なぜ事前の相場調査が交渉の成否を左右するのか?
車買取の価格交渉で「事前の相場調査」が成否を分ける最大の理由は、交渉の土台である情報量・選択肢・論理の3点をあなたの側に引き寄せ、相手(買取店・ディーラー)よりも優位に立てるからです。
買取現場の査定額は、単に「年式・走行距離・修復歴」で機械的に決まるのではなく、「どの再販ルートにいくらで流せる見込みか」を軸に、担当者の裁量やその日の競争状況で上下します。
つまり、情報戦・心理戦の要素が強く、事前調査の質がそのまま結果に反映されます。
以下、なぜ相場調査が決定的なのかを具体的なメカニズムと、裏付け(学術研究や業界慣行)を交えて詳しく説明します。
1) アンカリング効果で主導権を握れる
– ポイント 相手が最初に提示した数字は「基準(アンカー)」となり、その後のやり取りはその基準の近辺に収束しやすい。
あなたが市場データに基づく「根拠ある初期希望額(または初回カウンター)」を提示できれば、交渉の重心を自分に有利な位置へ動かせます。
– 根拠 行動経済学の古典的知見として、アンカリング効果(Tversky & Kahneman, 1974)が広く再現されています。
また、交渉研究では、合理的な根拠を伴う初回提示が、その後の合意額を自分寄りに引き寄せやすい(Galinsky & Mussweiler, 2001)。
さらに「端数を含む精緻な数字」は信頼性が高く見え、譲歩幅を小さくする効果がある(Janiszewski & Uy, 2008)と示されています。
相場調査は、この「根拠あるアンカー」をつくる材料です。
2) 情報の非対称性を縮小し、不利な「レモン割引」を避ける
– ポイント 中古車市場は典型的に売り手と買い手の情報が非対称です。
相手はオークション落札相場や再販ルートの価格を把握している一方、あなたが相場に疎いと判断されれば、見積りは安全側(低め)に振られます。
– 根拠 情報の非対称性が価格を押し下げる現象は、Akerlof(1970)の「レモン市場(質の悪い車が市場を支配しやすい)」として有名。
相手が品質や転売価値の不確実性を感じるほど「リスク割引」をかけます。
反対に、記録簿・整備履歴・ワンオーナー情報・主要消耗品の交換履歴・内外装の状態を、相場データと一緒に整理して提示すると、不確実性が減り、割引幅が狭まります。
3) BATNA(代替案)の強化で交渉力が跳ね上がる
– ポイント 交渉力は、相手と合意できなかった場合の最良の選択肢(BATNA Best Alternative to a Negotiated Agreement)の強さで決まります。
複数社の同日査定やオンライン見積りで比較可能な他社価格を確保すれば、「この条件以下なら他へ売る」という出口戦略が現実のものになり、強い立場が生まれます。
– 根拠 交渉学の基本文献(Fisher & Ury, Getting to Yes)が示す通り、BATNAが強い側が価格を引き上げやすい。
中古車買取では、複数見積りの提示だけで即時に再見積りが上がるケースが頻繁に見られます。
これは個別担当者が「他社競合の存在(失注リスク)」を社内決裁の根拠にできるためです。
4) ZOPA(合意可能範囲)の可視化と「歩留まり」の最適化
– ポイント 相場調査により、相手の最大支払い可能額の見当(再販予想価格−必要コスト−最低マージン)を推測でき、あなた自身の「目標額(アスピレーション)」「最低受諾額(ウォークアウェイ)」を数値化できます。
これがないと、安く売りすぎたり、非現実的な高値に固執して機会を逃したりします。
– 根拠 交渉研究では、事前に目標と撤退ラインを定めた場合、無計画な譲歩が減り、合意品質が高まることが示されています(交渉プランニングの効果に関する一連の実証研究)。
中古車は相場のボラティリティがあるため、レンジ感を持つことが重要です。
5) 「価格の理由」を物語として示せると、相手が社内で通しやすい
– ポイント 買取担当者は最終決裁者ではなく、上長や本部のプライサーに稟議を上げます。
相場データに基づく「このグレード・走行距離・装備・色・季節性なら、この価格帯が妥当」という外部根拠を示すと、相手は「攻めの価格」の社内承認を取りやすくなります。
– 根拠 組織内意思決定では、外部データや比較事例(コンプス)が強力な説得材料になることが知られています。
中古車業界でも、オークション相場、同等スペックの小売相場、輸出向けの足の速さなどが、決裁の拠り所です。
6) 季節性・需給・モデルチェンジといった「時間の相場」も価格を動かす
– ポイント 1〜3月の繁忙期、決算期、モデルチェンジ前後、燃料価格の動向、輸出需要(SUV・ハイブリッド・軽自動車などの人気セグメント)で相場は動きます。
事前調査があれば、「いつ売るべきか」「今は待つべきか」を判断できます。
– 根拠 業界統計や大手オークション会場の相場レポートは季節性を示します。
登録需要が高まる期は小売相場が締まり、買取価格も連動しやすいのが一般的です。
7) 非価格要素を価格に変える準備ができる
– ポイント ルームクリーニング、軽微な傷直し、スペアキー・取説・記録簿・スタッドレスなど付属品の整理、禁煙・ペット痕の有無の可視化は、査定士のリスク評価を下げ再販価値を上げます。
どれが価格に効くかの目利きは、事前調査で学べます。
– 根拠 実務上、同条件でも「修復歴なし」「整備記録簿あり」「ワンオーナー」「人気色」「主要装備あり」は回転率・粗利に直結し、提示額に反映されます。
実践的な相場調査の方法(日本向け)
– 小売相場の把握 Goo-net、カーセンサーなどで同年式・同グレード・走行距離・色・装備の「掲載価格」を広く収集。
掲載は売値の目安であり、実成約はそこから数%下がることが多い点を念頭に中央値で見る。
– 買取目線の把握 大手買取チェーンのオンライン概算や一括査定でレンジを確認。
可能なら同日に3〜5社の出張査定を入れ、当日の最高値を作る。
– オークション相場の参照 中古車オークション(例 USS等)の市況レポートや、買取店が見せてくれる同等車の落札事例があれば数件メモ。
公開情報だけでも「今はこのセグメントが強い/弱い」の方向感は掴めます。
– 調整(アジャスト) 走行距離は1万km単位、年式は1年単位、色・装備・事故歴・タイヤ残・車検残などで差額を加減し、自車の妥当レンジを作る。
スプレッドシートでコンプスと差分を可視化すると説得力が増す。
– 交渉シート作成 目標額、最終受諾額、初回提示(または初回カウンター)、譲歩幅の計画、提示する根拠資料(掲載ページの印刷/スクショ、整備記録の要点)を準備。
– 当日の進め方 できるだけ同日に複数社を回して競争を明確化。
「他社はこのレンジ」と事実ベースで伝え、即決を迫られても「本日中に全社聞いてから決めたい」と時間をコントロール。
最高値を引き出した上で、さらに根拠を示して微差を積み上げる。
– タイミングの工夫 決算期や繁忙期、雨天の平日(来客が少ない日)は交渉余地が広がることがある。
モデルチェンジ直後は旧型の相場が緩みやすいので、その前に動く判断も有効。
交渉で効く伝え方の例
– 根拠の見せ方 「同条件の掲載が○件あり、中央値が○万円。
うち走行距離が近いものは○万〜○万。
修復歴なし・記録簿あり・スタッドレス付。
オークション市況もこのクラスは強含み。
よって買取でもこのレンジは現実的だと思う」
– 数字の精緻さ 「142万円」などの端数は、適当に言っていない印象を与えやすい(精緻アンカー効果)。
– BATNAの示唆 「本日中に3社の金額を比較して決めます。
御社がこの水準まで届くなら、すぐに決断できます」
よくある反論と切り返し
– 「掲示価格は売値で、買取とは違う」→「承知しています。
実成約は掲示より数%低いことも織り込んで、このレンジを算出しています」
– 「相場が下がっている」→「直近2週間の同等車の新規掲載や成約ペースを見ると横ばい〜微減です。
輸出需要はまだ強いはずですが、それでも下げ要因があるなら具体的なデータを教えてください」
– 「今決めてくれたらこの値段」→「本日中に全社を回る予定なので、御社が最終でもこの条件を維持できるなら前向きに検討します」
まとめ
– 事前の相場調査は、(1)アンカーを握る、(2)情報の非対称性を縮小、(3)BATNAを強化、(4)ZOPAを見極め、(5)社内稟議を通る「理由」を提供し、(6)時間軸の相場を味方につけ、(7)非価格要素を価格に変える——という7層で交渉結果を押し上げます。
これらは行動経済学・交渉学・市場理論の知見と中古車業界の実務に整合的で、現場でも再現性があります。
– 準備の質がそのまま価格に出ます。
コンプスの収集と調整、根拠資料の用意、複数社同日査定、時間のコントロール、精緻な数字での提示。
この5点を徹底するだけで、同じ車でも最終提示は数万〜数十万円単位で変わり得ます。
– 最後に、相場は日々動きます。
売却を急がないなら、相場の追跡(2〜3週間の観察)で「今が売り時か」を見極めることも含めて、事前調査を継続してください。
準備はコストではなく、最も回収効率の高い投資です。
査定前にやるべき準備と避けるべきNG行為は何か?
結論から言うと、「査定前の準備」で価格は数万円〜数十万円変わります。
準備の核は「相場と材料をそろえる」「再商品化コストを下げる」「交渉の土俵を整える」の3点。
一方の「NG行為」は、虚偽・隠蔽・無駄な投資・交渉の主導権放棄の4つに集約されます。
以下、実務的な手順と、なぜ有効か(根拠)をセットで整理します。
査定前にやるべき準備(やるほど上がる順)
1) 相場・時期・戦略を決める
– 最新相場の把握
– カーセンサーやグーネットの掲載価格を鵜呑みにせず、成約・落札に近い情報(買取相場サイト、過去推移グラフ、似た条件の販売価格から諸費用や利益を差し引いた現実ライン)でレンジ感を掴む。
SUVやハイブリッド、海外人気車は輸出相場の影響大。
– 根拠 買取店は最終的にオートオークションの落札相場を基準に「再商品化コスト+利益」を差し引いて買取上限を決めます。
相場レンジを把握していれば非現実的な数字に流されにくく、また根拠ある逆提案が可能。
– 売る時期の最適化
– 1〜3月、9月の決算期は動きが活発で強気。
モデルチェンジ直後は旧型が弱くなる傾向。
季節物(4WD/スタッドレスは秋〜冬、オープンやスポーツは春〜初夏)も需給でブレます。
– 根拠 小売需要・在庫回転の都合とオークション成約ボリュームの季節性。
– 交渉フォーマットの決定
– 同日同時間帯の入札(各社同席・名刺裏に最終価格を書いて提出)か、同日連続アポで最後に相見積り提示のどちらかに統一。
引渡し時期・支払い方法・減額条件の有無など条件面も事前に決めておく。
– 根拠 競争環境が明確だと「今決めてくれたら…」型の揺さぶりが効きにくく、最高値を引き出しやすい。
2) 書類・名義・ローン残の整理
– 事前に揃えるもの(普通車)
– 車検証、自賠責保険証、リサイクル券、実印・印鑑証明(通常2通)、譲渡証明書・委任状(当日記入可)、自動車税の納付状況(多くは電子確認で足りますが、業者により納税証明を求める場合あり)、スペアキー、取扱説明書、メンテナンスノート(記録簿)、ナビやETCの付属メディア(SD/ディスク)。
– 軽自動車は印鑑証明不要(認印で可)。
住所変更や氏名変更が多い場合は住民票等が追加で必要なことあり。
– ローン残債・所有権の確認
– 車検証の所有者が販売店や信販会社の場合は所有権解除が必要。
残債額・金融機関名・口座情報を準備。
残債超過の場合は追い金か買替ローンに組み替え。
– 根拠 書類不備や所有権解除遅延は引渡し・振込を止め、交渉力を落とすため。
書類完備は「即決条件」を作り、加点に直結。
3) 整備記録・アピール材料の可視化
– 整備記録簿・領収書(バッテリー、タイヤ、ブレーキ、オイル、12カ月点検等)を時系列でまとめ、直近交換や高額整備は金額も添える。
– ワンオーナー/禁煙/ガレージ保管/ディーラー整備/記録簿あり/事故歴無しといった情報は一枚のメモに箇条書き。
– 純正パーツ(足回り・マフラー・ステアリング・シフトノブ・ノーマルホイール)や荷室トノカバー、工具、ジャッキ、取説、スマートキー本数を揃える。
– 根拠 査定は減点法(日本自動車査定協会などの基準)と再商品化コストの見積もり。
整備履歴と付属品の完備は「次のオーナーにすぐ渡せる=コストが掛からない」と評価されます。
キーが1本不足だけで数万円の減額が起こり得ます。
4) クリーニング・見栄えの最適化(やりすぎ注意)
– 洗車・室内清掃・荷物撤去・消臭
– フロアマットを洗い、灰皿・ペット痕跡・ヤニ汚れは徹底除去。
強い芳香剤はNG(臭い隠しと疑われ、内装リコン費が嵩む前提で減額)。
– エアコンフィルター交換や簡易オゾン脱臭は費用対効果が高い。
重度なヤニ・ペット臭は外注ルームクリーニング(2〜4万円)で5〜10万円の減額回避に繋がるケースあり。
– 小傷の扱い
– 洗車傷レベルはそのままでOK。
タッチペン厚塗りや素人塗装は逆効果。
バンパー小凹みや擦り傷の板金はコスパが悪いことが多く、業者の自社修理単価の方が安い。
– エンジンルーム
– 砂埃を軽く拭う程度。
直前の水洗いで濡れているとオイル漏れ隠しを疑われる。
– タイヤ・ホイール
– スリップサイン直前は減額要因。
ただ新品交換は回収不能なことが多い。
使える中古良品やスタッドレス4本セットは交渉材料に。
別売りの方が高い場合もあるので査定前に方針を決める。
– 根拠 査定は外装・内装・機関・骨格の減点累積と再商品化コスト見積り。
臭い・内装汚れ・付属品欠品はコスト直結で値引きが大きい一方、軽微な外装は社内板金で安く直せる=無理に直すより放置が得。
5) 事前申告の整合性確保(事故歴・修復歴の確認)
– 事故歴の有無、交換部位(バンパー・フェンダー・ドア等の外板か、コアサポート・ピラー・フロア等の骨格か)を把握。
曖昧なら過去修理先に見積書や作業伝票を取り寄せる。
– リコール・サービスキャンペーンは対応済みにしておくと印象が良い。
– 根拠 修復歴の定義は骨格部位の損傷・交換に及ぶかで明確(AIS/JAAIの評価基準)。
曖昧な申告は後日の減額・トラブルの原因。
6) 段取り・当日の進め方
– 走行距離は当日まで極力伸ばさない。
警告灯が点く場合は原因整備が費用対効果に見合うか事前に判断(単なるバッテリー弱り等は直す価値あり)。
– 査定士に見てほしいポイントと付属品は最初に全て提示。
写真撮影用に日中・屋外・乾いた状態で。
– 契約条件は「減額条件の限定」「支払日」「引渡し日」「キャンセル規定」「名義変更期限(写しの送付)」を明記してもらう。
– 根拠 二重査定(引取後の一方的減額)は、契約書の条件明確化で未然に防止可能。
JPUCなど業界団体も契約書面の明確化を推奨。
避けるべきNG行為(やると下がる/トラブルになる)
虚偽・隠蔽
事故歴・修復歴・水没・メーター交換・警告灯消し(OBDでのコードクリアだけ)等の隠蔽は厳禁。
引取後に発覚すれば減額・契約解除、最悪は詐欺的トラブルに発展。
根拠 査定は骨格確認・下回り・塗膜計測等で高確度に判別可能。
業者はオークション出品時に評価機関の検査を受けるため、虚偽は最終的に露見します。
直前の過剰工作
ボディを濡らしたまま見せる、強い芳香剤で臭い隠し、エンジンルームの不自然な洗浄、タッチペン厚塗り、安価な添加剤でノッキングをごまかす等は逆効果。
無駄な投資
高額板金・新品タイヤ・高価な社外ナビ等の後付けは回収困難。
改造(車高調・マフラー・外装キット)はむしろマイナス。
純正戻しが基本。
交渉の主導権を渡す行為
初手で希望額を口にする、相場根拠なく「○社はもっと高いと言った」と曖昧に煽る、即決前提で時間を与えない。
「今決めてくれたら」という条件に流され、比較機会を失う。
マナー・リスク面
夜間や狭所での査定(傷が見えにくい環境)は後日の減額の温床。
スペアキーや付属品の後出しは減額理由に。
法制度を誤解した安易な即決
出張買取でもクーリングオフできると誤信しての即決は危険。
自動車の出張買取は特定商取引法の「訪問購入」の適用除外(自動車が政令指定の除外物品)で、原則クーリングオフ不可。
契約前に十分な比較・確認を。
根拠 特定商取引法施行令で自動車は訪問購入の適用除外に指定。
よって「後で考え直して取消」は通用しにくい。
交渉を有利にする実務コツ
価格以外の条件も束ねて提示
「入金日」「引渡し日」「代車の有無」「名義変更期限」「減額条件なし」をパッケージで競わせると、総合的な満足度が上がります。
入札形式で「最終価格」を一発勝負に
同席入札か、当日締切時刻を決めて各社に最終提示を求め、後出しジャンケンを防ぐ。
アピールは簡潔に、証憑は即出し
口頭より記録(写真・領収書・記録簿)の方が加点に直結。
専門店を混ぜる
輸出強い店、ミニバン・軽・スポーツ・輸入車などの専門店を1〜2社交え、得意分野の需給を取り込む。
なぜこれで高くなるのか(根拠の要点整理)
査定の仕組み
大半の買取店は「オートオークション落札相場」から「再商品化コスト(板金塗装・クリーニング・部品・輸送・名義変更等)+営業経費+利益」を引いた金額が上限。
減点法(JAAIやAIS等の評価基準)で状態を点数化し、コスト見積もりに変換します。
つまり、事前準備で「コストを下げる」「不確実性を減らす」「販路適合(得意店に売る)」ができれば、理屈上の上限値が上がりやすい。
需要・時期の論理
決算期・季節需要・モデルチェンジは在庫回転と小売売価の見通しに直結。
買取は小売期待値の関数なので、時期を合わせると上限が引き上がる。
交渉構造
競争(多社同日)と情報の非対称性解消(相場把握・証憑提示)で、業者側の「安全マージン(リスク見積り)」「値引き余地」を縮小できる。
最後に 直前チェックリスト
相場レンジと売却期限を決めた/決算・季節を意識した
所有権・残債を把握/必要書類を準備(車検証・自賠責・リサイクル・印鑑証明・実印・記録簿・スペアキー・取説・ナビ/ETC付属)
整備履歴・高額交換部品をメモ化し証憑を用意
洗車・車内清掃・消臭(芳香剤は使わない)/エンジンルームは乾いた状態
付属品・純正パーツを一式そろえる/スタッドレス等の扱い方針決定
事故・修復歴の有無と内容を確認(曖昧なら修理伝票を取り寄せ)
同日入札の段取り・評価基準・締切時刻を設定
契約書の減額条件・支払い・名義変更期限を明文化
走行距離を増やさず、警告灯は原因整備の要否を事前判断
これらを実行すれば、査定士が計算する「再商品化コスト」と「リスク見積もり」を確実に圧縮でき、相見積もりの競争圧力と相まって上限価格に近づけます。
逆に、虚偽や過剰工作、書類不備、曖昧な交渉は高確率で減額・トラブルの元。
準備8割、当日2割のつもりで臨むのが、最短で高く売るコツです。
複数社の相見積もりをどう比較し、競合させればよいのか?
以下は「複数社の相見積もりをどう比較し、どう競合させるか」の実務手順と、なぜそれが有効かの根拠をまとめた実践ガイドです。
数字や用語は日本の中古車買取実務を前提にしています。
準備段階(相見積もり前にすべきこと)
– 基本情報を整理する
– 車検証の情報(年式、型式、グレード、車台番号)
– 走行距離、色、駆動方式、修復歴の有無、ワンオーナーか
– 装備・オプション(純正ナビ、サンルーフ、レザー、先進安全装備、スペアキー、冬タイヤ、ドラレコ等)
– 取扱説明書、整備記録簿、保証書、リコール対策履歴、リサイクル預託金管理票
– 直近の整備・消耗品交換履歴(タイヤ、ブレーキ、バッテリー、ワイパー、オイル)
– 見栄えの最低限の整え
– 洗車、室内清掃、臭い取り、小傷のタッチアップ程度。
過度な板金は費用対効果が乏しいことが多い(査定側は再塗装を見抜くため、むしろ評価を下げる恐れ)。
– 相場感の把握
– 小売相場(ポータルの販売価格)と業者オークション相場(一般には非公開だが、一部サービスで参考レンジを確認可能)を把握。
小売相場から販売店マージン・整備費・陸送費等を引いたレンジが買取上限の目安になる。
– 為替(円安時は輸出向け需要でSUV・ミニバン・ハイブリッド・ディーゼルが強含み)、決算期・モデルチェンジ前後の需給も頭に入れる。
相見積もりの設計(同条件で比較できる土俵を作る)
– 同日に集中して査定を受ける
– 価格は需給と時間プレッシャーに敏感。
1~2日で集中的に5社前後に査定させ、同日内で意思決定する設計がもっとも競争が可視化されやすい。
– 標準条件を事前に提示する
– 「現状渡し、修復歴は○○、スペアキー・整備記録簿あり、事故歴なし(ある場合は具体的に)」
– 「自動車税の未経過相当額の扱い」「リサイクル預託金の精算」「名義変更・抹消手続きの手数料負担」「陸送費」「ローン残債の精算」「支払方法と着金タイミング」「減額条件の範囲と上限」「見積有効期限」を必須項目として書面化を依頼。
– 見積フォーマットを揃える
– 総額よりも「手取りの正味額」で比較する。
正味=提示額±税/リサイクル/手数料調整−ローン残債−引取費用等。
– 期限、支払時期(当日、翌営業日、名義変更後等)、減額条件(キズ/機関不良/修復歴判明時の上限%)を列にして表にする。
見積の比較ポイント(「価格以外」の大差で逆転する)
– 価格の質
– その場確定か仮査定か。
実車後の減額条項が曖昧なら実質価値は低い。
– 減額のトリガーと上限が明確か(例 走行メーター改ざんが判明した場合のみ、最大△10%等)。
– 正味手取り額
– 自動車税未経過相当額の精算有無(一般に所有権移転では公的な還付はないが、買取店が月割精算で上乗せする運用が多い)
– リサイクル預託金の扱い(多くは買取額に別途加算。
明細化させる)
– 手数料(名義変更、陸送、査定料、キャンセル料の有無)
– 支払い・リスク
– 着金タイミング(当日振込、翌日、名義変更後等)。
車両引渡と同時の一部前払いが安心。
– ローン残債処理の代行可否と、完済証明の提供時期。
– 名義変更完了の証憑提供(車検証コピーのメール送付期日)を契約書に記載。
– 企業の信頼性
– 書面を出せるか、担当者の説明の一貫性、レビューや苦情傾向(過度な減額の常習性がないか)を確認。
競合させる実務フロー(1~2日で決め切る)
– ステップ1 一次スクリーニング(オンライン/電話)
– 車両情報を同一フォーマットで伝え、レンジを提示させる。
「上限いくらか」「その根拠(小売想定、輸出想定、オークション落札想定)」を聞く。
– 上位3~5社に同日・連続で実車査定の枠を設定。
最後の枠に「最も手応えのある会社」を置く。
– ステップ2 実車査定当日
– 最初の2社で基準価格帯を把握。
以降の業者には「本日時点の最高提示は正味○○万円。
これを上回って、かつ減額条件を明確化できれば本日中に決める」と宣言。
– 価格だけでなく条件(減額上限、着金、税・リサイクル精算)をセットで競争させる。
– ステップ3 最終ラウンド(締切効果)
– 締切時間を切る。
「本日18時までに最終条件の書面提示をお願い。
最良条件にその場で決める」。
いわゆる入札形式(セミ・シールドビッド)を自作する。
– 最高額提示の証憑を求められたら、相手社名と担当名をマスキングした見積の写真を見せ、信頼性を担保。
虚偽は逆効果なので厳禁。
– ステップ4 契約と引渡
– 契約書に減額条件の具体条項、支払時期、名義変更期限、税・リサイクル精算、キャンセルポリシーを明記。
口約束は避ける。
– 着金確認後に鍵・車両・書類を引渡すのが原則(同時履行)。
やむを得ず先渡しする場合は預り証、違約金条項、保管責任を明記。
現場で使えるショートスクリプト
– 上げ要請
– 「正味で200万円が最高です。
御社が202万円・減額なし保証を出せるなら今決めます」
– 減額対策
– 「減額条件はどの事象で、上限いくらまでですか。
査定表に具体的に書いてください」
– 期限設定
– 「本日18時が最終決定です。
そこまでに書面で最終条件をご提示ください」
– 税・リサイクル
– 「自動車税の未経過分とリサイクル預託金は別明細で正味に加算、で合っていますか」
価格を押し上げやすい補足要素
– 需要側の使い道を想像させる情報
– 輸出向けで強い仕様(低走行、右ハンドル、人気色のSUV/ミニバン/ハイブリッド/ディーゼル)
– フリート・法人需要(禁煙、整備記録完備、事故無し)
– 付属品の価値の見える化
– スペアキー、純正ナビ・ETCセットアップ、スタッドレス+ホイール、ドラレコ、ルーフキャリア等の写真・型番を提示。
– コスト低減のアピール
– 直近整備での消耗品交換は再商品化コストの削減に直結。
領収書を提示。
よくある落とし穴(価格比較の盲点)
– 仮査定の高額提示で釣って、実車で大幅減額
– 対処 減額条件と上限の明記、査定表に傷部位と減価を書き込ませる。
写真を共有し記録化。
– 総額だけを比べて手取りが低い
– 対処 正味手取りで比較。
税・リサイクル・手数料・引取費・ローン残債の扱いを同一基準で。
– 支払いが遅い
– 対処 着金時期を契約条項化。
遅延時の違約金や契約解除権を設定。
– 書面がない
– 対処 見積書・注文書・契約書を必ず受領。
メールでも良いが署名・社判が望ましい。
– キャンセルの取り扱い
– 訪問買取など特商法のクーリングオフ対象か否かは案件により異なる。
契約前にキャンセルポリシーを確認し、不明点は消費生活センター等に相談。
数字で理解する正味比較の例
– 会社A 提示205万円、税未経過+2万円、リサイクル+1万円、名変手数料−1万円、着金翌日、減額上限なし(曖昧)
– 正味=205+2+1−1=207万円(ただし減額リスク大)
– 会社B 提示202万円、税未経過+0、リサイクル+1万円、手数料0、当日着金、減額条件を限定(機関重大不良のみ、上限−3%)
– 正味=202+1=203万円(リスク小)
– 会社C 提示208万円、税未経過+2万円、リサイクル0、陸送−1万円、当日着金、減額上限−2%
– 正味=208+2−1=209万円(リスク小)
– この場合、Cが最有利。
Aに対し「Cの正味209万円、減額上限2%・当日着金。
これを上回れれば決めます」と提示すれば、Aが210万・上限明記で出せば逆転も。
なぜこの方法が効くのか(根拠・理屈)
– BATNAの強化
– 交渉理論では、最良代替案(BATNA)が強いほど有利。
複数の具体的オファーを同時に持つことがBATNAの実体化で、価格・条件を引き上げる。
– アンカリングと締切効果
– 初期の高い現実的アンカー(他社の最高額)を提示し、かつ意思決定の締切を置くことで、相手は「今この場での最大化」を選びやすい。
– オークション理論の応用
– 同時入札・期限付きのセミ封印入札にするほど、各社は「落札のための限界利潤」を上限まで差し出す傾向。
片方ずつ順番に査定すると情報が拡散せず競争が弱まる。
– 情報の非対称性の是正
– 車両状態、付属品、整備履歴、税・手数料条件を事前に可視化するほど、業者側の「不確実性コスト(リスクマージン)」が縮小し、価格が上がる。
– リスクの価格転嫁抑制
– 減額条件の明確化は「事後の値引き交渉」を封じ、期待値ベースの提示額を高く保ちやすい。
追加の実務チェックリスト
– 書類一式 車検証、自賠責、印鑑証明、実印(もしくは署名捺印要件)、譲渡証明、委任状、リサイクル券、整備記録簿、取説、スペアキー
– ローン残債 所有権留保の有無、完済手続きの段取り、残債超過時の持ち出し額
– 名義変更期限 ○営業日以内、完了後の車検証コピー送付を条文化
– 個人情報・ナンバー 引渡前に車内個人情報を完全消去。
ETCカード・ドラレコSD・ナビ履歴も
– 事故歴の告知 既知の損傷は正直に告知。
隠すと減額・契約解除のリスクが跳ね上がる
いつ売るか(タイミング戦略)
– 決算期(3月・9月)は販社の仕入意欲が高まりやすい
– モデルチェンジ直前は旧型の相場が下押しすることが多い
– 円安局面・海外需要が強い時期は輸出向け車種が上がりやすい
– 大型連休前は小売需要が強まり、買取も強気になりがち
まとめ
– 同日・短期集中で複数社に実車査定させ、正味手取り・減額条件・着金時期まで含めて「共通土俵」で比較する。
– 最高提示の存在と締切を明確に伝え、「今決める代わりに条件を上げる」交換を作る。
– 書面化と証跡で不確実性を減らし、リスクの価格転嫁を抑える。
– 法的・実務的な論点(税・リサイクル・名義変更・残債)を明確化し、後戻りを防ぐ。
この流れに沿えば、単に「高く買います」という口頭勝負から脱して、競争を設計し、正味で数万~十数万円規模の上積みを狙いやすくなります。
ベストな交渉タイミングと切り出し方はどうすればいい?
結論のポイント
– ベストな交渉タイミングは、季節では1~3月(繁忙期前後)と9月(中間決算)、月では月末・四半期末(3月・6月・9月・12月)、週では最終土日、日の中では夕方の最終商談枠に「その日最後の査定」として入れるのが効きます。
走行距離のキリを超える前(5万km・7万km・10万km直前)やモデルチェンジ発表前も重要です。
– 切り出し方は「今日決める条件を明確化+競合提示+総支給額での最終提示を引き出す」。
こちらから下限を言わず、相手に先にベストを出させ、手数料などの抜けをなくした「振込総額」で勝負させるのがコツです。
以下、理由(根拠)と具体策を詳しく説明します。
交渉タイミングの最適化(根拠付き)
季節の波
– 1~3月が買取相場は上がりやすい
理由 転勤・進学・新生活需要で中古車販売が最繁忙期。
買取店・販売店は在庫の確保に前のめりになり、調達価格(買取価格)を引き上げやすい。
多くの自動車関連企業や販売会社の決算が3月で、台数・粗利目標を達成するために「攻めの仕入れ」をしやすくなる。
9月も強め
理由 中間決算を迎える企業が多く、期末同様に数字を作りにいくため仕入れが強含みになりやすい。
夏(7~8月)は相場が緩みやすい傾向
理由 消費行動の鈍化、オークションへの出品増減、輸出需給の端境などで相場は軟調になりがち。
例外として、海外需要が強い車種(例 ランドクルーザーやハイエースなどの一部輸出人気車)は為替や海外需給で動くため、一般的な季節性から外れることもある。
月・週・日のリズム
– 月末・四半期末(3・6・9・12月)・決算月(3月)は強気に交渉可能
根拠 台数目標やKPI(新規顧客獲得・仕入れ台数)を追う現場は、期末が近いほど決裁が通りやすく「もう一伸ばし」しやすい。
最終土日+当日最後の商談枠(夕方~閉店前)
根拠 店舗の「本日の目標」や「今月の残台数」が具体的に意識される時間帯で、他社との勝負に勝つための上乗せが出やすい。
夕方に最終提示を求めると、現場は本部稟議・店長決裁を取りにいきやすい。
モデル・走行距離・車検のタイミング
– モデルチェンジやマイチェンの公式発表前に売る
根拠 旧型の相場は発表前後で下落しやすい。
アナウンスメント効果で需給が動くため、噂段階から相場がじわり下がることもある。
走行距離のキリを超える前
根拠 査定は「減点基準」に沿って距離や状態が評価され、5万km・7万km・10万kmなどの閾値を超えると評価が一段階落ちやすい。
直前で売るほど減額を避けられる。
車検は通す前に売る
根拠 車検を通すコストは買取価格にほぼ乗りきらない。
業者は自社で整備・再販するため、残車検の評価は限定的。
車検直前に通すより、そのまま売った方が手取りは高くなりがち。
当日の組み立て(実務プロセス)
事前準備
– 洗車・室内清掃・臭いケア 第一印象は減点リスクの回避に効く。
– 記録簿・点検整備の明細・取説・スペアキー・純正パーツ・スタッドレスなど付属品を揃える 再販のしやすさが上がり、上積み余地を広げる材料になる。
– 修復歴・板金歴は正直に説明 後出しで判明すると「減額」や取引トラブルの原因になる。
リスクを先に潰す方が最終提示は強くなる。
スケジューリング
– 同日に3~4社の査定を組む 午前・昼・午後・夕方(最終)と並べる。
– 最終の店舗には「本日中に決める予定で御社が最後」と伝える 最終提示を引き出しやすい。
– オンライン査定で土台を把握しつつ、店頭での現車確認勝負に持ち込む 実車確認後の本気価格を引き出すため。
切り出し方(フレーズ例と意図)
先に相手のベストを出させる
– 「本日中に決めます。
御社が最後の査定です。
総支給額でのベストを先にお聞かせください。
」
意図 こちらの下限を言わず、相手に上限提示を迫る。
総支給額(振込金額)での勝負にし、手数料の抜けを防ぐ。
競合を具体的に示す
– 「他社は総額でXX万円、即日引き取り・名義変更費用込みでした。
御社はどこまで可能でしょうか?」
意図 相手に比較基準を与え、社内決裁の理由にしてもらう。
総額ベースで比較することを明確にする。
即決の条件を明確化
– 「XX万円以上なら、今ここで契約・他社には当方から断りを入れます。
上席決裁をお願いできますか?」
意図 決断と引き換えに上乗せを引き出す。
相手の時間投資に見合うメリットを提示。
金額以外のレバーも使う
– 「引取は本日でも対応可能、付属品はすべてお渡しします。
振込期日を最短で、手数料類は御社負担で総額提示をお願いします。
」
意図 業者側のコスト・リスクを減らす条件をセットで提示し、価格上乗せや経費負担の軽減を引き出す。
総額基準での確認
– 「自動車税未経過相当やリサイクル料などの精算を含め、減額なしの最終振込総額で金額確定してください。
」
意図 後日「減額」や手数料差し引きを避ける。
見積書・契約書に明記させる。
沈黙と確認
– 提示額の直後は数秒の沈黙を入れる 相手から自発的に上乗せ・条件改善が出ることがある。
– 「これが今日のベストですか?
他要素で改善余地はありませんか?」と再確認。
NGな切り出し
– 「いくらでもいい」「とにかく早く売りたい」 交渉力を失う。
– 明確な根拠のない高額要求だけを繰り返す 逆効果。
相場や競合の事実をベースに。
– 即決する気がないのに「即決する」と匂わせる 信用を失い、以後の上乗せが出にくくなる。
価格を伸ばす補助要素
– ワンオーナー・禁煙・屋根保管・整備記録完備は強い訴求材料。
写真や明細があれば提示。
– 純正戻し可能な社外パーツがある場合、純正部品の有無を強調。
再販の幅が広がる。
– タイヤ・バッテリー・ガラスの傷・内装の汚れなど、小さい減点要素は事前に可能な範囲で補修。
– スタッドレスタイヤやキャリア等は「別途買取」か「同梱で上乗せ」か、条件を分けて提案し最も有利な形に。
契約締結時の注意
– 金額は「減額なしの最終振込総額」で書面化。
査定時に確認済みの傷・修復歴を契約書に記載し、後出し減額の余地を潰す。
– 振込期日・名義変更期日・キャンセル条件・引取条件(自走か陸送か、費用負担)を明確に。
– 免許証・印鑑・車検証・自賠責・納税証明・リサイクル券・譲渡書・委任状など書類を即日出せる状態にして、即決の信頼性を高める。
これらのコツの根拠の詳細
– 需給と決算の力学 中古車市場はオートオークション相場と店頭販売状況に連動。
繁忙期前(1~3月)や決算期は販売速度が上がるため、在庫の「回転率」を維持する目的で仕入れ強化が起きる。
店頭は月次・四半期のKPIで管理され、期末や日末の「目標到達」が強い意思決定ドライバーになる。
– 距離・状態の査定基準 査定は日本自動車査定協会(JAAI)等の減点基準や各社独自基準に基づき、走行距離の閾値や修復歴の有無、内外装状態で点数が変わる。
距離のキリ番前・重大減点がつく前に売るのは理にかなっている。
– モデルチェンジ効果 新型発表は旧型需要のシフトを招くため相場が下落しやすい。
情報が出回るほど小売価格・オークション落札価格が下がり、買取価格にも波及する。
– 手数料・総額の論点 名義変更・査定料・陸送・振込手数料などの扱いが業者によりまちまち。
交渉を「振込総額」で統一しないと、後で差し引かれてしまい実質の手取りが下がる。
具体的な一日の動き(例)
– 午前 A社で査定。
基準価格を把握。
記録簿・スペアキーも提示。
– 正午 B社で査定。
A社の総額を示すが、自分の希望下限は言わない。
– 15時 C社で査定。
今日決める意思を伝えつつ、総額ベースでの最終化を促す。
– 17~18時 最終のD社で査定。
これまでの最高額と条件を伝え、「XX万円以上、手数料御社負担、即日引取なら即決」と切り出す。
沈黙→上乗せ→書面化。
よくある質問への短答
– 雨の日は有利か?
来店減で商談時間を取りやすく、ボディの小傷が目立ちにくいなどの俗説はあるが、本質は「目標への圧力が強いタイミング」を選べるか。
結果として雨の最終土日は交渉が通りやすいケースがある。
– 車検を通すべき?
原則ノー。
通した分が上乗せされることは少ない。
– 一括査定は使うべき?
相場の底はつかみやすいが電話が鳴りやすい。
対応が難しければ、指名2~3社+店舗持込の「同日勝負」の方が運用しやすい。
最後に
交渉の核心は「相手が決裁を通す理由を用意してあげる」ことです。
期末・日末・最終枠に「今日決める」確度の高い顧客として現れ、競合の具体数字と条件を示し、総支給額でのベスト提示を引き出す。
距離の閾値やモデルチェンジ前など相場が崩れる前に動き、付属品や書類の完備・即引渡し可でリスクを下げる。
これらを組み合わせることで、同じ車でも数万~数十万円の差が生まれることは珍しくありません。
上記のタイミングと切り出し方をベースに、当日の段取りと書面での詰めを丁寧に行えば、相場の上限に近い価格を狙えます。
減額理由への切り返しと上乗せを引き出す一言は何か?
結論から言うと、減額理由への切り返しは「事実確認→減額幅の妥当性確認→代替の評価軸提示→上限決裁を促す」の順で、淡々と根拠を求めるのが最も効きます。
上乗せを引き出す一言は、状況に合わせて「この場で即決できる前提の“上限”はいくらですか?」をベースに、他社相見積もりと決裁者の同席をセットで求めるフレーズが強力です。
以下、具体的な切り返し例と、その根拠を詳説します。
前提となる考え方
– 査定額は「再販想定収益=売値−仕入れ−整備・輸送・手数料−リスク見込」の差で決まります。
従って、あなたができるのは「仕入れの不確実性を下げる」「再販価値を上げる」「社内決裁の上限を引き出す」ことです。
– 業者は多くの場合、オートオークション(USS等)の直近落札相場、AIS/JAAA評価、JAAIの減点基準を内部で参照し、社内の原価・利益モデルに落とし込んで初回提示をします。
つまり「根拠を求めれば数字が動く余地」があります。
– 即決の価値は大きいです。
営業コスト・再訪・社内手続きの回数を減らせ、同日に競合に持っていかれるリスクも下げられるため、即決条件を提示すると上限額が出やすいのが現実です。
減額理由への具体的切り返しと根拠
以下、よくある減額理由と切り返しフレーズ、その根拠を示します。
(1) キズ・ヘコミ・塗装
切り返し
– 「減額の内訳を部位と作業別で教えてください。
板金・補修の原価ベースはいくら見込みですか?」
– 「この程度の小傷はJAAI減点でも軽微のはず。
減額幅が大きい理由はオークション評価点にどれほど影響するからですか?」
– 「店頭小売りで磨き・部分補修対応ならコストはもっと下がるはず。
店頭販売前提での上限をご提示いただけますか?」
根拠
– 一般に外装の軽微な傷は減点幅が小さく、オークション評価点にも限定的影響。
業者の板金・磨きコストは一般客の相場より低いことが多く、見積上の減額が過大な場合があるため、原価と評価点への影響を分解させると圧縮できます。
(2) 修復歴(骨格交換・修正)
切り返し
– 「修復“歴”の定義は骨格部位でしょうか。
具体の部位・作業は何で、評価はAIS/JAAA基準で何点想定ですか?」
– 「フレーム修正なしでボルトオン交換のみなら“修復歴なし”扱いでは?
根拠の写真か測定値はありますか?」
– 「仮に修復歴ありでも、輸出販路では影響が小さい場合があるので、輸出前提の上限額をお願いします。
」
根拠
– 修復歴の定義は骨格部位に限定。
ボルトオン交換等は修復歴に当たらない場合がある。
販路(店頭・国内AA・輸出)で減価の度合いが異なるので、評価軸をズラすと上限額が変わることがある。
(3) 走行距離多い
切り返し
– 「直近の同型・同距離帯の落札相場(会場と週次)を提示いただけますか?」
– 「高年式多走行は輸出で底堅いと聞きます。
輸出前提の査定だといくらですか?」
– 「整備履歴が一式あります。
消耗品交換歴を加味した上限は?」
根拠
– 距離は主要な価格決定要因だが、輸出需要やメンテ履歴で希少性・安心感が上がると相場は底上げされる。
落札相場の明示を求めると恣意的な距離ペナルティの圧縮に繋がる。
(4) タイヤ・ブレーキ等の消耗品
切り返し
– 「JAAIやAISの評価では消耗品の減点は限定的のはず。
4本交換をフルコストで減額するのは妥当ですか?」
– 「オークション前の整備は最低限で出すこともありますよね。
店頭販売整備で賄う場合の原価はいくら見込みですか?」
根拠
– 消耗品は評価上の減点はあるが、小売整備で付加価値に転換しやすく、業者原価は低い。
過大減額の余地がある。
(5) 内装の汚れ・臭い・喫煙
切り返し
– 「オゾン脱臭やルームクリーニングの原価はいくら見立てですか?
外注なら単価はいくらですか?」
– 「禁煙・ペットなしのエビデンスとして◯◯を提示できます。
」
根拠
– 脱臭・クリーニングの業者原価は相対的に低単価。
具体原価を意識させると減額が縮む。
(6) 社外パーツ・改造
切り返し
– 「純正パーツ一式あります。
純正戻し前提と、現状のまま再販前提、それぞれの上限を出してください。
高い方で即決します。
」
– 「社外ホイール等は別売りの方が有利なら車体とは切り離して考えたいです。
セット減額の根拠は?」
根拠
– 社外品は好みが分かれ、車体価値を下げることがある。
純正戻し・別売りの比較で最適化するとトータル最大化しやすい。
(7) 車検残が少ない・なし
切り返し
– 「車検残の有無は買取価格にフル反映されないことが多いので、その前提で見直せますか?」
– 「店頭販売なら車検取得で価値を上げられるはず。
原価転嫁の幅はどれくらいですか?」
根拠
– 車検の有無は再販戦略で調整可能で、買取額差は一般イメージほど大きくない。
過度な減額は交渉余地あり。
(8) 人気薄の色・グレード
切り返し
– 「直近◯ヶ月の同色落札データを見せてください。
希少色としてのプレミアは織り込んでいますか?」
– 「安全装備やOPの充実で補える分があると思います。
装備分の上振れ加点はいくら見ていますか?」
根拠
– 色・グレードの人気は相場に反映されるが、装備や状態、輸出需要で補正可能。
具体データの提示を求めることでネガ一辺倒を抑える。
(9) 相場下落・季節要因・為替
切り返し
– 「相場下落というなら、会場別・週次の落札トレンドを具体に。
どの指数を参照していますか?」
– 「SUV/ハイブリッドは今期堅調のはず。
セグメント別の相場観に合わせた上限でお願いします。
」
根拠
– 業者は「相場下落」を汎用フレーズとして使いがち。
具体会場・週の相場提示を求めると、根拠薄い減額を抑制できる。
(10) 二重査定リスク(引取後の減額)
切り返し
– 「引取時点で金額確定、二重査定なしの条項を明記できますか?
その前提の上限額はいくらですか?」
根拠
– 二重査定は売り手の大きな不安。
リスクを引受けさせる代わりに上限提示を引き出しやすい。
上乗せを引き出す「一言」テンプレ(場面別)
初回提示が出た瞬間
– 「この場で即決します。
御社の“店長決裁後の上限”をワンショットでください。
二度見積もりはしません。
」
– 「その数字が社内のMAXですか?
上限なら即決で決めます。
」
他社相見積もりを使う
– 「他社は◯◯万円と提示。
御社が上回れるなら今日ここで決めます。
上限いくらですか?」
– 「同時刻で各社の最終を比較します。
再提示なしのベストプライスでお願いします。
」
減額理由を言われた直後
– 「その減額の“根拠資料(査定票・評価点・原価内訳)”を見せてください。
妥当なら受け入れます。
妥当でなければ、上限の見直しをお願いします。
」
決裁者を引っ張り出す
– 「担当者さんのお立場は理解しています。
店長決裁の席に今つないでください。
そこで即決します。
」
沈黙を活かす
– 「…(無言でメモを取り、再度『上限でお願いします』とだけ伝える)」
端数を詰める最後の一押し
– 「キリよくプラス3万円で今日決めます。
陸送・名変は御社負担で総額表示にしてください。
」
なぜこれらが効くのか(根拠)
– 価格決定のロジックに踏み込むから 減額の根拠(評価点・原価・販路)を具体化させると、恣意的な安全マージンが削れます。
査定は本来減点法と相場参照で合理化できるため、根拠開示要求は正攻法です。
– 即決の経済価値が高いから 営業は「今決まる案件」に上乗せしやすい。
時間コスト、失注リスク、月末ノルマなど、即決は社内での裁量幅を広げます。
– 競合原理が働くから 同時間帯の同時査定や相見積もりは利幅を圧縮させます。
再提示不可の「ワンショット・ベスト」要求は駆け引きの余地を潰し、上限を引き出しやすい。
– リスク引受の交換条件を明確化するから 二重査定なし、引取時確定、店頭販路前提など、業者側の不確実性を減らす条件を提示すれば、その分を価格に転嫁しやすい。
交渉の進め方(手順)
– 事前準備
– 洗車・簡易内装清掃、におい対策。
スペアキー、取説、整備記録簿、純正パーツ、付属品を揃える。
– 直近の同型相場を簡単にチェック(相場サイトや実勢記事)。
強み(ワンオーナー、禁煙、ディーラー整備等)を箇条書き。
– 査定当日
– 先に強みと付属品を「価値になる情報」として提示。
社外品は「純正戻し可」と伝える。
– 初回提示に対し、「即決前提の上限」を求め、根拠資料(査定票、評価点、原価内訳)を開示させる。
– 減額理由には上記の切り返しで分解・圧縮。
必要に応じて決裁者を呼ぶ。
– 同日他社と比較する場合は「ワンショット・ベスト」ルールを明確にし、最後に即決宣言で締める。
– 条件確定
– 二重査定なし、名義変更期限、リサイクル預託金・自賠責・自動車税月割の扱い、引取費用の負担を明文化。
– 契約書の特約・キャンセル条項を確認。
不明点は書面で。
よく効く補助フレーズ(柔らかめ/強め)
– 柔らかめ
– 「根拠が明確なら納得して決めたいので、資料を見せてください。
」
– 「今日中に決めたいので、ここでのベストをお願いします。
」
– 強め
– 「再交渉や持ち帰りはしません。
御社のMAXだけで判断します。
」
– 「その減額は原価に照らして過大です。
店長決裁の上限に切り替えてください。
」
注意点(リスクと倫理)
– 虚偽申告はNG。
後日の減額・トラブルに直結します。
修復歴や重大不具合は正直に。
– 訪問買取はクーリングオフ等の扱いがケースで異なり、車両や契約形態によって適用が限られることがあります。
原則として「後から簡単に解約できない」前提で、契約前に条項を必ず確認。
– 一括査定は競合を作る反面、電話が多く、条件が複雑化しがち。
ルール(同日・ワンショット・即決)を先に伝え、相場吊り上げ後のキャンセルや駆け引きは避ける。
まとめ(最小セット)
– 減額理由には「内訳は?
原価はいくら?
評価点への影響は?
販路別の上限は?」の4点で分解して切り返す。
– 上乗せを引き出す定番の一言は「この場で即決します。
決裁後の“上限”をワンショットでください。
」これに「他社◯◯万円」「店長同席」「根拠資料開示」を添えるとさらに強力。
– 即決の価値、競合の圧力、リスクの明確化という3つのレバーを使い、感情ではなくロジックで詰めるのがコツ。
この流れを押さえれば、過度な減額を抑えつつ、業者の上限に近い数字を引き出しやすくなります。
【要約】
車買取交渉は情報戦。事前の相場調査で、根拠あるアンカーを作り、非対称性を縮小し、BATNAとZOPAを明確化できる。中古車業界ではオークション相場、同等スペックの小売相場、輸出向けの回転の速さが再販価値の核。整備履歴等の提示と複数見積りで、担当者の社内稟議も通りやすく高値が狙える。端数を含む精緻な提示は説得力を増し譲歩幅を縮める。目標額と撤退ラインを設定し機会損失を防ぐ。競合他社の提示は再見積りを引き上げやすい。