SOH(State of Health)とは何で、LeafSpyで何が分かるのか?
以下は、日産リーフのバッテリーSOH(State of Health)と、LeafSpyで分かること・読み解き方・根拠の整理です。
できるだけ実務的に、ただし公式非公開部分は一般的な電池工学やコミュニティの実測知見として説明します。
SOH(State of Health)とは
– 定義の要点
– SOHは「バッテリーが新品時と比べてどの程度の性能(主に容量や出力)を保っているか」を示す指標です。
一般には容量保持率(残存容量/公称新品容量×100%)として扱われることが多いですが、用途によっては出力性能(内部抵抗の上昇による瞬時出力低下)まで含意する場合もあります。
– SOC(State of Charge 充電率)が「今どれだけ入っているか(燃料計)」であるのに対し、SOHは「タンクそのものの大きさがどれだけ縮んだか(経年劣化)」を表します。
– 公式・規格面での根拠
– 電池のSOHは国際規格(例 IEC 61960、ISO 12405など)で「新品時比の性能」を表す概念として定義されています。
実務では「容量保持率」を中核に評価するのが一般的です。
– 自動車用BMSはクーロンカウンティング(入出力電流の積算)や電圧/温度モデル、内部抵抗推定などを組み合わせ、新品時の参照値と照合してSOHを推定します。
Nissanの詳細アルゴリズムは非公開ですが、この枠組み自体は業界標準的な考え方です。
LeafSpyとは何か(どのようにSOHを表示するか)
– 仕組み
– LeafSpyはLEAFのOBD-IIポートに接続したアダプタ(Bluetooth/USBなど)経由で、車両のEV-CANに流れるBMS(LBC Li-ion Battery Controller)のデータを読み出すサードパーティアプリです。
– アプリはBMSが保持している内部値(SOC、残存容量[A·h]、推定SOH、温度、セル電圧など)を可視化します。
データ項目やPIDは公式に公開されていない部分があり、コミュニティや開発者による解析・検証で機能が拡充されてきました。
したがってLeafSpyの表示は「BMSの内部推定値の鏡」であり、LeafSpyが独自にSOHを発明しているわけではありません。
– 信頼性の考え方
– 根本は純正BMSの値なので、相対的には信頼できます。
ただしBMSの推定は温度・SOCレンジ・履歴に依存して微調整されるため、SOH/Hxは日々わずかに上下します。
LeafSpy自体の誤差というより「BMS推定の揺らぎ」を見ている、と捉えると理解しやすいです。
LeafSpyで分かる主な指標と意味
– SOH(%)
– 何が分かるか 新品時と比較した容量保持率の推定。
たとえばSOH=90%なら、理論上は新品の約9割の容量が残ることを示唆。
– 根拠 BMSが保持する新品参照容量(A·h)と推定残存容量(A·h)の比から計算。
LeafSpyはその内部値を読み出して表示します。
– 解釈の注意 温度や最近の充放電履歴で±数ポイント動くことがあります。
極端に高温・低温ではSOHが一時的に低めに出る傾向があります。
– AHr(残存容量[A·h])
– 何が分かるか バッテリーの実効容量を電気量(アンペア時)で表したもの。
モデル/年式ごとに新品時の参照A·hが異なり、これとの比がSOHの基礎になります。
– 根拠 BMSのクーロンカウンティングとモデル推定値。
LeafSpyはBMSがもつA·h推定をそのまま表示。
– Hx(健康度指数、Power系の指標)
– 何が分かるか 内部抵抗や出力能力に関連するBMSの独自指標と考えられています。
新車時はおおむね高く、劣化・低温・不均一化で下がりやすい。
急速充電時や高出力要求時のトルク応答の良し悪しと相関することが多い。
– 根拠 公式定義は未公開ですが、コミュニティの実測で「出力能力との相関」が繰り返し観察されてきました。
LeafSpyはBMSの数値をそのまま表示します。
– SOC(%)とGIDs
– 何が分かるか 現在の充電率(BMS推定ベース)。
GIDsはLEAF固有のエネルギー単位(BMS内部カウント)で、SOCや利用可能エネルギーの近似を細かく追えます。
– 根拠 BMS内部の燃料計モデル。
GIDのWh換算は年式やBMSバージョンで差があり固定換算は不正確になりがち、LeafSpyは主に相対指標として提示。
– セル(正確にはセルペア)電圧と電圧差(ΔV)
– 何が分かるか パック内の最小/最大電圧、ばらつき(ミリボルト)。
ΔVが大きい場合は、セルの劣化不均一やバランス不良の兆候となりえます。
– 目安 中間SOCで10~20mV程度の差は一般的。
低SOC寄り・高負荷・高温/低温では差が一時的に大きくなります。
恒常的に大きい(例 50mV超が頻発)場合は注意して観察。
– 根拠 BMSは各モジュールのタップ電圧を監視。
LeafSpyはそれを可視化。
– バッテリー温度(複数センサ)と温度バー
– 何が分かるか 各部の温度、平均/最大。
高温運用は劣化を加速させるため、地域/季節や急速充電回数と合わせてリスク評価が可能。
– 根拠 BMSの温度センサ入力。
リーフは冷却が受動的(ファン/液冷なしの世代が多い)なため、温度管理は劣化抑制の肝です。
– 充電履歴カウンタ(L1/L2回数、急速充電回数等)
– 何が分かるか 使われ方の傾向。
急速充電(高Cレート)や高温時の充電が多いと劣化リスクが上がりやすい。
– 根拠 BMSのイベントカウンタ。
年式で意味が微妙に異なる場合があるため相対評価向け。
– パック電圧、推定内部抵抗、DTC(故障コード)等
– 何が分かるか システム健全性、出力性能、エラーの早期発見。
– 根拠 BMS・VCMの診断情報。
LeafSpyは読み出しのみで、書き換えはしません(Pro版に一部メンテ機能はありますが、通常は閲覧用)。
SOHの読み解き方と実務的なコツ
– 温度とSOC依存を意識する
– 同じ車でも夏と冬、満充電直後と中間SOCではSOH/Hxが数ポイント動きます。
評価は「同条件(温度帯、SOC帯)で複数回の平均」を推奨。
– キャリブレーション(学習)の揺らぎ
– BMSはときおり学習補正を行い、満充電~低SOCまでの広いレンジを使った後にSOHがステップ状に補正されることがあります。
購入前点検では、なるべく前日~当日に通常充電を行い、50~80%の中間SOCで測ると安定しやすいです。
– Hxの使い方
– Hxは容量とは別の「出力の元気度」指標。
SOHが高くてもHxが低いケースは、低温や一時的な内部抵抗上昇が疑われます。
試乗時のレスポンスや急速充電の受け入れ出力と併せて判断。
– セル電圧差の評価
– 中間SOCでのΔVを重視。
高SOCのトップバランス中や極低SOCでは差が大きく出やすいので、条件をそろえる。
特定セルだけが繰り返し弱い(常に最小)なら注意。
– 実効容量の現実確認
– 走行または充電メーターで「実際に使えた/入ったkWh」を記録し、温度・走行条件を踏まえてLeafSpyのSOHと整合を確認すると理解が深まります(系統側の積算誤差や充電損失があるため厳密一致はしません)。
LeafSpyで「何が分かるか」の総括
– バッテリーの容量劣化度(SOH/AHr) 航続可能距離の土台
– 出力性能の傾向(Hx・内部抵抗) 加速・急速充電受け入れの元気度
– セルばらつき(ΔV) 不均一劣化や故障の早期兆候
– 温度状態 劣化リスク管理と急速充電戦略
– 使用履歴(充電回数など) 個体の過去の使われ方
– 故障コード/ステータス システム健全性
根拠と限界の整理
– 根拠(なぜそれが言えるのか)
– SOHという概念自体は国際規格や電池工学で確立済み(新品比の性能指標)。
– 日産LEAFのBMS(LBC)は内部で容量(A·h)、SOC、温度、セル電圧を常時測定・推定して管理しており、ディーラーのCONSULT診断でもこれらに相当する値が参照されます。
LeafSpyは同じ系統のデータを読み出しているため、数値の出所はBMSにあります。
– HxやGIDsなど一部の定義は公式未公開ですが、コミュニティの長年の観測と相関検証により「どう動くか」「何に効くか」が実用上整理されています。
– 限界
– 公式の閾値やアルゴリズムは非公開のため、数値の絶対値はあくまでBMSモデル依存の推定。
ソフト更新や年式差で挙動が変わることがあります。
– 温度・SOC・直近の使用履歴で短期的な揺らぎがあるため、単発値ではなくトレンド(時間推移)で評価するのが正解です。
– LeafSpyは第三者アプリであり、読み出しできる項目や名称が車両年式・アプリバージョンで異なる場合があります。
実務メモ(使い方と安全)
– 推奨アダプタ 信頼性の高いOBDアダプタ(例 OBDLinkシリーズ)。
粗悪アダプタは通信エラーや待機電流増による12Vバッテリー上がりのリスクがあります。
– 接続手順 車両をREADY/ON→アダプタ接続→アプリでプロファイル選択→静止状態で値を確認。
試走時は安全最優先。
– 購入前チェックの例 満充電直後と中間SOCでSOH/AHr/Hx/ΔV/温度/充電回数を記録。
可能なら数日分で再現性を確認。
よくある誤解の補足
– 「SOHがX%だから、満充電の実エネルギーもX%」は概ね成立しますが、実際に使えるエネルギーは温度・出力制限・上下バッファで前後します。
– 「ΔVが一度大きく出た=即故障」ではありません。
条件依存が大きいので、同条件での再測定と経時観察が重要です。
– 「急速充電回数が多い=必ず劣化が大きい」とは限りません。
温度管理(外気温・パック温度)や充電のやり方によって影響は大きく変わります。
まとめ
– SOHは「新品比でどれだけ容量(と場合により出力)を保っているか」を示す健康度指標。
– LeafSpyはリーフのBMSが内部で計算している容量(A·h)、SOH、出力指標(Hx)、セル電圧、温度、充電履歴などを読み出して可視化するツールで、個体の劣化状態・使われ方・潜在的な不具合兆候を把握できます。
– 根拠は、SOHという定義が国際規格・電池工学上で確立していること、そしてLeafSpyがBMS内部値を読み出していることにあります。
とはいえ、BMSの推定には条件依存の揺らぎと年式差があるため、単発値ではなく複数回・同条件での観察と、実走・実充電データとの突き合わせで実態を評価するのが最も確実です。
LeafSpyの準備と接続方法は?対応するOBD2アダプタの選び方は?
以下は、日産リーフのバッテリー健全性(SOH)をLeafSpyで読むための「準備と接続方法」と「対応OBD2アダプタの選び方」を、年式やスマホOSごとの違いまで踏まえて詳しくまとめたものです。
最後に根拠・参考資料も列挙します。
LeafSpyでSOHを読むために必要なもの
– スマートフォン/タブレット
– iOSまたはAndroid
– LeafSpyアプリ
– Android LeafSpy Lite(無料・動作確認用)/ LeafSpy / LeafSpy Pro(有料・機能フル)
– iOS LeafSpy / LeafSpy Pro(有料)
– OBD2アダプタ
– ELM327系またはSTN系(後述の推奨条件を満たすもの)
– 日産リーフ本体
– 年式によりCANバス取り出し方法が異なる注意点あり(2011–2012年式は特記事項、後述)
事前準備(車両と設置)
– OBD2ポートの位置
– 右ハンドル車(日本仕様) 運転席足元、ハンドル下部の内装裏(ボンネットレバー付近から上方を覗くと見えることが多い)
– 左ハンドル車 ステアリングコラム下、運転席足元の奥
– 車両の電源状態
– CANが活性化している必要があるため、基本は「READY(ブレーキを踏んでパワーボタン)」または「ON(ブレーキを踏まずに2回押し)」で起動
– アクセサリ(ACC)でも一部データは取得できるが、SOHやセル電圧などの完全な読み出しにはON/READYが確実
– 2011–2012年式(初期ZE0)の特記事項
– EV-CANがOBD2標準ピン(6/14)ではなく12/13ピンに出ている個体がある
– その場合、一般的なELM327アダプタ単体ではEV-CANに届かず、Type1等の「ピン変換アダプタ(12/13→6/14)」が必要
– 2013年以降(AZE0/ZE1)は標準ピンで読み出せるため、通常は追加アダプタ不要
アプリの導入と初期設定
– インストール
– Android Google Playで「LeafSpy」または「LeafSpy Pro」
– iOS App Storeで「LeafSpy」または「LeafSpy Pro」
– 権限
– Bluetooth接続には位置情報権限が必要なOSバージョンあり(Android)。
iOSでもBluetooth利用許可を求められる
– 初回起動時設定(代表例)
– Units(km/°C等の単位)
– Connection Type(Bluetooth / BLE / Wi‑Fi)
– Car Model/Year(年式や電池容量は自動判別されるが、古い車両は手動指定が有利な場合あり)
– 画面の下端に通信状態(ELM接続、Car接続)が表示されるので後で確認
スマホとOBD2アダプタの接続手順(OS別)
– 共通準備
– OBD2アダプタをしっかりOBD2ポートに挿す(緩いと電源が不安定で切断しやすい)
– 車をON/READYにする
– Android(Bluetoothクラシック/ BLE / Wi‑Fi いずれも可)
1) アダプタの電源LEDなどが点灯していることを確認
2) Bluetoothクラシックの場合はOSの設定でペアリング(PINは1234や0000が多いが、製品に従う)
3) LeafSpyを開き、Settings → Connection Typeで使用する方式(Bluetooth or BLE or Wi‑Fi)を選択
4) Device/Adapter一覧からアダプタ名を選ぶ
5) 画面下部のELM→Connected、Car→Connectedになることを確認(数秒〜数十秒)
– iOS(BLEまたはWi‑Fiのみ。
Bluetoothクラシックは不可)
1) BLEアダプタの場合、iOSのBluetoothはONにし、LeafSpyアプリ内でアダプタを選択(iOS設定アプリ側でのペアリングは不要なことが多い)
2) Wi‑Fiアダプタの場合、iOSのWi‑Fi設定でアダプタのSSIDに接続(この間はモバイルデータ優先設定やWi‑Fiアシストをオフにすると安定する場合あり)
3) LeafSpy起動 → Settingsで接続方式を選び、アダプタを選択
4) ELM/Carの接続表示を確認
– つまずきやすい点
– 接続はできるのにデータが出ない 車両電源がACC/OFF、アダプタが不適合、2011–2012年式でEV-CANに届いていない等
– 接続が切れる 省電力設定、アダプタのスリープ設定、Wi‑Fi干渉(2.4GHz混雑)、粗悪クローンのバッファ不足
– iOSで見つからない BLE非対応のBluetoothクラシック機を使っていないか確認
SOHの見方(要点)
– LeafSpyに表示されるSOH(State of Health)は、原則として車両のバッテリー管理ユニット(LBC/BMS)が保持している値を読み出している
– 同時に表示されるAHr(容量Ah)、Hx、セルペア電圧、GIDs等と併せて判断する
– 正確なSOH確認には車両ON/READYで安定通信、アプリは最新版、アダプタは高信頼品を使用するのが望ましい
OBD2アダプタの選び方(重要ポイント)
– OS適合
– iOS BLEまたはWi‑Fiのみ。
Bluetoothクラシック(SPP)はiOS非対応
– Android Bluetoothクラシック/ BLE / Wi‑Fiいずれも可。
安定性はBluetooth系が無難
– チップ/ファームウェア
– 推奨 STN系(OBDLinkシリーズなど)。
高速・安定・ISO-TPや拡張ID、フロー制御に強く、ファーム更新可
– 回避推奨 ELM327 v2.1表記の安価クローン。
バッファが小さい、拡張CAN/フロー制御が不完全、偽版が多い
– 使える場合がある ELM327 v1.5相当の良質クローン(ただし個体差が大きく、当たり外れがある)
– 省電力/バッテリー保護
– 自動スリープやバッテリーセーバー機能を持つアダプタ(OBDLinkシリーズ等)は、挿しっぱなし運用でも12Vバッテリー上がりリスクが小さい
– ファーム更新・サポート
– 専用アプリでファーム更新可能な製品(OBDLink等)は長期的に安定
– 接続方式の実務
– Wi‑Fi iOSでも使えるが、スマホのインターネット接続がアダプタに奪われる。
地図やクラウド連携を同時利用したい場合はBLEが便利
– BLE 省電力で安定。
iOSの第一選択
– Bluetoothクラシック Android向け定番。
スループットが高く安定
– 年式との相性(2011–2012)
– 初期ZE0はEV-CANがOBD2の非標準ピン(12/13)に出ているため、Type1変換アダプタなどで6/14ピンに振り替える必要がある個体がある
– 2013以降は通常のアダプタでOK
– 電波品質
– 車内は電波反射が多く、BLE/BTは混信しづらいが、Wi‑Fiは他機器と干渉しやすい。
混雑環境では5GHz非対応のWi‑Fiアダプタは不利
推奨・実績のあるアダプタ例(目安)
– iOS向け(BLE)
– OBDLink MX+(BLE/MFi相当、バッテリーセーバー、ファーム更新可)
– LELink^2(BLE、LeafSpy作者推奨実績あり)
– Vgate iCar Pro BLE 4.0(コスパ良、ただし個体差に注意)
– PLX Kiwi 3(BLE、動作報告多数、価格は高め)
– Android向け
– OBDLink LX(Bluetoothクラシック、安定・高速・省電力)
– OBDLink MX / MX+(BTまたはBLE、プロファイル豊富)
– Vgate iCar 2/Pro(BT/BLE。
BLE版はAndroidでも可)
– 良質なELM327 v1.5クローン(KONNWEI KW902の旧ロット等)※見極めが難しい
– Wi‑Fi(iOS/Android共用)
– Vgate iCar Wi‑Fi等(簡単だがネット接続が犠牲になる場合あり)
– 2011–2012年式の追加部品
– EV-CAN変換ケーブル(通称Type1アダプタ)。
OBD2の12/13ピンを6/14ピンに変換するハーネス
– 注意
– 「ELM327 v2.1」や極端に安価な無名製品は非推奨(接続不可・頻繁な切断・誤値のリスク)
つながらない/値が出ない時のチェックリスト
– 車両電源はON/READYか
– アダプタLEDが点灯しているか(電源が来ているか)
– LeafSpyのConnection Typeと選択したデバイス名が合っているか
– iOSでBluetoothクラシック機を使っていないか(iOSはBLEのみ)
– アダプタがELM327 v2.1等の不良クローンではないか
– 2011–2012年式でEV-CAN変換ケーブルが必要ではないか
– スマホの省電力モードや位置情報/Bluetooth権限で制限されていないか
– OBDLink製なら専用アプリでファーム更新、スリープ設定の見直し
– Wi‑FiアダプタのときはスマホのWi‑Fiアシストやモバイルデータを一時無効にして試す
安全・注意事項
– 走行中の操作・注視はしない(Pレンジ、サイドブレーキ、停車状態で)
– OBD2アダプタの常時挿しっぱなしは、バッテリーセーバー機能がない製品だと12Vバッテリー上がりの原因になり得る
– DTC消去などの双方向コマンドは自己責任(LeafSpyは基本的に読み取りだが、整備系機能もある)
根拠・参考資料
– LeafSpy(Android, iOS)公式ストア説明
– Google Play LeafSpy Pro(com.Turbo3.LeafSpyPro)にアダプタ互換や機能の説明
https://play.google.com/
– App Store LeafSpy / LeafSpy Pro の説明ページ(アダプタ種別やBLE要件の記載)
https://apps.apple.com/
– 開発者(Turbo3, James Pollock)による公式スレッド(mynissanleaf.com)
– LeafSpyアプリ総合スレ(推奨アダプタ、iOSはBLE/Wi‑Fiのみ、2011–2012のEV-CAN注意などが繰り返し案内されている)
https://www.mynissanleaf.com/ (フォーラム検索で “LeafSpy Turbo3”)
– 初期ZE0のCANピン配置・EV-CAN(OBD2の12/13ピン)に関する技術スレ
例 https://www.mynissanleaf.com/viewtopic.php?f=44&t=4131 (OBDIIピンアウト/EV‑CAN関連の代表スレ)
– EV‑CAN/Car‑CANと年式差の情報
– 2011–2012はEV‑CANが12/13ピン、2013+は標準ピンでアクセス可能というコミュニティ知見が多数蓄積
上記フォーラム内の「CAN bus」「EV‑CAN」「Type 1 adapter」キーワードのスレに詳細
– OBDLink(STN系)の技術資料
– OBDLink MX+ 製品ページ(BLE対応、バッテリーセーバー、ファーム更新)
https://www.obdlink.com/products/obdlink-mxplus/
– OBDLink LX 製品ページ(Bluetoothクラシック、低消費電力)
– STN11xxデータシート(ELM互換拡張、ISO‑TP/拡張CAN対応)
https://www.scantool.net/ (Documents → STN chips)
– iOSのBluetooth仕様
– iOSはサードパーティのSPP(Bluetoothクラシック)を原則サポートせず、BLEまたはMFiに限定
Appleサポート/開発者ドキュメント(Made for iPhone、CoreBluetooth)
https://developer.apple.com/bluetooth/
– LELink^2 / Vgate iCar Pro BLE
– 各製品ページや販売ページにBLE対応とLeafSpy動作報告(フォーラム内多数)
https://www.vgatemall.com/ (iCar Pro BLE 4.0)
LELink^2はメーカー/販売ページまたはAmazon等の製品記載
– 低品質ELM327クローンの問題
– フォーラム内での報告(ELM327 v2.1表記は未実装や偽版が多く、拡張IDやフロー制御が不完全)
“ELM327 2.1 fake” 等での技術コミュニティ議論(mynissanleaf.com, EEVblog等)
補足(実務Tips)
– 初回はLeafSpy Lite(Android)で接続確認 → 問題なければProに移行すると無駄がない
– OBDLink製はまず専用アプリ(OBDLink)でファーム更新し、その後LeafSpyで使うと安定する
– iOSでWi‑Fiアダプタを使う場合、ナビの地図データやネットを同時に使いたい時は不便になりやすいので、BLE対応アダプタがおすすめ
– 2011–2012年式でType1変換が必要かどうかは、LeafSpyの接続はできるのにセル電圧等の深いデータが取得できない、という症状で判別されることがある。
フォーラムの写真付きガイドに従い、確実な変換ハーネスを使用すること
以上を押さえれば、LeafSpyでのSOH診断は高い再現性で行えます。
特に「iOSはBLE/Androidは選択肢広め」「OBDLink等の実績あるアダプタを選ぶ」「2011–2012年式のEV‑CAN取り出しに注意」を守るのが近道です。
測定画面の読み方は?SOH・Hx・セル電圧差・温度などは何を示すのか?
以下は、日産リーフのバッテリー状態をLeafSpyで診断する際の「測定画面の読み方」と、主要指標(SOH・Hx・セル電圧差・温度など)の意味と見方、根拠の説明です。
実際の表示項目は車両年式・バッテリー容量(24/30/40/62kWh)・LeafSpyのバージョンによって一部異なりますが、基本的な考え方は共通です。
1) LeafSpyの測定画面の全体像(よく使う表示)
– 上部エリア
– SOC(State of Charge) BMSが計算する充電率(%)。
メーターの「残り目盛り」や走行距離予想(GOM)より正確な内部値。
– GIDs(ギッド) リーフ独自の“残エネルギーの目盛り”。
1 GIDは車種世代によって異なるが、おおよそ0.075~0.080kWhに相当する目安。
LeafSpyはGIDsやBMSデータから残kWhを推定表示する。
– 残エネルギー(kWh)、推定航続距離 走行効率(Wh/km)設定と組み合わせて算出。
GOMより安定的。
– 中央エリア
– AHr(アンペアアワー容量) BMSが推定する現時点の「使用可能容量」。
新車時の目安は、24kWhで約66Ah、30kWhで約82Ah、40kWhで約114~117Ah、62kWhで約175~180Ah(車両差あり)。
– SOH(State of Health, %) 新車時と比べた容量比。
BMSが内部で推定した使用可能容量を名目新品容量で割って%表示したもの。
– Hx(%) 主にパワー(内部抵抗・導電性)に関連する健康指標。
容量のSOHとは別軸で、瞬時出力・回生の上限に関係する。
– パック電圧(V)、電流(A)、出力(kW) 走行中や充電中の瞬時値。
– エネルギー出入り(kWh)、消費効率(Wh/km) トリップ的な記録に活用。
– セル画面
– セル電圧(セルペア)一覧 96セルペア(年式により同等)それぞれの電圧を棒グラフ等で表示。
– セル電圧差(ΔmV) 最高セルと最低セルの差。
バランス状態や弱ったセルの兆候を示す重要指標。
– MIN/MAXセル番号 最も低い・高いセルペアの位置。
– 温度画面
– 温度センサーT1~T3/T4(°C) バッテリーパック内のサーミスタ値。
世代により3点または4点。
平均・最低・最高温度、温度差も確認可能。
– 充放電・急速充電・回生の温度起因の制限表示(リミットkWなど)。
– 充電・履歴
– L1/L2(普通)充電回数、QC(急速)充電回数・時間、急速比率などの履歴。
– バッテリー警告・DTCの読み取り(必要に応じて)。
2) 各指標の意味と見方(解釈のコツ)
– SOC(%)
– BMSによる正味の充電率。
ダッシュのGOMより信頼性が高い。
– 0%=実際の完全ゼロではなく、バッファがありLBW(Low Battery Warning)、VLBW(Very Low Battery Warning)などの段階が設定されている。
– SOH(%)
– 定義 BMS推定の「使用可能容量」÷「新品時の名目容量」×100。
– 使い方 経年劣化の指標として長期トレンドを見る。
季節(温度)で2~5%程度上下することがあるため、比較は同温度帯で行うのが望ましい。
– 目安 新車時は100%前後。
24kWh世代は気温の高い地域で早く低下する傾向が歴史的に報告あり。
容量保証(例 9セグ未満≒約66%)の目安とも関連。
– 注意 SOHはBMS内部推定でありアルゴリズムは非公開。
リセット・BMS交換・深い学習後に値が動くことがある。
– Hx(%)
– 定義(実務的理解) 電池の導電性や内部抵抗に関係する、パワー供給能力の指標。
BMSが出力・回生上限の決定に用いる内部パラメータから導かれる。
– 特性 SOHより短期に上下しやすい(フル充電直後に上がる、低温で下がる、急速充電や高負荷直後に一時的に変動など)。
長期劣化とともに概ね低下傾向。
– 使い方 出力感や回生制限の出やすさを見る補助指標。
単独で容量劣化の判断には不向き。
– セル電圧差(ΔmV)
– 定義 最高セル電圧と最低セル電圧の差。
セル間バランス・内部抵抗差の指標。
– 目安(静置時、SOC30~80%、中温15~30℃)
– ~10mV 非常に良好
– 10~20mV 正常範囲
– 20~30mV 要観察(高SOC/低温/直後充放電の影響も考慮)
– 30mV超 バランス不良や弱セルの可能性。
高負荷時は一時的に大きくなるため、負荷・温度・SOCを揃えて再評価
– 高負荷時(加速やヒルクライム、急速充電)には内部抵抗差によりΔが増大する。
観察は「安静状態」か「一定負荷・同条件」で比較するのが基本。
– 高SOC(90~100%)では上側バランス動作によりΔが一時的に増えることがある。
フル充電後にしばらく(数十分)置くと整う場合がある。
– 温度(T1~T3/T4)
– リーフはパック内に複数の温度センサー。
年式により3点または4点。
LeafSpyは個別値と平均、温度差を表示する。
– 影響 温度は出力・回生・充電速度・劣化速度に直結。
– 低温(例 0~10℃) 内部抵抗が上がりHx低下、回生制限、充電電流制限。
– 中温(15~30℃) 最も安定。
計測・比較はこの帯が推奨。
– 高温(40~50℃超) 急速充電速度の抑制、連続急速で温度バー上昇。
長期劣化の主要因のひとつ。
– パック電圧・電流・出力
– 走行時の健康状態チェックに有用。
一定出力時にセルΔが大きく開く特定セルがあれば注意。
– AHr(アンペアアワー容量)
– BMSが過去の充放電履歴から学習した「今出し入れできる容量」。
SOHの母数。
– 目安 新車時値(例)24kWh≈66Ah、30kWh≈82Ah、40kWh≈114~117Ah、62kWh≈175~180Ah。
個体差あり。
– GIDsとkWh
– GIDsはBMS内部の残エネルギー目盛りをコミュニティが便宜上数値化したもの。
LeafSpyはGIDs×換算係数で残kWhを表示。
換算係数は車種・温度・劣化で微変動するため“概算”と理解。
– 回生・出力リミット(kW)
– BMSが温度・SOC・Hx等から決める瞬時制限。
冬季や満充電付近で回生が弱いのはこの制御による。
3) どう読み取り、どう判断するか(実務的なポイント)
– SOHは“同温度帯・同SOC帯”での長期トレンドを見る。
月次でログを取り、季節変動を除いた傾向を把握。
– Hxは短期変動が大きい。
出力感や回生制限の出やすさを見る参考値。
急な大幅低下が続く場合は内部抵抗増大の兆候として注視。
– セル電圧差は「安静状態」と「一定負荷」で見る。
特定セルが繰り返しMINになり、Δが季節を超えて悪化するなら、弱セルの可能性。
高SOC・低温・直後充放電など条件差を必ず考慮する。
– 温度は平均値だけでなくセンサー間の温度差も確認。
偏りが大きいと一部モジュールに負荷が集中している可能性。
– たまに100%充電+しばし静置で上側バランスを行うと、Δの改善やBMS学習の助けになることがある(毎回は不要、月1回程度の目安)。
– 急速充電回数そのものより“高温下での高SOC滞在時間”が劣化に効く。
夏場の連続QCは温度バー上昇とともにSOH長期低下に寄与しやすい。
4) 代表的な数値の目安と注意
– セル電圧差
– 駐車静置(SOC40~60%、15~25℃) ~10mVが理想、20mV前後まで通常。
30mV超が常態化なら要観察。
– 高負荷(100~200A級放電) 一時的に30~60mV以上になっても不思議ではない。
比較は条件同一で。
– SOHとメーターの容量バー
– いわゆる“12セグ”はBMSの容量推定に基づく。
9セグ未満(8セグ以下)はおおむねSOH≲66%が目安とされ、容量保証のしきいに使われる(年式・地域保証条件に依存)。
– Hx
– 新車時は高め(90~100%前後)。
温度・充電直後の状態で上下。
単発の下振れよりも、季節を通じた滑らかな低下を重視。
5) 画面解釈の根拠(なぜそう読めるのか)
– データ源
– LeafSpyはELM327系OBD-IIアダプタで車両のCAN(EV-CAN)にアクセスし、日産LEAFのBMS(LBC Li-ion Battery Controller)が配信するメーカー独自PID・メッセージを読み出して表示している。
SOC、SOH、AHr、Hx、セル電圧、温度、出力制限などはBMSが計算・監視する“元データ”であり、LeafSpyはこれを可視化している。
– 公開情報と実務知見
– 日産LEAFのサービスマニュアル(EVB/LBC/EVS関連セクション)には、BMSがセル電圧・温度・電流を監視し、出力・充電制御や警告を行う旨が記載されている。
SOHやAHrはBMSの推定値として取り扱われ、アルゴリズム詳細は非公開。
– Hxは公式定義が開示されていないが、コミュニティ(mynissanleaf.com 等)とLeafSpy開発者(Turbo3)の長年の観測から、「内部抵抗・出力能力に関係する指標」であり、出力・回生制限と相関することが広く共有されている。
– セル電圧差(ΔmV)の解釈は、電池工学の一般則(内部抵抗差・SOC不均衡が負荷時の電圧降下差として現れる)と、LeafSpyでの実走観測の積み重ねによる。
高SOC領域でのバランス動作や温度依存性も同様。
– GIDsはコミュニティがBMS内部の残量カウンタを“ギッド”として定義した歴史的経緯があり、1 GIDあたりのWh換算は世代・条件で微調整されることが経験的に知られている。
– 実車整合性
– LeafSpyのSOCや温度に基づく回生・出力制限表示がダッシュの挙動(回生弱化、加速制限、温度バー)と一致すること、SOH低下が容量バー低下・実航続距離の減少と整合することが実務的根拠。
6) 実践的な計測手順の提案(安定評価のため)
– 計測条件をそろえる
– SOC 40~60%付近、温度 15~30℃、走行後は10~20分静置してから測る。
– 同条件で月1回程度ログを取り、SOH/AHr/Hx/ΔmV/温度の推移を記録。
– フル充電バランス
– 月1回程度100%充電後にしばらく静置し、上側バランスを行う。
セルΔが改善し、BMS学習に寄与する場合がある。
– 走行テスト
– 同じ登坂路や同じ加速でセルΔの開き方とMINセルの固定化を観察。
特定セルが常に沈むなら要注意。
– 温度配慮
– 夏季の連続急速充電は温度を見ながら。
温度バー上昇時は充電を間欠化、走行風冷を活用するなどで温度上げ過ぎを防ぐ。
7) よくある誤解と注意点
– SOHは絶対値ではなく推定値。
季節で振れるため単発の数%低下に過度反応しない。
– Hxは容量の代替物ではない。
出力・回生の体感と併せて解釈。
– セルΔは“条件依存”。
比較は必ず同条件で。
高SOC・低温・直後負荷の影響を切り分ける。
– GIDsやkWhは概算。
走行効率設定や温度で航続予測は変動する。
8) 参考情報(根拠に関する出典の方向性)
– 日産LEAFサービスマニュアル(年式別、EVB/LBC/EVS章) BMS(LBC)の役割、温度・電圧監視、制御ロジックの概念。
– LeafSpyユーザーガイド/開発者(Turbo3)の説明、mynissanleaf.comフォーラムの技術スレッド SOH/Hx/GIDs/セル電圧の読み方、CAN PIDのコミュニティ知見。
– 一般的な二次電池工学の知見 内部抵抗と電圧降下、温度の影響、セルバランス手法。
まとめ
– LeafSpyはBMSが持つ“本当の内部データ”を可視化するツール。
SOHは容量、Hxは出力能力、セル電圧差はバランス・弱セル兆候、温度は制限と劣化を左右する最重要因子として理解する。
– 判断は“同条件・長期トレンド”が基本。
単発値ではなく、温度・SOC・負荷を揃えたうえで比較し、月次ログで傾向を見るのが最も確実です。
診断精度を高めるにはどの状態・手順で測定すればよいのか?
以下は、Leaf(ニッサン リーフ)のSOH(State of Health)をLeafSpyでできるだけ正確に把握するための「状態・手順」と、その根拠です。
ポイントは「BMSが容量を正しく学習できる状態を作る」「環境条件を整える」「安定したツールで読み取る」「再現性のあるプロトコルで比較する」の4点に集約されます。
前提理解(LeafSpyとSOHの関係)
– LeafSpyはBMS(Battery Management System)が内部で保持している推定容量(AHr)やSOH、セル電圧・温度等を読み出すツールで、SOHを「計算」しているわけではありません。
従って、測定精度を上げるにはBMSがより正しい学習状態にあることが本質です。
– BMSの容量学習は主に「クーロンカウント(入出力電荷の積算)」「端子電圧とSOCの関係」「温度・内部抵抗(Hxに反映)」などを統合して行われ、特に上端(満充電付近)・下端(低SOC付近)での安定したデータが有効です。
– SOHは温度や直近の利用履歴で短期的に±0.5~2%程度ふらつくことがあり得ます。
比較は同条件で行い、単発値ではなく傾向で見るのが賢明です。
測定前の装備・アプリ設定(精度の土台)
– OBD-IIアダプタは信頼性の高い製品(例 OBDLinkシリーズなど)を使用。
廉価なELM327クローンはCANレートで取りこぼしやエラーが生じ、セル電圧デルタや温度が瞬断して誤認に繋がることがあります。
– LeafSpyは最新バージョンを使用。
車両プロファイル(型式/年式/バッテリー容量)設定を確認。
– スマホ側で省電力機能による通信スリープを無効化。
車両はON(READYでなくても可)で、HVAC・ヘッドライト等はOFFにして負荷を最小化。
測定環境(温度と静置が最重要)
– バッテリー温度は約15~30℃(理想は20~25℃)。
Leafの温度バーでは5〜6バー相当が目安。
極端な高温(40℃付近)や低温(10℃未満)では内部抵抗と電圧-SoC関係が歪み、短期的なSOH変動が増えます。
– 充電直後・走行直後は表面電荷やヒステリシスで端子電圧が安定しません。
30~120分程度の静置(無負荷)でOCV(開放電圧)を落ち着かせてから測ると再現性が上がります。
– 直前の急速充電は避ける(急激な温度上昇とCV保持時間の短縮でBMS学習が安定しづらい)。
測定前24時間は主に普通/定電流-定電圧(AC)充電の利用が望ましい。
標準的な「日常測定プロトコル」(再現性重視の簡易法)
– 目標条件
– SOC 40~60%
– バッテリー温度 20~25℃
– 直前に1時間以上の静置
– 手順
1) 前日までに通常走行および普通充電のみで運用(急速充電や高出力走行は避ける)。
2) 測定当日はSOCを40~60%に調整。
3) 駐車してHVAC等を切り、60分静置。
4) 車両をONにしてLeafSpyでSOH、AHr、Hx、セル温度T1〜T4、セル電圧デルタを記録。
– 根拠
– 中SOC・安定温度・静置後はOCVが安定し、BMS内部モデルの温度補正も安定動作。
短時間でのばらつきが最小。
– この状態でのSOHは「BMSが直近までに学習した値」を忠実に反映。
時系列比較に向きます。
BMS学習を促す「キャリブレーション・サイクル」(高精度な更新狙い)
– 目的 BMSが容量推定を更新しやすい条件(上端・下端・一定温度・平衡)を作る。
– 推奨手順(2~3日で実施)
1) 上端学習フェーズ
– バッテリー温度が15~30℃のときに、普通充電で100%まで一気に充電。
– 100%表示後も、そのまま接続を継続し、充電電流が極小(例 数百W)になるまでCV保持+セルバランスを待つ(目安30~90分)。
LeafSpyのセル電圧差が10mV前後以下に収束しているのを確認。
– 充電を止め、30~60分静置。
2) 下端学習フェーズ
– 通常走行でゆっくり消費し、LBW(Low Battery Warning 低バッテリー警告)~VLBW(Very Low Battery Warning)あたり(例 SOC 10%→5%程度)まで下げる。
安全第一で、急加速や急坂は避ける。
– 到達後、30~60分静置(できれば平地・外気安定)。
– すぐに普通充電で100%まで戻す(上端学習をもう一度通す)。
3) 翌日、標準測定プロトコル(上記4)でSOHを読み取り、前回と比較。
– 根拠
– BMSは上端(満充電CV保持+バランス完了)でセル間のばらつきと容量上限を較正しやすく、下端(低SOC安定)で有効容量の下限側を学習しやすい。
OCVが十分に安定し、かつ温度が中庸なとき、推定誤差が減る。
– DC急速充電はCV保持が短く、セルバランスが不十分になりがち。
ACでの長めのCV保持は上端学習の精度向上に有利。
– 静置は表面電荷の緩和とヒステリシス低減のために必要。
LeafSpy画面で併せて確認すべき指標(SOHの補助判断)
– AHr(容量[A·h]) BMS推定の絶対値指標。
SOHはこの値を新車基準で割った比率なので、AHrの変動を併せて見る。
– Hx 内部抵抗関係の指標。
短期影響(直近の高負荷走行・急速充電・温度)を受けやすい。
SOHの判断は主にAHrを中心に、Hxは補助的に使う。
– セル電圧デルタ(最大-最小) 上端で10mV前後以下、走行中でも大きくばらつかないことが望ましい。
大きなばらつきは局所劣化や不均衡の示唆。
– バッテリー温度(T1〜T4) センサ間の乖離が小さいか、絶対値が中庸かを確認。
極端な温度では比較を避ける。
– GIDsやkWh残量推定 走行で消費したエネルギーと突き合わせ、実使用容量の整合性を見る(ただしGID→Wh換算は車種年式で係数が揺れるため相対比較を推奨)。
実容量のクロスチェック(実走テスト、任意)
– 100%からLBW/VLBWまで通常走行し、LeafSpyの累積kWh消費(またはA·h積算)を記録。
消費kWhをSOC差で割り戻して推定総可用容量を得る。
– 同条件(温度・速度・負荷)で2回以上実施し平均化すれば、BMS SOHとの整合性を評価可能。
– 根拠 BMSのモデルとは独立の「クーロンカウントに近い実測」比較により、表示SOHが過小・過大に振れていないかを外部検証できる。
条件統制のポイント(誤差要因を減らす)
– 温度を揃える 季節差でSOHが1~2%程度動くのは珍しくありません。
毎月の記録は同程度の温度域で行う。
– 急速充電直後を避ける 一時的にHxが上がったり、温度上昇でSOHが動くことがあります。
– 強い回生や高出力走行の直後を避ける 直前の負荷履歴で短期的な内部抵抗推定に影響が出ることがあるため。
– 12V補機バッテリー健全性 極端に弱るとBMS通信やリセット挙動に影響する可能性があるため、健康な状態を保つ。
– アダプタ品質・接続安定性 切断/再接続でスナップショットが不完全になると読み違いの原因。
年式・容量別の注意
– 2016年前後の30kWh車では、BMSのSOH表示に関するサービスキャンペーン/アップデートが複数国で実施された経緯があり、未適用車は表示が過小になるケースが報告されています。
測定前にディーラーでBMSソフトの適用状況を確認すると良い。
– 40/62kWh世代は温度管理の影響がより顕著。
夏場の高温後は短期的なSOH低下が見られる場合があり、温度が落ち着いてから評価する。
よくある質問と対策
– Q 100%にしてもSOHが上がらない/合わない
– A 上端だけでなく下端での静置も必要。
2~3サイクル繰り返すと追従することがある。
温度が高すぎ/低すぎないか、CV保持とバランスが十分かを再確認。
– Q 日々SOHが±1%動く
– A 正常範囲。
温度・履歴要因。
月1の標準プロトコルでの平均傾向で見る。
– Q LeafSpyのSOHと実走容量がズレる
– A 気温、走行条件、HVAC負荷、速度域、標高差で実使用容量は変動。
複数回の実走テストで平均化し、BMSの学習サイクルを挟んで再評価。
根拠(技術的背景の要点)
– リチウムイオン電池のSOC推定は、主にクーロンカウント+OCV法のハイブリッド。
OCVは温度・ヒステリシス・表面電荷で短期変動するため、静置と中庸温度で安定化させるのがセオリー。
– BMSの容量学習は上端CV保持でセル電圧整合(バランシング)と上側容量の基準合わせ、下端での電圧降下挙動から下側容量の基準合わせを行う設計が一般的。
Leafでも満充電保持と低SOC到達が学習更新トリガになりやすいことがユーザーコミュニティや実測報告で広く確認されています。
– 急速充電は温度上昇とCV保持短縮を招き、短期的な内部抵抗推定(Hx)やSOHの安定性を損なうことがあるため、キャリブレーション用途には普通充電が有利。
– 2016年30kWhのBMS表示問題は、メーカーのソフト更新が提供された事実があり、BMSのロジックがSOH表示に影響することの実例です。
まとめ(チェックリスト)
– 高品質OBDアダプタ+最新LeafSpy
– 温度20~25℃目安、充電・走行後は静置30~120分
– 日常測定はSOC 40~60%で再現性重視
– 高精度を狙うときは「ACで100%→CV保持→静置→低SOC→静置→ACで100%」のキャリブレーションサイクルを1~2回
– セル電圧デルタ・温度も併せて確認
– 月1回、同条件でログを取り、平均傾向で評価
– 年式に応じてBMSアップデート状況を確認
このプロトコルを守ることで、LeafSpyで得られるSOHの信頼性と再現性が大幅に高まります。
重要なのは「BMSに正しい材料(安定温度・上端/下端での静置・十分なバランス)を与えること」と「比較条件を統一すること」です。
SOH低下の原因と対策は?中古車評価や異常検知にどう活用できるのか?
以下は、日産リーフのバッテリー SOH(State of Health)をLeafSpyで診断する際の考え方、SOH低下の原因と対策、中古車評価や異常検知への活用方法、そしてその根拠です。
LeafSpyは純正ツールではありませんが、車両CANからLBC(Li-ion Battery Controller)の生データを読み出すため、実用上きわめて有用です。
なお、記載は一般論と実測コミュニティの知見を統合したもので、地域・年式・個体で差が出ます。
1) SOHとは何かとLeafSpyの基本
– SOH バッテリーの新車時に対する「容量(Ah)」の割合。
LeafSpyのSOHはLBCが推定した容量を読み出して表示しており、LeafSpyが独自に推測しているわけではありません。
– 関連指標
– AHr(Ampere-hour capacity) 推定容量の絶対値(Ah)。
SOHの母数。
– Hx 内部抵抗や出力性能に相関する指標(容量そのものではないが、加速力や回生力低下の兆候を示しやすい)。
– GIDs バッテリーの残エネルギーを示す内部単位(世代で換算係数が違うため、絶対Wh換算は注意)。
– Cell pair voltages(セル電圧)とΔV 各セルペアの電圧とばらつき。
弱セル・不均衡の検出に重要。
– Temperature sensors(T1〜T4) パック温度。
温度は劣化の核心。
– 充電回数(L1/L2、QC) 普通/急速充電の累積回数。
使われ方の手掛かり。
2) SOH低下の主な原因(なぜ劣化するか)
– カレンダー劣化(時間×温度×SOC)
– 高温で、かつ高SOC(満充電近く)で長時間放置すると、正極・電解質の化学的劣化が加速。
リーフは液冷TMSがなく受動冷却のため、真夏の屋外駐車や走行・急速充電後の高温滞在が特に効きます。
– サイクル劣化(充放電ストレス)
– 深いDOD(0〜100%などの深放電)や大電流出力・充電(高Cレート)はSEI成長や電極ストレスを増やします。
DC急速充電の多用や高速道路での連続高負荷も影響。
– 低温下での急速充電
– 低温時の高レート充電はリチウムメッキ(リチウム析出)リスクがあり、不可逆容量損失の要因。
極端な低温QCは避けるのが無難。
– 年式・電池世代差
– 初期24kWh(2011–2012)は高温耐性が弱く、暑い地域で急速に容量低下した事例が多い。
2013頃以降(通称”リザード”セル)は高温耐性が改善。
– 30kWh(2016–2017)ではBMSの容量推定ロジックに不具合があり、実容量より低く表示される事例があり、メーカーのBMSアップデートで補正された市場がある。
– 40/62kWhではセル化学・制御が改善されたが、依然として高温長滞在は劣化に効く。
– 充電プロファイル
– 毎日満充電で長時間放置、真夏の高温状態でのQC連発、寒冷時の無理なQCなどが相乗的に悪化要因。
根拠の要点
– リチウムイオンの一般的知見として「高温×高SOC×時間」がカレンダー劣化の主要因であることは学術的に確立。
– 2012年前後の米アリゾナ等での早期容量低下事例、Nissanの対策(耐熱改良セル、BMS更新)に関するサービス情報・オーナーコミュニティの大量の実測報告。
– 30kWhのBMS過小評価問題はメーカーのサービスキャンペーン(LBC再プログラム)として広く共有された事実。
3) SOH低下を抑える実用的な対策
– 温度管理
– 夏場は直射日光下の長時間放置を避け、可能なら屋内・日陰駐車。
– 走行/急速充電後に温度センサーが高温(例 40–50°C相当)を示すときは、続けてQCしない・冷えるまで待つ。
– SOCレンジの管理
– 日常は20–80%程度の浅いレンジで運用するとカレンダー・サイクル両面で有利。
– 到着後すぐ100%まで上げて長時間放置は避ける(必要なときに出発直前に100%)。
– 長期保管は30–60%で、涼しい場所に保管。
– 充電方法
– QCの多用を控え、特に高温時や低温時は避ける。
必要なときは1回で済ませ、連続QCは可能な限り回避。
– 月1回程度は100%までゆっくり充電してしばらく静置(数時間)し、受動バランスを促す。
ただし日常的な満充電放置は避ける。
– 運転・使用
– 高速での連続高負荷走行を減らす。
山坂道での全開連発など高Cレートは熱と劣化を招きやすい。
– 冬季の極低温では、軽く走ってバッテリー温度を上げてからQCする。
– ソフト/BMS
– ディーラーでLBC/BMSのサービスキャンペーンやアップデートがないか確認(特に30kWh世代)。
– BMSのリセット行為(不正なSOHリセット)は避ける。
真の容量推定が乱れ、後で急激にSOHが落ち込む。
– 現実的な限界
– いったん失われた容量は基本的に戻らない。
できるのは「これ以上早く減らさない」運用最適化。
明確な不具合があれば修理・交換。
4) LeafSpyで「何を見るか」と読み方
– SOHとAHr
– 年式・走行・地域相場と照らし合わせる。
温暖地域・屋外保管が多いとSOHが低めになりがち。
– Hx
– 加速や回生の弱さの体感と相関。
SOHと一緒に右肩下がりなら健全な推移、急落は要注意。
– セル電圧ばらつき(ΔV)
– 休止中(負荷ほぼゼロ)かつ中SOCでのΔVが30–40mV以下なら概ね良好。
100mV超はバランス不良や弱セル疑い。
– 加速中の電圧サグで特定セルの落ち込みが大きい場合、弱セルの可能性。
– 温度センサー
– センサー間で大差がないか(位置差で多少の差は正常)。
絶対温度が高いままなら運用見直し。
– 充電回数(QC/L1・L2)
– 走行距離に比してQCが極端に多い個体は熱履歴が厳しい可能性。
逆に走行多いのにQC/L2回数が異常に少ない場合はBMSリセットの痕跡を疑うことも。
– GIDs
– 同SOCでのGIDsの推移を時系列で見て傾向把握(ただし世代でスケールが異なり絶対値議論は注意)。
– DTC(故障コード)
– LBC関連コード、セル低電圧、絶縁異常(P0AA6等)などは即整備案件。
5) 中古車評価への活用手順とチェックポイント
– 準備
– 安定したOBD2ドングル(例 OBDLink LX/MX/MX+等)を用意。
LeafSpy Proを使用。
– 現地での見る順序
1) SOH/AHrと容量バー(12セグの残数)を確認。
年式・走行距離と整合するか。
一般的に温暖地・屋外保管が多い個体は同条件比で劣る。
2) セル電圧ΔVを休止状態で確認。
ばらつき大なら試乗して負荷時のサグも観察。
3) 温度センサー値。
試乗後の上がり方や左右差が極端でないか。
4) QC/L1・L2回数と走行距離のバランス。
QC多用歴、あるいは不自然な少なさ(BMSリセット疑い)。
5) DTCの有無。
6) 30kWhならBMSアップデート済みか、サービス履歴を記録で確認。
– 警戒シグナルの例
– 高走行なのにSOHが妙に高く、充電回数が少なすぎる(BMSリセットの疑い)。
– ΔVが大きく、負荷時に特定セルが顕著に沈む(弱セル)。
– 真夏の試乗で温度が急上昇し続け、QC後も高温滞在が長い(熱ストレス体質)。
– 価格/保証の考え方
– 多くの市場で容量保証は「約8年/160,000kmで9セグ未満(約70%)まで」が目安。
地域や年式で条件が異なるため、必ず現地ディーラーで確認。
– SOHが低い個体は将来の実用航続も短く、中古価格は相応に下がるべき。
逆にSOHが高く管理が良い個体はプレミアムを許容。
6) 異常検知でのLeafSpy運用
– 兆候別の見方
– 急激なSOH/Hx低下 温度履歴の悪化、BMSの再学習フェーズ、弱セル進行など。
直近の運用(高温QC多用、100%放置)を振り返る。
– セルアンバランス 満充電で長めに静置して受動バランスを促し、改善しなければ点検対象。
– 温度センサー異常 一つだけ異常値を示す場合はセンサー不良可能性。
全体的高温は運用見直し。
– 充電終止が早い/容量表示が合わない BMSの推定ずれ。
数サイクルにわたって低SOC→満充電→静置を実施し、それでも不一致なら診断。
– ログ活用
– 走行中ログで電圧サグや出力制限の発生点を可視化。
QC直後の温度上昇も把握できる。
7) 具体的な運用Tips(簡潔まとめ)
– 日常は20–80%運用、出発直前に必要量だけ充電。
– 真夏の連続QCは避け、バッテリー温度が高いときはクールダウン。
– 月1回程度の満充電+静置でバランス取り(普段の満充電放置は避ける)。
– 低温下でのQCはできれば回避、走行で少し温めてから。
– BMS/ECUのサービスキャンペーン有無を確認、適用。
– LeafSpyで時々セルΔVと温度をチェック、異常の早期発見。
8) 根拠と信頼性に関する補足
– 電池化学の一般原理(高温・高SOC・時間がカレンダー劣化を支配、深いDODと高Cレートがサイクル劣化を促進、低温QCでのリチウムメッキ)は学術的に確立しています。
– リーフ特有の高温課題(初期24kWhの暑熱劣化、2013以降の耐熱改善、2016–2017の30kWhにおけるBMS容量表示問題、40kWhの充電温度制御改善など)は、メーカーの公表情報・サービスキャンペーン、オーナーコミュニティの大規模実測(LeafSpyログ)で裏付けられています。
– LeafSpyのSOHはLBCの推定値を可視化したものなので、正しい習慣で数サイクル使わないと推定が安定しない場合があります。
BMSリセット直後は一時的にSOHが高く表示され、後から急落することがある点は実測で広く報告されています。
9) もし既にSOHが低い場合の選択肢
– 運用最適化でこれ以上の劣化速度を抑える。
– 保証条件に該当するなら容量保証の申請を検討。
– 有償でのバッテリーモジュール交換・パック載せ替え。
地域によっては容量アップグレードサービスも存在(コストは高め)。
「リフレッシュ剤」的な簡易回復は効果が限定的で、基本的に回復は期待できません。
まとめ
– リーフのSOH低下は「高温×高SOC×時間」と「高レート・深いサイクル」が複合的に支配します。
液冷TMSがないため、温度配慮の運用が特に重要です。
– LeafSpyはSOH、Hx、セル電圧ΔV、温度、充電回数、DTCを可視化し、中古評価・異常検知に非常に有効。
BMSリセットやバランス不良、弱セル、高温運用の痕跡を見抜けます。
– 対策の核心は、温度を上げない、満充電放置を避ける、QCを必要最小限にする、低温QCを避ける、定期的にバランスをとる、BMSアップデートを適用すること。
これらは電池化学の原理とリーフの実測コミュニティの知見に整合します。
– 中古車評価では、SOHとセルΔV、温度、充電履歴、DTC、BMS更新履歴を総合判断。
保証条件は地域差があるため必ず現地で確認してください。
必要であれば、年式ごとの期待SOH目安や、LeafSpy画面の具体的な見方(どのタブでどの数値を見るか)も補足します。
【要約】
SOHは新品比の性能(主に容量保持率)を示す指標で、SOCは残量、SOHはタンクの大きさ。BMSはクーロン積算や電圧・温度モデルでSOH等を推定。LeafSpyはBMSの鏡で独自算出ではなく、内部値(SOH、AHr、Hx、SOC/GIDs、セル温度・電圧)を表示。値は温度や履歴で揺れ、Hxは出力能力と相関。GIDのWh換算は年式やBMS版で異なる。