自動車公正競争規約における「総額表示義務」とは何を求めているのか?
以下は、自動車公正取引協議会が運用する自動車公正競争規約(およびその施行規則)で要求されている「総額表示(支払総額の明示)義務」の趣旨・内容・範囲・含める費目と除外費目・表示方法・対象/例外・根拠関係を体系的にまとめたものです。
なお、条文の構成や用語は改定される場合があるため、最終的には原典(規約・施行規則・運用基準・Q&A)での確認を前提にしてください。
総額表示義務とは何か(結論)
– 規約が求める「総額表示」とは、消費者がその広告された車を購入する際に実際に支払うべき金額を、税込かつ諸費用込みの一体の価格(支払総額)として、広告や店頭掲示、ウェブ掲載などの表示面に明瞭に示すことを意味します。
– 単に「車両本体価格」だけを大きく出し、後から「諸費用別」などの脚注で補う表示は原則として認められません。
支払総額を一目で比較できる形で表示させることが義務です。
– この義務は特に中古自動車の広告表示において強く適用され、支払総額の構成要素(含める費目/含めない費目)や表示方法が詳細に定められています。
新車でも販売店が個別の車両(登録済未使用車を含む)を在庫として広告する場合は、中古車と同様の考え方で総額表示が求められます。
なぜ総額表示が求められるのか(趣旨)
– 消費者が価格を正確に比較し、購入判断を誤らないようにするためです。
車両本体価格だけを強調し、別途の諸費用を後出しするような表示は、景品表示法上の「有利誤認」等につながりやすく、業界の公正な競争を害します。
– 総額表示の義務化により、店舗や媒体ごとの表示のばらつきや、「諸費用のつり上げ」による不透明な販売を抑止し、価格透明性を高める狙いがあります。
総額に「必ず含める」主な費目(代表例)
支払総額は「その広告条件で購入するときに、原則として誰でも必要になる費用」を全て含めるのが基本です。
典型的には次のような項目が含まれます。
– 車両本体価格(消費税込)
– 当該広告で付属・装着されているオプションや付属品の価格(消費税込)
– 登録・届出・検査に伴う法定費用(印紙・証紙等)
– 自賠責保険料(契約に必要な期間分)
– 自動車重量税(該当する場合)
– 自動車税・軽自動車税(種別割)の月割相当額(名義変更時点の実務に即して)
– 自動車税環境性能割(該当する場合)
– ナンバープレート代(標板代)
– 車庫証明の証紙代(普通車で必要な場合)
– リサイクル料金(預託金等相当額および資金管理料金)※預り金で非課税ですが、支払総額に含めて表示するのが原則。
別途、金額の内訳明示も求められます。
– 販売店の手続代行手数料(登録代行、車庫証明代行など)や、当該広告条件で必須とされる納車費用等の販売店手数料
– 消費税(課税対象項目に対する税込表示)
ポイント
– 「店頭納車(販売店所在の運輸支局管轄内で登録)」等、広告が前提とする標準条件で誰にでも生じる費用は必ず含めます。
– リサイクル預託金は「支払総額に含める+金額内訳も明示」という二段の扱いが一般的な運用です。
総額に「含めない」ことが許される主な費目(代表例)
– 任意保険料(自動車保険の任意加入分)
– 消費者の選択によるオプション(追加アクセサリー、コーティング、延長保証、メンテナンスパック等)
– 希望ナンバー取得費用(希望する場合のみ発生)
– 遠隔地・離島等への陸送費、県外登録等、広告の標準前提から外れる条件で個別に加わる費用
– ローン金利・信販手数料等の資金調達コスト
– 下取車に関する精算・整備・廃車費用など、個別事情依存の費用
注意
– 「含めない」扱いが認められるのは、広告の標準条件では発生しないか、購入者の任意選択によって初めて発生するものに限られます。
標準前提で実際に必要となるものを外すことはできません。
– 除外した費用については、誤認を避けるために条件や発生可能性を明確に示す配慮が求められます。
表示方法上のルール(要点)
– 支払総額を「一体の価格」として見やすく、分かりやすく、十分な大きさで表示すること。
車両本体価格を併記すること自体は可能ですが、支払総額を目立たない位置や小さな文字にすることは不適切です。
– 「諸費用別」「支払総額は店頭で」等の注記のみで総額を示さない表示は不可。
媒体の制約がある場合でも、一覧画面・サムネイル・POP等の第一表示面で支払総額が認識できることが必要です。
– 支払総額の内訳を、同一面、または容易に到達できる位置(ウェブなら同一ページ内や明確なリンク先)で明示することが推奨または求められます。
特にリサイクル預託金の額は別掲での明示が必要とされています。
– 表示は税込を原則とし、消費税法上の総額表示義務とも整合させます(税抜価格の強調は不可)。
– 販売条件(登録管轄、店頭納車の前提、価格の有効期間、在庫・台数限定等)がある場合は、支払総額の意味合いに影響するため併せて明示します。
– 価格訴求(特価、値引き表示、二重価格表示等)をする場合は、景品表示法上の根拠・比較対象・期間整合性等に留意し、誤認を招かない表示にします。
適用範囲と新車・中古車の違い
– 中古自動車(登録済未使用車を含む)の個別在庫を対象とした広告は、支払総額の表示が原則として必須です。
紙媒体、折込、ポータルサイト、店舗POP、SNS広告等、媒体を問いません。
– 新車について、メーカーが全国一律の「メーカー希望小売価格(消費税込)」を示す製品広告は、諸費用が販売店や地域・登録条件で異なるため、「諸費用・税金・保険料等は含まれません」といった注記を伴うかたちが一般的で、支払総額の厳格な義務付けの対象とは整理が異なります。
– ただし、販売店が「この個体をこの条件で売る」という個別販売(特価在庫、登録済未使用車、展示車放出など)を行う広告は、中古車に準じて支払総額を明示する実務が求められます。
実務運用のコツ
– 見積システムで標準条件(管轄内登録・店頭納車)に基づく支払総額を算出し、その金額を媒体ごとのテンプレートに自動連携する仕組みを整える。
– 内訳テンプレート(法定費用/代行手数料/リサイクル預託金/オプション等)を標準化し、媒体に応じて同一面またはワンクリックで確認できる位置に配置。
– 一覧画面でも支払総額が視認できるようデザインする(サムネイル内に「支払総額」ラベルを明示)。
– 管轄外登録や陸送が前提となる販売(ECや県外向け販促)では、その条件下の支払総額を別途提示するか、前提条件と追加費用の発生可能性を明瞭に記載する。
違反時のリスク
– 自動車公正取引協議会による指導・警告・改善要請・公表等の対象となることがあります。
– 悪質または重大なものは景品表示法違反(有利誤認・不実証広告など)の問題として、消費者庁から措置命令等の行政処分の対象となり得ます。
– 事業者の信用失墜やクレーム・返金対応等の実務リスクも大きくなります。
根拠(法令・規約・ガイドラインの位置付け)
– 景品表示法に基づく公正競争規約制度
– 景品表示法は、不当な表示によって消費者を誤認させる行為(有利誤認・優良誤認等)を禁止しています。
– 同法に基づき、業界団体が「公正競争規約」を定め、消費者庁長官の認定を受けることで、当該分野の具体的な表示ルールを明確化できます。
自動車分野では自動車公正取引協議会が所管する規約が存在します。
– 自動車分野の公正競争規約
– 中古自動車の表示に関する公正競争規約(および同施行規則・運用基準)
– 価格表示に関し、「支払総額を明確に表示すること」「支払総額に含めるべき費目/含めない費目」「内訳明示」「表示方法(媒体別の最低要件)」などを規定。
– リサイクル預託金の扱い、管轄条件、一覧ページでの表示位置など、実務的な詳細が運用基準・Q&Aで補足されています。
– 自動車(新車)表示に関する公正競争規約(および同施行規則)
– 新車のメーカー希望小売価格の表示方法、諸費用の扱い、付属品やオプションの表示、性能・燃費等の表示などを定めます。
販売店が行う個別在庫の広告については、中古車規約の趣旨を踏まえた総額表示の実務が求められます。
– 消費税の総額表示義務
– 消費者向け価格は原則「税込」で表示することが求められます(税抜強調や二重表示の態様に関するガイドラインあり)。
自動車の総額表示は、税込表示の義務に加え、税以外の必須費用(法定費用や代行手数料等)まで含めて一体価格とする点に特徴があります。
したがって、消費税法上の総額表示と、公正競争規約上の支払総額表示は相互補完の関係にあります。
ありがちなNG例
– 本体価格のみ大きく表示し、支払総額を小さな注記や別ページにしか記載しない。
– 「諸費用一律○万円」と一括りにして内訳を示さない、または実費とかけ離れた高額設定。
– 標準条件で必須の費用(例 登録代行手数料、リサイクル預託金、ナンバー代等)を「別途」として支払総額から外す。
– ウェブの一覧画面では本体価格だけを表示し、詳細画面でしか支払総額を出さない。
– 希望ナンバー費用や遠隔地陸送費を「標準の支払総額」に入れて価格を過少表示(または過大表示)する。
まとめ
– 自動車公正競争規約における「総額表示義務」は、消費者がその広告条件で実際に支払うべき金額(支払総額)を税込・諸費用込みの一体価格で明確に示すことを要求するものです。
とりわけ中古車広告では必須であり、含めるべき費目・除外できる費目・表示の方法が細かく定義されています。
– 根拠は、景品表示法に基づく公正競争規約(中古自動車の表示に関する公正競争規約/自動車(新車)表示に関する公正競争規約)およびその施行規則・運用基準で、消費税の総額表示義務とも整合しています。
– 実務上は、媒体の第一表示面で「支払総額」を明瞭に示し、その内訳と前提条件を分かりやすく提示することが肝要です。
最新の条文・Q&Aは自動車公正取引協議会の公表資料で必ず確認してください。
総額に含めるべき税金・保険・諸費用・オプションはどこまで入れるべきか?
ご質問のポイントは2層あります。
第一に「消費税の総額表示義務」(税込価格表示の原則)、第二に「自動車公正競争規約(同施行規則・運用基準)に基づく“支払総額”の表示義務(中古車を中心に実質的に新車販促にも適用される表示ルール)」です。
結論から言うと、自動車の広告や見積における「支払総額」は、単なる税込価格にとどまらず、購入して公道走行が可能になるまでに「必ず発生する税金・保険・法定手数料・代行費用・装着済み付属品価格」を幅広く含めて表示することが基本です。
そのうえで、登録地域や納車方法などで金額が変動する場合は、条件を明示した“条件付きの支払総額”として表示します。
以下、含めるべき項目・含めない項目、オプションの扱い、条件付き表示の考え方、そして根拠を整理します。
総額表示義務の前提(2層)
– 消費税の総額表示義務
– 一般消費者向けに価格を示す場合、消費税等を含む「税込の総額」を表示する義務があります(国税庁「総額表示について」のガイダンス、特例失効により2021年4月以降原則復帰)。
自動車分野も当然対象です。
– 自動車公正競争規約(公正取引委員会・消費者庁認定の業界規約)
– 広告に価格を表示する際は、単なる車両本体税込価格だけではなく、購入者が販売業者に支払う「支払総額」を明瞭に表示し、その内訳(車両本体・付属品・諸費用・税金・保険・リサイクル関連・消費税額の別など)と表示条件を明らかにすることが求められます。
運用基準・Q&Aでは、中古車広告における支払総額表示を特に厳格化していますが、新車の販促表示でも同趣旨の適合が求められます。
支払総額に「必ず含める」もの(原則)
購入・登録・保有開始(公道走行)までに必ず発生し、購入者が販売店へ支払うことになる費用は総額に含めます。
代表例は以下のとおりです。
車両・付属品
車両本体価格(税込)
広告対象車に装着済みの工場オプション・ディーラーオプション(税込)
掲載写真・現車仕様に含まれる用品(ナビ、ドラレコ、フロアマット、ボディコート等)が装着済みでその費用を請求するなら、総額に含めます。
税金(取得・登録時等に必要)
環境性能割(旧取得税に代替。
新車・中古車とも課税対象になり得る都道府県税)
自動車重量税(車検新規取得や継続時に課税)
自動車税(種別割)/軽自動車税(種別割)の月割・年度取扱いに基づく清算分
新規登録・中古名義変更の時期や車検残の有無により、未経過相当の清算が実務上発生します。
総額に含め、前提条件(登録月、東京都内登録等)を明示します。
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)
公道走行の加入義務があるため、必要期間分を総額に含めます(新規車検取得時は24~37か月等、車検残に応じて変動)。
法定手数料(非課税の官公庁等に納付する費用)
検査登録印紙代、ナンバープレート交付手数料
車庫証明の証紙代(必要地域)
希望番号予約手数料(希望番号を前提条件に含める場合)
リサイクル関連費用(自動車リサイクル法)
新車時のリサイクル預託金(情報管理料金・資金管理料金含む)
中古車は預託済みの「預託金相当額」の精算が生じるため、総額に含めて内訳明示(「リ済別」等と称して外出しにするのは現在の運用では不適切とされます)。
販売店が必ず受け取る対価・業務費用(任意ではないもの)
検査登録手続代行費用(購入者自身が現実的に手続を行わない前提が一般的で、店側が必ず実施・請求するなら総額に含めます)
車庫証明取得代行費用(必要地域で店が実施・請求する場合)
納車前点検整備・法定点検・保安基準適合のための整備費用(「整備渡し」を標準条件とする場合)
下回りの法定基準適合・保安部品の交換費用等、登録・走行開始に不可欠なもの
総額に「含めない」のが原則(任意・条件次第)のもの
– 任意保険(自動車保険・対人対物等の任意加入分)
– ローン金利・信販会社取扱手数料・分割手数料等の資金調達コスト
– 任意の保証・メンテナンス商品(延長保証、メンテパック、コーティング等)が「選択制」の場合
– ただし、全車に必須の抱き合わせとして販売するなら、総額に含めるとともに、その内容・価格・理由を明確表示する必要があります。
任意商品を事実上必須のように見せる表示は規約上問題になります。
– 陸送・自宅納車費用
– 「店頭納車」を総額の前提条件にすれば、別途とできます。
遠方納車や離島輸送など可変要素の大きい費用は「別途、地域別目安を提示」等の扱いが推奨されます。
– 追加で新たに装着するオプション・用品
– 掲載車に未装着で、購入者が選べるもの(例 ETC追加、ナビグレード変更など)は総額に含めず、「オプション費用は別途」とします。
– 下取車に関する費用・調整金(下取車の査定料、残債精算、下取車のリサイクル関連等)
オプションを総額に「どこまで」入れるべきか
– 装着済みまたは販売条件として必須のオプションは「全て」総額に含めます。
– 掲載写真や現車に装着されている用品・オプションは、その税込価格を総額に算入。
例 メーカー純正ナビ、ドラレコ、ETC、マット・バイザー、ボディコーティング等。
– 販売店独自の必須パッケージ(例 全車コーティング必須)として実質不可避に課す場合は、抱き合わせと誤認されないよう内容・価格・理由を明確化し、総額に入れ、内訳とともに目立つよう表示します。
– 選択可能なオプションは総額から除外し、別掲で価格を提示。
– 「写真はオプション装着車」「当価格は写真のオプションを含まない」等の注記だけでは不十分で、支払総額には未装着ベースの価格を用い、オプション価格は個別に併記するのが原則です。
– 希望番号は選択性のため、希望しない前提で総額を表示するのが一般的。
希望番号を含む総額を掲示する場合は、その旨を条件として明示し、法定手数料を内訳化します。
条件付きの総額表示と地域・時期差の扱い
支払総額は、以下のような条件で上下します。
規約は「代表条件を明示した総額表示」を認めています。
代表例を明確に示し、条件外の費用発生可能性を近接表示します。
– 登録地(都道府県・市区町村)
– 車庫証明の要否や証紙代が異なるため、「東京都内で登録・店頭納車の場合の支払総額」といった表現を用います。
県外登録や車庫証明取得が必要な地域は別途費用が発生する旨を明記。
– 納車方法
– 店頭納車=陸送費用を含めない。
自宅納車や遠隔地輸送は別途、目安費用を提示。
– 登録月・車検残
– 自動車税(種別割)や自賠責・重量税は登録月や車検残で変動します。
表示では標準的な前提(月次や残期間)を置き、その条件を明記。
異なる場合は再見積で変動することを示します。
– 補助金・減税
– 国・自治体の補助金は「差し引いた価格の強調表示」は原則不可。
まず補助金控除前の支払総額を明確に表示し、条件を満たした場合の実質負担額は従たる説明に留めます(運用基準による不当表示防止の考え方)。
内訳の明瞭化(近接表示)
– 規約・運用基準は、支払総額とともに、少なくとも以下の内訳区分を近接表示することを求めています。
– 車両本体価格(税込)
– 付属品価格(税込)
– 法定費用(非課税 重量税、自賠責、登録印紙、ナンバー、車庫証明証紙、環境性能割は税であり課税区分を明示)
– 諸費用(販売店の代行費用・整備費用等。
課税・非課税の別も判る記載)
– リサイクル関連費用
– 消費税額(内書き)
– インターネット広告では、支払総額の直近に条件(例 東京都内登録・店頭納車・車検残○か月)を記し、県外登録・希望番号・納車費など別途費用の発生可能性と概算も示すことが推奨されています。
新車と中古車の相違点(実務上の注意)
– 新車
– 環境性能割・重量税・自賠責(新規加入)・リサイクル預託金を総額に含めます。
自動車税(種別割)の初年度月割の取扱いは自治体・登録月に依存するため、前提条件と変動可能性を明示。
– 展示車・在庫車で装着済みオプションがある場合は総額に含める。
注文生産のカタログ広告では、ベース車の総額(税・法定費用前提を置いた代表例)を提示し、オプションは別掲が基本。
– 中古車
– 車検残の有無により、自賠責・重量税・自動車税の「未経過相当」の清算が発生。
総額に含め、内訳上その旨を明記。
– リサイクル預託金相当額は、買主が売主に支払う性質のため総額に含めます(「リ済別」表示で外出しにするのは不可の運用が一般化)。
– 掲載写真に写る用品が未装着扱いで総額を下げる表示は不可。
現車の実装備に合わせて総額化し、未装着仕様の参考価格は別記。
根拠(参照先の方向性)
– 消費税の総額表示義務
– 国税庁「総額表示について(消費税法に基づく価格表示の考え方)」および同Q&A
– 消費者庁の価格表示に関するガイド(同旨)
– 自動車公正競争規約・同施行規則・運用基準(一般社団法人 自動車公正取引協議会)
– 価格表示に関する規定(支払総額の定義、内訳・条件の明示、インターネット広告の表示方法)
– Q&A/表示に関する運用基準(中古車の支払総額表示の必須化、リサイクル費用の扱い、抱き合わせ的オプションの明示義務、補助金差し引き表示の制限など)
– 関連法規(費目の性質根拠)
– 自動車リサイクル法(預託金の負担構造)
– 自動車損害賠償責任保険法(自賠責加入義務)
– 道路運送車両法(検査登録の手数料等の法定費用)
– 地方税法(環境性能割・自動車税種別割・軽自動車税の課税)
よくある実務上の落とし穴
– 総額に含めるべき代行費用・リサイクル費用を「別途」扱いにする
– 写真付き広告で、実装着オプションを含まない価格強調(不当な二重価格的誤認)
– 条件(登録地・店頭納車等)の表示が遠く小さい、または近接していない
– 補助金控除後価格のみを強調し、控除前総額が不明瞭
– 県外登録・希望番号等の「別途費用」の目安不提示
まとめ
– 総額表示は「税込」だけでは足りず、「その車に乗り出すまで必ず要る費用」を全て含めるのが原則。
税金(環境性能割・重量税・自動車税等)、自賠責、法定手数料、リサイクル関連、装着済みオプション、そして販売店が必ず請求する代行・整備費用は総額に含めます。
– 任意保険、ローン費用、選択的オプション、遠方納車費用などは総額から除外可ですが、条件の明示と別途費用の分かりやすい提示が必要です。
– 新車・中古車・登録地・車検残で金額が変わるため、代表条件を明記した「条件付き総額表示」とし、内訳を近接表示することが、自動車公正競争規約の趣旨に適合します。
本回答は規約・ガイドラインの要旨を実務的に整理したものです。
実際の広告・見積作成にあたっては、最新の「自動車公正競争規約・同施行規則・運用基準」および国税庁の「総額表示Q&A」を必ず原典確認してください。
新車・中古車・注文販売で総額表示のルールはどう異なるのか?
以下は、「自動車公正競争規約(および同施行規則)」に基づく「総額表示(支払総額の表示)義務」について、新車・中古車・注文販売で何がどう違うのかを整理したものです。
実務での運用(広告制作・見積提示・Web掲載など)で間違いやすい点も併せて解説します。
最後に根拠条文(規約名・条文名レベル)も記載します。
総額表示(支払総額)とは
– 定義の要点
– 広告等で価格を表示する場合、消費者がその広告条件どおりに購入・登録・引渡しを受けるために実際に支払うべき金額の総和(消費税込)を、見やすく表示する義務のこと。
– 総額表示には、車両本体価格(消費税込)に加え、登録に不可欠な法定費用(税金・保険料・申請印紙等)やリサイクル関連費用、広告条件下で必ず発生する諸費用(登録代行等の店頭手数料のうち不可避のもの)を含める。
– 任意選択の付帯商品・サービス(コーティング、ドラレコ、希望番号取得費用、延長保証、陸送費、下取関連費用など)は含めない(ただし広告条件として「その付属品込み」を前提にしているなら、その価格も含めた総額を表示する)。
総額の前提条件(中古車で特に明確)
販売店所在地の所轄運輸支局で登録
店頭渡し(陸送なし)
下取なし
希望番号取得なし
使用者(名義)は購入者本人
※これら標準条件での総額がベース。
条件が異なる場合の費用差は総額には含めず、別記(注意書き)で案内。
新車における総額表示のルール(新車規約)
– 基本原則
– 販売店が「販売価格(特別価格・キャンペーン価格等)」を広告に表示する場合は、当該仕様(グレード・装備・付属品)と標準条件に基づく「支払総額(消費税込)」の表示が必要。
– 一方で、メーカーや販売店が「メーカー希望小売価格(消費税込)」をスペック情報として表示するだけで、販売店固有の販売価格を提示しない場合は、総額表示までは要求されない。
ただし「別途、法定費用・リサイクル料金等が必要」といった注意書きは必要(実務上の定型文あり)。
総額に含める代表例(新車)
車両本体価格(消費税込)
リサイクル関連費用(預託金+資金管理料金)
登録に必要な法定費用(例 自動車税(環境性能割)該当時、重量税、自賠責保険料、検査登録手数料・証紙代等)
広告条件で必須の販売店手数料(例 登録代行費用等)。
ただし任意サービスは除外
総額に含めない代表例(新車)
任意オプション(コーティング、フロアマット等)を広告条件に含めていない場合
陸送費(店頭渡しが広告条件のため)
希望番号取得費用、下取り関連費用
自動車保険(任意保険)
新車特有の注意
新車はメーカーオプションの選択によって価格が大きく変動するため、「特定仕様」を特定せずに「販売価格」をうたうと、総額表示の前提が成立しにくい。
価格を出すなら仕様を確定し、当該仕様コミの支払総額を表示する。
メーカーの全国統一広告は、販売店手数料等が地域・事業者で異なるため「希望小売価格」の範囲にとどめるのが一般的(この場合、総額表示義務の適用対象外)。
ただし販売会社が独自の価格訴求を行う場合は総額表示が必要。
中古車における総額表示のルール(中古車規約)
– 中古車は特に「総額表示」を強く要求
– 中古車広告で価格を表示する場合、原則として「支払総額(消費税込)」の表示が必須。
単に「車両本体価格」だけを強調し、後から諸費用を積み上げる手法は規約違反となる。
– 支払総額は、上記「標準条件」(所轄運輸支局登録・店頭渡し・下取なし・希望番号なし・使用者本人)において実際に支払う金額で構成する。
総額に含める代表例(中古車)
車両本体価格(消費税込)
リサイクル関連費用(預託金・資金管理料金)
登録に必要な法定費用(自動車税(種別割)の精算・月割相当、重量税=車検取得時等、検査登録印紙・自賠責保険料など、該当するもの)
広告条件で必須の販売店手数料(登録代行費用など)。
中古車実務ではこれらを「諸費用」として総額に含めるのが標準
総額に含めない代表例(中古車)
購入者が選択できる任意の付帯サービス(コーティング、希望番号、延長保証プラン、ナビ・ETC追加、ルームクリーニングのオプションなど)
他府県登録・遠隔地への納車に伴う陸送費等(標準条件外のため)
中古車特有の注意
車検切れ車の場合 「車検取得渡し」を広告条件にして総額を出すのが基本。
法定費用(重量税・自賠責など)を総額に含める。
逆に「現状渡し」で販売するなら、その条件を明確化し、実際に必要な費用の扱いを誤認させないようにする。
「コミコミ価格」「乗り出し価格」という文言は、支払総額の定義と一致していれば用語自体は問題ないが、実際の総額とずれていたり、任意費用を後付けするような表示は不当表示の対象となる。
注文販売の扱い(新車・中古車の違いと共通点)
– 新車の注文販売
– 新車は本質的に注文生産・注文装備が前提だが、「販売価格」を出す以上は、その注文内容(グレード・色・メーカー/ディーラーオプション)を特定し、標準条件に基づく支払総額を表示する必要がある。
– 一方、「メーカー希望小売価格(消費税込)」の案内のみで、個別の販売価格を出さない(=見積依頼前提)の告知は総額表示の義務までは生じない。
ただし「別途、法定費用・リサイクル料金等が必要」等の注意書きは必要。
中古車の注文販売(在庫を持たず探して仕入れる形)
具体的な個別車両が特定されていない段階で、「◯◯万円〜」「乗り出し◯◯万円〜」と最低価格を示す広告は、実際の支払総額の確定可能性が低く、規約上問題になりやすい。
中古車規約は「価格を表示するなら支払総額を」と定めるため、個別車両が特定されず総額が確定できない表示は原則不可と理解されている。
注文販売を広告する場合の適切な方法
具体的な条件を満たす「実在かつ供給確実」な参考車両の例を示し、その条件での支払総額を表示する(サンプルの仕様・状態・走行距離・修復歴有無・車検有無などを明記)。
あるいは価格表示を行わず「条件に応じてお探しします。
見積は個別提示」とする(価格訴求を避ける)。
注文販売で共通のNG
実際には供給困難な水準の「〜価格」や「数量限定価格」を大きく表示して誘引し、来店後に条件を付け足して値上げするやり方は、規約のみならず景品表示法(有利誤認)上も問題となる。
新車・中古車に共通する総額表示の実務要点
– 表示方法
– 総額は消費税込で、視認性の高い位置・文字サイズで表示する(スマホ・PC・紙媒体問わず)。
– 総額の内訳(車両本体・諸費用・法定費用など)を近接して示すことが望ましい(規約は「総額」を主要求、内訳は施行規則・ガイドで推奨される)。
– 注意書きは「総額表示を打ち消す」ような過度で包括的な但し書きにならないよう留意(例 「その他一切の費用は別」等は不適切)。
何が含まれ、何が含まれないかを具体的に。
含める/含めないの判断基準
含めるべきもの=広告条件下で引渡しに不可欠で、購入者が必ず負担する費用
含めないもの=購入者が選択できる任意サービス、標準条件外で発生する費用(管轄外登録、遠隔地陸送、希望番号、任意保険など)
税目・法定費用の取扱い
消費税 総額表示は税込が原則(総額表示制度との整合)
自動車税(環境性能割) 新車・中古車とも登録時に課税され得るため、該当する場合は総額に含める
自動車税(種別割) 中古車では月割精算等の実務が伴う。
標準条件での見込み額を総額に反映
自動車重量税・自賠責 車検取得・名義変更の条件に応じて必要分を含める
リサイクル料金 預託済みの場合は預託金相当+資金管理料金を総額に含める
よくあるNG例
中古車で「車両本体価格◯◯万円」を大書し、総額(支払総額)を同一視野・同等視認性で示していない
「コミコミ◯◯万円」と言いながら、希望番号やコーティングなど任意費用を来店後に上乗せする
新車の「特別価格」を掲げながら、オプションや付属品を広告条件に含めていない(=実際にはその価格で買えない)
注文販売で「〜万円から」と最低価格を誘引に使い、個別見積で大幅に上げる(供給実態と乖離)
根拠(規約・施行規則・公的ガイドの典型的な参照先)
– 自動車の表示に関する公正競争規約(新車規約)
– 価格表示の原則(消費税込み表示、誤認防止)
– 販売価格を表示する際の支払総額の表示義務(特に販売会社広告の場合)
– メーカー希望小売価格の位置づけ(仕様未確定時の扱い、別途諸費用の注記)
自動車の表示に関する公正競争規約 施行規則(新車)
総額に含める費用の範囲(法定費用・リサイクル関連費用・登録手続に不可欠な費用)
注意書きの方法、視認性、インターネット広告での表示位置やフォント等の実務基準
中古自動車の表示に関する公正競争規約(中古車規約)
第◯条(価格の表示)における「支払総額」表示義務
標準条件(所轄運輸支局登録・店頭渡し・下取なし・希望番号なし)での総額算定の考え方
任意付帯サービス費用を総額に含めない原則
中古自動車の表示に関する公正競争規約 施行規則・解説・Q&A
総額の内訳表示例、含める/含めない項目の具体例
注文販売の価格表示に関する考え方(不確定条件下での「〜価格」表示の不可/留意事項)
車検の有無、整備渡し/現状渡しに応じた総額の扱い
総額表示制度(消費税法関係)
消費税を含む支払総額の表示(小売段階の価格表示は税込が原則)
自動車公正競争規約はこの制度と整合する形で「支払総額=税込」を求めている
注記
– 条文番号は改正により変更される場合があり、実務では最新版の「規約」「施行規則」「ガイドライン/Q&A(自動車公正取引協議会が公表)」を確認してください。
– 税目(特に自動車税の環境性能割・種別割)や印紙手数料の細目は法改正の影響を受けるため、広告時点での正確な額・該当可否を踏まえて総額を算定してください。
– インターネット広告では、価格と総額が離れて表示されると「打消し表示」とみなされるおそれがあります。
価格の近傍、同等の視認性で総額と内訳・前提条件を示すことが重要です。
まとめ(新車・中古車・注文販売の違いの要点)
– 新車
– 販売店が「販売価格」を出すなら支払総額が必須。
メーカー希望小売価格のみの表示なら総額義務は直ちには生じないが、別途必要費用の注記が必要。
– 仕様(オプション等)を特定して、その条件での総額を示す。
中古車
価格を表示する際は原則必ず「支払総額」を表示(本体価格のみは不可)。
標準条件での法定費用・リサイクル費用・不可避の諸費用を含める。
任意サービスは除外。
注文販売
新車は仕様特定のうえ総額表示。
中古車は実在・供給確実な個別車両を特定し、その車の総額を示す。
車両未特定の段階での「〜円〜」表示は原則不可・不適切になりやすい。
以上が、新車・中古車・注文販売における総額表示の相違点と根拠・実務上の留意点です。
実際の広告・見積・Web掲載では、最新の「自動車(新車)/中古自動車の表示に関する公正競争規約・施行規則」「同ガイドライン/Q&A」および消費税の総額表示制度を必ず参照し、各税目・法定費用の取扱いを最新法令に合わせてください。
ウェブ・紙媒体・店頭表示で求められる記載方法や注意事項は何があるのか?
以下は、日本の自動車販売に関する「総額表示」と「自動車公正競争規約(新車・中古車)」を踏まえ、ウェブ・紙媒体・店頭表示で求められる表示方法と注意点の整理と、その根拠の解説です。
実務で問題になりやすい「支払総額」の考え方、注記の付し方、禁止・注意表現、クレジット表示、通販サイトにおける特定商取引法の表示まで含めています。
総額表示の基本(業種共通の必須ルール)
– 原則 価格を表示する場合は、消費税および地方消費税を含めた「支払総額(消費税込)」を、価格の近くに、はっきり判別できる形で表示することが必要です。
– 税抜価格の単独表示は不可。
税抜+税込の並記は可能だが、税込価格が主たる価格として明確に認識できる必要があります。
– ウェブでリンク先に「税込み」と書くだけ、店頭で小さな札にだけ税込と書く、といった離れた注記は不可。
価格の直近・同一視認領域に「税込」または税込の金額自体を表示してください。
– 根拠 消費税法(総額表示の義務付け。
国税庁「総額表示の義務付けについて」参照)。
2014年以降の特例措置は2021年3月末で終了し、現在は全面適用中。
自動車公正競争規約の位置づけ(自動車業界の上乗せルール)
– 業界特有の必須表示事項・禁止表示が定められています。
新車は「自動車公正競争規約」、中古車は「中古自動車公正競争規約」と、それぞれの施行規則・運用基準があります。
– 規約は景品表示法に基づく業界の公正競争規約で、所管官庁(公正取引委員会・消費者庁)の認定を受け、一般社団法人 自動車公正取引協議会が運用しています。
– この規約により、一般の総額表示に加え、自動車の広告・店頭表示には「支払総額の明示」「内訳の考え方」「中古車の走行距離・修復歴・保証等の必須記載」などが求められます。
支払総額の考え方(新車・中古車共通の基本)
– 支払総額に含めるもの(代表例)
– 車両本体価格(課税)
– メーカー・ディーラーオプション等の付属品(課税)
– 登録・届出等の法定費用(不課税/非課税) 自動車税(種別割・環境性能割の該当分)、自動車重量税、自賠責保険料、検査登録印紙等
– 各種代行費用・手数料(課税) 登録手続代行料、車庫証明手続代行料、法定点検整備費用(販売時に実施する場合)
– リサイクル料金(預託金相当額)
– 支払総額に含めなくてよい(代表例)
– 任意の追加選択により発生する費用(例 希望ナンバー、延長保証やコーティング等の任意オプション、遠隔地への陸送費)
– 店頭渡しを前提としない特別な納車形態の費用(自宅納車の個別輸送費など)
– 表示の前提条件
– 店舗の標準的な販売条件(登録地が店舗の通常の管轄、店頭渡し)を前提に支払総額を出し、別途となる費用があり得る場合は、何が別途かを具体的に脚注等で明示します。
– リサイクル料金は総額に含めるのが原則。
別掲するなら「総額に含めた上で」内訳として区分記載します。
– 根拠 自動車公正競争規約(新車)・中古自動車公正競争規約(中古車)の施行規則・運用基準(自動車公正取引協議会)。
国税庁の総額表示通達。
媒体別の表示要件と注意点
A. ウェブサイト(在庫ページ、ランディングページ、ポータル出稿等)
– 必須
– 支払総額(消費税込)を価格のすぐ近くに明瞭に表示
– 内訳の要点(車両価格、諸費用、リサイクル料金など)。
スペースに制約がある場合は「内訳はリンク先/展開で確認可」でもよいが、総額自体は当該画面で明確に。
– 別途かかる可能性のある費用の具体例を脚注で記載(例 「支払総額は○○市内登録・店頭納車時。
希望ナンバー・県外登録・遠隔地納車は別途」)。
– 中古車でさらに必須・推奨
– 年式(初度登録)、走行距離、車検の有無と残期間、修復歴の有無、保証の有無・内容、定期点検整備の実施有無およびその費用が支払総額に含まれるか
– 走行距離計交換歴があり実走行が担保できない場合は「走行距離不明」の明記
– 届出済未使用車の表現は条件を満たす場合に限り可。
「新古車」「新車同様」など誤認を招く表現は不可
– 新車での注意
– メーカー希望小売価格と自社販売価格を混同させない。
比較・割引表示をする場合は比較対象価格の根拠・適用条件を明確に
– 体裁面
– 価格のフォントや色で税込総額を弱く見せるのは不可。
注記は容易に判読できる大きさ・コントラストで、スクロールやタブ切り替えをしないと見えない位置にのみ置くのは避ける
– 通販機能がある場合(予約・申込含む)
– 特定商取引法の通信販売表示義務を充足(事業者名、所在地、電話、運営責任者、販売価格・送料、支払方法・時期、引渡時期、返品特約、申込有効期限など)
– クレジット・リース表示
– 支払例を出す場合は、現金販売価格(支払総額)、頭金、支払回数、月々支払額、ボーナス加算額、実質年率、割賦手数料などを明示。
過度に低額のみを強調しない
– 根拠 自動車公正競争規約・中古自動車公正競争規約(ウェブ広告にも適用)、特定商取引法(通信販売広告の表示義務)、割賦販売法(与信関連広告の表示)
B. 紙媒体(チラシ、新聞広告、雑誌広告、DM)
– 必須
– 支払総額(消費税込)を価格の近くに明確表示
– 主要内訳(車両価格、諸費用、リサイクル料金等)。
スペース制約が大きい場合でも、総額表示の省略は不可
– 条件明示(登録地・店頭渡し・別途費用の具体例)
– 中古車では加えて
– 走行距離、年式、車検残、修復歴有無、保証・整備の扱い
– 掲載写真・イラスト
– 画像は実車と異なる場合「写真はイメージ」など誤認防止の注記。
限定車やオプション装着車の写真の場合、その旨を明記
– 限定・値引表現
– 台数限定は具体的台数を記載し、実在性・提供可能性を確保
– 二重価格表示(値引前価格の提示)は景品表示法のガイドラインに従い、比較対象価格の適正性・根拠期間を満たすこと
– 根拠 自動車公正競争規約・中古自動車公正競争規約、景品表示法(不当表示)
C. 店頭表示(プライスカード、ポップ、店内掲示)
– 必須
– 支払総額(消費税込)を最も目立つ価格として表示
– 主要内訳(車両価格、諸費用、リサイクル料金)。
中古車は「保証の有無・内容」「定期点検整備の有無・費用の包含」「走行距離・年式・車検の有無」「修復歴の有無」も同一カード等で明示
– 別途費用が生じ得る場合の具体的注記
– 判読性
– 総額や重要注記を小さすぎる文字や背景と同系色で判読困難にしない。
価格の桁落とし(万単位のみの表示など)で誤認させない
– 商標・表現
– 「国産最安」「絶対に他店より安い」などの優良誤認は不可。
比較広告は客観的根拠を保持
– 古物営業
– 中古車販売では店内に古物商の許可標識の掲示義務。
広告物への許可番号の記載は法定義務ではないが、信頼性の観点で記す事業者が多い
– 根拠 自動車公正競争規約・中古自動車公正競争規約、景品表示法、古物営業法(標識掲示)
中古車特有の表示事項の要点
– 修復歴の定義に基づく表示(骨格部位の損傷修復の有無)。
曖昧な「軽微な事故程度」などは不可
– 走行距離はメーター表示値と実走行の整合性に応じた表示。
交換歴等で実走行が担保されない場合は「不明」
– 保証の有無・期間・距離制限、保証の対象部位、免責条件
– 定期点検整備の実施有無、費用の包含関係
– リサイクル料金の取扱いは総額に含め、内訳で区分可
– 根拠 中古自動車公正競争規約・施行規則・運用基準(自動車公正取引協議会)
新車特有の注意点
– メーカー希望小売価格の引用は明確に区別し、自社の販売価格と混同させない
– オプション込みの価格を例示する場合は、どのオプションを含むかを具体的に明記
– 納期・台数・キャンペーンの適用条件を具体的に
– 根拠 自動車公正競争規約、景品表示法
よくある落とし穴と回避策
– 税抜価格を大きく、税込を小さく表示 NG。
税込の総額を主表示に
– 総額に含むべき諸費用の別掲・別請求 NG。
店頭渡し・標準登録の条件で総額に包含
– 「支払総額はお問い合わせください」 NG。
総額の不表示は規約違反
– 「新古車」「新車同様」などの用語 NG。
条件を満たすときは「届出済未使用車」と正確に
– 走行距離や修復歴のあいまい表現 NG。
規約定義に従い明確に
– ローン例で「月々○○円だけ」を強調し、年率や回数・総支払額の表示欠落 NG。
割賦販売法等に合わせて必須事項を併記
– ウェブで価格の近くに「税込」表記がなく、ページ下部だけに説明 NG。
価格の直近で明示
実務で使える注記例
– 支払総額は、○○市内登録(届出)・店頭納車の場合の価格です。
県外登録、希望番号、遠隔地納車等の費用は別途申し受けます
– リサイクル料金は総額に含まれます(リサイクル預託金相当額○○円)
– 定期点検整備費用は支払総額に含まれます/含まれません(含まれない場合は金額又は概算と根拠を掲示)
– 保証 有(期間○年/走行○万km、対象部位、免責事項)
– 修復歴 無/有(内容の開示可)
– 走行距離 ○○km(メーター交換歴なし)/走行距離不明(理由を説明可能)
根拠法令・規約(参照先の整理)
– 消費税法(総額表示の義務。
国税庁「総額表示の義務付けについて」解説参照)
– 景品表示法(優良誤認・有利誤認の禁止、二重価格表示のルール)
– 自動車公正競争規約(新車の表示基準)および同施行規則・運用基準
– 中古自動車公正競争規約(中古車の表示基準)および同施行規則・運用基準
– 特定商取引法(通信販売の広告表示義務 通販機能のあるウェブ)
– 割賦販売法(クレジット・リース等の広告表示に関する規制)
– 古物営業法(中古車販売事業者の標識掲示等)
まとめ(媒体別の最重要ポイント)
– ウェブ 税込の支払総額を価格のすぐ近くに。
中古は修復歴・走行距離・保証・整備の有無を忘れず。
通販機能があるなら特商法表示も必須
– 紙媒体 スペースがあってもなくても総額の不表示は不可。
条件・別途費用は具体的に。
画像や限定の注記を明確化
– 店頭 プライスカードに支払総額を最も目立つ形で。
内訳・中古車の必須項目・別途費用の明記、判読性の確保
注意 各規約・運用基準は随時改定されます。
実際の運用にあたっては、最新の「自動車公正競争規約/中古自動車公正競争規約」の原文・運用基準(一般社団法人 自動車公正取引協議会)、国税庁の総額表示ガイド、景品表示法・特定商取引法・割賦販売法の最新ガイドラインをご確認ください。
事業形態や地域特性により、支払総額の前提条件(登録地や店頭渡しの定義など)に細部の差異があり得るため、店舗の標準条件を明記することが実務上の最善策です。
違反時のリスクは何か、実務でのチェック体制はどう整えるべきか?
ご質問の「総額表示義務」と「自動車公正競争規約(以下、規約)」は密接に関係しますが、管轄・目的が異なります。
前者は主に消費税を含む価格表示(いわゆる税込み総額)を消費者向け表示に義務付けるルール、後者は自動車の広告・表示全般を適正化し、「支払総額」(購入に際し必ず必要な一切の費用を含む価格)の明示等を求める業界ルール(景品表示法に基づく公的承認を受けた自主規制)です。
以下、(1)違反時のリスク、(2)実務のチェック体制、(3)主な根拠資料の方向性、の順で詳述します。
違反時のリスク(何が起こりうるか)
– 行政リスク(景品表示法・消費者庁)
– 不当表示(有利誤認、価格に関する誤認)認定のリスク
– 総額表示を怠り「税抜価格のみ」や、必須費用を含まない価格を前面に出すと、実質的に安く見せる表示として不当表示に該当し得ます。
– 措置命令(再発防止・表示是正・周知命令)と公表
– 措置命令を受けると社名・事案が公表され、信用失墜の影響が長期化します。
– 課徴金納付命令(売上に対する制裁的金銭負担)
– 不当表示で得た売上に対し一定割合の課徴金が科され得ます(近時、価格・割引を巡る表示事案での適用が増加)。
– 刑事罰の可能性
– 措置命令違反等の悪質事案では刑事罰の対象となり得ます。
– 自動車公正取引協議会(業界団体)からの措置
– 警告・指導・違反事業者名の公表・是正報告要求
– 重大・反復違反の場合、会員資格に関する措置(入会停止・除名等)
– 協議会は広域にモニタリングを行っており、ポータル掲載・紙媒体・店頭表示を横断的に点検します。
– 国税・総額表示(消費税)に関する指導
– 総額表示義務それ自体に直罰が想定されるケースは多くありませんが、所管当局からの是正指導の対象になり得ます。
また、景表法面からの不当表示認定に発展することがあります。
– 契約・民事リスク
– 表示価格と実際の請求が齟齬→返金・減額要求、損害賠償、契約解除
– 消費者裁判手続特例法(簡易な集団的回復手続)の対象化の可能性
– 取引・レピュテーションリスク
– ポータルサイトやモールのアカウント停止・非掲載
– メディア・SNSでの拡散、採用・金融取引(在庫ファイナンス等)への波及
– 内部統制・監査上の指摘
– 上場会社や大手グループでは内部統制(J-SOX)の不備、監査役・監査法人からの指摘・改善勧告
実務でのチェック体制(どう整えるべきか)
A. 基本方針・内規の明文化
– 「価格表示ポリシー」を文書化
– 総額表示(消費税額等を含む価格)の原則
– 規約の「支払総額」表示の定義と範囲(購入に必ず要する費用はすべて含める)
– 付帯・任意オプション(コーティング、延長保証、納車費用、希望番号等)は別掲・別計算
– 二重価格・割引表示の要件(比較対象・期間・根拠データの保存)
– 媒体別の表現ルール
– 店頭札、紙媒体、Web・ポータル、SNS、動画広告、メール/LINE配信のテンプレート化
– 許容表現例(OK例)とNG表現集
– OK例 「総額198.0万円(内消費税等18.0万円、当社○○県内登録・店頭納車・当月登録条件。
オプション費用別)」など
– NG例 「車両本体価格180万円+諸費用」「税抜価格180万円(税別)」のみの表示
B. 価格算定プロセスの標準化・システム化
– 支払総額の構成要素マスタを整備
– 必須費用(例)
– 車両本体価格(リベート込みの最終販売価格)
– 消費税額等(総額表示の肝)
– 法定費用(自賠責保険料、重量税、検査登録手数料・番号標代)
– 取得時に必ず発生する公租公課(例 環境性能割)
– リサイクル関連費用(最新の規約・実務に沿って取扱いを統一)
– 条件により増減する費用の扱い
– 登録地域(運輸支局)・登録月・店頭/遠方納車などの代表条件を広告に明記し、その条件で算定
– 代表条件外の場合の差額算定手続と説明文言を準備
– 計算ロジックの自動化
– DMS/在庫・見積システムに税率・法定費用テーブルを実装
– 改定(自賠責・税制改正・手数料変更)時の即時反映体制
– 見積書から広告用データを自動生成し人的転記を排除
C. 表示審査のガバナンス
– 二段階承認フロー
– 価格入力担当→コンプライアンス/表示審査担当のダブルチェック
– 媒体出稿前レビュー
– クリエイティブチェックリスト(総額の明示、条件の明確化、文字の可読性、打消し表示の適正)
– ポータル連携時の項目マッピング検証(「支払総額」欄と「車両価格」欄の整合)
– 定期モニタリング・監査
– 月次サンプリング(全店舗・全媒体から抜取)
– ミステリーショッピング(見積提示が広告と一致するか)
– 逸脱時の是正と再発防止(根本原因分析、教育、システム改修)
D. 表示と実取引の整合(フロント・バックの連携)
– セールス教育
– 「支払総額」と「任意追加」の峻別、口頭説明の標準トーク
– 値引・下取・ローン手数料等は支払総額に含めない一方、見積段階で明確に区分表示
– 書面・電子記録
– 広告スクリーンショット、見積書、契約書、計算根拠の保存(課徴金算定期間の立証・弁明資料になる)
E. 取引先・プラットフォーム管理
– 広告代理店・制作会社・ポータルへのルールブック提供と遵守条項
– SLA/契約で誤表示時の是正・補償・緊急停止プロセスを明記
F. 事故対応計画
– 違反疑い検知→即時差替・出稿停止→社内通報→法務・広報・CS連携
– 影響顧客への説明・返金・価格適用の基準
– 行政・協議会への自主報告が有利に働く場合の判断基準
総額表示義務と規約の要点(実務の勘所)
– 総額表示(消費税)
– 不特定多数の消費者に向けた価格表示は、消費税額等を含む総額を明瞭に表示することが原則
– 表示の例 税込1,100円/1,100円(税込)/1,100円(税抜1,000円、消費税等100円)
– 税抜のみの表示や「+税」だけの表示は不可(総額の併記が必要)
– 自動車公正競争規約(支払総額)
– 自動車の広告では、購入に当たり必ず支払う費用を全て含んだ「支払総額」を明示するのが原則
– 含めるべき典型例 車両本体、消費税、法定費用(自賠責・重量税・検査登録手数料・番号標代等)、取得時公租公課、(規約上の最新運用に沿った)リサイクル関係費用、販売条件として必須の整備費用など
– 含めない(別掲)典型例 任意オプション(コーティング等)、延長保証、陸送・遠方納車費(代表条件が店頭納車の場合)、希望番号、ローン利息・手数料、任意保険
– 変動要素の扱い 登録地域・登録月・納車方法などの「代表条件」を広告に明瞭に記載し、その条件で算定した支払総額を表示。
条件が異なる場合の差額発生をわかるように示す
– 近時の改正動向 支払総額の定義明確化、必須費用の包括表示の徹底、リサイクル料金表示の分かりやすさの向上等、強化が継続
– 二つのルールの関係
– 総額表示(税の観点)<支払総額(購入必須費用を全包含)の方が広い概念
– よって自動車広告では「税込表示」を満たすだけでは不十分で、「支払総額」の前面表示が必要
よくある落とし穴と回避策
– 「車両本体価格」を前面に、支払総額を小さく打消し⇒NG
– 回避 ファーストビューで支払総額を主表示。
車両本体価格は補足として併記
– 「諸費用は別途」だけで内訳なし⇒NG(何が必須か不明)
– 回避 必須費用は支払総額に含め、任意の費用は「例 希望番号は+○○円」と具体的に
– 税抜表示の併記で総額が探しにくい⇒NG
– 回避 総額を明瞭・判読可能なサイズで、併記は従たる表示に
– 代表条件の不記載(県外登録・翌月登録では増額)⇒不当表示リスク
– 回避 地域・登録月・納車形態などを具体的に明記し、差額発生の可能性をわかりやすく
– ポータル仕様に合わせたデータ連携のズレ
– 回避 フィードのマッピング検証、定期的な実画面チェック、API変更時の回帰テスト
根拠・参照すべき公的資料(方向性)
– 総額表示(消費税)
– 国税庁・消費者庁「総額表示の義務について」解説・Q&A
– 総額表示の具体例、対象媒体、併記方法、打消し表示の考え方がまとまっています
– 景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)
– 不当表示の禁止、措置命令・課徴金制度、公正競争規約の承認制度
– 消費者庁「表示対策」関連ページ、事例集、打消し表示に関する考え方
– 自動車公正競争規約・同施行規則(自動車公正取引協議会)
– 新車・中古車の広告表示ルール、支払総額の定義、表示の具体例、違反時の措置
– 改正概要・Q&A・実務ハンドブック(協議会サイトで公開)
– 特定商取引法(通信販売の表示)
– EC・SNS販売時の表示事項、誤認防止の考え方(消費者庁「特商法ガイド」)
– 自動車関連の公租公課
– 自賠責保険料(金融庁・損保料率機構資料)
– 自動車重量税(国土交通省・国税庁)
– 環境性能割(各都道府県税事務所・総務省資料)
– これらは支払総額の算定根拠・改定時期の確認に必須
– 自動車リサイクル関連
– 自動車リサイクル法の運用情報(環境省・自動車リサイクルシステム)
– 表示上の取扱い(規約のQ&A・通達類)
実務導入のステップ(簡易ロードマップ)
– 0〜1カ月 現状棚卸し(媒体別サンプル収集、支払総額計算フローの見える化)
– 1〜2カ月 ポリシー策定・テンプレート作成・チェックリスト整備
– 2〜3カ月 システム設定(マスタ整備、代表条件の既定化)、二段階承認運用開始
– 3〜6カ月 全社研修・月次モニタリング・ポータル連携の回帰テスト
– 継続 法改正・規約改定のトリガー管理(一次情報の購読、協議会セミナー参加)
最後に
– 総額表示は「税込の明示」、規約は「支払総額(購入に必須の総費用)の明示」という二層構造です。
自動車の広告・店頭・Webでは「支払総額」をファーストビューでわかりやすく表示し、代表条件を具体的に添えることが、もっとも実効的なコンプライアンスです。
– 最新の細目(例 リサイクル料金の扱い、代表条件の書き方、文字サイズ・打消し表示の妥当性等)は、自動車公正取引協議会の最新版資料・Q&A、消費者庁のガイドライン・事例集で必ず一次確認してください。
必要に応じて所管当局・協議会へ事前照会し、文書回答を保存することを推奨します。
【要約】
支払総額の内訳は、車両本体・装着済オプション、登録等の法定費用、自賠責、重量税、税(環境性能割・月割種別割)、標板・車庫証明代、リサイクル料金、登録等の代行手数料、消費税を明示。任意保険や希望ナンバー、遠隔地陸送など標準外・任意費用は除外可。内訳金額も分かるよう表示。