年式は査定額にどれほど影響し、何年落ちから下がり方が加速するのか?
結論(要点)
– 年式が査定額に与える影響は大きく、特に「新車〜5年落ち」までの前半で減価が大きく、その後は車検・保証・税制・モデルチェンジ等の節目で段階的に下がり方が加速する傾向があります。
– 一般的に下がり方が加速しやすいのは「3年・5年・7年・10年・13年・18年」の節目です(理由は下記)。
– ただし実際の下落率は、車種(軽/ミニバン/SUV/セダン/輸入車/EV)、人気、モデルチェンジのタイミング、走行距離、修復歴、相場の需給に大きく左右されます。
年式が価格に効くメカニズム
1) 新車プレミアムの剥落
– 新車から1年目で最も大きく下がりやすく、概ね20〜35%程度(人気車や供給不足時はもっと緩やか)。
「未使用車」との競合、登録された時点での心理的減価が要因。
2) メーカー保証の節目
– 一般保証は3年/6万km、特別保証は5年/10万kmが国産車の目安。
保証が切れるタイミング直前〜直後で買い手のリスク認識が高まり、価格が段差的に下がりやすい。
3) 車検サイクル(初回3年、その後2年ごと)
– 多くの買い手が「車検が長く残っている個体」を好むため、3年、5年、7年…の直前・直後で価格の谷や段差が生じやすい。
車検直後は整備済みの安心感で維持、切れ間際は見積り上の整備費想定が上乗せされ、相対的に下がる。
4) モデルチェンジ(FMC/MC)
– フルモデルチェンジ(一般に5〜7年周期)や大幅マイチェンの告知・発売の前後で旧型が相対的に割安化し、下がり方が一時的に加速。
安全装備・コネクト機能の進化が速い近年は影響が大きい。
5) 税制の重課(13年超、18年超)
– 初度登録から13年経過で自動車税(種別割)や重量税が重課、18年超でさらに重課(区分や年ごとの制度改正で詳細は変動)。
保有コスト上昇が需要を弱めるため、13年・18年で相場が一段下がる傾向。
6) メンテナンス費用の増加
– 7〜10年頃から消耗品・足回り・電子部品の交換リスクが増え、買い手はその費用を織り込む。
結果的に10年落ち前後で下落が再加速しやすい。
年式ごとの典型的な下落イメージ(日本市場の一般傾向)
– 0→1年落ち -20〜-35%(人気・希少車は-10%程度に収まる場合も)
– 1→3年落ち 年あたり-10〜-15%。
3年目に保証・初回車検の節目でやや加速。
– 3→5年落ち 年あたり-8〜-12%。
5年で特別保証が切れる車種が多く再度加速。
– 5→7年落ち 年あたり-8〜-12%。
FMCが絡むと一時的に下げが強まる。
– 7→10年落ち 年あたり-10%前後。
維持費懸念で再加速しがち。
– 10→12年落ち 下げはやや鈍化することも(底値圏に近づくため)。
ただし個体差が大きい。
– 13年超 税制重課で段差的に下落。
以降は需要細りで緩やかな下落と二極化(人気・趣味車は別挙動)。
– 18年超 もう一段の重課や部品供給懸念でさらなる下落。
ただし旧車・希少車・商用の一部は逆行高もあり。
「何年落ちから下がり方が加速するか」の具体
– 3年落ち付近
– 一般保証切れ、初回車検。
リース・代替の放出増で供給が厚くなる。
相場がつきやすくなる反面、競合多く値は締まる。
– 5年落ち付近
– 特別保証切れ。
2回目車検。
FMCの時期に重なりやすく、装備の世代差が目立つため旧型の相対価値が落ちる。
– 7年落ち付近
– 3回目車検。
多くの消耗品交換が重なる時期で買い手がコストを警戒。
FMC後期のため価格差が拡大しやすい。
– 10年落ち付近
– 主要補機・足回り・電装の劣化リスクで再加速しがち。
価格は底値帯との攻防だが、整備履歴がない個体は敬遠されやすい。
– 13年・18年
– 税制重課の明確な段差。
市場価格にも段差が現れやすい。
車種・セグメント別の傾向差
– 軽(特にハイトワゴン)
– 需要が非常に厚く、残価が高い。
3年で60〜75%、5年で45〜60%が目安のことが多い。
年式による下落は緩やかで、車検・保証の節目影響は相対的に小さめ。
– ミニバン(国産)
– 需要が安定。
人気グレードは強含み。
3年で55〜70%、5年で40〜55%。
アルファード/ヴェルファイア等の上級は例外的に強い局面あり。
– SUV
– クロカン系や指名買いの強いモデル(ランドクルーザー、ジムニーなど)は年式劣化が相対的に小さいか、時に上昇局面も。
一般的な都市型SUVはミニバンに近い残価。
– セダン
– 需要縮小の影響で下がり方が早め。
3年で40〜55%、5年で25〜45%と厳しめになりやすい。
– 輸入高級車
– 初期減価が大きく、3年で30〜50%、5年で15〜35%という例も。
保証・維持費の不確実性が価格に反映されやすい。
– EV
– 技術進化が速くバッテリー劣化への懸念もあり、モデル・ブランド間の差が極端。
バッテリー保証(多くは8年/16万km)前後で下がり方が加速することがある。
充電規格やソフト更新対応も影響。
年式以外の強い交絡要因(年式の影響を上書きしがち)
– 走行距離
– 閾値として3万km、5万km、7万km、10万kmで価格に段差が出やすい。
特に10万km超は心理的抵抗が強く、同年式でも大差になる。
– 修復歴
– あり(骨格修正等)の場合は同条件比で10〜30%以上下がることが多い。
軽度の板金修理(修復歴なし)とは影響が別物。
– 個体状態
– 記録簿、ワンオーナー、禁煙、内外装の評価点、タイヤ溝、消耗品交換履歴、リコール対策済み等で数十万円単位の差がありうる。
– 需給と季節性
– 1〜3月(決算・進学就職期)や半導体不足・生産調整などの外的要因で相場が振れる。
2021〜2023年の新車供給不足期は若年式中古の値崩れが小さかったが、2024〜2025年は正常化傾向。
根拠・背景となる情報源と仕組み
– 査定実務の基盤
– 日本自動車査定協会(JAAI)等の査定基準では、年式・走行距離に対する標準減価(減点)と、車種別の相場を反映した評価が用意されており、年式進行に伴うベースダウンが体系化されています。
実数値は会員向け資料ですが、「年式・距離の二軸で標準価格を補正し、個体状態で加点減点」が実務の大枠です。
– オークション相場の統計
– USSやAUCNETなどの業者間オークションでは、3年・5年・7年の車検/保証節目、およびFMC前後での価格変動が繰り返し観察されます。
月次出来高が増える時期(3月前)やフリート放出期(年度替わり)に供給が増え、相場の階段ができやすいことも裏づけになります。
– 保証・車検・税制という制度要因
– 一般保証3年・特別保証5年と車検サイクル(3年/2年ごと)は国内市場特有の明確な節目。
さらに初度登録から13年・18年経過での自動車税・重量税の重課は、保有コスト上昇を通じて中古車需要に直接効き、価格の段差を生むメカニズムです(毎年度の税制改正で率や名称は変わりうるが、「13年・18年の節目」は長年の共通項)。
– モデルライフの一般則
– 5〜7年のフルモデルチェンジ周期、2〜3年のマイナーチェンジ周期が多く、先進安全装備(予防安全、コネクテッド、ADAS)の進化が速い昨今は、世代差が価格に反映されやすい状況です。
売却タイミングの実務的アドバイス(年式起点)
– 3年・5年・7年の直前に売ると、保証/車検残の長さが評価されやすい。
– フルモデルチェンジの正式発表前〜発表直後は旧型が弱含むため、FMC噂段階でも動きたいなら早めが無難。
– 13年の重課境界をまたがないように(12年目台での売却)計画する。
– 年度末(1〜3月)は需要が強く相場が高い傾向。
逆に夏は弱めになりやすい。
注意点
– 上記の数字はあくまで一般則。
実際の査定はグレード、色、装備、地域、相場タイミング、修復歴、走行距離、整備履歴、さらにはニュース(リコール・不正問題)等で上下します。
– EVや一部輸入車は技術・為替・保証事情により変動が大きく、年式だけの曲線に当てはめにくい場合があります。
– 「年式」は日本では初度登録年のことが多く、海外でいうモデルイヤーとは異なる点に注意。
前期/後期の違い(マイチェン)も価格に影響します。
まとめ
– 年式は査定の土台となる強い要因で、下がり方が加速しやすい節目は「3年・5年・7年・10年・13年・18年」。
– 加速の根拠は、保証・車検・モデルチェンジ・税制・維持費リスクという制度・市場メカニズムにあります。
– ただし個体差と需給が最終価格を大きく左右するため、売却時は年式だけでなく走行距離・修復歴・整備履歴・季節要因も併せて最適タイミングを判断するのが実務的です。
走行距離は何キロを境に減点され、年間平均と比べてどう評価されるのか?
結論の要点
– 減点の境目は「総走行距離の絶対値」ではなく「年式に対する標準走行距離」をどれだけ超過(または下回り)しているかで決まるのが基本です。
– 標準走行距離の目安は、一般的な乗用車=年1万km、軽乗用車=年0.8万km、商用系=年2万km前後(業務用途)という業界慣行が広く使われます。
– オークションや買取現場では、3万/5万/7万/10万km(さらに12万/15万km)といった「心理的な節目」で価格ステップが生じやすく、10万km超は大きめのマイナスが入ることが多いです。
– 年間平均との比較では、年式×標準走行距離と実走の差分を距離単価(1,000kmあたり数百〜数千円)で加減算するのが実務的な運用です。
減点の考え方(査定の基本ロジック)
– 査定協会方式(日本自動車査定協会=JAAI等)では「標準走行距離」という考え方があり、車種区分ごとに年当たりの基準値を設け、それに対して実走が多ければ減価(マイナス)、少なければ加価(プラス)をつけます。
– よく使われる標準値の目安
– 普通乗用車 1万km/年
– 軽乗用車 0.8万km/年
– 小型〜普通貨物(商用) 2万km/年前後(用途で幅)
– 「年式×標準走行距離=その個体の標準的な総走行距離」とみなし、超過分は減点、下回る分は加点。
極端に少ない場合は「長期放置・不自然さ」のリスクとして加点が抑制されたり、場合により小幅のマイナスをつける運用もあります。
何キロを境に減点されるのか?
(現場の境界感覚)
– 制度上の境目 年式基準
– 例)登録から5年の普通乗用車なら標準は約5万km。
これを上回れば距離減点、下回れば距離加点の方向。
– 実務上の「節目」 絶対距離の段差
– 3万km 低走行として売りやすく、相対的にプラス傾向。
– 5万km 多くの相場でひと区切り。
ここを超えると緩やかなマイナスが増えやすい。
– 7万km 次の節目。
販売店の保証条件や消耗品更新の見込みからマイナス幅がやや大きくなりやすい。
– 10万km 大きな節目。
グレード上限の制約や購買層の絞り込みにより明確な価格ダウンが入りやすい。
– 12万/15万km 再度段差。
個体差・整備歴次第だが、販売側が原価に慎重になりやすい。
– この「節目」は、査定の点数表で明文化されているというより、小売市場の需要とオークション落札の実勢が生んだ心理的・取引上の段差です。
したがって、同じ10万km超でも、人気車種・高需要グレードでは下げ幅が小さくなることもあります。
年間平均と比べてどう評価されるか(距離単価の加減算)
– 基本式のイメージ(普通乗用車の例)
– 標準走行距離=年式(経過年数)×1万km
– 差分(実走−標準)×距離単価=加減価額
– 距離単価の相場感(1,000kmあたり)
– 軽・大衆コンパクト おおむね500〜1,000円
– ミドル〜上級国産 1,000〜2,000円
– 輸入・高額帯 1,500〜3,000円以上になることも
– 注意
– 距離単価は相場局面・車種人気・コンディションで変動します。
また同一車種でも年式が新しいほど距離差の影響が大きく、年式が古いと距離の影響は相対的に薄まります。
具体例
– 例1 3年落ち・普通乗用車・実走45,000km
– 標準=3万km、差分=+15,000km(オーバー)
– 距離単価1,500円/千kmなら、15千km×1,500円=約22,500円のマイナス
– 例2 5年落ち・軽自動車・実走20,000km
– 標準=0.8万×5=4万km、差分=−2万km(低走行)
– 距離単価800円/千kmなら、20千km×800円=約16,000円のプラス
– ただし「極端な低走行」でない範囲。
タイヤ・ゴム類の経年硬化や放置感が見えればプラスが相殺される場合あり。
– 例3 7年落ち・ミニバン・実走100,000km
– 標準=7万km、差分=+3万km
– 距離単価1,200円/千kmなら、30千km×1,200円=約36,000円のマイナス
– さらに「10万kmの節目」到達により再販難易度の補正で追加マイナスが上乗せされることが多い(実務上の段差)。
年式・修復歴との相互作用
– 年式との関係
– 新しい年式ほど距離差の評価はシビア。
1年落ちで2万kmは高走行扱いになりやすく、5年落ちで5万kmは平均的、8年落ちで3万kmは「かなりの低走行」で強いプラス。
– 修復歴との関係
– 骨格部位の修復歴(いわゆる修復歴有)は走行距離よりも価格影響が大きいのが一般的。
低走行でも修復歴有なら距離のプラスが相殺され、トータルでマイナスが先行しやすい。
高走行かつ修復歴有はディスカウントが累積します。
– 消耗品・整備記録
– 同じ距離でも、記録簿・定期整備の有無、タイヤ・ブレーキ・ベルト類の残量/交換履歴で評価が動きます。
高速主体で内外装がきれいな個体は距離マイナスが緩和されやすいです。
よくある誤解と例外
– 「絶対にこの距離で減点」という固定ラインがあるわけではない
– 形式上は年式×標準走行距離が基準。
10万kmの段差は実務上の再販影響によるもの。
– 過小走行のリスク評価
– 極端に少ない走行(例 10年で1万km未満など)は、保管状況や整備履歴が弱いと警戒され、小売で売りにくくなることがあるため、加点が限定的になることがあります。
– 区分別の基準差
– 軽乗用と商用では標準走行距離が違い、同じ10万kmでも受け止めが異なります。
業務車は年2〜3万kmが珍しくないため、距離に対する許容が広め。
実務でのコツ(売却側の視点)
– 年式×標準距離との関係を自分で計算し、距離差の説明材料を用意する(主に低走行側)。
– 記録簿、点検整備記録、交換部品の領収書を整理して提示する(距離マイナスの緩和や低走行の裏付けに有効)。
– 出品・査定前にタイヤ空気圧、バッテリー、警告灯、簡易清掃を整える(同距離でも見た目で差がつく)。
– 10万kmの節目前に売るべきかどうかは、直近の整備費見込み(タイミングチェーン・ATF・足回り等)と相場推移を天秤にかけて判断。
根拠(基準・資料の出どころ)
– 日本自動車査定協会(JAAI)の「中古自動車査定基準」において、標準走行距離の概念と距離による加減価の考え方が採用されています。
区分別に年当たりの標準距離を設定し、差分に距離単価を乗じて加減算する枠組みが示されています。
– オークション検査機関(AIS、JU各会場、USS等)の評価基準では、走行距離が評価点や出品票のコメントに影響します。
明確な「点数表」は会員資料ですが、10万km超でグレード上限が厳しくなるなどの運用は業界で広く共有されています。
– 年間平均走行距離の実態は、公的統計・業界統計(国土交通省の自動車関連統計、自動車検査登録情報協会の公開データ等)で、自家用乗用車は概ね年7,000〜10,000km程度のレンジにあることが確認できます。
査定実務では、このレンジの中で「1万km/年(軽は0.8万km/年)」を標準とみなし評価する慣行が一般化しています。
– 取引の「節目距離」(5万・7万・10万km等)については、会場成約データや小売マーケティング上の需要変化に基づく経験則で、保証商品やローン審査・広告訴求の都合が影響要因です。
まとめ
– 走行距離の減点は「年式×標準走行距離」を超えた分が基本で、乗用車は1万km/年、軽は0.8万km/年が目安。
差分に車種・相場に応じた距離単価(1,000kmあたり数百〜数千円)を掛けて金額調整します。
– 市場の心理的節目(3・5・7・10万kmなど)が追加の価格段差を生みやすく、とくに10万km超は明確なマイナスが入りやすい。
– 年式・修復歴・整備履歴と組み合わせて総合評価されるため、距離単独ではなく、記録簿やコンディションの裏付けが重要です。
もし具体的な車種・年式・走行距離を教えていただければ、標準距離との差分と、市場レンジに基づく概算加減価の試算もお手伝いできます。
修復歴と事故歴は査定でどう区別され、軽微な修理はどこまで許容されるのか?
ご質問の要点は「修復歴と事故歴の区別」「軽微な修理はどこまで許容か(修復歴にならないのか)」「年式・走行距離・修復歴が査定にどう影響するか」と、その根拠です。
中古車業界の実務基準に即して、順に詳しく説明します。
1) 用語の整理 修復歴と事故歴の違い
– 修復歴(業界用語) 車体の骨格(フレーム)にまで損傷が及び、その骨格部位を修理・交換・切り継ぎ・修正した履歴を指します。
骨格に手が入っていれば「修復歴あり」と判定されます。
中古車の表示や査定で公式に用いられる概念です。
– 事故歴(一般的な言い方) 広義には事故に遭った事実全般を指します。
バンパー交換だけの軽微な事故も含み得ます。
中古車業界では、広告や車両状態票で「事故歴あり=修復歴あり」とほぼ同義で使う事業者もありますが、本来は「事故の事実」と「骨格修理の有無」は別です。
従って「事故はあったが骨格は無傷(修復歴なし)」というケースも普通に存在します。
2) 修復歴の判定基準(骨格部位と作業内容)
中古車の査定・表示で参照される実務基準(自動車公正取引協議会の表示規約、JAAIの査定基準、AISやオートオークションの評価基準など)での共通点は「骨格部位に損傷があり、修理・交換等が施されたかどうか」です。
骨格部位の代表例は次のとおり(名称や扱いは車種構造や基準団体によって若干異なりますが、概ねの共通認識です)。
骨格部位の典型
– フロントサイドメンバー(フレームレール)
– クロスメンバー(サブフレーム含む。
ボルトオンのメンバー単体交換は骨格修理扱いにしないのが一般的だが、取付け部(ボディ側)修正は骨格修理)
– ピラー(A/B/Cピラー)
– ダッシュパネル(カウルパネル)
– ルーフパネル(交換は骨格修理扱いが一般的)
– フロアパネル(センターフロア、トランクフロア等)
– インサイドパネル(フロント/リア)
– サイドシル(ロッカーパネル)
– ラジエータコアサポート(溶接一体構造を切り替え・修正した場合は骨格扱い。
ボルトオン交換のみなら非骨格扱いとする運用が多い)
– リアエンドパネル、パッケージトレイ等の骨格相当部位
骨格部位に対し、次のような作業があれば「修復歴あり」になるのが通例です。
– 交換(溶接剥離や切り継ぎを伴う)
– 修正(フレーム修正機での引き出し等)
– 切開・切断・接合(切り継ぎ)
– 大きなたわみや波及変形の矯正
逆に、骨格部位に損傷がなく、外板や付属品だけで済む作業は「修復歴なし」と判定されます。
3) 軽微な修理で「修復歴にならない」もの(許容される範囲)
次のような修理・交換は、原則として修復歴には含まれません(ただし、作業の過程で骨格部位に手が入っていれば例外です)。
バンパーの交換・塗装(前後)
ボンネット(フード)、トランクリッド、ドア、フロントフェンダー等のボルトオン外板の交換・調整
外板(ドア外板・フェンダー・ボンネット等)の板金塗装
ヘッドライト、テールランプ、ラジエーター、コンデンサー等の補機類交換
フロントグリル、ラジエーターサポートがボルトオン構造の車種でのサポート交換(ボルトオンに限る)
サスペンションストラット、アーム、ナックル、ハブ、ホイール等の足回り部品の交換(ボディ側取付部を修正していなければ非骨格)
ガラス交換(フロント・リア・サイド)
マフラーや触媒、ラジエータホース等の機能部品交換
エアバッグ展開の有無自体は骨格修理の有無とは別概念(展開歴は価格に影響しやすいが、骨格無傷なら修復歴には直ちに該当しない)
注意すべきグレーゾーン
– クォーターパネル外板の交換は、単体の張替え(外板のみ)なら非骨格扱いが多い一方、インナーパネル(ホイールハウス、サイドメンバー端部等)に切り継ぎや修正が及べば修復歴となります。
– ラジエータコアサポートは、溶接一体での切り継ぎ・修正は骨格扱い。
ボルトオン交換は非骨格扱いが一般的。
– サブフレーム(メンバー)単体交換は非骨格扱いが多いが、取付けブラケットやフロア側の修正を伴うと骨格扱いに格上げされます。
4) 年式・走行距離・修復歴の査定への影響
中古車相場の三大要素は「年式」「走行距離」「状態(修復歴を含む)」です。
影響の出方には相互作用があります。
年式(経年) 新しいほど基礎価格が高く、同じ修復歴でも下落幅が大きく出やすい。
逆に高年式(古い)になるほど、修復歴による絶対額の下落が縮む傾向はあるが、比率としては無視できない。
走行距離 日本市場では「年1万km前後」が平均的な目安。
超過走行は減価、低走行はプレミアム。
ただし過度な低走行でも保管状態が悪ければ評価は伸びにくい。
修復歴があると低走行プレミアムが相殺されやすい。
修復歴 骨格修理歴は、機能安全・耐久・再販性の不確実性を理由に、相場上の減点が最も強く出やすい属性の一つ。
特に登録後3~5年・低走行の個体では影響が大きく、ミドル~高級セグメントやスポーツモデルでは減額率がさらに大きくなる傾向。
逆に10年以上・10万km超などの低価格帯では、修復歴による下落は相対的に小さくなることが多い。
相場感の目安(あくまで一般論)
– 同条件で「無修復」と比べると、「修復歴あり」はおおむね1~3割程度の下落が見込まれることが多い。
重い骨格(ピラー・フロア・ルーフ)や複数箇所の修正、エアバッグ展開歴、溶接範囲が大きい場合は3割超のケースも。
– 軽めの骨格(コアサポート溶接、端部のインサイドパネル等)に留まり、走行・直進性・足回りジオメトリに問題がないと確認できれば、減額は1割前後に収まることもある。
– 低年式・高走行帯では絶対額の下落は小さくなるが、仕入れ側は在庫リスク(売れ残り・与信・輸出可否)を織り込むため、比率での下落が想定より大きく出ることもある。
5) 実務での見分け・開示・評価のポイント
– 証跡書類 修理見積書・作業指示書・鈑金写真・部品伝票・保険会社の支払明細があれば、骨格部位への作業有無が判断しやすく、無用な減額を避けられます。
– 第三者検査 AIS、JAAA(日本自動車鑑定協会)等の外部鑑定を付けると、修復歴の線引きが明確になり、査定側・購入側とも安心材料になります。
– 実車の観察ポイント シーラーの切れ・打ち直し、スポット溶接痕の不連続、パネル裏の波打ち、フレーム修正機クランプ痕、塗装肌・膜厚の急変、各パネルのチリ・段差、アライメント値・直進性・タイヤ偏摩耗など。
これらは骨格修理の痕跡探しの定番です。
– 開示姿勢 事故(対物・自損)に遭った事実があっても骨格無傷なら「修復歴なし」で正当です。
ただし、広告や商談では「軽微な板金とバンパー交換のみ、骨格無傷」と明言し、見積・写真を併記すると信頼が上がり、査定の不確実性による過大減額を抑えられます。
6) よくある誤解と注意
– 「エアバッグが開いた=修復歴」は誤り。
エアバッグ展開は評価下落要因ですが、骨格に手を入れていないなら修復歴ではありません。
– 「ラジエータサポート交換=必ず修復歴」も車種・構造次第。
ボルトオン交換は非骨格、溶接切り継ぎは骨格扱いが一般的です。
– 冠水歴・焼損歴・塩害車・メーター交換歴は「修復歴」の枠外でも、重大なマイナス要因。
別途の表示義務や査定減点があります。
7) 根拠となる基準・出典の位置づけ
– 自動車公正取引協議会(自公協) 中古車の表示に関する公正競争規約・施行規則で、修復歴の表示義務と骨格部位に関する考え方が示されています。
実務では「骨格部位に損傷があり、修理・交換等が施されたものを修復歴車とする」という定義が踏襲されています。
– JAAI(一般財団法人日本自動車査定協会)の自動車査定基準 業界の査定教本として、骨格部位の範囲や修復歴判定の手順が整理されています(教本は有償配布)。
市場の査定マン教育のベース。
– AISやオートオークション(USS等)の車両評価基準 評価点R/RA等で修復歴の有無を明示。
骨格判定の部位リスト・判定要領は各社で公開資料・講習があり、実務の標準として広く流通しています。
– JU(日本中古自動車販売協会連合会)やJAAA(日本自動車鑑定協会)の鑑定基準 第三者鑑定での修復歴判定方法が明示され、消費者向けにもわかりやすい説明が整備されています。
上記の団体間で、部位名の呼び方やラジエータコアサポート等の細目の扱いにわずかな差はありますが、「骨格に損傷が及び、修理・交換等を行ったかどうか」という本質は一致しています。
したがって、具体的な車両での線引きが気になる場合は、該当車の修理方法(ボルトオンか溶接か、外板のみかインナーまでか)を確認し、第三者基準(AIS/JAAA/JAAI)に照らしてもらうのが最も確実です。
8) まとめ(実務的結論)
– 修復歴と事故歴は同義ではありません。
査定・表示の実務では「骨格部位に手が入ったか」で修復歴を判定します。
– 軽微な板金塗装やボルトオン外板・補機の交換は、原則として修復歴には該当しません。
溶接を伴う骨格部位の修理・交換・切り継ぎ・修正は修復歴になります。
– 年式・走行距離・修復歴の三要素のうち、修復歴は下落インパクトが強く、新しい・低走行なほど影響が大きくなりがちです。
– 境界事例は修理明細や鑑定で明確化するのが得策。
開示姿勢とエビデンス整備は、査定の不確実性による過大減額を抑えるために非常に有効です。
もし具体的な車両(年式、走行距離、修理内容の見積や写真)があれば、その内容に沿って「修復歴該当の可能性」「相場影響のレンジ」「開示の仕方」まで個別にアドバイスできます。
年式・走行距離・修復歴のうち、総合評価で最も重視されるのはどれか?
結論から言うと、総合評価で最も重視されるのは「修復歴の有無」です。
次点で「走行距離」、その次に「年式(経過年数)」というのが、日本の中古車市場における一般的な優先順位です。
以下、その理由(根拠)と各要素が価格・評価に及ぼす影響、例外的なケースまで詳しく解説します。
修復歴が最重視される理由と根拠
– 安全性・構造リスクが根本的だから
修復歴とは、フレーム・クロスメンバー・ピラー・ルーフ・フロアなど、車体の骨格部分に損傷が及び、交換や修正が行われた履歴を指します(ボルト止め外板の交換や軽微な板金は通常「修復歴」に含まれません)。
骨格損傷は車の直進安定性、衝突時の保護性能、足回りのアライメント保持など、根本的な安全領域に影響します。
つまり「直せば元通り」とは限らず、見た目が綺麗でもリスクが残りやすい。
これが市場で強く嫌われる第一の理由です。
取引インフラに組み込まれたペナルティ
国内主要オートオークション(USS等)や第三者検査(AIS、JAAA等)の評価制度では、修復歴がある車は評価点に上限が設けられ、無事故同等車と同じスコア帯に乗りません。
業者間のB2B相場が形成される時点で「修復歴車=別ライン」の価格帯になり、これが小売価格にも強く波及します。
評価点の天井が低いという制度設計自体が、修復歴の重みを示す明確な根拠です。
価格差の大きさと金融・保証面の扱い
市場実務では、同一条件(年式・グレード・走行距離・状態が近似)の車を比べた時、修復歴が付くと無事故車比で1~3割程度安くなることが多く、損傷部位・修復品質・車種人気度次第では4~5割近い差が出ることもあります。
さらに、延長保証や認定中古車プログラムの対象外になりやすい、残価設定ローンやリースの査定で不利、といった金融・保証面の制約も価格に織り込まれます。
これらは中古車小売ポータル(カーセンサー、グーネット等)の大量事例や業者間オークションの落札傾向から一貫して観察される現象です。
流通の間口が狭まる(出口リスク)
修復歴車は販売時の説明義務があり(中古車公取協の表示ルール等)、無事故車よりも販売難易度が上がります。
仕入れ側(買取店・業者)にとっては回転率や在庫リスクが高まり、買取値は抑制されます。
出口が狭い(次の買い手を見つけにくい)こと自体が強いディスカウント要因です。
総合すると、修復歴は「安全・品質の根幹」「評価制度上の減点の大きさ」「保証・金融の制約」「流通リスク」という多方面から価格に強力に効くため、年式や走行距離より優先的に見られます。
走行距離が次点の理由
– 物理的摩耗=将来費用・故障リスクの代理変数
走行距離はエンジン・トランスミッション・サスペンション・ブッシュ類・ベアリング・内装のヤレに直結します。
距離が伸びるほど、メンテ費用の発生確率が高まり、買い手はその期待コストを価格にディスカウントします。
市場の心理的閾値
日本では年間1万km前後が「普通」の目安とされ、5年で5万km、10年で10万kmあたりに心理的な節目が生まれやすい。
特に10万km超はタイミングベルト(該当車)、ダンパー、各種シール類などの交換候補が重なるイメージから、無条件に嫌われがちです。
実際、同年式・同条件で5万km差があると1~2割程度の価格差になることは珍しくありません。
例外と進歩
近年は耐久性の向上や点火・燃料・潤滑管理の精密化で、距離に対する実害は昔ほど単純ではありません。
トヨタ系ハイブリッドなどは高走行でも実需が強く、メンテ履歴が整っていれば距離ディスカウントが緩い車種もあります。
ただし、「同条件なら距離が少ない方が高い」は依然として鉄則です。
年式(経年)が3番手になる理由
– 減価償却は初期が大きく、その後は逓減
新車から数年の下落は大きいものの、5~7年を過ぎると年ごとの下落率は緩やかになりやすい。
年式は価格水準の“ベース”を決める要素ですが、同じ年式の範囲では距離や状態(内外装・足回り)での差がより強く出ます。
制度・税制の節目
日本では新車保証(一般3年・特定5年が多い)や車検サイクル、そして登録から13年超での自動車税種別割の経年重課など、年式起点のコスト差が存在します。
特に「13年超」直前・直後で需要が変わるため、ここは評価に効きやすい節目です。
ただ、これも修復歴ほどの絶対的な減点ではありません。
技術陳腐化の影響
先進安全装備(ACC、AEB等)やコネクテッド機能、インフォテインメントの世代差は年式に紐づくため、同クラスで比較すると新しい方が魅力的です。
それでも「骨格損傷の有無」ほど致命的な差にはなりにくいのが実情です。
ざっくりした影響感度の目安(実務感覚)
車種・グレード・相場局面で変動しますが、無事故同条件を基準とした体感レンジとしては以下のようなイメージを持つ業者が多いです(あくまで一般的傾向であり、固定係数ではありません)。
– 修復歴の有無 ±10~40%(重度や部位により最大級のインパクト)
– 走行距離差 ±5~25%(閾値やメンテ記録の有無で変動)
– 年式差 ±5~20%(初期年数と税制節目で効きやすい)
具体的な比較例
– 例A 同年式・同グレード・装備、無事故
5年落ち・3万km vs 5年落ち・8万km
→ 走行5万km差は相場で10~20%程度の価格差になることが多い。
例B 同年式・同グレード・走行距離近似
5年落ち・3万km・修復歴あり vs 5年落ち・3万km・無事故
→ 修復歴ありが15~30%下がるケースが一般的。
距離差より影響が大きい。
例C 年式と距離がクロス
7年落ち・10万km・無事故 vs 10年落ち・5万km・無事故
→ 「年式の新しさ」を重んじる層と「低走行」を重んじる層で好みが分かれるが、総合では低走行優位に転びやすい。
ただし10年落ちが13年超に近い場合、税制・車検整備費の心理が働き評価が圧されることもある。
例D 修復歴の“質”
コアサポート軽微修正のみ(実質軽度) vs リアフロア交換(重度)
→ 同じ「修復歴あり」でも部位・修復品質で価格影響は倍以上違い得る。
オークション評価や検査コメントの読み込みが重要。
セグメント別のニュアンス
– 軽・コンパクト
距離に敏感。
修復歴は強く嫌われる。
年式は5~7年までの下落が大きく、その後は距離勝負になりやすい。
– ミニバン・SUV
装備やグレードの差が効きやすい。
家族利用前提で修復歴敬遠の度合いは強め。
– 輸入車
高走行ディスカウントが相対的に大きい傾向(維持費の心理が強い)。
ただし認定中古の無事故・低走行は堅調。
– 商用バン・トラック
走行距離が最重視に近いが、それでも骨格修復は避けられがち。
用途次第で割り切り購入もある。
– EV/ハイブリッド
バッテリーSOH(健全度)が距離と年式の双方に紐づく。
初期世代EVは年式の影響がやや強い一方、急速充電多用歴など実利用の方が効く。
とはいえ、バッテリーパックやフロア損傷を含む修復歴は致命的。
売買での実務アドバイス
– 修復歴の透明化
「修復歴に該当しない」軽微修理と、「修復歴あり」の線引き(骨格部位の損傷・交換)を理解し、第三者機関の検査を活用して透明性を確保すると評価が安定します。
修復歴がある場合は、修理明細・写真・修理工場の資格等を揃えて品質を説明できるとディスカウントを圧縮しやすい。
走行距離の管理
定期点検記録簿、整備明細、消耗品交換履歴(タイヤ、ブレーキ、バッテリー、油脂類等)を揃え、距離相応のケアがされていることを示す。
10万km前後の節目整備を済ませておくと評価が上がる場合があります。
年式の節目
13年超の経年重課や車検前後の需要変動を意識した売却タイミングが有効。
最新の安全装備世代に対して劣る年式の場合は、装備差も価格に影響するため訴求点を整理すると良い。
まとめ
– 最も重視されるのは修復歴の有無。
理由は安全性・品質の根幹に関わり、評価制度・保証・金融・流通の各面で一貫して大きなハンディが課されるからです。
– 次に走行距離。
将来費用・故障リスクの代理指標で、心理的閾値(例 10万km)も効きやすい。
– その次が年式。
価格のベースは作るが、同年式帯の中では距離や状態の方が差を生みやすい。
税制や保証の節目でポイント的に効きます。
もちろん、車種・人気・装備・整備履歴・タイミングで個別差はあります。
しかし、「修復歴>走行距離>年式」という優先順位は、業者間オークションの評価設計と実際の落札傾向、小売現場での販売難易度、保証・金融の運用、買い手の安全志向という複数の根拠が相互に裏付け合う、もっとも再現性の高い経験則です。
査定額を守るために、保管・メンテ・売却タイミングで今すぐできる対策は何か?
ご質問の要点は「年式・走行距離・修復歴が査定にどう効くか」と「査定額を守るため、保管・メンテ・売却タイミングで今すぐ打てる実務的な対策と、その根拠」です。
以下、実際の買取現場と業者オークション(AIS/JAAA等の基準や相場運用)の慣行に即して整理します。
査定の三本柱と基礎知識(影響度の目安)
– 年式(経年) 新車から3年・5年で節目があり、初期3年の下落が最も大きく、その後は緩やか。
一般に同一条件なら1年古いごとに数%ずつ下がるが、モデルチェンジや人気・在庫状況で揺れます。
新しめの個体は「保証継承可」「先進安全装備の世代差」「法規適合(排ガス・自動ブレーキ)」が効くため、年式差が価格に直結しやすいのが根拠です。
– 走行距離 年間1万km前後が標準ライン。
3万・5万・7万・10万kmに心理的かつ実務的な閾値があり、直前で売ると有利。
10万km超は国内小売で敬遠されがちだが、車種次第で輸出需要が支える(例 ハイエース、ランドクルーザー/プラド、アルファード系、ディーゼル4WD等)。
買取は再販時の「想定残存寿命」「整備コスト引当」で距離が重く評価されるのが根拠です。
– 修復歴 日本の査定でいう「修復歴あり」は骨格部(ラジエーターコアサポート、サイドメンバー、ピラー、ルーフ、フロア、クロスメンバー等)にダメージ・修理があるもの。
これがつくと同等年式・距離比で20~40%、車種・状態次第でそれ以上の減額が常態(オークション評価でGradeが落ち、入札層が狭まるため)。
一方、フェンダーやドアの交換・板金など「骨格不問」の外板修理は大きな減点になりにくいのが通例です(ただし塗装肌・色差・歪みは減点)。
今すぐできる「保管」での対策
– 紫外線・熱対策 屋内保管 or 屋根付き、なければ通気性の良い専用カーカバー。
内装の樹脂・レザー劣化や塗膜の酸化(白ボケ)を防ぎ、ヘッドライト黄ばみも抑制。
外観と内装のヤレは査定で即減額されるため、予防の投資対効果が高いのが根拠。
– 防錆・下回りケア 海沿い・積雪地域は下回りやサビやすいボルト、ブレーキ配管に影響。
スノーシーズンや雨天後の下回り洗浄、泥の洗い流しを習慣化。
下回り錆はオークション検査で重く見られ、輸出向けでも嫌われるため、早期対処が価値維持に直結。
– 鳥糞・樹液の即時除去 酸性ダメージは塗装を侵し、研磨・再塗装コスト差し引きの対象になります。
– タイヤ・車体姿勢 空気圧を適正に保ち、偏摩耗を防止。
タイヤ溝・年式(製造週)が良好だと減額が入りにくい。
4本要交換相当だと2~8万円程度のコスト控除が入るのが実務上の根拠。
– バッテリー維持 乗らない時期は充電器(メンテナンスチャージャー)。
弱りきったバッテリーは査定時の始動不良・警告灯点灯リスクになり、減額や印象悪化につながります。
今すぐできる「メンテ」での対策
– 記録と透明性が価値 法定点検・定期点検、オイル・フィルター交換、ATF/ブレーキフルード/冷却水等、メーカー推奨周期で。
必ず納品書・整備記録簿を保管。
記録簿ありは再販時に買い手の不確実性(リスクプレミアム)を下げ、査定で有利になるのが根拠。
– リコール・サービスキャンペーンの消化 メーカーサイトで車台番号から確認。
未実施だと再販前に業者側の手間・時間コスト(機会損失)を見込んで差し引かれます。
– 保証継承 新しめ(3~5年以内)の車両はディーラー点検を受けて保証継承すると、次オーナーがメーカー保証を使えるため小売しやすく、買取が伸びます。
費用は点検実費程度だが、リターンは数万円以上見込める場合が多いのが根拠。
– ヘッドライト黄ばみ・小キズ ポリッシュで透明度回復、外装は軽度のスクラッチをコンパウンドで整える。
安易な再塗装は色差・肌で逆効果もあるため、まずは磨きとタッチアップ、板金はPDR(デントリペア)優先で「再塗装なし」を狙う。
オークション評価はオリジナル塗装を好むのが根拠。
– 飛び石対策 フロントガラスのチッピングは早期リペア(レジン充填)で交換回避。
交換コスト控除は大きい。
– 内装・ニオイ 徹底清掃、シート・天井・フロアカーペットの洗浄、オゾン脱臭。
タバコ臭・ペット臭は強い減点材料で、完全除去が難しいほどリセールが落ちます。
喫煙は現時点からでも控えるのが最善。
– 付属品の完備 スペアキー(1~3万円相当で評価差)、取扱説明書、ナビのSD/ディスク、整備記録簿、工具・ジャッキ、純正戻し可能な社外品の取り外し(社外ホイール・マフラー等は査定で加点されにくく、むしろ減点や販路制限の要因。
純正に戻して、社外品は別売の方が合理的なのが根拠)。
– 警告灯ゼロで渡す チェックランプ点灯車は診断・修理費相当を見込んで大幅減額。
センサー不良など軽微でも放置しない。
– EV/HEV特有のケア HV/EVは高電圧バッテリーの劣化印象が価格を左右。
長期保管は残量40~60%前後、極端な満充電・空は避け、頻繁な急速充電を控える。
SOH(State of Health)やディーラー診断記録が提示できると安心材料になるのが根拠。
今すぐできる「走らせ方」の工夫(距離対策)
– 距離の節目を意識 日常の無駄走行を避け、まとめ買い・公共交通の併用で走行を抑える。
特に売却直前に「5万km→5.1万km」「9.9万km→10.0万km」と跨ぐのは避ける。
閾値直前で売るのが定石。
– アイドリング・短距離の多用を減らす 機関のコンディションに影響し、煤やバッテリー充電不足を招きやすい。
エンジン・HVシステムの健康は試乗時の印象に直結。
修復歴リスクを最小化する行動
– 駐車環境 通行量の少ない区画、隣車が少ない端や柱横、強風の日は立体駐車などでドアパンチ・接触を予防。
– 当て逃げ対策 前後2カメラのドラレコでリスクヘッジ(事故発生時の過失・修理範囲を最小にしやすい)。
– 事故時の修理方針 骨格無傷ならPDRや外板交換・最小塗装で仕上げる。
骨格に及ぶ修理は「修復歴あり」となり、資産価値が急落するため、保険会社・工場と修理内容をよく協議するのがポイント(ただし安全最優先)。
売却タイミングの取り方(相場・税・季節)
– 走行距離の閾値前 上記のとおり。
日割りで距離が増えるほど逓減する構造。
– モデルチェンジ前後 フルモデルチェンジ直前は旧型相場が弱含み。
人気継続見込みの特別仕様や希少グレードは例外もあるが、一般的には発表・発売前に売る方が無難。
逆に絶版・希少車で相場が上がっているケースは専門店ルートが有利。
– 季節需要 オープンカー・スポーツは春~初夏、4WD・SUV・スタッドレス付きは秋~初冬に強い。
季節ミスマッチだと在庫日数見込みで減額されやすい。
– 為替・輸出相場 円安時は輸出勢が買い気配強く、SUV・ミニバン・商用の相場が底堅い。
海外人気の高い車種は円安局面に売ると有利。
– 車検残 残多めは小売しやすく加点。
ただし、売るためだけの車検更新は費用対効果が薄い(費用>加点になりやすい)。
残6カ月以上あると説明材料として効きやすい。
– 税タイミング 4月の自動車税課税基準日(4/1)を跨ぐと実質的な負担調整が入る場合があるため、売却・名義変更は早めに動くと無駄が少ない(地域・車種で扱い差あり。
買取業者が未経過相当を勘案するのが通例)。
査定当日の実務で効くこと
– 洗車・車内清掃・簡易コーティング 第一印象の改善は、検査員の「コンディション良好」判断につながる。
時間単価の戻りが大きい定番の打ち手。
– 書類と備品を揃える 整備記録簿、取説、保証書、スペアキー、純正パーツ、リコール実施記録、ナビSD、ドラレコ証跡などを一式提示。
透明性が高いほど減額理由が消えていく。
– 改造は純正戻し 足回り・排気・灯火類の社外品は、車検適合や販路制限の懸念で差し引かれがち。
純正戻し+社外は別売がセオリー。
– 複数同時査定・専門店併用 量販買取(在庫回転が速い)と車種専門店(顧客が付いている)を併用。
希少車は専門店が強い。
業者オークション出品代行(手数料は要比較)という選択肢もある。
– 即決前提の値引き要請に注意 減額条項や後出しのキズ指摘に備え、査定票や状態説明の相互確認、クーリングや減額条件の文面を精査。
修復歴の申告は正直に(後日の減額・トラブル回避)。
費用対効果の考え方(やるべき・やらないべき)
– やるべき 清掃・脱臭、軽微な磨き・ヘッドライトポリッシュ、飛び石リペア、PDR、記録整理、リコール・保証継承、純正戻し、スペアキー手配(紛失時は要見積り)。
– 見送りがち 広範囲再塗装、売却直前の高額整備(タイミングベルト・4本タイヤ・ディスク交換など)は費用>評価上昇になりやすい。
次オーナー整備前提で買取側がコスト見合いの価格を出すためです。
– 例外判断 目立つフロントガラス割れ、法規不適合(灯火・排ガス)は買取自体が難しくなるので最低限の復帰は有益。
数値的な根拠の一例(あくまで一般論)
– 修復歴ありで同条件対比20~40%のディスカウント(オークション評価の落ちと入札層縮小が要因)。
– タイヤ・ブレーキ・バッテリー・ガラス交換級の劣化は、合計で数万円~十数万円の整備引当が価格に反映。
– 距離閾値(5万・10万km)の跨ぎで、同日比較でも数万円単位の差が生じうる。
– 記録簿・保証継承の有無で数万円の差がつく事例は珍しくない(販売店の説明材料・保証コスト低減が根拠)。
すぐに着手できるチェックリスト(短期アクション)
– 今日 洗車、車内清掃・脱臭、タイヤ空気圧調整、下回り洗浄、スペアキー・取説・記録簿の所在確認、リコール確認・予約、不要走行の抑制、屋根下駐車の確保。
– 今週 ヘッドライトポリッシュ、飛び石リペア、軽微キズの研磨、PDRの見積取得、保証継承の相談、純正戻しの段取り、ドラレコ映像の整理(事故履歴なしの安心感訴求)。
– 今月 複数買取店・専門店・代行の相見積り、モデルチェンジ情報と季節需要の確認、売却時期の確定(距離閾値や車検残を勘案)。
まとめ
– 年式・走行距離・修復歴は「変えにくい事実」ですが、保管・メンテ・付属品・透明性・売却タイミングの最適化で、同条件比の上振れは十分に狙えます。
– 根拠は、再販時の「整備コスト引当」「在庫回転」「販路制限」「リスクプレミアム(情報の非対称性)」という業者の価格決定要因に、こちらの努力で直接介入できる点が多いからです。
– まずは距離の節目手前で動く、リコール・保証継承を済ませる、清掃・脱臭・PDR・ヘッドライト磨き・記録整備の提示、純正戻しと付属品完備、この5本柱を実行してください。
これだけで同じ車でも査定体験がまるで変わります。
【要約】
年式は査定額に大きく影響し、新車〜5年で大幅減。その後も3・5・7・10・13・18年(保証切れ、車検、モデルチェンジ、税制重課、整備費増)で下落が加速。実勢は車種・人気・走行距離・修復歴・需給で大きく変動。軽や人気SUVは残価が高めだが、10年超や重課期は弱含み。