過走行とは何kmからで、中古車買取ではいくら減額されるのか?
結論から言うと、「過走行」は2つの見方があります。
– 相対基準(業界の正式な考え方) 年式に対して「標準走行距離」を大きく超えていること。
標準はおおむね年1万km(=月1,000km)です。
– 絶対基準(消費者・オークション実務での感覚値) 総走行距離が10万kmを超えると一段価格帯が下がりやすい、いわゆる「10万kmの壁」。
中古車買取での減額は車種・年式・人気度・コンディションによって大きく変わりますが、相場実務の目安としては、標準走行距離を超えた分について「1万kmごとに約1~5万円」のレンジで価格が下がることが多く、10万kmをまたぐと同条件でもさらに10~30万円程度の一段下落が生じやすい、というのが一般的な傾向です。
以下、根拠と仕組み、具体例、車種別の違いまで詳しく解説します。
業界における「過走行」の定義
– 標準走行距離の考え方(根拠)
一般財団法人 日本自動車査定協会(JAAI)の査定基準では、年式に対する「標準走行距離」を設定し、これを超過すれば減点、下回れば加点する仕組みが採られています。
標準は乗用車で年間約1万km(=月約1,000km)が目安です。
査定士資格や査定ハンドブックに準拠した実務では、この相対基準で評価されます。
– 絶対的な「過走行」感覚
小売・消費者市場や大手オークション(USS、TAA、JU等)の相場では、総走行10万kmを境目に落札層や輸出需要の構成が変わり価格帯が切り替わる傾向が根強く、「10万km超=過走行」のラベルがつきやすいです。
さらに15万km、20万kmも次の段差になりがちです。
– 具体例
3年1.8万km → 低走行(加点対象)
3年6万km → 年1万kmを大幅超過で「過走行寄り」
8年8万km → 年式相応(中立)
8年12万km → 相対的にも絶対的にも過走行
減額が決まる仕組み
– 査定の構造
買取店は基準価格(相場本・オークション相場)に対して、走行距離・修復歴・キズ凹み・内外装・タイヤ・装備・色・メンテ履歴などを「加減点」し、換算して買取価格を決めます。
JAAIの査定基準は「標準走行距離からの超過分=減点、未達=加点」とする体系で、現場の査定士はこれに沿って評価します。
– 相場の根拠
実際の減額幅は、直近の業者オークション成約価格(市場実勢)が最大の根拠です。
買取店はそこから輸送費・整備費・在庫コスト・利益を差し引いて提示するため、同じ走行距離でもお店により提示額が異なります。
– 重要な注意点
メーター改ざん・走行不明は、走行距離の信頼性が担保できないため大幅減額(場合によっては買取不可)。
整備記録簿や点検記録の有無は走行距離の信用に直結します。
いくら減額されるか(相場目安)
以下は「標準走行距離を超過した分」に対する、業界実務上の一般的な目安レンジです。
車種、人気度、地域、時期で変動します。
新しめ(登録後1~3年)の大衆車 1万km超過あたり約3~6万円
理由 新しめの個体は低走行のプレミアが大きく、超過のネガが際立つため。
4~7年落ちの人気車(ミニバン・SUV・ハイブリッドの主流モデル) 1万kmあたり約1.5~3万円
理由 相場層が厚く、走行距離以外の要素(グレード・装備・色)が価値を支える。
セダン系・不人気車種 1万kmあたり約3~5万円
理由 需要層が限定的で走行距離の影響が価格に直結しやすい。
軽自動車・コンパクト 1万kmあたり約1~3万円
理由 台数が多く相場が滑らか。
輸出需要や地域需要で下振れ耐性あり。
10万kmの壁の影響 同条件で一段下落(約10~30万円)
例)9.8万km→10.2万kmに上がるだけで、買い手層が変わりガクッと下がることがある。
15万km・20万kmの段差 さらに一段下落(車種によっては10~20万円規模)
ただしランクル、ハイエース、ディーゼル4WDなどは輸出・耐久需要で下げ幅が緩い。
逆に低走行の加点(標準を大きく下回る場合)は、同じ幅で「1万kmごとに+1~5万円」相当で上振れすることが多いですが、過度な低走行(年式の割に極端に低い)は「不動期間の劣化懸念」で加点が伸びにくいケースもあります。
車種・用途別の違い
– 軽自動車/コンパクト 総じて距離影響は中程度。
外装状態や装備、ボディカラーの差が効く。
地方では距離より年式重視の傾向も。
– ミニバン/SUV 人気モデルは距離鈍感。
内装の使用感、スライドドアのガタ、天張り汚れなどの状態要素が価格に与える影響が大きい。
– 輸入車 年式が進むと距離による修理リスク(足回り/電装/ミッション)が意識され、距離ペナルティが国産より大きく出やすい。
– 商用車(バン/トラック) 年間2~3万kmが相場的に「普通」。
20~30万kmでも用途次第で需要あり。
整備履歴の有無で評価が極端に変わる。
– ハイブリッド/EV ハイブリッドは走行距離よりもバッテリー状態・交換歴が重要。
EVはSOH(State of Health)や急速充電使用頻度などの情報が価格の根拠となり、単純な距離減額では測れない面が増えています。
計算イメージ(目安)
– 例1 5年落ちコンパクト、標準5万kmに対して実走9万km(超過4万km)
目安単価を2万円/1万kmと仮定 → 距離要因だけで約8万円のマイナス。
その他の状態加減点と合算。
– 例2 7年落ちミニバン、9万km vs 10.5万km(条件ほぼ同じ)
1.5万km超過による距離減額(仮に2万円/1万kmで約3万円)に加え、「10万kmの壁」影響でさらに10~15万円の段差が発生する可能性。
– 例3 10年落ちSUV、12万km
10万km以降は1万kmあたりの減額が小さくなりやすい(既に廉価帯のため)。
人気SUVなら輸出・国内需要で相場が底堅く、減額は限定的に。
注意 これらはあくまで実務上よく見られるレンジ。
同じ車でもグレード・4WD/2WD・サンルーフ/安全装備・色・内外装状態・タイヤ溝・修復歴・ワンオーナー・記録簿の有無で10万円単位で上下します。
過走行でも評価を落としにくくするポイント
– 整備記録簿・領収書の保管(オイル/ATF/ブレーキ/冷却系/ハイブリッドバッテリー等の交換履歴)
– タイミングベルト車は10万km前後の交換済みが強い(ウォーターポンプ同時交換記録があれば尚良)
– 直近での消耗品更新(タイヤ、ブレーキ、バッテリー)は査定現場での印象を上げる
– 室内クリーニング・脱臭、禁煙アピール、内装の傷補修
– キズ凹みの小修理は費用対効果を要確認(板金費用>加点になることも)
– 事故歴・修復歴は正直に申告(隠すと後で評価が大きく下がる)
– 複数社査定と、輸出ルートを持つ買取店にも当たる(過走行は輸出需要が価格を下支えする場合が多い)
根拠のまとめ
– 標準走行距離=年1万km(乗用車)という相対評価は、日本自動車査定協会(JAAI)の査定基準に基づく業界の一般原則です。
現場の査定士はこの基準で走行距離を加減点します。
– 実際の減額幅は、USS等の業者オークションの成約相場が最大の根拠。
10万kmで買い手層が変わりやすく、価格帯が段差的に変化するのは市場データに即した実務傾向です。
– 減額は距離だけでなく「修復歴・内外装状態・装備・人気・色・メンテ履歴」の総合評価。
距離の影響は車種・年式・人気によって係数が変わります。
まとめ
– 過走行の目安は「年式×1万km」を明確に超えているか、または「総走行10万km超」。
– 減額の相場観は「1万km超過あたり約1~5万円」。
新しめ・不人気車は下振れが大きく、人気SUV/ミニバンは小さい傾向。
– 10万kmの壁では、同条件でも10~30万円規模の段差が起きやすい。
– ただし整備記録・コンディション・装備・色・需要次第で上下が大きい。
過走行でも輸出需要やメンテ履歴で価格を維持できるケースは多い。
– 最適解は「複数社で相見積り」+「記録簿と整備履歴の提示」。
距離以外の強みを見せることが重要です。
もし具体的なお車(年式・グレード・装備・色・走行距離・修復歴・地域)が分かれば、最新相場の傾向を踏まえて、より現実的な減額レンジの見立てをお出しできます。
走行距離の区切り(5万・10万・15万km)ごとの減額基準はどう違うのか?
中古車の買取現場でいう「過走行の減額基準」は、厳密に法律や公的ルールで決まっているわけではなく、業界の査定ハンドブック(日本自動車査定協会=JAAIの基準など)、オートオークションの落札相場、販売時の保証や整備コスト、消費者心理といった要素が混ざって形作られています。
ご質問の「5万・10万・15万km」という区切りは、絶対的な“業界ルール”ではないものの、実務では強い節目として機能しており、相場に明確な差が出やすいのが実情です。
以下、なぜ差が出るのか、どのくらい差が出やすいのか、その根拠も含めて詳しく解説します。
業界の基本ロジック(年式×走行距離の考え方)
– プロの査定は本来、年式に応じた標準走行距離を基準に「超過(過走行)/未満(低走行)」を評価します。
JAAI(一般財団法人 日本自動車査定協会)の査定では、乗用車の標準的な走行はおおむね「年1万km」が目安です(ディーゼルや業務用は別基準)。
例えば5年落ちなら標準5万km、そこからどの程度超過・不足しているかで加減点(=価格調整)が行われます。
– つまり本来は、単純な“絶対値の5万・10万・15万km”だけで減額を決めるのではなく、「年式に対して多いか少ないか」で見ます。
2年で6万kmは過走行ですが、8年で6万kmはむしろ低走行に近い、といった具合です。
それでも5万・10万・15万kmが節目になる理由
– 購買心理の節目
– 5万km 多くの人が「まだ十分若い・消耗が少ない」と感じる上限のひとつ。
販売時の見栄え(広告)でも「5万km未満」は訴求力があります。
– 10万km 国内小売では大きな心理的ハードル。
多くの延長保証・販売保証、金融商品、レンタアップ基準などが10万kmをラインに設定しているため、再販のターゲット層が狭まります。
– 15万km 国内小売ではさらに顧客が限られ、輸出や業販(業者間流通)に振れる比率が上がりやすい節目です。
– メンテナンス・耐久の節目
– 10万km前後で、大物整備(例 タイミングベルト交換車は10万km目安、ウォーターポンプ同時交換、ダンパー・ブッシュ類の劣化、ハブベアリング、補機ベルト・テンショナー、AT/CVTフルード、エンジンマウント等)の検討が必要になりやすい。
チェーン式エンジンが増えたとはいえ、足回りや冷却・電装の劣化は避けにくい。
– 15万kmを超えると、ラジエーター、オルタネーター、スターター、燃料ポンプ、EGRバルブ、触媒、センサー類などの突発的故障リスクが無視しづらく、買取側は想定整備コストを厚めに見積もります。
– 保証・ファイナンスの節目
– 国内メーカーの新車保証は一般的に「一般保証3年/6万km、特別(パワートレイン等)保証5年/10万km」程度が多く、延長保証や販売店保証も10万kmを一区切りにすることが多い。
これが10万km超のリテール難度を押し上げ、買取価格に反映されます。
– 取引市場(オートオークション)の慣行
– USS等のオークション帳票・評価では、走行距離の多寡が価格形成に直結。
10万kmを境に買い手層の構成が変わり、落札レンジが下がりやすい傾向が見られます。
輸出需要が強い車種は別の動きをしますが、国内小売前提の車種では明暗が分かれます。
走行距離の区切りごとの減額傾向(目安)
以下はあくまで一般的な相場感です。
年式・グレード・車種人気・事故歴・色・装備・地域相場・国際相場で上下します。
5万km前後
年式相応(例 5年落ちで5万km前後)なら、走行距離による減額自体は小さめ。
むしろ「5万km未満」の見栄えで、同年式の6~7万kmより数%高く売れることがある。
低年式(例 2~3年落ち)で5万kmを超えている場合は「過走行」と見られ、標準より2~5万km多い分が減額要因に。
車両価格にもよるが、数万円~十数万円単位の調整が入りやすい。
10万km超
同年式帯の7~8万km台から10万kmをまたぐと、心理的ハードル・保証外・整備費見込みが重なり、下げ幅が大きくなりやすい。
一般的な乗用セダン・ハッチバックで、10万kmを跨ぐタイミングで5~20%程度のディスカウントが付くことは珍しくない。
ただし、トヨタ系の耐久で人気のSUV・ミニバン、ディーゼル、商用バン(ハイエース等)は下げ幅が相対的に小さく、輸出が強い相場局面では10万km超でも堅調なケースがある。
15万km超
国内小売の主戦場から外れ、業販・輸出依存が高まる車種が増える。
10万km→15万kmの間でさらに10~30%程度の目減りが付くこともあるが、これも車種次第。
ディーゼルのクロカン、商用バン、トラック系は15~20万kmでも一定の需要があり、状態が良ければ“思ったほど落ちない”ことも多い。
年式と走行の組み合わせでの実例イメージ(架空の一例)
– 3年落ち・コンパクトカー・相場基準車両価格150万円と仮定
– 3万km 低走行で+5~10%(約7.5~15万円)上振れ
– 6万km 標準よりやや多めで-5~10%(約7.5~15万円)下振れ
– 11万km 大幅過走行で-20~30%(約30~45万円)下振れ
– 10年落ち・ミドルセダン・相場基準車両価格70万円と仮定
– 6万km 低走行で+5~10%(約3.5~7万円)
– 10万km 年式相応で減額小
– 15万km -10~20%(約7~14万円)
これらは目安であり、整備記録や状態次第で容易に覆ります。
車種・パワートレイン別のニュアンス
– ハイブリッド 10年10万km前後の駆動用バッテリー保証ラインが意識され、10万km超で保証切れリスクが嫌われやすい。
一方で交換済や健全度のデータ(ハイブリッド点検記録)があると下落が緩和。
– EV 走行距離よりもバッテリー劣化(SOH)が本質。
とはいえ走行距離は劣化の代理指標になり、10万km超は慎重に評価されがち。
メーカー保証・容量残存の実測が重要。
– ディーゼル・商用 高走行耐性が評価され、10万・15万kmのネガは小さめ。
輸出動向で相場が大きく変わる。
– 軽自動車 国内小売では10万kmの壁が比較的効く。
低走行プレミアムも出やすい。
減額を緩和できる「根拠(証拠)」の作り方
– 整備履歴の提示 法定点検記録簿、ディーラー・専門店の請求書、タイミングベルト/ウォーターポンプ交換、ATF・CVTF交換、ダンパー・ブッシュ類交換などの記録。
高額整備済は評価が上がり、10万km超の不安を軽減。
– 消耗品状態 タイヤ溝・年式、ブレーキ残量、バッテリー健全度。
交換済は即整備コストを下げるためプラス。
– 内外装の綺麗さ 同じ走行距離でも内装使用感や外装小傷で評価が大きく変わる。
クリーニング・簡易板金の費用対効果は高い。
– 診断レポート OBD診断でのエラーなし、下回り腐食の写真、オイル漏れなしの証跡は業者のリスク見積りを下げる。
– 付帯保証の可否 販売店保証やメーカー延長保証に加入可能であれば再販が容易になり、買取価格が安定。
なぜこの説明を「根拠」といえるのか
– 査定の基礎理論 JAAIの査定基準では、年式ごとの標準走行距離(一般的に年1万km)からの乖離を加減点化する枠組みが明示されています。
具体の点数表は査定士向け資料ですが、「年式×走行」で評価する考え方自体は広く知られています。
– メーカー保証の一般慣行 多くの国内メーカーで特別保証は5年/10万kmが一般的。
この“10万kmライン”が延長保証や販売保証の設計、金融の与信に影響し、二次的に10万kmを超える車の再販難度=買取時の下支え低下につながります。
– メンテナンスの節目 タイミングベルト10万km目安(ベルト式の場合)、足回りや補機の劣化は10万km前後で体感が出やすいという整備現場の経験則が広く共有されています。
これが「10万kmを跨ぐと想定整備コストが上がる」という買取側の見積もりに反映されます。
– オートオークションの実務 USSなど大規模会場では、帳票に走行距離が明記され、同条件でも10万km超は落札レンジが一段下がる傾向が観察されます。
輸出や人気車種は逆風を和らげることがある、という相場の“例外”もまた業界で共有された事実です。
実務での使い分け(5万・10万・15万kmの「違い」まとめ)
– 5万km 年式相応なら減額は小。
低年式で超えていると過走行評価。
広告上「5万km未満」はプレミアムがつくため、境界をまたぐ上下は数%違いが出やすい。
– 10万km 心理・保証・整備の三重の壁。
ここを超えると再販チャネルが変わり、減額の勾配が急になる。
一般乗用で5~20%の下振れが発生しがち。
– 15万km 国内小売から外れやすく、輸出・業販比率が上がる。
車種依存が最大化し、10~30%程度の追加下落もありうる一方、特定車種では底堅い。
売却時の実践アドバイス
– 年式に対して“どれだけ”多いのかを説明できる資料を用意する(年式×標準1万kmの考え方)。
– 10万km超なら、大物整備の実施履歴を揃える。
未実施なら見積書を添えるだけでも評価改善の余地あり。
– 複数社査定は必須。
輸出に強い業者、車種特化店(ハイエース専門など)も混ぜる。
– 需要の強い時期(繁忙期)や地域(輸出港近郊)を意識する。
– 小キズ・軽微な不具合は事前に是正すると費用以上の回収ができることが多い。
結論として、5万・10万・15万kmは「公式な減額表」上の区切りではないものの、相場・保証・整備・心理の複合要因によって、現場では明確な節目として扱われています。
特に10万kmは下げ勾配が急になるポイントで、年式に対しての過不足、メンテ履歴、再販チャネル(国内小売か輸出か)をどう作れるかが価格の分水嶺です。
逆に言えば、証拠を伴う整備履歴と適切な売り先の選択で、同じ走行距離でも減額は相当にコントロールできます。
年式・車種・用途(商用/個人)や国産/輸入車で基準は変わるのか?
結論から言うと、「過走行による減額基準」は一律ではありません。
年式(経過年数)、車種やパワートレイン、用途(商用/個人)、さらに国産/輸入車かで「標準走行距離」の考え方や減額の厳しさが変わります。
また、その根拠は主に次の3つに集約されます。
– 日本自動車査定協会(JAAI)の中古自動車査定基準における「標準走行距離」と走行距離の加減点の考え方
– オートオークション(USS、TAA、JUなど)における評価点・走行距離の区分と相場形成
– 走行距離が今後の維持費・故障リスクの代理変数として機能するという市場の合理性(消費者・保証会社・整備業の実務)
以下、項目別に詳しく解説します。
そもそも「過走行」とは何か
– 実務では2つの見方が併用されています。
1) 年平均走行距離の基準超過 乗用ガソリン車で年間約1万km前後が「標準」とされ、これを大きく上回ると「多走行(過走行寄り)」と評価されやすい。
ディーゼルや商用は標準が高めに設定されます。
2) 総走行距離の節目 10万kmは中古車市場で一つの区切りとして作用することが多く、年式に対する年平均が妥当でも、総距離が10万kmを超えると買い手の心理や保証条件の制約で相場が下がりやすい。
– 重要なのは「年式補正」です。
過走行の判断は「経過年数×標準走行距離」で算出される標準値との差で見ます(例 5年落ち×1万km/年=5万kmが標準。
実走8万kmなら3万kmの超過として評価)。
年式(経過年数)による違い
– 新しい年式ほど走行距離の影響が大きく、減額が厳しめです。
3年落ちで8〜10万kmなどは明確に過走行扱い。
– 反対に、10年以上の高年式帯では、走行距離差による価格差は縮小しがちで、車両状態(下回り腐食、オイル漏れ、内外装の傷み)や修復歴の有無が相場を左右します。
– EV/ハイブリッドは年式と「バッテリーの劣化度(SOH)」の絡みが強く、年式が進むと距離以上にバッテリー状態が評価の中心になります。
車種・パワートレイン別の違い
– ガソリン乗用(軽/コンパクト/セダン/ミニバン)
– 標準はおおむね年間1万km前後。
家族用途のミニバンは距離が伸びやすく、5年7〜10万kmで過走行扱いになりやすい。
– SUV/クロカン/4WDディーゼル
– ランドクルーザー、プラド、ハイエースなど耐久性と海外需要が高い車は距離に対する減額が比較的緩い傾向。
ディーゼルは標準走行距離自体が高めに設定されることが多い。
– スポーツ/趣味性の高い車
– 距離感度が高い一方、希少性やメンテ履歴が価格を強く左右。
走行が多くても専門店整備・記録簿充実・機関のリフレッシュ歴があると減額幅が緩和されることがあります。
– 商用バン/トラック
– 年間2万km以上を標準とみる現場も多く、距離自体には寛容。
ただし荷室や内装の使用感、フレーム腐食、ATミッションの状態など実務的消耗が厳しくチェックされます。
– ハイブリッド/EV
– HVは補機・HVバッテリーの交換履歴や診断値が極めて重要。
距離が伸びていてもバッテリー健全度が高ければ評価が保たれます。
EVはSOH(残存容量)や急速充電回数など、距離よりも実電池状態が価格決定要因。
用途(商用/個人)による違い
– 商用登録車は「距離が伸びるもの」という前提で見られます。
標準走行距離の基準が高く、同距離でも個人乗用より減額が緩くなる場合があります。
– ただし、商用は複数ドライバー使用や荷役で内外装のダメージが出やすく、内装評価や下回りの傷みが強く減点されがち。
定期点検記録簿・消耗品交換歴の有無が減額緩和のカギ。
– リース・レンタアップも同様で、走行は多めでも整備記録が整っていれば相場は安定。
無整備・事故歴ありだと距離以上に下がります。
国産/輸入車による違い
– 国産車
– 信頼性・部品供給・修理コストの読みやすさから、高走行でも実用セグメントは一定の需要があります。
10万km超でも機関良好・整備履歴明確であれば流通。
– 輸入車
– 一般に距離に対する価格感度が高く、10万kmを超えると保証加入制限や修理費リスクで相場が下がりやすい。
特に欧州プレミアムの大排気量・エアサス・先進装備付きは高走行の減額が大きい傾向。
– 例外として、ポルシェやディフェンダーなど趣味性・耐久性・希少性の高いモデルは整備履歴次第で距離影響が緩和されます。
– 輸出需要の有無
– 東南アジア・中東・アフリカ向けに需要が強い車種(ランクル、ハイエース、旧式ディーゼルなど)は高走行でも相場が底堅い。
国内小売より輸出相場が上回る局面もあり、過走行減額が事実上小さくなることがあります。
減額の算出イメージ(基礎ロジック)
– 査定実務では、「標準走行距離(車種区分×経過年数)」と実走行の差から“超過距離”を算出し、車格・燃料種・用途ごとに定められたテーブルで加減点します。
– JAAIの中古自動車査定基準・細則にこの考え方が明記され、査定士試験でも扱われます。
テーブルの数値は査定士向け資料で、一般には詳細非公開ですが、概念としては全業界で共通。
– オークション現場では走行距離の区分(例 〜1万km、〜3万km、〜5万km、〜10万km、10万km超…)で相場が段階的に変わる“段差”もあり、特定の節目(5万/10万km等)で価格が不連続に動く実務感があります。
– 実勢としては、超過1,000kmあたり数千円規模で評価に織り込まれることが多いですが、車格と相場状況で大きく変動します(あくまで目安の感覚値)。
実務的な「過走行」目安(あくまで一般論)
– 3年落ち
– 標準 約3万km。
5万km超で多走行、8万〜10万kmで過走行扱いになりやすい。
– 5年落ち
– 標準 約5万km。
7〜8万kmで多走行、10万km超で過走行扱いの節目。
– 10年落ち
– 標準 約10万km。
10〜12万kmは許容範囲、15万km超で相応の減額。
ただし車種・状態次第で評価は大きくブレます。
– これらはガソリン乗用の一般的感覚。
商用/ディーゼルは標準が高め、輸入車は同条件でも厳しめに出がちです。
根拠の詳細
– 日本自動車査定協会(JAAI)
– 「中古自動車査定基準・細則」で、標準走行距離の考え方および加減点方式を規定。
査定士資格の教育カリキュラムでも走行距離の評価方法が扱われます。
– オートオークション各社(USS、JU、TAA、CAA等)
– 出品票に走行距離が明示され、評価点や内外装評価とともに落札価格を形成。
過去成約データを見れば、走行距離の区分と価格の相関(特に節目での段差)が確認できます。
– 保証・整備の実務
– 多くの保証商品に「経過年数/走行距離の上限」があり、10年/10万km前後に閾値が設けられるケースが多い。
これが小売可能性・保証付帯可否に影響し、仕入相場(買取価格)に跳ね返ります。
– 走行距離管理
– 走行距離管理システム(業界団体・オークション連携)で過去記録を照合。
距離の正確性は価格形成の大前提で、改ざんや不整合は大きな減額・流通不可の対象。
減額を緩和するための実務ポイント
– 点検整備記録簿・領収書・交換履歴(タイミングベルト/チェーン点検、ATF、ブレーキ、ベルト/ホース類、ダンパー、ハブベアリング、冷却系、燃料ポンプ等)を整理し、提示できるようにしておく。
– ハイブリッド/EVはバッテリー診断値(SOH)、ディーラー点検結果、交換履歴を提出。
HVバッテリー保証延長や予防交換の有無は大きな加点材料。
– 商用車は下回り防錆、荷室の損耗補修、内装クリーニングで印象を改善。
フリートの整備履歴を揃えると効果的。
– 輸出需要の強い車は輸出販路に強い買取店/専門店に相見積もりを取る(国内小売中心の店より距離に寛容な査定が出やすい)。
– 季節要因やモデルチェンジ直前直後は相場が動くため、売却タイミングも検討する。
まとめ(質問への直接回答)
– 年式で変わるか?
– 変わります。
新しいほど距離の減額が大きく、古くなるほど距離差の影響は相対的に小さくなり、車両状態・修復歴が重視されます。
– 車種で変わるか?
– 変わります。
SUV/ディーゼル/輸出人気車は距離に寛容、ミニバンや一般乗用は標準に対する超過で素直に減額。
スポーツ・趣味車は希少性とメンテ履歴で距離影響が緩和される場合あり。
– 用途(商用/個人)で変わるか?
– 変わります。
商用は標準走行距離の基準が高く、距離だけでの減額は緩めな一方、使用感や下回りの傷みで減額されがち。
個人乗用は距離の純粋な超過が強く効く傾向。
– 国産/輸入で変わるか?
– 変わります。
一般に輸入車は高走行に厳しく、国産は実用セグメントで相対的に寛容。
もっともモデル固有の需給(希少性・輸出需要・保証可否)で大きく上下します。
– 根拠は?
– JAAIの査定基準における「標準走行距離×年式差=加減点」という公式的な枠組み、オートオークション相場で観察される距離区分ごとの価格段差、そして保証・整備実務における年数/距離の上限設定です。
最後に注意点です。
査定基準の具体的な点数表は査定士向けの専門資料で一般公開されていないことが多く、買取店も自社の販路(国内小売/業販/輸出)によって「距離の重み付け」が違います。
必ず複数社で相見積もりを取り、可能であればオークション代行や輸出に強い業者の意見も聞くと、過走行の減額を最小化しやすくなります。
走行距離以外に減額を左右する査定項目には何があるのか?
結論から言うと、中古車の買取査定は「走行距離」だけで決まりません。
業者間オークションの評価基準や、日本自動車査定協会(JAAI)・第三者検査機関(AIS/JAAAなど)の減点方式では、外装・内装の状態、事故や水没等の履歴、機関・電装の不具合、書類・付属品の有無、改造の適法性、人気装備やグレード・色といった市場性まで、多面的に評価されます。
以下では、走行距離以外で減額(または加減点)を左右する主な査定項目と、その根拠・理由を体系的に解説します。
修復歴(骨格部位の損傷・修理・交換)
– 何が査定対象か
– フロントサイドメンバー、ラジエータコアサポート、ピラー、クロスメンバー、フロア、リアフェンダーインナー等の「骨格部位」に損傷・修理・交換歴がある車両。
– なぜ減額か
– 走行安定性・直進性・衝突安全性の低下リスク、将来的な不具合リスク、再販時の買い手層の限定により市場価値が下がるため。
– 根拠
– 自動車公正取引協議会(公取協)の表示基準では、骨格部位の修理・交換歴があれば「修復歴車」と定義。
業者オークション(USS、TAA等)やAIS/JAAAの評価でも修復歴の有無が最重要判定の一つ。
修復歴は相場で数十万円単位の減額に及ぶことが一般的(車種・年式によっては100万円以上)。
水没・冠水・塩害履歴
– 何が査定対象か
– フロア上まで浸水、ECUや配線・シート下に水跡、塩害(下回りや配線の腐食)など。
– なぜ減額か
– 電装系の遅延故障・腐食進行リスクが高く、においやカビも残りやすい。
転売先でも敬遠され、相場上は「大幅マイナス」。
– 根拠
– 公取協の表示規約では「冠水・水没歴」は重要な表示事項とされ、オークションでは評価点や備考に明記される。
検査機関のチェックリストにも冠水痕・錆の確認項目がある。
外装の損傷・塗装状態・ガラス
– 何が査定対象か
– キズ・ヘコミ(U1〜U3等)、線キズ(A1〜A3)、歪み(W1〜W3)、再塗装パネル数、色あせ・クリア剥げ、下回りヒット、飛び石、フロントガラスのヒビ・欠け、ヘッドライトの黄ばみやクラック、バンパー割れ等。
– なぜ減額か
– 鈑金・塗装・交換コストの発生、見た目の印象低下、再販売前の整備手間を価格に織り込む必要があるため。
– 根拠
– JAAIの査定基準・AISの評価基準は、外装パネルごとにダメージの種類・大きさで減点が定められている。
オークション出品票もパネル図でダメージの等級を表示し、入札価格がそれに敏感に反応する。
内装の状態・ニオイ
– 何が査定対象か
– シート破れ・焦げ穴、天張り垂れ、内装パネル割れ、ペット痕・毛、禁煙/喫煙、芳香剤・カビ・灯油等の強いニオイ、フロア湿気跡、荷室の酷使跡。
– なぜ減額か
– クリーニングや部品交換が必要でコストがかかる。
ニオイは完全除去が難しく、再販速度に影響。
– 根拠
– AIS・JAAAの内装評価(B〜D等級)で減点。
中古車ポータルでも「禁煙車」の表示が一般化しており、需要差が価格に反映される市場実勢がある。
機関・電装の不具合
– 何が査定対象か
– エンジン異音・振動、オイル滲み/漏れ、冷却水漏れ、ミッション滑り・ジャダー、クラッチ摩耗、ターボ不調、エアコン冷え不良・コンプレッサー異音、ハイブリッドバッテリー劣化、警告灯点灯(エアバッグ、ABS、エンジンチェック等)、ADAS(ACC、レーンキープ、プリクラッシュ等)の故障・要校正、電動スライドドア不調、パワーウィンドウ・サンルーフ作動不良。
– なぜ減額か
– 修理見積が高額化しやすい領域。
特にHV/PHVの駆動用電池、ターボ、DCT/ATの内部不具合、ADASセンサー校正は費用インパクトが大きい。
– 根拠
– 査定基準では「機関良好」が前提で、異常は大きな減点対象。
オークション検査票も機関・電装の要整備事項を明記する。
メーカーリコール・サービスキャンペーン未実施もマイナス調整されることがある(実施は無償でも手間・時間が発生)。
足回り・下回り
– 何が査定対象か
– タイヤ残溝・偏摩耗・年式、ホイール傷・曲がり、ブレーキパッド/ディスク摩耗、ショックアブソーバーの抜け、ハブベアリング唸り、アライメント不良、下回りヒット跡、錆・腐食(特に雪国使用・海沿い保管)。
– なぜ減額か
– 走行安全性・乗り心地低下、整備費用見込みが生じるため。
錆は構造部まで進行していると将来リスクが高い。
– 根拠
– JAAIやAISの検査項目に含まれ、オークションでも「下回り錆多い」は評価を下げる代表的記載。
タイヤは残溝と製造年で評価され、4本同時交換が前提になることが多い。
メーター交換・走行不明・改ざん疑義
– 何が査定対象か
– メーター交換歴の記録不備、点検記録と走行の整合性欠如、改ざん痕の疑い。
– なぜ減額か
– 実走行が担保できない車は落札者が大きく警戒し、相場が大幅に下がるため。
– 根拠
– 公取協の表示規約では「走行不明」の表示が必要。
業者オークションでは「走行不明」区分となり、同条件車比で大幅減額が通例。
付属品・書類の有無
– 何が査定対象か
– 取扱説明書、整備記録簿、保証書、ナビSD/マップ更新カード、工具・ジャッキ、スペアタイヤ/修理キット、ドラレコやETCのセットアップ情報、スペアキー(スマートキー本数)。
– なぜ減額か
– 次ユーザーへの引き継ぎ品質が下がり、再販時の信頼度が落ちる。
スペアキー作成は高額(スマートキーで2〜5万円超も)になりがち。
– 根拠
– AIS/JAAAの検査票は付属品の有無を明記。
整備記録簿の有無は相場形成上の重要情報。
スペアキー欠品は実務上マイナス調整が一般的。
改造・カスタムの内容と適法性
– 何が査定対象か
– 車高調・ダウンサス、マフラー、エアロ、インチアップ、スモーク、社外ヘッド/テール、ステアリング交換、レカロ等のシート、エンジン・吸排気系チューニング、構造変更を要する改造の未申請。
– なぜ減額か
– 保安基準不適合や記載変更未実施は名義変更・車検通過のリスク。
需要が限定され一般相場が伸びにくい。
純正戻しが必要な場合はコスト発生。
例外的に人気の「純正OP」「ブランド品」「プロショップ施工履歴付き」はプラス要因になることもある。
– 根拠
– 道路運送車両法に基づく保安基準の適合が前提。
オークション検査でも「改造多数」「公認有無」が記載され、違法の疑義は買い手が強く警戒するのが通例。
年式・モデルサイクル・グレード・色・駆動方式などの市場性
– 何が査定対象か
– フルモデルチェンジ前後、マイナーチェンジ内容、人気グレード(安全装備フル・上位内装など)、人気色(白パール・黒は強い傾向)、4WD需要、寒冷地仕様、7人乗りか否か等。
– なぜ減額か
– 同走行でも需要の厚みが価格を押し上げるため、逆に不人気色・装備薄は相対的に減額。
MC直前の旧型や装備が乏しい下位グレードは相場が弱い。
– 根拠
– オークション成約データの市場実勢。
検査機関の評価とは別に、仕入れ担当は需要の厚さを入札価格に反映させる。
車検残・リコール・残債・使用歴
– 何が査定対象か
– 車検残月数(自賠責・重量税の未経過、名変後に有利)、リコール未実施、ローン残債(所有権留保)、使用歴(レンタアップ、カーシェア、法人・営業使用、禁煙ワンオーナー等)。
– なぜ減額か
– リコール未実施や残債手続きは手間とリスク。
レンタ・営業使用は酷使イメージで敬遠されがち。
逆にワンオーナー・禁煙・ディーラー整備記録はプラス。
– 根拠
– 業者オークションの備考・出品票で「レンタUP」「禁煙」「記録簿あり」等の表示が一般化。
買取現場でも標準調整項目として扱われる。
走りの質に関わる見えにくい要素
– 何が査定対象か
– アライメントのズレ、ハンドルセンターずれ、ブレーキジャダー、異音類(ピロ・ブッシュ・エンジンマウント劣化)、ドアの建付け、雨漏り痕。
– なぜ減額か
– 試乗・下回りチェックで不安が出る車は再販時のクレームリスクが高い。
調整・交換にコストがかかる。
– 根拠
– JAAI/AISの現車チェック手順に試乗・各作動確認が含まれる。
検査票の「要整備」欄に記載されると入札が弱くなるのが通例。
実務的な「どの程度の減額か」について
– 修復歴の告知は最大級のマイナスで、車種・価格帯によっては同条件無修復比で10〜30%以上の差が出ることもあります。
– 外装小傷・薄いヘコミは1か所あたり数千〜数万円規模の調整。
再塗装を要する大傷・歪みは部位ごとに数万円〜10万円超の見積になることも。
– ガラス交換、タイヤ4本、ブレーキ一式、エアコン修理、HVバッテリー等は数万円〜数十万円単位のコストが想定され、見積反映されやすい。
– 付属品欠品(スペアキー、ナビSD等)は数千〜数万円のマイナスが一般的。
– ニオイ・冠水・走行不明は買い手が大きく警戒するため、同型比で大幅減額が通例。
根拠の出典・基準の位置づけ(要旨)
– 一般財団法人 日本自動車査定協会(JAAI)の「中古自動車査定基準・細則」
– 外装・内装・機関の減点基準、修復歴の判断、メーター交換等の扱いが定められています(詳細は有償資料/会員向け)。
– 第三者検査機関 AIS/JAAA の評価基準
– 評価点(例 3.5、4、4.5、5等)と内外装のダメージ等級(A/U/W/S等)、修復歴判定のルールを公開。
販売店の車両状態表示やオークション検査票に直結。
– 自動車公正取引協議会(公取協)の「中古自動車の表示に関する公正競争規約・施行規則」
– 修復歴の定義、走行距離計の表示(不明の扱い)、冠水歴など重要表示事項が定められ、流通全体のルールとして機能。
– 業者間オークション(USS、TAA、CAA、JU等)の出品票・検査基準
– パネルごとのダメージ表記、機関・電装の要整備欄、付属品の有無が入札価格を左右。
各会場の基準はほぼ共通化しており、買取店の査定もこの相場を前提に算定。
減額を抑えるための実践ポイント
– 記録を整える 整備記録簿・取扱説明書・保証書・スペアキーを揃え、リコールは事前に実施。
メーター交換歴があれば記録やディーラー証明を準備。
– 低コスト手当 小傷のタッチアップ、簡易デント、内装の徹底清掃・脱臭、ヘッドライトの磨き、ワイパーや切れ球交換など費用対効果の高い手当を先に。
– 申告の透明性 事故・修理歴、冠水可能性、改造の有無は正直に。
後出しや矛盾は評価を大きく落とす。
– 純正部品の確保 社外パーツ装着時は純正戻し可能か確認。
人気が読めないカスタムは「純正状態」に近い方が安全なことが多い。
– 季節と地域 スタッドレスや4WD需要の季節・地域性を意識。
売却タイミングで実勢相場が変わる。
注意点
– 減額幅は車種・年式・価格帯・地域・時期により大きく変動します。
たとえば人気SUVや商用車は外装小傷に寛容だが、プレミアムセダンやスポーツモデルは内外装のコンディション差が価格に直結しやすい、といった傾向の違いがあります。
– 同じ不具合でも「検査票の記載のされ方」(軽微/要修理/重大)で入札者の心理が変わり、価格への影響が増減します。
まとめ
走行距離は重要な指標の一つですが、査定は総合点勝負です。
特に修復歴・冠水歴・機関/電装の不具合・内外装状態・改造の適法性・付属品/記録の整備状況は、過走行でなくとも大きな減額要因になり得ます。
根拠としては、JAAIの査定基準、AIS/JAAAの評価基準、公取協の表示規約、そして業者オークションの検査票・取引慣行が流通全体の共通言語になっており、各項目の有無・程度がダイレクトに相場へ反映されます。
売却前にできる範囲の手当と、情報開示の透明性を高めることで、減額を最小限に抑えることが可能です。
過走行でも減額を最小化する売却タイミングと対策は何か?
ご質問の要点は「過走行でも減額を最小化できる売却タイミングと対策」と「その根拠」です。
以下では、査定の考え方→相場で効くタイミング→実行すべき対策→車種別の注意点→根拠の順で、実務に落ちるレベルで解説します。
過走行の減額基準の考え方(前提)
– 一般的な基準値
– 年間1万kmが“標準走行距離”というのが中古車査定の古典的な基準です。
一般財団法人 日本自動車査定協会(JAAI)の査定制度でも、年式×1万kmを標準とし、超過・不足分で加減点する考え方が使われています。
買い取り各社はこれをベースに、オートオークション相場や車種特性を加味した独自アルゴリズムで金額に変換します。
– 10万kmの心理的・実務的な“壁”
– 10万kmを超えると、相場検索でフィルタから外されやすい、保証の切れ目と重なる、消耗部品の寿命感が出る等で買い手が減り、下落幅が大きくなるのが通例です。
オートオークションの成約分布でも、9万台と10万超で落札価格帯が層分けされやすいことが多いです。
– 距離による減額の大まかな目安
– 車種・相場によって大きく変わりますが、近年の目安としては、
– 10万km未満 1万kmごとに数万円程度の緩やかな減額(軽・コンパクトで敏感、SUV/商用は鈍い)
– 10万〜15万km 1万kmごとの減額幅が拡大(車種によっては10〜20万円級の段差が生じることも)
– 15万km超 減額は続くが、需要の母数が限られる分、価格帯が絞られて“下げ止まり感”が出る領域も
– あくまで傾向で、相場局面・車種・状態で逆転例はあります(例 ハイエースやランクル等は走行が伸びても強い)。
減額を最小化する「売却タイミング」
– 距離の閾値直前
– 10万kmの直前(9.6〜9.9万km)、次いで15万kmの直前は定番の売り時です。
同様に、3万、5万、7万kmなど丸い桁の前も検索ヒットの多さや買い手心理で有利です。
– 車検タイミング
– 車検残が6カ月以上あると小売しやすく評価されやすい一方、車検直前に通してから売っても費用回収が難しいことが多いです。
基本は「車検残6カ月以上を維持して売る」か「車検切れ前にそのまま売る」。
高額整備が見込まれる個体は通さず売るのが無難です。
– 大型整備・高額消耗の直前
– タイミングベルト/ウォーターポンプ、ショック、ブレーキ一式、タイヤ4本、CVT/ATの不調傾向が見え始めた時期は、整備前に売却した方が費用対効果が出やすいです。
整備しても買取額に満額は乗りにくいからです。
– モデルチェンジの前
– フルモデルチェンジ発表・発売直後は旧型の在庫がダブつきやすく相場が軟化しがち。
情報が出回る前〜発表直前が理想的な売り時です。
マイナーチェンジは影響軽めですが、年改で安全装備が大幅強化される場合は影響が出ます。
– 決算・季節要因
– 中古車は1〜3月(新生活・決算)に需要が強く相場が底堅くなりやすい。
雪国の4WDは秋〜初冬、オープンカーは春〜初夏に相対的に強いなど、季節性は実在します。
– 保証の切れ目
– 多くのメーカーでハイブリッド関連保証は5年・10万km前後、EVの駆動用電池は8年・16万km前後が目安。
保証内のうちに手放すと安心材料として評価されやすいです。
– 為替と輸出需要
– 円安局面では輸出向け車種(トヨタのSUV/商用、ディーゼル等)が強くなり、走行距離の影響が相対的に緩和されます。
近年は円安が長く、過走行でも持ち堪える例が増えています。
減額を最小化する実務的な対策
– 走行距離をこれ以上増やさない小技
– 売却方針が固まったら長距離ドライブや通勤用の代用は控える。
査定予約から引き渡しまでの間に数千km増えるだけで数万円単位の差が出ることがあります。
– 記録と書類の完備
– 定期点検記録簿、整備明細、リコール実施記録、スペアキー、取説・ナビ/ドラレコの付属品を揃える。
ワンオーナーや禁煙の証跡は強力な安心材料です。
– 軽微な不具合は直す、重整備は直さない
– 球切れ、警告灯(センサー接触不良レベル)、簡易なオイル滲み、ワイパー/ウォッシャー不良は直す価値あり。
対してエアコンコンプレッサ、AT/CVT不調、サスやブレーキ総替え級は回収が難しく、申告の上で現状売りが合理的です。
– 外装・内装の見栄えを上げる
– 徹底洗車、簡易ポリッシュ、室内の徹底清掃と脱臭は費用対効果が高い。
中古相場では第一印象が強く、同条件でも数万円違うことが珍しくありません。
ペット臭・タバコ臭は大幅減額要因なので専門業者の脱臭も検討。
– 社外パーツは原則“純正に戻す”
– 乗り手を選ぶ過度なカスタムは評価を落とすことが多いです。
純正戻しできるなら戻し、外したパーツは「オマケ」として同梱し可変価値に。
– タイヤ・キズ補修の判断
– タイヤは溝3〜4mmあれば十分。
4本新品交換は買取額にフル転嫁されにくい。
バンパー角の擦り傷程度なら補修なしでもOK、パネル鈑金や再塗装は費用が先行しがち。
– 事故歴・修復歴の扱い
– 修復歴は骨格部位の損傷・交換で付くため、付いた時点で相場帯が変わります。
軽微な外装修理は“修復歴なし”扱いの範囲に収まることもあるので、修理前にプロへ相談を。
– 売り先・売り方の最適化
– 複数査定は最低3〜5社。
提示は同日同時間帯で“名刺を卓上に並べる”のが定番の競合法。
即決条件での上振れ提示を引き出す。
– 過走行でも強い販路(輸出・商用に強い業者、小売直販型、委託販売、個人間マッチング)を選べば、業販卸より伸びることがあります。
時間と手間、リスクのバランスで選択。
– 車種特有のウィークポイントへの予防
– 例 CVTの振動/ジャダー、ターボのオイル管理、直噴のカーボン堆積、DPF再生頻度など。
弱点に対し「予防整備済みの明細」があると距離の不安を和らげます。
車種・用途別の距離感覚の違い
– 距離に強いタイプ
– トヨタのSUV/商用(ランクル、プラド、ハイエース、プロボックス等)、ディーゼル、ピックアップ系は輸出需要が厚く、15万km超でも値段が付きやすい。
– 距離に敏感なタイプ
– 輸入プレミアムセダンやDセグ以上、複雑なエアサス・大型ターボ搭載車、修理コストが高いドイツ系は10万kmの段差が大きい傾向。
– 軽・コンパクト
– 年式の新しさと修復歴の有無が重視され、距離も効くが内装の綺麗さ・ニオイなどの生活臭要素が価格に効きやすい。
– ハイブリッド/EV
– ハイブリッドはメインバッテリーの保証や交換履歴の有無が重要。
EVはSoH(電池健全度)や急速充電履歴の少なさ、熱管理の良し悪しが評価ポイント。
実用的な売却シナリオ例
– 9.7万km・次回車検まで8カ月・次の半年で長距離出張予定あり
– 今すぐ相見積もり→来週末に同時査定→9.9万kmに達する前に売却。
車検は通さない。
軽微不具合だけ整える。
– 12万km・ハイブリッド・保証切れ間近・バッテリー交換歴なし
– 保証が生きているうちに売却。
トヨタ系に強い業者や輸出志向の買取店を優先的に打診。
電池診断レポートが取れるなら添付。
– 14.8万km・ハイエース・タイヤ要交換・外装小傷あり
– 距離の閾値前に売る。
タイヤは交換せず現状、外装は洗車と簡易磨きで対応。
輸出・商用に強い業者を集めて競合させる。
なぜそれが有効なのか(根拠)
– 査定理論の基礎
– JAAI(日本自動車査定協会)の査定制度に「標準走行距離(年1万km)」の考え方が明記され、逸脱は減点対象。
買取実務はこれに市場実勢(オートオークション、カーセンサー/Gooの掲載相場)を反映させるのが一般的です。
– 10万kmの段差
– 検索行動(ポータルサイトの絞り込み)、金融・保証・販売マニュアル上の区切り、消耗品や高額整備の山(足回り、駆動系、冷却系)などが重なるため、実務で価格帯の段差が生まれます。
オートオークションの成約データでも10万km超で落札帯が一段下がる傾向は広く観察されます。
– 車検と整備費の回収性
– 車検・高額整備に投じた費用は、BtoB卸主体の買取モデルでは回収されづらく、むしろ「車検残」「整備の証跡」が安心材料として評価されるに留まることが多い、というのが業界の通例です。
よって“直してから売るより、直前に売る”のが合理的になりやすい。
– 季節・決算の需給
– 1〜3月の需要増は新生活・決算期に起因。
業者の在庫仕入れ意欲が上がり、同一コンディションでも競争が起きやすく、買取提示が伸びやすいことが統計的に知られています。
– 為替と輸出
– 円安局面では輸出採算が改善し、右ハンドル・耐久性の高い日本車の高需要が加速。
特にSUV/商用/ディーゼルで走行距離許容度が上がり、国内需要だけの局面と比べて減額が緩和されます。
– 清掃・内装の効果
– B2C小売では第一印象が価格に直結し、同評価点でも内装臭や汚れの有無で小売設定価格が数万円〜十数万円違うことは珍しくありません。
その期待小売値が高ければ下取・買取の仕入れ上限も上がりやすい構造です。
– 競合入札の効果
– 一括同時査定での“場の競争”は、各社のオークション想定落札値に対し、在庫状況や販売チャネルの優位性に応じて上振れを引き出しやすいことが実務で確立しています。
最後に(チェックリスト)
– 目標距離を決め、10万/15万kmの直前に売る計画を立てる
– 車検は通さず、残6カ月以上を目安に売る(高額整備は避ける)
– 記録簿・領収書・スペアキー・取説・付属品・リコール記録を揃える
– 室内外を徹底クリーニング、臭い対策を最優先
– 軽微不具合のみ修理、重整備はしない
– 純正戻し+社外品は同梱、過度なカスタムは控える
– 相場を事前に把握し、輸出・商用に強い業者も含めて同時査定
– 売却決定後は距離を極力増やさない
まとめ
過走行の減額は完全には避けられませんが、「10万/15万kmなどの閾値直前」「車検・高額整備の前」「需要が強い季節」「保証が残っているうち」という4つの軸でタイミングを取り、記録と内外装の見栄えを最大化、販路選択と同時査定で競争を作れば、距離のハンディを最小限にできます。
特に車種特性(距離に強い/弱い)と輸出志向の強い業者の活用は、過走行車でこそ差が出やすいポイントです。
【要約】
過走行は年1万kmの標準超過(相対)と総走行10万km超(絶対)の2視点。買取は超過1万kmごとに概ね1~5万円下落、10万kmを跨ぐとさらに10~30万円、15万・20万kmでも段差。車種・人気・状態で変動し、低走行は加点。減額はJAAI基準とオークション相場の加減点で決定。新しめや不人気は影響大、軽・コンパクトは小さめ。ランクル等は下げ幅が緩い。