部品の更新コストが高く、保証の有無が非常に重要。

年式が新しい方がベースは高いが、距離が多い個体の値引き幅も大きく出やすいです。

– 商用・ディーゼル
年式よりも機関の健全性と距離管理(メーターの信頼性、整備履歴)が重視されがち。

距離が価格形成の主役級になることがあります。

– EV/ハイブリッド
駆動用電池の保証残と劣化度合いがカギ。

年式も距離も双方が強く効くため、バッテリー診断の有無・急速充電履歴などの情報価値が非常に高いです。

距離の「質」を見抜くポイント(査定での根拠)
– 高速主体か市街地主体かで機械の疲れ方が異なります。

高速主体はブレーキやATの摩耗が軽微な傾向があり、同距離でも評価が良いことがあります(ただし内外装の飛び石・下回り塩害には注意)。

– メンテ履歴と記録簿、消耗品の交換履歴(オイル、ATF、冷却水、ブレーキ、タイヤ、ダンパー等)は強い安心材料。

ワンオーナー・屋内保管・禁煙・ペットなしなどの生活痕の少なさも好影響。

– 「走行距離管理システム」でメーター改ざんの有無がチェックされます。

メーター交換歴や不明は大きな減点要因です。

市場要因とタイミング
– モデルチェンジ直前直後、決算期、ボーナス期、季節需要(SUVは冬前、オープンは春~夏)などで需給が変動。

年式の節目(登録から丸5年・7年など)や10万km到達前は売却の好機とされがちです。

– 税や車検の残期間は実需層に効きます。

車検が長く残る個体は短期的には買い得感が出て、相対的に高く売れやすいことがあります。

実務的な指針(ラフに見積もるなら)
– まず年式で同型車の相場レンジを把握し、その上で走行距離による調整をかける、という順番が合理的です。

– 距離の調整感は「1万kmあたり数%」をたたき台にし、5万・7万・10万kmの節目では一段強めに見る。

ただし人気・希少性・状態で大きく振れることを前提に、複数の査定・オークション相場を確認するのがおすすめです。

– リースや残価設定ローンが設定する「年間走行距離上限」と「超過1kmあたりの精算単価(数円~十数円程度)」は、市場が距離をどう割り引いているかの現実的なヒントになります。

年式がベース、距離は加減点という構造を反映しています。

まとめ
– 一般には、年式が中古車の基礎価値を規定し、走行距離がその価値を上下させる「調整軸」になっています。

根拠は、オークションや買取実務・残価設計が年式軸で相場帯を形成し、距離は加減点で扱われる市場慣行、そして保証・税・モデル世代差などの年式依存の要因が価格に強く作用するためです。

– ただし、極端に多走行/低走行の個体、HV/EVや商用ディーゼルなどの用途・パワートレーン、希少グレードや人気車種では、距離や個別条件が年式以上に強く作用することも十分あります。

– 具体の比較では、年式差でおおまかな相場帯を掴み、距離差と状態・装備・保証残・記録簿などを積み上げで評価する、という順序が最もブレにくい判断法です。

複数の査定を取り、同一条件の成約相場(業者間オークションの落札実績や公開相場)を横断的に見ることで、年式と走行距離のどちらがその個体にとってより重いかが明確になります。

平均年間走行距離との差はどのように減点されるのか?

ご質問の「平均年間走行距離との差は、査定でどう減点されるのか」と「その根拠」について、業界で広く用いられている実務の流れ(日本自動車査定協会[JAAI]の査定基準・査定士教育での考え方や、オートオークションの運用に準じる考え方)を踏まえ、できるだけ分かりやすく整理してお伝えします。

なお、実際の査定表や単価は車種区分・時期・地域・相場により細かく改訂されるため、以下は構造と考え方、代表的な数値目安、計算手順の「解説」としてご参照ください。

1) 基本の考え方(標準=平均年間走行距離との比較)
– 査定ではまず「そのクルマの年式(初度登録年月からの経過期間)」に対して、カテゴリ別の“標準走行距離”を設定します。

いわば「その年数で普通に使われたと想定される距離」です。

– 次に「実走行距離」と「標準走行距離」の差分を求め、超過ならマイナス(減点)、不足ならプラス(加点)として反映します。

– この差分の影響度は、車の用途や燃料(乗用ガソリン、ディーゼル、軽、商用バン・トラックなど)で異なり、さらに年式(経過年数)が若いほど距離差の影響が大きく、古いほど相対的に小さく評価されるのが一般的です。

2) 標準走行距離の目安(区分による違い)
正確な表は査定基準書に細かくありますが、実務上の「目安」は以下のイメージです。

– 乗用(ガソリン) 年1万km前後(約800〜900km/月)
– 軽乗用 年0.8万km前後
– 乗用(ディーゼル)・商用バン(ガソリン/ディーゼル) 年1.2万〜1.5万km程度
– 小型〜中型トラック 年2万〜3万km以上(用途で大きく増減)
この“年あたり基準”を、査定時点までの経過「月数」で按分して標準走行距離を計算します(例 ガソリン乗用、丸5年なら約5万kmが標準)。

3) 実際の計算手順(実務の流れ)
– ステップ1 区分の確定
例 コンパクトなガソリン乗用=「乗用ガソリン」区分
– ステップ2 経過期間の確定
初度登録年月→査定月までの月数を数えます(端数処理の運用は基準に準拠)。

– ステップ3 標準走行距離の算出
区分ごとの月間標準距離×経過月数(または年間標準距離×年数)
– ステップ4 差分距離の算出
実走行距離−標準走行距離=差分(+は超過、−は不足)
– ステップ5 差分距離を点数化
区分・年式レンジに応じた「距離係数(距離減価率)」で、差分距離を“加減点”に換算します。

超過はマイナス点、低走行はプラス点。

新しい年式ほど1,000kmあたりの点数が大きく、古い年式では緩やかになります。

上限(加点の天井)や、過走行に対する追加減点のようなルールが設定されることもあります。

– ステップ6 点数を金額化
車種級別の「単位点額(1点あたりの円換算)」を乗じて金額調整します。

単位点額は市場相場や級別で変わり、時期ごとに見直されます。

4) 数値イメージ(あくまで目安の理解用)
– 標準距離の基準例
乗用ガソリンで年1万kmを標準とすると、
3年落ち=3万km標準、5年落ち=5万km標準。

– 若年式ほど効く理由
新しい車は「本来は距離が少ないはず」という暗黙の期待が強く、差が価格に効きやすい。

反対に10年超の車は距離差による相対価値差が小さくなります。

– 代表的な“市場感覚”(オークション相場の傾向を含む)
3年落ちで3万km→“普通”
3年落ちで5万km→「やや多い」
3年落ちで1.5万km→「少ない(プラス評価)」
10万km到達前後や15万km超は心理的節目として下げ圧力が強く、基準上の減点に加え相場下落分も上乗せされやすい、という実務上の傾向があります。

5) 実例の示し方(仮定計算)
ここでは計算の流れを具体化するため、仮に「乗用ガソリン=年1万km標準」「距離換算=1,000kmあたり1点」「単位点額=1,000円」という簡略モデルで示します(実際の査定は車種級別・年式別に係数が異なります)。

– 例A 5年落ち、実走行8.5万km
標準=5万km、差分=+3.5万km
点数=+35点(超過なのでマイナス35点)
金額=−35,000円(仮定モデル)
– 例B 5年落ち、実走行3.5万km
差分=−1.5万km
点数=−15点(低走行なのでプラス15点)
金額=+15,000円(仮定モデル)
繰り返しになりますが、実務の係数は年式や級別によりもっと複雑で、若年式では1,000kmあたりの影響が上例より大きく、古い年式では小さくなったり、加点の上限があったりします。

また、相場側のプレミアム(低走行人気)や心理的節目(10万km)など、査定表に現れにくい市場補正も加味されます。

6) 例外・特記事項
– メーター交換・改ざん・実走不明
証明書類(ディーラー記録・点検記録簿・メーター交換記録など)が揃わない「実走不明」は、距離差計算以前に大幅な減点・減価対象です。

オークションでも厳格に扱われます。

– 用途差(商用・ディーゼル)
同じ距離でも商用ディーゼルは「距離に対する耐久性期待」が高く、乗用ガソリンより距離差の影響が緩やかに設定されがちです。

– 超過が極端なケース
一定距離を超えると追加の減点帯が設定される、評価点(オークションの外装評価とは別)に反映される、保証対象外で相場が落ちる、等の複合効果が生じます。

– 低走行の注意
年式の割に極端に乗られていない車は、タイヤ・シール類・ブレーキ固着など“低走行特有の劣化”があり、機械的には必ずしも無条件で高評価とは限りません。

査定の現物確認で是正されることがあります。

– 他条件との相関
距離減点は独立ではなく、修復歴、内外装状態、装備、タイヤ・ブレーキ残、整備記録、車検残、保証継承可否などと総合で価格が決まります。

7) 減点の根拠(なぜ距離差で評価が変わるのか)
– 機械的・統計的根拠
走行距離は摩耗・疲労・消耗品交換時期の代表的な代用変数です。

走行が多いほど故障確率や近未来の整備費用期待値が上がるため、残存価値が下がるという、耐用年数モデル(残存寿命の短縮)に基づきます。

– 市場(需要・再販)根拠
中古車の主な買い手は「年式の割に距離が少ない」個体を好む傾向が強く、再販時の落札価格が距離に敏感です。

査定基準はこの市場行動を反映しています。

– 取引・保証・金融の制約
延長保証や据置型ローンなどで距離上限が設けられ、超過車両は商品性が落ちるため、相場が低くなります。

これも距離差の減点が生じる実務的根拠です。

– 公正な表示・コンプライアンス
走行メーター表示に関する規約(自動車公正取引協議会の表示規約など)により、走行距離は信頼性が求められ、実走不明は強いディスカウント対象です。

8) 実務でのポイント(査定を有利にするために)
– 点検記録簿・整備履歴・メーター交換記録(ある場合)の用意。

距離の正当性とメンテの良さは距離減点を緩和し得ます。

– 走行の質(高速中心で負荷が低い、法人管理で定期整備など)は説明価値があります。

写真・領収書など客観資料があると効果的です。

– タイヤやブレーキ、バッテリーなど高価消耗品の状態が良いと、距離超過分のマイナスの一部を埋めることがあります。

– 相見積りを取り、オークション相場に強い店(輸出向け含む)も候補に。

輸出需要が強い型式では距離感度が相対的に小さい場合があります。

9) 参考・根拠(公的・準公的な出典の方向性)
– 一般財団法人 日本自動車査定協会(JAAI)の「中古自動車査定基準」「査定士ハンドブック」等
– 自動車公正取引協議会の表示規約(走行距離表示に関するルール)
– 大手オートオークション各社の出品規約・評価基準(距離扱いの実務)
これらは定期的に改訂され、細目(区分別標準距離、距離係数、単位点額、加点上限、過走行の特例など)が更新されます。

最新は査定士が現場で参照する基準書をご確認ください。

まとめ
– 減点は「標準走行距離(年式×区分別基準)との差」に比例し、超過でマイナス、低走行でプラス。

若年式ほど距離差の影響が大きく、年式が進むと緩やか。

– 金額化は“点数×単位点額”で、点数の出し方(距離係数)と単位点額は区分・年式・相場によって異なる。

– 根拠は、機械的な耐久・整備費の期待値、再販市場の需要、保証・金融の制約、公正表示の要請にあります。

もし具体の車種・年式・走行距離をご提示いただければ、上記の考え方に沿って、より現実に近いレンジで影響度合い(どの程度の加減が見込まれるか)を試算してお伝えできます。

新しい年式・多走行と古い年式・低走行ではどちらが有利なのか?

結論の先出し
– 一般的な量産中古車(軽自動車、コンパクト、ミニバン、SUV、セダンなど)では、「年式の新しさ」の影響が「走行距離」より大きく出ることが多く、同程度の条件なら「新しい年式・多走行」のほうが「古い年式・低走行」より高く評価されやすい傾向があります。

– ただし極端な多走行(例 3年で10万km超)や、逆に極端な低走行が品質面の不安を招く場合、または商用車・コレクター車・EV/ハイブリッドなど特性が違う車種では結論が逆転・拮抗することがあります。

その根拠(査定実務と市場メカニズム)
– 業界の査定実務では、ベース価格(年式・グレード・相場)に対して走行距離・修復歴・内外装状態・装備などで加減点する仕組みが一般的です。

日本ではJAAI(日本自動車査定協会)の査定基準や業者オークション(USS、JU、TAA等)の相場連動が広く参照され、年式(経過年数)による残価の下落カーブが骨格として強く効きます。

– 年式が新しいほど市場での需要が高く、最新の安全・運転支援装備、燃費・排ガス性能、衝突安全基準の改良、インフォテインメント更新など「見えやすい価値」が残っています。

メーカー保証が残っている(一般保証3年・特別保証5年が多い)こと、認定中古の対象になりやすいことも価格を下支えします。

– 日本固有の要因として、重量税の重課(13年超・18年超)が将来の維持費懸念として価格に織り込まれやすく、年式が古くなるほど売りにくくなる傾向があります。

– 走行距離の影響は無視できませんが、実務では「期待走行距離(例 1万〜1.5万km/年)」を基準に、そこからの乖離に応じて1万km単位で加点・減点することが多いです。

すなわち、年式で大きく決まった価格に対し、距離は係数的に補正する位置付けになりがちです。

新しい年式・多走行が有利になりやすい理由
– 基礎残価の高さ 初期の減価は年式要因が支配的です。

登録後3年までの残価はグレード次第で新車価格の50〜70%程度を保つ例も多く、そこに距離補正をかけても、古い年式の低走行より総額が上回ることがしばしば起こります。

– 保証・最新装備・安全性 安心材料が多く、購入層が厚い。

これが再販性を高め、査定が上振れしやすい。

– 経年劣化は距離に依存しない面も大きい ゴム・樹脂部品、配線被覆、シール材、塗装、内装、バッテリー(補機・駆動問わず)などは「時間」で劣化します。

低走行でも年式が古いほど交換前提部位が増え、逆に距離が多くても年式が新しければ材料劣化が浅く不具合リスクが低いと判断されやすい。

古い年式・低走行が有利になりうる局面
– 年式の古さが「重課ライン」をまたぐ直前直後でなければ、極端な低走行が希少価値として効くことがあります。

特にワンオーナー・屋内保管・記録簿完備・無事故・内外装上物など、「コンディションの裏付け」がある場合、相場よりプレミアムが乗ることがあります。

– 需要特性 軽自動車・コンパクトは近距離用途の買い手が多く「距離の少なさ」を重視しやすい。

逆に商用バン・ディーゼルは「走る前提」のため多走行耐性が高く、低走行の希少性は相対的に弱い場合があります。

– 趣味性・限定モデル スポーツ・MT・限定色・特別仕様・旧車は年式よりも「個体の希少性・オリジナル度・整備歴」が価値の中心。

ここでは古い低走行が明確に強いことが多い。

距離補正の実務イメージ(あくまで一般例)
– 期待走行距離 年1万〜1.5万km×経過年数(市場や車種で変動)
– 走行距離による補正 1万km差あたり±1〜3万円程度のレンジで加減点(セグメント・相場局面で大きく変わる)
– 例えば5年落ち・期待5万kmの車で、実走10万kmなら「+5万km」、1万kmなら「−4万km」。

車両のベース残価が大きければ補正総額は相対的に軽く見え、ベース残価が小さければ補正が相対的に重く響きます。

数値例(わかりやすい仮定)
– 新車価格300万円、人気グレード・無事故・整備良好と仮定
– ケースA 3年落ち・走行9万km
– 3年残価基準 55% → 165万円
– 期待3万kmに対し+6万km。

1万kmあたり−1.5万円と仮定 → −9万円
– 評価額の目安 156万円
– ケースB 7年落ち・走行3万km
– 7年残価基準 30% → 90万円
– 期待7万kmに対し−4万km。

1万kmあたり+1.5万円と仮定 → +6万円
– 評価額の目安 96万円
→ この前提では「新しい年式・多走行」のほうが高い。

– ただし3年15万km(+12万km、−18万円)など極端になると、年式優位を食い潰すことがあり得ます。

相場水準、車種、内外装点数で結果は前後します。

年式と走行距離の優劣に影響するその他の要素
– 修復歴・事故歴 年式や距離より強い減額要因。

骨格交換・事故歴は明確にマイナス。

– 内外装評価点(業者AAの3.5/4/4.5/5等) 視覚的状態は再販速度に直結。

– グレード・装備・色 上級グレード、人気色(白・黒・パール系)、先進安全装備、ナビ/カメラ、電動スライド等は強いプラス。

– 地域・季節要因 4WD需要、雪国の下回り錆、オープンカーの季節性など。

– メンテ履歴 記録簿・定期交換(ATF、冷却水、ブレーキ、タイベル/ウォポン等)、消耗品の新しさ(タイヤ/ブレーキ/バッテリー)は安心感として評価増。

– 使用実態 多走行でも高速主体は摩耗が少ない。

低走行でも短距離・チョイ乗り中心はエンジンや排気系に負担が蓄積しやすい。

動力源ごとの注意点
– ハイブリッド 年式・距離の両方が駆動用バッテリーに影響。

カレンダー劣化もあるため「古い低走行」が必ずしも有利とは限らず、メーカー保証(例 ハイブリッドシステム5年/10万kmや延長保証)の残存が強い価値。

– EV 電池は走行サイクルだけでなく時間・温度履歴で劣化。

古い低走行でも容量低下が進んでいる可能性があり、年式の新しさ(電池世代の進化・保証残)を重視する買い手が多い。

– ディーゼル・商用 多走行耐性が高く、年式より稼働実績を織り込む市場。

整備記録・DPF状態がカギ。

どちらが有利かを判断する実務的な目安
– 〜3年落ち 年式優位が強く働くゾーン。

多走行でも内外装・無事故・保証残で高値が出やすいが、10万km超は例外的に減点幅が大きくなる。

– 4〜7年落ち 距離補正の影響が見えやすくなるが、なお年式の基礎残価が距離補正を凌ぐ場面が多い。

– 8〜10年超 古さのマイナスが加速。

極端な低走行・状態極上・人気グレードであれば「古い低走行」が逆転することが増える。

13年超の重課ラインは明確な分水嶺になりやすい。

– 例外 限定車・旧車・趣味車・商用・EV/HEVは個別判断が必須。

売却・購入の戦略的ポイント
– 売却側 新しいうちに手放すほど年式優位が効く。

多走行なら、点検記録や消耗品更新、内外装クリーニングで減点を抑える。

オークション相場が強い時期(決算・新生活期)を狙う。

– 購入側 「古い低走行」は一見お得だが、ゴム類やバッテリー、タイヤ、シールの経年劣化、燃料系の痛みなど隠れコストに注意。

整備の裏付けが重要。

「新しい多走行」は高速メインの法人・リース上がりで状態が良い個体があり、保証や先進装備が使える分、総所有コストで有利な場合がある。

まとめ
– 中古車の査定では、ベースとなる残価を決める「年式」の影響が、補正要素である「走行距離」より一般に大きく、極端なケースを除けば「新しい年式・多走行」が「古い年式・低走行」より有利になる局面が多いのが実務的な結論です。

– ただし、距離が常識的な範囲を大きく超える場合や、車種特性(商用・EV/HEV・趣味車)、重課ライン、内外装・整備の質によって結論は容易に逆転します。

最終判断は、年式×距離に加えて「無事故・評価点・整備履歴・装備・カラー・地域需要」を合わせて比較するのが安全です。

【要約】
年式は時間経過がもたらす劣化や故障リスク、EV電池の容量低下、腐食や油脂類の劣化、装備の陳腐化を内包。保証切れや車検・税の重課、地域規制も買い手負担を増やす。さらに融資期間や残価率の制約で流動性が下がり、在庫回転・価格変動リスクが高まるため、査定額に強く反映される。モデルチェンジや認定中古の保証適用範囲でも若年式が有利。安全・運転支援やコネクテッド機能の世代差も再販価値を左右。

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